2007/05/29

テイラー展開

ここでは、冪級数展開、テイラー展開、マクローリン展開について説明します。

予備知識

まずは以下の項目を理解しておく必要があります。 これらは高校で学ぶ数学に含まれているので、ほとんどの人が予備知識を十分持っていると思います。

冪級数展開(ベキキュウスウテンカイ)

変数の正の整数乗の組み合わせで構成される式を、「多項式」という。
例えば、以下に示された式が多項式である。

一般化すると
で表す事ができる式のことである。

冪級数展開という方法を用いれば、あらゆる関数を多項式で近似する事ができる。
以下にその具体的なアルゴリズムを示す。

Step1:ある関数を多項式の無限和に置き換える

例えば、指数関数e^xを多項式で近似する方法を考える。
まず、以下のように式を立てる。

Step2:xに0を代入

ここで、xに0を代入すると、
となり、係数a_0が求まる。

Step3:式の両辺を微分する

次に、式の両辺を微分する。
ネイピア数を底とする指数関数の微分は、
となるので、左辺は変化しない。
よって、式の両辺を微分すると、
となる。

Step4以降:Step2とStep3を永久に繰り返す

その後は、Step2とStep3を延々と繰り返し行ない、各係数を求めていく。
とりあえず、あと2回ほど繰り返してみよう。

ここで、再びxに0を代入すると、

となるので、a_1が求まる。
このプロセスの繰り返しがベキ級数展開と呼ばれるものであるが、 解りやすく説明するため、最後にもう一度繰り返してみよう。

式の両辺を再び微分し、

となる。左辺は相変わらず変化しない。
xに0を代入し、
となるので、a_2は、
となる。
それぞれの係数a_nは、
となるので、指数関数e^xは以下のように多項式で近似出来る。
ただし、これは近似する関数が無限階微分可能であるという条件が必要である。

マクローリン展開

冪級数展開のアルゴリズムを一般化し、表現を変えると以下のような式になる。
この展開を、マクローリン展開と呼ぶ。
「微分してx=0を代入する」というプロセスを繰り返したため、x=0における近似ということになる。
上の式は厳密には特定の条件を満たさない限りは間違いになるのだが、特に気にする必要はない。詳しくは後の項で説明する。

テイラー展開

マクローリン展開はx=0近傍での近似であったが、x=0以外の点x=aでの近似はどうなるか。という疑問が湧く。
点x=a(aは実数,0も含んでよい)に於ける近似をテイラー展開といい、以下の式で近似可能である。
すなわち、テイラー展開とはマクローリン展開の一般的拡張であり、 マクローリン展開はベキ級数展開の一般的拡張である。

収束半径

マクローリン展開の項で、厳密には特定の条件を満たす必要があると述べた。
その条件とは、展開していく過程で出現する項が、0に収束するかどうかというものである。
展開の式から、nが増加すればx^nの係数a_nは単調に減少し、0に近付く必要が出てくる。
なぜならば、nが増加することによって、a_nが0に収束しないとき、近似すれば近似するほど値がブレるからである。
つまり、nが増加するときのa_nが0に収束しないというのは、 「近似の階数を増やせば増やすほど近似の精度が落ちる、もしくは精度が上がらない」、ということになってしまうので、
「a_nは0に収束しなければならない」という条件が必要になるのである。