第十話  衝撃の事実 


  かごめ:「あ、あかねさん。一体これは?」

   珊瑚:「な、なんで、あんた達顔見知りなのさ!?」

     二人は何とか混乱する頭から、何とか状況把握のための言葉を選び出した。

シャンプー:「私もどういうことなのか説明してほしいね。」

  あかね:「え~っと、じゃあ、まずお互いの自己紹介から・・・・・。」

シャンプー:「名前などどうでもいいね。私はなぜここにあかねや右京がいるのかが知りたいね。」

   珊瑚:「こっちも名前なんて後で良いから、あかねちゃん達とこの娘の関係を教えて。」

  あかね:「あ、それじゃあ、え~っと、だからその~・・・・・・・・・・あ、おばあさん代わりにお願い!」

     二人への対応に困ったあかねは、どう説明していいかわからなくなりとっさに目に見えた温泉に入ろうと
     湯船に向かっていたコロンにその役目をなすりつけるよう強引に代わった。ちなみに、コロンは八宝斎の
     着る様な水着を着て入ってきた。

  コロン:「せっかく、ゆっくり温泉に使おうと思えば・・・・・まったく、しょうがないの~。」

シャンプー:「ひいばあちゃんばで?一体どうやってことか?」

  コロン:「まぁ、待てシャンプー。これからゆっくり説明してやるから、そう慌てるでない。」

     そう言ってコロンは、シャンプーになぜここにいるか、どうやってこの時代に来たか、かごめと珊瑚とは
     どういった関係にあるか等、シャンプーから聞いてくることすべてに答えた。シャンプーに事情を
     説明している間にかごめと珊瑚は服を着たままであったので、脱衣所に戻り服を脱いできた。

シャンプー:「そうだたのか。」

  コロン:「分かったようじゃの。さて、つぎはお前さんがたじゃ。」

     次にコロンはかごめと珊瑚から来る質問に答える。やはり、聞かれたのはここにいる
     シャンプーの事が中心だった。それに対してもコロンは全てに答えた。

   珊瑚:「で、その猫溺泉に溺れたせいで水をかぶると猫になる・・・そういう事か?」

  かごめ:「へぇ~、なんだか気の毒ね。でも、なんか面白そう・・・・・。もし良かったらその~、水をかけて
       猫になるところが見て見たいんだけど・・・・・良いかな?その話が本当かどうかの確認も兼ねてさぁ。」

   珊瑚:「わ、私も見てみたい。確かにあのシャンプーって娘からは別に何も感じられないけど・・・・・
       話だけじゃまだ信じられないよ。」

     かごめはコロンの話を聞いてその話の内容を受け入れているが、珊瑚はどうも半信半疑の様子だ。
     信じたいのだろうが、珊瑚は現実的に考えてしまいどうも人だとは思えずにいる。

  コロン:「ま、良かろう。シャンプー、ちょっとこっちに来てくれんか。」

     と、温泉にあかねと右京と共にシャンプーを呼ぶ。コロンに呼ばれたシャンプーはすぐにやってきた。

  コロン:「すまんがシャンプー。せっかく温泉に入っているところを悪いんじゃが水をかぶってくれんかのぉ?
       どうしてもこの二人が、お前が猫になるのを見てみたいというんじゃ。」

シャンプー:「分かった。」

     そうあっさりと承諾して、シャンプーは水が張ってある甕にから桶ですくい、
     ためらうことなく水を頭からかぶった。

シャンプー:「ニィー、ニィー。」

   珊瑚:「っ!?」

  かごめ:「あ、可愛い♪」

     シャンプーの変身を見て、珊瑚はやはり人が猫になるのを見て驚いたのだが、かごめはそれほど
     驚くどころか猫になったシャンプーを可愛いと楽天的に現実を受け入れた。

  コロン:「どうじゃ、これで信じられたか?」

   珊瑚:「・・・・・あ、あぁ。」

     珊瑚はまだ変身の時のショックで、心ここにあらずの状態で呆然としている。

  かごめ:「それともう一つ気になるんだけど。他にもいたでしょ、女になるとか熊になるとか。それは誰なの?」

  コロン:「それも話しておくか。女になるのは婿殿で・・・。」

  かごめ:「婿殿って?」

  コロン:「話しておらんかったか?婿殿はあかねや右京の言っておる乱馬と言う人物の事じゃ。わしが婿殿と
       呼ぶのは、いずれうちのシャンプーと結婚する運命にあるからそう呼んでおるんじゃよ。」

     それを聞いてかごめは一瞬、へぇ~っと思って流そうとしたのだが、あかねや右京の許婚と
     言うことを思い出して驚いた。

  かごめ:「な、なんで!?だ、だって、あかねさんと右京さんが許婚で・・・・・いや、許婚が二人いる時点で
       すでにおかしいか。で、でもそれじゃあ、乱馬さんって三股かけてるってこと!?」

シャンプー:「それは違うね。」

     いつの間にか元の姿に戻ったシャンプーがかごめに意義を申し立てた。

シャンプー:「あかねと右京の場合は、乱馬の承諾なしに親が勝手に決めたことね。だけど、私の場合は村の掟。
       私の村、女傑族の掟は絶対。だから、乱馬は私と結ばれる運命ね。分かったか?」

  かごめ:「は、はぁ~・・・・・。」

   右京:「ちょい待ちや!」

     右京がなにやら物言いたげそうに近づいてきた。

   右京:「なに勝手なこと言ってるんや。乱ちゃんと結ばれるのはこのうちやで。
       勘違いすんのもいい加減にしや。」

シャンプー:「右京こそ何言うか。乱馬は私の婿になる運命ね。そっちこそ勘違いするのもいい加減にするよろし。」

   右京:「な、なんやてぇ~!?」

シャンプー:「来るか?」

     シャンプーと右京の目線の間には、バチバチと音を立てて火花が見えるほどお互いに睨みあっていた。
     そこに、やれやれと言った表情であかねもかごめの近くに移動してきた。すると、すぐにかごめが
     あかねにコソコソっと話し掛けてきた。

  かごめ:「あ、あかねさんは良いの?乱馬さんの許婚なんでしょ?」

  あかね:「別に私は・・・お父さん達が勝手に決めたことなんだから。・・・・・でも、乱馬がその気だって言うなら私だって。」

  かごめ:「あ、あかねさん今なんて?声が小さくて聞き取れなかったんだけど。」

  あかね:「え?あ、いや、別に何でもないの。気にしないで。はははっ・・・・・。」

     あかねは頭をかきながら笑ってごまかす。そしてかごめは、また視線をコロンに戻す。

  かごめ:「ま、そう言うんなら。それで、女になるのが乱馬さんなら他の人たちは?」

  コロン:「婿殿の他には、アヒルになってしまうムースと言うアホとパンダになってしまう婿殿の父親じゃ。」

  かごめ:「パンダになるの!?うわぁ~、なんか会うのが楽しみ♪」

     かごめの喜ぶ姿に不思議に思って、あかねはどうして?と訪ねる?

  かごめ:「だってパンダって動物園でしか見れないし、真近でみれる絶好の機会じゃない。」

  あかね:「そ、そう。でも、あんまり期待しない方が良いわよ・・・・・って、聞いてないわね。」

     あかねはそう忠告するが、かごめは期待を膨らませ声が届かないようだ。しかし、そんなかごめは
     しばらくしてあるとてつもなく重要なことを気づいたように大きな声を上げた。
     その声に呆けていた珊瑚も正気に戻った。

  かごめ:「ああ!!?」

  コロン:「いきなりどうした、そんな大きな声を上げて?」

  あかね:「まさか覗きっ!?」

     お互い睨みあったまま温泉に入っていたシャンプーと右京も、『覗き』と聞いて辺りを見回した。

   右京:「覗きやて!?どこにおるんや、かごめちゃん!まさか、あのスケベ法師の弥勒か!?」

   珊瑚:「法師様ならありえるかも。」

シャンプー:「とにかく、私らでとっちめてやるね。」

  かごめ:「ち、違うの。そうじゃなくって、乱馬さん達の事まだ犬夜叉達は知らないのよ。もし、待ってる間に
       ばったりと会ったりしちゃったりなんかしちゃってたら・・・・・・。」

     恐る恐る、かごめは思っていることを言葉に表してみんなの顔をうかがう。

  あかね:「・・・・・そ、そうなったら大変よ!早く出ないと!」

   右京:「そや、ゆっくり温泉に入ってる場合やないで!」

     ゆっくりと温泉に浸かっていたあかねと右京は一斉に湯から上がり、脱衣所に向かっていった。
     その中、シャンプーだけがまだ状況を把握できずまだゆっくりと温泉を堪能している。

シャンプー:「みんな、そんなに慌ててどうかしたのか?」

   右京:「何のん気にしてんや、乱ちゃんが危ないんや!」

シャンプー:「どうしてか?」

     シャンプーはまだ、かごめ達の事情が把握できていないので、乱馬達が危ないと言っても
     まったく分からないのである。

  かごめ:「あ、あのねシャンプーさん。私達には犬夜叉と弥勒様って言う仲間がいて、その犬夜叉って言うのが
       乱馬さんの事を妖怪だと思い込んでいるの。で、私達ここまで妖怪を退治しながらやってきたの。
       だから、もしこのことを知らずにあったりしたら・・・。」

シャンプー:「そう言う事だったのか。それではのん気に温泉に浸かってる場合ではないな!」

     かごめに説明してもらいようやく事態を把握したシャンプーは湯船からあがり、脱衣所に向かう。

  かごめ:「私と珊瑚ちゃんで先行ってるわね!」

   珊瑚:「あたしらで説明しておくけど、なるべく早く出てきなよ。」

   右京:「分かった。二人とも頼む。」

     先に着替え終わった二人はすぐさま外へと向かって出て行った。

  あかね:「私達も急いで着替えて早く出ましょう。」

   右京:「それは分かってるさかい。けど、シャンプーを見てみい・・・・・。」

  あかね:「え?・・・・・あ。」

     あかねは右京に言われてシャンプーを見た。すると、悪戦苦闘しながら
     着物に着替えているシャンプーが目に入った。

  あかね:「シャ、シャンプー・・・・・その着物どうしたのよ?」

シャンプー:「これか?これはこの間泊めてもらった所でもらた物ね。けど、もらたは良いが、
       慣れてないからうまく着れないね。」

   右京:「ならいつもの服着たらええやんか。」

シャンプー:「・・・・・そういう手も・・・あったか。」

     シャンプーはあははっと笑ってごまかし、いつものチャイナ服が包んである布包みを
     どこからともなく取り出した。

   右京:「まったく・・・アホか。このくらい自分で気付けっちゅーねん。」

シャンプー:「いろいろあり過ぎてそこまで気が回らなかただけね。それに、乱馬がとても良く似合てると
       言ってくれたから私ここまでずっと着てたね。」

   右京:「はっ、そんなのお世辞にきまっとるやないか。」

     右京はシャンプーをあざ笑うかのようにひらひらと手を振って見せた。

シャンプー:「何言うか!?そうか、私がうらやましくてそれでひがんで・・・・・そうかそうか。」

   右京:「な!?好き勝手言いおって、このアマァ~・・・!」

シャンプー:「来るか?」

     二人とも適当な距離をとり戦闘態勢の構えをして睨みあう。その二人の間にすかさずあかねが入り、
     止めさせようとする。

  あかね:「ケンカしてる場合じゃないでしょ!乱馬達がどうなってもいいの!」

シャンプー:「しょうがないね・・・・・右京、この続きはまた後でにするね。」

   右京:「せやな・・・ここはあかねちゃんの顔を立てて一時休戦や。」

  あかね:「分かればいいのよ分かれば。とにかく、着替え終わったんだし外にでましょ。」

     あかねはそう言って、構えを解いた二人に外へでる事を促した。が、出ようとしたその時、
     かごめが血相を変えて中に戻ってきた。

  かごめ:「ハァハァ・・・・・た、大変よ!」

   右京:「どうしたん?そんなに慌てて。」

  あかね:「何かあったのかごめちゃん?」

  かごめ:「そ、それが・・・・・」

     かごめは外で起きた事を説明し始める。その内容を聞いてあかね達は仰天した。

   右京:「な、なんやてぇ!?」

シャンプー:「それは本当か!?」

  かごめ:「う、うん。最初は単にどこかで休んでるのかと思ってこの辺りを探してみたんだけど、
       犬夜叉達がどこにもいなくて・・・・・。」

     そう、かごめが慌てて入ってきたのは犬夜叉達がどこかに言ってしまったからである。それもそのはず、
     彼らはかなり前にこの場を離れて、正反対の方角にある別の温泉に向かって行ったのであった。

   右京:「それで、珊瑚はどうしたん?」

  かごめ:「珊瑚ちゃんはまだその辺を雲母と探してるわ。」

シャンプー:「だったら早く外に出て私達も探しに行くね。」

  あかね:「そうね、人数は少ないより多いほうがいいし、珊瑚ちゃんだけじゃ大変だわ。」

     あかね・かごめ・シャンプー・右京の四人は、犬夜叉達を探すべく大慌てで外へと向かった。
     それをコロンは一人のんびりと眺めながら温泉を堪能していた。あかね達が外へ向かっている途中、
     管理者の女性に引き止められた。

  管理者:「ちょっと良いですか?」

  かごめ:「え、なんですか?」

  管理者:「先程、お連れの方々がここと正反対の位置にある温泉に行くとの言伝を頼まれましたのでお伝えに。」

シャンプー:「何!?それは本当か!?」

     シャンプーはその言伝を聞くと、管理者に詰め寄ってその真偽を確かめる。

  管理者:「は、はい。お暇そうでしたので、私が行ってみたらとお勧めしたので・・・・・。」

     シャンプーは真偽を確認すると一目散に走り出した。

   右京:「どこいくんやシャンプー!」

シャンプー:「その犬夜叉とか言うやつの向かた先に乱馬やムースもいるね!」

   右京:「ほんまかいな!?」

     右京もそれを聞くとシャンプーの後ろを追って走り出した。

  あかね:「かごめちゃん、私達も行きましょ。」

  かごめ:「う、うん。」

     右京に続いてあかねとかごめも後を追いかける。しかし、走っているうちに段々と三人からかごめが
     引き離されていくのが分かる。いくら破魔の矢が使えるとは言え、やはり普通の女子中学生が
     この三人に走ってついて行くのは困難もようである。

  あかね:「かごめちゃん大丈夫?」

  かごめ:「ま、まだ大丈夫・・・。それにしても・・・速すぎるわ・・・あの二人。
       もうあんなに小さく・・・あ、珊瑚ちゃん!」

     前方に走っているシャンプーと右京の後姿から少し左に目を向けると珊瑚が歩いているのが
     目に入ってきた。

   珊瑚:「かごめちゃんに・・・あかねちゃん!?」

  かごめ:「い、犬夜叉と弥勒様が向かった先がわかったの!」

   珊瑚:「本当!?で、どこに行ったの?」

  かごめ:「そ、その前に・・・雲母貸して。も、もう・・・走れない。」

   珊瑚:「あ、うん、分かった。おいで雲母!」

     雲母を呼び、変化させてかごめを背中に乗せる。その後、珊瑚は物陰で戦闘服に着替え、自分も雲母に
     またがりあかねと並走してシャンプーと右京の後を追う。

   珊瑚:「まさか、犬夜叉や法師様が向かった先にいるなんて・・・・・。」

  かごめ:「それよりも犬夜叉が心配だわ。弥勒様の言う事聞かないで勝手に行動してそうだし・・・。」

     雲母に乗った二人は心配そうに話をする。あかねはその二人とは別にただひたすら
     乱馬達の元へと走っている。そして、その犬夜叉と乱馬の行方はと言うと・・・・・。

  ムース:「なんじゃい、こんな所へ連れてきおって・・・・・おら達に一体何のようじゃ!?」

     かごめの心配は見事に的中した。乱馬達は犬夜叉と弥勒に連れられ、町から離れた草原にやって来た。

   弥勒:「犬夜叉、やはりこの者達は人間なのでは・・・。ひとまず、かごめさま達がくるのを待ってだな・・・。」

   七宝:「おらもそう思うぞ。かごめ達が来るのを待つ方が良い。」

  犬夜叉:「けっ、そんなに待ってられるかよ。やい、てめえら!怪我したくなかったら四魂のかけらを渡しな!」

     弥勒の言う事も聞かずに犬夜叉は、乱馬達に四魂のかけらを渡すように強く呼びかけた。

   良牙:「はぁ!?そんなもん持ってねえよ!」

  ムース:「そんな事でおら達をここに連れてきたのか。まったく・・・いい迷惑じゃ。」

   乱馬:「話はもうこれで終わりか?だったら、おれ達もう行くぜ。」

     そう乱馬達が告げて立ち去ろうと後ろを振り返った瞬間、犬夜叉が飛び掛ってきた。乱馬達はそれを
     突然の事だったがさっと素早く避け、犬夜叉の爪は地面を切り裂いた。

  犬夜叉:「なっ!?(おれの爪を避けやがっただと?)」

   乱馬:「おおっと!」

   良牙:「てめぇ!いきなり何しやがる!」

  ムース:「おら達は持っていないと言うのがまだ分からんのか!?」

     犬夜叉は避けられた驚きで驚愕の表情を浮かべ、乱馬達はいきなり攻撃を仕掛けられた事で
     怒りの表情を浮かべる。

  犬夜叉:「黙れ!こっちはてめぇらが持っているのは分かってんだよ!」

   良牙:「だから言ってんじゃねえか持ってねえって!分かんねえ野郎だな!」

  犬夜叉:「まだしらばっくれるつもりか!?そんだったら今度は本気で行くぜっ!!」

   弥勒:「待て、犬夜叉!!」

     犬夜叉はそう言うと弥勒の静止も聞かずに再度爪を立て乱馬達に飛び掛る。
     が、先程と同じように避けられ、地面を切り裂く。

   良牙:「スピードは避けられないスピードじゃねえが・・・・・。」

   乱馬:「ああ、力はとんでもねえ強さだ。こりゃ、一筋縄じゃいかねえな。」

  ムース:「ではどうするだ?あの坊主の格好したやつとも相手をせんとならん。」

     三人は犬夜叉の爪を避け、少し距離をおいて座り込み、どうやって戦うか作戦を立て始めた。

   乱馬:「・・・・・しょうがねえ、もう二度と使うまいと思ってたが・・・・・良牙、ムース、アレを使うっきゃねえ!」

   良牙:「なんだよ、アレって?」

  ムース:「分かるように説明するだ。」

   乱馬:「いいから、おれに続け。行くぜ!!」

     そう言って乱馬は犬夜叉に向かって行く。その後に良牙とムースも続いて行く。

   乱馬:「早乙女流奥義!!」

  犬夜叉:「なにっ!?」

     犬夜叉は奥義と聞いてとっさに防御の姿勢を構える

   乱馬:「敵前・・・・・。」


   乱馬:「大逆走!!」

     乱馬はそう叫びながら向きを180°急転換して、その場から駆け出していった。
     その思いもよらない行動に犬夜叉はもちろんの事、良牙やムース、さらには弥勒と七宝も
     呆然としてしまった。

  犬夜叉:「・・・・・・・・・・あ、あぁ?」

   良牙:「・・・・・ア、アレって・・・この事だったのか。」

  ムース:「・・・良牙、このままではまずい。とにかく乱馬に追いつくだ。」

   良牙:「お、おう。」

     良牙とムースは、犬夜叉が呆然としている隙に逃げ去っていった乱馬を追いかけていった。

   弥勒:「・・・・・今のは何だったんでしょうか?」

   七宝:「それもそうだが犬夜叉、追いかけなくても良いのか?」

  犬夜叉:「・・・・・っ!早くそれを言え!」

     七宝にそう言われて犬夜叉は乱馬らの後を急いで追いかけて行った。

   弥勒:「待ちなさい!ってまったく。・・・七宝、私も犬夜叉と共に連中を追いかけます。
       お前はかごめさま達にこの事を伝えてくれ。」

   七宝:「分かった。弥勒も犬夜叉の事を頼むぞ。」

     そう告げると七宝は、かごめ達を呼びに町へと駆けて行き、弥勒も犬夜叉を追いかけるべく走っていった。


       ――――あの野郎は、何なんだ一体?

     敵前大逆走で犬夜叉の意表を衝いて逃げてきた乱馬は凄い速さで草原を駆け抜けていた。

       ――――スピードは大した事ねえのに、あの地面を切り裂く程の力。しかもあの耳・・・・・妖怪か?

     そんな事を考えていると、乱馬は後ろから声が聞こえてくるのに気付き、後ろを振り向いた。
     すると、いるはずと思っていた二人の姿が、すぐ後ろではなく離れた後方に
     小さく追いかけてくるのが見えた。

   乱馬:「なんだあいつら、あんなに離れて?」

     かなり離れた位置にいたので、乱馬は二人が追いつく様に走る速度を少し落とした。しばらくすると、
     ようやく良牙とムースの顔が見える距離になった。だが、二人の表情には、怒りの感情が満ち満ちていた。

   良牙:「待ちやがれ乱馬ぁ!!」

  ムース:「おのれと言う奴は!!」

     追いつくや否や、良牙は蹴りを繰り出して、ムースは短刀を投げて、乱馬に襲い掛かった。乱馬は
     二人が襲い掛かってくるのに一瞬戸惑ったが難無く二人の攻撃をかわし、二人と距離を取り
     なんとかなだめようと試みる。

   乱馬:「な、何そんなに興奮してんだお前ら?落ち着けって。」

   良牙:「落ち着けだと!?貴様、おれ達を置いて一人で逃げたくせに良くもそんなことが言えるな!!」

   乱馬:「あ、あれには理由があってだな・・・・・。」

  ムース:「もはや言い訳無用じゃ!覚悟せい乱馬!!」

      良牙とムースの怒りはこれ以上ない程に達しており、怒りに身を任せるが如く乱馬に襲い掛かった。

   乱馬:「おい、こんな事してる場合じゃねえだろ!あの変な耳した野郎を・・・・・!」

   良牙:「貴様を叩きのめすほうが先だ!!」

      乱馬はなんとか二人を鎮めようと説得を図る。だが、二人はそんな事には耳もかたむけずに
      乱馬を叩きのめすべく執拗に追い掛け回す。

   乱馬:「どうしてもおとなしくしねえんだったら・・・力ずくでおとなしくさせてやるぜ!!」

      そんな事になっているとは知らずに犬夜叉と弥勒は敵前逃亡した乱馬たちを追っていた。

   弥勒:「なぁ犬夜叉。あの連中の姿を見てどう思った?私はどうも人間に見えてしょうがないのだが。」

  犬夜叉:「・・・たしかに人間離れした動きをしてるが、そんな感じはしてきた。でも、やつらは四魂のかけらを
       持ってやがる。かけらを奪うとなると、戦わないでってのは無理だろうぜ。」

   弥勒:「それは分かっている。だからせめて、鉄砕牙と爪は使うんじゃないぞ。」

  犬夜叉:「ああ、分かってる。それに・・・・・人間を手に掛けるは後味悪いしな。」

     『人間を殺すのは後味が悪い』その言葉を聞いて弥勒は無言で犬夜叉の顔を見た。
      犬夜叉も見られているのが気になってそわそわしている

  犬夜叉:「なに人の顔じろじろ見てんだよ。」

   弥勒:「・・・・・犬夜叉、お前本当に変わったなと思って。」

  犬夜叉:「はぁ、おめえ何言ってんだ?」

     いきなりそんな事を言われ、犬夜叉はわけがわからなくなった。

   弥勒:「いや、気にするな。それよりも連中にはまだ追いつかないのか?」

  犬夜叉:「そうだな、匂いはさっきより強くなってきた。もうそろそろ追いつくはず・・・・・って、あぁ!?」

     犬夜叉と弥勒は乱馬達に追いついた。しかし、目に映った姿は頭上で空中戦を繰り広げていた姿だった。

   弥勒:「仲間割れようだな・・・・・どうする犬夜叉?」

  犬夜叉:「どうするもこうするもねえ。やい、てめえら!さっさと四魂のかけらをこっちに渡しな!」

     が、乱馬は良牙とムースの攻撃をかわしながら応戦しており、良牙とムースも乱馬を叩きのめすことだけに
     集中しているので犬夜叉の声は一切届いていなかった。

   弥勒:「・・・聞いてもいないな。」

  犬夜叉:「っのやろぉ!少しは人の話を聞きやがれっ!」

     犬夜叉は無視された事に腹をたて、三人の前に飛び出した。

  犬夜叉:「てめえら!さっさとかけらを渡しな!さもないと怪我だけじゃすま・・・・・。」

   乱馬:「邪魔だ!どきなっ!」

     そこまで言いかけた犬夜叉だったが、乱馬に顔を踏まれそのまま背中から倒れた。
     さらに、立ち上がろうと腹ばいになって顔を上げたところ、今度は良牙とムースに
     後頭部を踏まれ顔面を思いっきり足場の枝にぶつけのびてしまった。

   弥勒:「はぁ~、何をやってるのやら・・・。とにかく、ここは連中を止めさせなければ・・・・・風穴!!」

     弥勒は乱馬達に向けて右手を構え、封印の数珠を外し風穴を開いた。

   乱馬:「なにっ!?」

   良牙:「な、なんだ!?」

  ムース:「す、吸い寄せられるだ!」

     弥勒は頃合いを見計らって、風穴を閉じた。吸い込まれていた勢いが止まり、
     乱馬達は地面に叩きつけられた。

   良牙:「いって~・・・。なんだったんだ今のは?」

  ムース:「あやつの右手に吸い込まれていたようじゃが・・・一体?」

     地面に叩きつけられた三人は、痛めた箇所をさすりながらゆっくり起き上がった。

   弥勒:「手荒な真似をして済まない。どこか打ち所の悪いところは無いか?」

     弥勒が近づいていくと三人はすぐさま態勢を立て直し、弥勒を牽制する。

   良牙:「貴様!一体なにしやがった!?」

   弥勒:「そう身構えなくとも別に危害は加えるつもりは無い。とにかく、話し合おうではないか。」

     弥勒はそう告げると危害を加えない姿勢として錫杖を地面に突き刺しその場に座り込んだ。

  ムース:「そう言って油断させておいて、さっきのやつが後ろから仕掛けてくるんじゃろ。その手には乗らんぞ。」

   良牙:「そうだぜ。さっきまでけんか腰だったのにおかしいじゃねえか。」

     良牙とムースは弥勒の事を犬夜叉の事もあってまったく信用しようとはしない。だが、そんな二人とは別に
     乱馬は弥勒の正面に座り込んだ。

   良牙:「おい正気か!?そいつも得体の知れない野郎なんだぞ。」

   乱馬:「でもよぉ、話しだけで済むんだったらそれに越した事はねえじゃねえか。勝てるか分からねえ
       勝負するよりはいくらかマシってモンだぜ。」

  ムース:「う~む、言われてみればそのように思えなくもないだ。」

   良牙:「確かに、無駄な体力を使わずに済むな。」

     良牙もムースも先程まで乱馬への怒りで燃えていたはずがいつの間にやらその怒りは消え去っていた。

   弥勒:「そうか、なら話は早い。とりあえず互いの素性が知りたいので、
       名前を教えてはくれないか?私は弥勒。」

   良牙:「ああ、おれは良牙、響良牙だ。」

  ムース:「おらはムースじゃ。」

   乱馬:「おれは早乙女乱馬だ。」

   弥勒:「・・・早乙女・・・乱馬?」

     弥勒は『早乙女乱馬』と聞いてとっさにあかねと右京の許婚である人物も『早乙女乱馬』
     と言う名前であったことを思い出した。実際、その人物は自分の目の前にいるのだけれども、
     まだその事を弥勒は知らない。

   乱馬:「ん?どうかしたか?」

   弥勒:「つかぬ事を聞くが、乱馬・・・・・で良いかな?」

   乱馬:「ああ、いいぜ。でなんだ?」

   弥勒:「それなんだが・・・・・許婚が二人いるな?」

     弥勒が乱馬に訪ねたその質門は、乱馬だけでは無く良牙とムースは困惑を余儀されなかった。

   乱馬:「っ!?な、何でそんな事知ってんだよ!?」

   弥勒:「やっぱりそうか・・・・・これから私が言う事をどうか落ち着いて聞いて欲しい。」

   良牙:「なんだよ・・・・・」

   弥勒:「驚くだろうが・・・。あかね様と右京様がこちらの世界に来ているんだ。」

乱馬・良牙:「・・・・・・・・・・なっ、なんだってぇ!?」

     『あかねが来ている』その言葉を聞いた乱馬と良牙はしばし思考が停止し、そして驚愕した。

     (第十話・完)


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