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From: Hideaki Iwata 
Newsgroups: fj.soc.copyright
Subject: Re: 「貸してください」記事に関して
Date: Sat, 09 Sep 2000 23:34:48 +0900
Organization: WAKWAK Internet service
Lines: 272
Distribution: fj
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ひで@自宅、です。
今日は大阪は日本橋に遊びに行ってきました。主目的はコンピュータ関連
商品の市場調査(^_^;;)。
で、その帰り、難波のジュンク堂に行って来て、久しぶりに法律関連の本
棚に寄ってきました。
で見つけてきた本をちょっと紹介。多分、誰かが既に紹介されているとは
思いますが、一応。

「著作権法コンメンタール(上巻)」
金井 重彦,小倉 秀夫 編集/東京布井出版(株)刊
2000年3月31日初版第一版発行	定価6300円

上巻は1条から74条までで、残りは下巻なのでしょうが、下巻は本棚には
並んでいませんでした。誰かが買っていったのか、あるいはまだ出版され
ていないのか...って、小倉さんに聞けば一番確かか:-)執筆者どころか
編集者のお一人なんだから:-)

で、出来たらこの本を河野氏も買って欲しいなあ...
ちょっとお高いけど、河野氏の研究室の本棚に並んでて不思議でない本だ
と思うよ。

# でもちょっと高いよなあ...もう少し安くなってくれたら嬉しいんだけ
# ど:-)せめて上下巻でこの値段になって欲しい...

Shinji KONO wrote:
>  河野 真治@琉球大情報工学です。
>  
>  今までの経験からいって、引用抜きで自分の意見をまとめるのが自
>  分に取っても、他人に取っても良いらしいです。ここには、それが
>  できない人も多いようですけどね。人言うことを「そうじゃない」
>  とかしか言えない人とか... そういう人も、自分の言葉で、自分の
>  考えをまとめてみましょう。

で、世間でもそう考える人はいる訳で、上記の様な本が出版されてい
たりします。そういった書籍も参考資料としましょう。

>  で、いろんな見解があるわけですが、わりと一致した意見もあります。
>  以下では、僕が、一致を見た意見を列挙します。

あのー、日本語が変なんですけど。
「僕が、一致を見た意見を列挙します」の文の主語らしい文節は
「僕が」ですよね。で、その述語は何ですか?「列挙します」ですか?
ということは、「一致を見た」ってのは客観的事実だと考えているの
ですかね?
それとも「僕が」「一致を見たと考える」「意見を列挙する」なんで
すか?こっちなら本当にそれが「一致を見ている」か否かを議論する
余地は残ってくるんですが....

常識的に見て「自分の言葉で、自分の考えをまとめてみましょう」と
言った限りは、「僕が一致を見たと考える意見」を「列挙する」のが
正当だと思うんだけどなあ....

で、上記本(以降コンメンタールと称す)の365頁から378頁までに
30条の解説が記されています。残念ながら著者は桑野雄一郎氏ですが
(29条は小倉氏なんですけどね:-)、非常に丁寧かつ公平に記述され
ていますよ。

>      [D] この記事が教唆として刑事上問題になることもない。教唆では、
>      正犯が、実際に、特定の行為によって犯罪におよぶ具体的な手順が
>      要件となる。この記事では、そのような具体的な犯罪手引とは言え
>      ない。

「犯罪手引とは言えない」なんて同意はなかったと思うけどなあ...

>      [F] 私的使用とは、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限ら
>      れた範囲内において使用すること」である。この使用に、貸与が
>      含まれないという根拠はない。

同時に、「貸与」が含まれるという根拠もない、って書いておくべきで
すね。
ちなみにコンメンタールの368頁では

「家庭内において使用する」というのは複製を行った者の家族が使用すること

と述べてますね。
で、桑野氏自身は、別居中の父親に見せる目的でテレビ番組を録画する
行為は「家庭内」ではなく「それに準ずる限られた範囲内」に該当する
(だから両方とも著作者の権利は制限される)ことになろう、と書いて
ますから(368頁)、他人に見せるって行為も条文における「使用」に
含まれると考えていらっしゃるみたいですね。

注意して欲しいのは、ここで貸与って言葉を使うとややこしくなる点。
著作権法の定義に基づく貸与と、人間の生物としての限られた
コミュニティー内での「見せる」って行為を区別しようとする意図が
文章から読み取れるからです。

問題は、この考え方に対しても多少の異論がある訳で、せっかく緒論
併記を心掛けていらっしゃるのに、これでいいのかなあ、ってところ。
個人的には桑野氏のお考えに近いんだけど、せっかくだからもうちょっと
解説を加えていても良かったのではないでしょうかね?

>      [G] 私的使用のための複製の特定少数への貸与が著作権法上の頒布
>      と見なされると言う根拠はない。

最初に、著作権法の定義に従えば、「貸与」と「頒布」は異なった概念
として用いられています。
簡単に言うと、
「頒布」=「消尽なしの譲渡」+「貸与」
で、「映画の著作物」にのみ用いることができる権利ですね。

ただ、コンメンタールの342頁で小倉氏は、より詳しく説を分解し、それ
ぞれを併論されていますね。

# 個人的感想を言わせてもらえば、紹介という性質上仕方ないとはいえ、
# A2β説まで出てくると、ちょっと工夫したほうが良いのでは、っ気も
# しますが...:-)しかしながら、その文章は十分に客観的で読み手の
# 理解を深めるに十分なものであります。

映画の著作物以外の著作物には「譲渡権」ってのがあって、こっちは
敢えて言うなら「消尽つき譲渡権」というものですからね。同時に貸与権
も認めている。

まあ、個人的な主張としては、この映画の著作物の存在がただでさえ変な
我が国の著作権制度をさらに複雑にしている訳で、早急に解消したいと
思っているんですけどねえ...まあ、これは立法論で、現在の解釈論とは
直接結びつかないから置いといて...

でね、前提としてTV放送された番組は等しく映画の著作物である、って
のが必要だと思うんだけどなあ...Gが成り立つ為には。これは明記する
必要もない自明な「合意事項」なのかな?

あと、fjでの「貸し借り依頼を行う人間関係」が法の言う「特定」なの
か「不特定」なのかもこのNewsGroupで議論の対象となっていたはずなん
だけど。そういった人間関係を「特定少数」と勝手に決めるのは、合意
ではなく我儘ではないかな?

その上で、これに関してはコンメンタールによれば特殊な状況下ながら、
根拠はちゃんとあるそうですよ。369頁からちょっと長めの引用します。

−−− 引用始め −−−
それだけに、「その他これに準ずる限られた範囲内」の解釈いかんに
よっては、著作権者の利益が著しく害されるおそれもまる。したがって、
本要件は厳格に解釈されるべきであり、基本的には、あくまでも家庭に
準ずるものであるから、使用する範囲に属する者が特定かつ少数である
ことが必要であり、不特定または多数の者が使用することを目的とする
場合は「その他これに準ずる限られた範囲内」に該当しないというべき
である。
  これに関連して、企業内における内部的使用のための複製行為が問題
とされるが、この場合には「その他これに準ずる限られた範囲内」に該
当しないとするのが判例・学説である(東京地判昭和52年7月22日無民行
判集9巻2号534頁,加戸・前掲:筆者注、著作権法逐条講義のこと:181頁)。
−−− 引用終り −−−

どっちにしろ、Fで「貸与が含まれないという根拠」がない以上、Gが
成立合意として成立するはずもなく...:-)
ほんと、河野氏の頭の中って、自分に都合の良い様に構成されている
のね。

>      [I] 少数特定は、公衆とみなさないと言う根拠はない。が、私的使用の範囲内
>      を公衆とみなす根拠もない。

だから、これを議論する為には「少数」や「特定」の定義をきちんとしないと
駄目じゃないのか、って私がずっと言っていることなんだけど...
何をもって「少数」や「特定」とするのか、が明らかでないと、Iの議論をし
たって無意味じゃない?

コンメンタールでは、この点についても当然考察を加えています。

>      [J] 私的使用の範囲内で「親密さ」あるいは「家族同然」を要求する
>      根拠はない。

あります。著作権審議会報告をよく読むように。

>      [L] 複製権の侵害は、親告罪であり、著作権者側からの告訴がない限り、
>          刑事上、民事上、問題になることはない。しかし、形式的な違法で
>          ないとはいえない。告訴がないが違法であるなどと主張して、何かを
>          することはできない。

おいおい。訳判らんぞ。「しかし」「形式的な違法でないとはいえない」って
なんで逆説になるの。「しかし」じゃなくて「つまり」とか「従って」って
接続詞が適当でしょう?この文脈じゃあ。
日本語が変でも、何を言いたいのか、は判るけど、そんな合意はどこにもあ
りません。

>      [M] 今まで、私的使用のためのビデオの複製を(家族外あるいは、まっ
>          たくの他人に) 特定少数に数回、私的使用として貸与あるいは見せ
>          たことを、告訴した判例は存在しない。

「告訴した判例」って...:-)
日本語が無茶苦茶変。少しでも法律の勉強をした人は、こんな言い方が可笑しい
って判るはずなんだけどなあ...

# 「告訴がなされ、裁判が行われた例」じゃないかなあ...
# 民事なら、裁判が始まったって和解によって判決がなされなかった場合も
# ある訳だし。まあ、これも広義の裁判例ではあるけど...:-)

# すっごく不安になってきたんだけど、ひょっとすると河野氏って告訴と
# 判例の違いを認識していないんじゃないだろうか...ま、まさかねえ...

>      [O] 私的使用のための複製を営利に使用した場合に関する判例は存在する。

これは正確には違うでしょう?
被告側が「私的使用のための複製だった」と主張したのに対し、裁判所が
「被告の行為は私的使用と呼ぶことはできない」と認定した判例は存在する
訳ですが...

# って本気で河野氏は法律学の基礎的な用語の意味を正しく理解していない
# んじゃないだろうか。

>  で、次に僕の考えを述べます。

ほ!ってことは、やっぱりここまでは

「一致を見た」ってのは客観的事実だと考えている

訳ですね。ならばはっきり言わずがなるまい。
あなたが客観的だとする「一致点」は少しも客観的ではありません。
理由はここまでに書いてきた通り。法律学における用語の意味も正しく理解
できていないらし河野氏に、そもそも「客観的見解」をまとめる技量がない
ことをここに宣言します。

>      [0]
>      「貸してください」記事に対して、自分で録画した私的使用のための
>      複製であるビデオをを、見せたり、貸したりすることは、私的使用の
>      範囲内であり、問題はない。
>  
>  さらに、複製でなくオリジナルの場合には、そういう私的使用という制限も
>  ないので、
>  
>      [1]
>      「貸してください」記事に対して、市販のビデオなどを、見せたり、
>      貸したりすることは、問題はない。
>  
>  ってわけです。なので、
>  
>      [2]
>      「貸してください」記事自体が違法行為を誘発するってことは、まったく
>      ありません。
>  
>  ついでに、そんなことを言っている奴は馬鹿だとも思ってます。

ま、日本には無制限の思想の自由がありますからねぇ...
でも、それを文章として表現し、fjという公共の場に提示する時点で、表現の
自由って問題が発生し、こっちは無制限の自由が保証されてませんからね。
だから、「あなたの考えは間違っている」という批判が提出されることもまた、
至極当然の現象なのであります。

>  なんですが、
>  
>      [3]
>      fj で、私的使用のための複製を、有償貸与することを認めるのは、
>      僕は、頒布に近い
>  
>  と思うので、以下のような自主規制案を提案しています。

でさあ、「僕は思う」ってのを何段重ねても法律には対抗できませんぜ、
って何度も言っているはずなんだけど...

なぜ思うか、その合理的理由を論理的に示してこそ、論理として成立する
はずなんだけど...
ひょっとして、専門の研究もこんな風にやっているんですか?

以下は、何度言っても無駄だから反応しない。単なる「砂上の楼閣」に過ぎない
からね。

で、最後にもう一度お願い。上記コンメンタールを買って、まずは呼んで
見てください。あなたが「思っている」ことが現実とは掛け離れている現実を
目にすることでしょう。

あ、そうそう、コンメンタールのはしがきには次の下りがあります。

−−− 引用始め −−−
  本書について読者の皆様がお気付きの点は,H_Ogura@NetLaputa.ne.jp に
ご連絡いだだければ幸いである。
  皆様からのご指摘は,「著作権法コンメンタールサポートページ」
		http://www.ben.li/support
に反映させるとともに、改訂版を出版する際には、これを十分活用させていき
たいと思っている。
−−− 引用終り −−−

なかなかすばらしい精神ですよね。
河野さんもぜひ見習って欲しいなあ:-)
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