Turing machine の停止問題
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Universal Turing Machine
文字列 x を判定する Turinging machine tm(x) があるとする。tm はプログラムなので、文字列である。tm をその文字列とする。tm が Turing machine として x を受け入れるかどうかを判定するTuring machine
utm(tm , x)を構成することができる。utm(tm,x) は引数を二つ持つが、tm+x と結合した単一の文字列だと思えば単一引数になる。
utm は interpreter だと思えば良い。tm, utm は、停止してT/Fを返すか、停止しないかである。
utm(tm,x) = 0 受け入れない 1 受け入れる ⊥ 止まらないutm の構成の詳細には立ち入らない。実際に utm を構成するのは良い演習になる。
tm に対応する文字列を tm とすると、tm 自体を tm の入力とすることができる。utm は、そのためだけに導入したので、もう使わない。
Turinng Machine の停止性の判定
halt(tm,x) は、以下のように定義される。これはまだ、Turing machine であるとは限らない。
halt(tm,x) = 0 tm(x) が止まらない (halt が停止しない) (1) halt(tm,x) = 1 tm(x) が止まる (2)halt(tm+x) 自体は ⊥ 、つまり停止しないことはないとする。こういう Turing machine があったらどうなるだろうか?
halt が tm ではあり得ないこの証明
halt の否定を考えよう。
neg(tm) = 1 halt(tm,tm) が0 (3) neg(tm) = ⊥ halt(tm,tm) が1 (4)つまり、halt(tm,tm) が1 の時、つまり、tm(tm) が停止する時には、neg(tm) は停止しない。neg 自体は halt があればtmとして簡単に作れる。
neg(neg) = 1かどうか調べよう。ここで 引数の neg は Turing machine neg を表す文字列である。
まず、neg(neg) =1 と仮定する。(3) から、
halt(neg,neg) が 0なことがわかる。つまり、neg(neg) は停止しない。neg(neg) = ⊥ 。これは最初の仮定 neg(neg)=1に矛盾する。
逆に、
neg(neg) = ⊥とすると、(4) から、
halt(neg,neg) = 1つまり、neg(neg) は止まる。つまり、neg(neg)=1。これも矛盾。
つまり、halt(tm,x) が⊥にならないようなものは存在しない。
つまり、Turinng machine が停止するかどうかを、必ず判定できる停止する Turing machine は存在しない。
証明の考察
ここで用いているのは、Turing machine の詳細ではなく、
Turing machine に対応する文字列 tm がある tm を入力として用いることができるということと、
tm が停止する、停止しない tm が停止して、1から0を返すという性質である。
neg(neg)は自分自身を参照しているので、自己参照と呼ばれる。
halt は、neg が Turing machine になるためには、Turing machine である必要がある。
tm(x) は停止するかしないかどちらかだから、halt(tm,x) という述語自体はある。
しかし、halt(neg,neg) は 0 か 1 かを決めることはできない。
これは述語を定義しても、それが0か1かを決めることができない場合があるということである。
これは、述語論理の不完全性定理に対応する。
この証明は自己参照を用いて矛盾を導く方法である。
対角線論法
0,1 からなる無限長の文字列を考えよう。これを順に拾っていく。どんな順序で拾っても、自然数の範囲では拾い切れないことをしまそう。拾った順に、文字列を並べる。
00000000000000000000000000100000.... 01000000000000000000000000001000.... 01100000000000000000000000000100.... 01110000000000000000000000000010.... 01111000000000000000000000000000.... 01111100000000000000000000000000.... 01011100000000000000000000000000.... ... ... ...行y列xの文字を v(x,y) とする。これは 0 か 1 である。上の文字列の対角線の要素は v(x,x) となる。以下の . が対角線要素になる。
.0000000000000000000000000100000.... 0.000000000000000000000000001000.... 01.00000000000000000000000000100.... 011.0000000000000000000000000010.... 0111.000000000000000000000000000.... 01111.00000000000000000000000000.... 010111.0000000000000000000000000.... ... ... ...1-v(x,x) を考えると、
1000001 ...となる。この文字列は、最初に拾った文字列のどれとも、v(x,x)のところで異なる。つまり拾った文字列とは異なる文字列が必ず存在する。
これは、順に取ってくるという方法では、無限長の文字列は尽くせないということを意味する。可算回と呼ぶ。
2^N
この無限長の文字列は、自然数Nから{0,1} の写像と考えられる。あるいは、自然数Nの部分集合に1、それ以外に0を割り振ったものである。これを 2^N と書く。
自然数の部分集合全体 自然数から{0,1}への写像の全体である。自然数に1対1対応する集合を可算集合という。これらの集合は可算集合ではないことが対角線論法からわかる。
この文字列の先頭に 0. を付けると、0から1 の実数を表す。実数の集合は可算集合でないことがわかる。
また、可算集合でなくても順序は持つこともわかる。実数などは非可算集合と呼ぶ。
対角線論法と Turing machine の対応
halt(tm,x) は、文字列 tm+x から、{0,1 } への写像を与える。文字列は、bit pattern と考えると、巨大な自然数となる。 tm であれば、文字列表現を持つ。つまり、halt は 入力 x に対して Turing machine を、その表現の自然数順に並べた時に、止まるものを1、そうでないものを0とする文字列を与える。
入力 x も文字列なので、halt(tm,x) は二次元の0,1のパターンになる。横軸が tm で、縦軸が x として、
00000000000000000000000000100000.... 01000000000000000000000000001000.... 01100000000000000000000000000100.... 01110000000000000000000000000010.... 01111000000000000000000000000000.... 01111100000000000000000000000000.... 01011100000000000000000000000000.... ... ... ...この文字列の表が halt(tm,x) を決めている。特性関数などと呼ばれる。
halt(x,x) は対角線要素になる。その否定を考えよう。
not(tm) = 1 halt(tm,tm) が0 (5) not(tm) = 0 halt(tm,tm) が1 (6)not(x) は、haltを入力順にした表の対角線要素を反転したものになる。(前の neg とは少し異なる)この文字列は、x 番目の入力文字列に対するnot(x)の値を示している。
対角線論法から、not(x) の文字列は、haltを特徴付ける可算個のパターンに含まれてない。
もし、halt(tm,x) の x に not(x) が含まれていれば、同じパターンが出てくるはずである。つまり、not(x) は、halt(tm,x) が判定できる範囲に含まれてないことがわかる。
対角線論法に対する考察
tm(x) を実行して停止すれば、それは判定できる。しかし、停止しないかどうかはわからない。実際に、わからない tm を構成することはできて、それが not(x) である。neg(neg) の議論は ⊥ を使っていたが、not(x) では、halt(tm,x) の特徴関数の入力に not(x) が含まれるかどうかに変わっている。
Turing machine が停止するかどうかではなく、論理の真か偽か限定しても同じ問題がある。ただし、入力に自分自身を記述できる能力がある論理の場合である。自然数を使って論理自体を記述することができるので、自然数論を論理が含んでいるかどうかが、決定不能問題を含んでいるかどうかの鍵となる。
さまざまな決定不能問題
多くの問題は Turing machine の停止性に帰着できる。
ディオファントス方程式 文脈依存文法 Automaton を含む方程式