医者と病人

夢野久作

死にかかった病人の枕元でお医者が首をひねって、
「もう一時間も六カしいです」
 と言いました。
「とてもこれを助ける薬はありません」
 これを聴いた病人は言いました。
「いっその事、飲んでから二、三日目に死ぬ毒薬を下さい」