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From: Hideaki Iwata 
Newsgroups: fj.soc.copyright
Subject: Re: 1981年の審議会報告書について
Date: 12 Sep 2000 13:22:12 +0900
Organization: Center for Information Science, Wakayama University
Lines: 82
Message-ID: < m3ya0ydytn.fsf@dolphin.eco.wakayama-u.ac.jp> 
References: < 39BCC61B.53851AD4@nifty.com>  < 23656.968678302@rananim.ie.u-ryukyu.ac.jp>  < 39BD0A6C.14F1D516@nifty.com> 
NNTP-Posting-Host: dolphin.eco.wakayama-u.ac.jp
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Xref: ie.u-ryukyu.ac.jp fj.soc.copyright:11754


ひで@和大、です。

"H.Tanaka"  writes:
>  第30条による複製物の譲渡・貸与を一切認めない説を前提としています。
>  この前提によれば、使用する際に複製実施者の立会いが必要になるのでは
>  ないでしょうか。でないと譲渡あるいは貸与がからむことになると思います。

ちょっと待って下さいよ。
まず第一に押えておかないといけないことは次の通りです。


第二十六条 (上映権及び頒布権)
   著作者は、その映画の著作物を公に上映し、又はその複製
   物により頒布する権利を専有する。
   2 著作者は、映画の著作物において複製されているその著
   作物を公に上映し、又は当該映画の著作物の複製物により
   頒布する権利を専有する。
 
第二十六条の二 (貸与権)
   著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)をその複製
   物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、
   当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆に提
   供する権利を専有する。

つまり、頒布権(の一部)や貸与権は「貸与により公衆に提供
する権利」と定められています。

頒布ってのは「有償であるか又は無償であるかを問わず、複製
物を公衆に譲渡し、又は貸与することをいい、映画の著作物又
は映画の著作物において複製されている著作物にあつては、こ
れらの著作物を公衆に提示することを目的として当該映画の著
作物の複製物を譲渡し、又は貸与することを含むものとする」
ですからね(2条より)。

それに対し複製権は

第二十一条(複製権)
   著作者は、その著作物を複製する権利を専有する

ですから、公衆云々は関係ない。如何なる形態であろうが、
複製する行為は等しく著作者の専有となる訳です。その上で、
30条という「私的使用目的の為の複製の場合は著作者の権利
を制限しようよ」という思想が成り立っています。

Message-ID: < 39BCB3F4.F5C866F2@af.wakwak.com> で引用した
報告書の記述をもう一度引用します。

-----------------------
 そこで、以上の趣旨を踏まえ、改めて法第30条の解釈を説明することとする。
 まず第一に、複製できる者(複製主体)については、「使用する者が複製する
ことができる」と規定し、複製主体を使用者本人に限定している。もっとも家庭
内においては、例えば、親の言い付けに従ってその子が複製する場合のように、
その複製行為が実質的には本人(親)の手足としてなされているときは、当該使
用する者(親)による複製として評価することができる。しかしながら、いわゆ
る音のコピー業者のような複製を業とする者に依頼する複製は、この要件に該当
しないものと解する。

その上で私は、

>  この記述で注目すべきは、家庭内準拠の範囲は別にして、その範囲内で著作物
>  を融通しあう行為(敢えて貸与とは書かない)は、30条における「使用」に含
>  まれている、と判断している点です。

と記載しています。これは、先に紹介した著作権法コンメンタール
における30条の解説とほぼ同じであり、また、審議会報告にも合致
します。

つまり、昭和56年の報告書から次の様に私は判断しました。

前提:
「家庭内及びそれに準ずる範囲(家庭内準拠の範囲)」の議論を棚上
げする

本題:
家庭内準拠の範囲内においては、録音・録画した複製物を融通し合う
ことにより相互に影像や音楽を視聴する行為は、30条における権利の
制限に合致し、著作者の権利を侵害することはない。

この解釈に何か不都合はあるでしょうか?

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