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From: Hideaki Iwata 
Newsgroups: fj.soc.copyright
Subject: Re: fj 社会での公正
Date: 12 Sep 2000 16:59:55 +0900
Organization: Center for Information Science, Wakayama University
Lines: 114
Distribution: fj
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ひで@和大、です。

seo@atlas.rc.m-kagaku.co.jp (Yuzo SEO) writes:
>  このスレッドで(前回の同様な議論でも)、上の命題は真ということで議論が
>  進められていますが、これは本当に正しいのでしょうか?

多分、私が上記命題を真として議論を進めていないことは御承知
して下さっていると思いますが....

>  どなたか、このような場合も、特定少数とみなすという(あるいは不特定多数
>  とみなすという)、明確な論理、前例などをご存知ではありませんでしょうか。

前例ってのは、多分、ないと思いますよ。裁判例がなさそうですか
らね。その事実を確認した上で一応、私なりの「明確な理論」を提
示しておきます。

第一の根拠は昭和51年9月に文化庁に対し答申された
「著作権審議会第4小委員会(複写複製関係)報告書」
より見い出せます。

------------------------------------------------
 著作権制度は、第一義的には著作者等の権利の保護を目的とするも
のであるが、併せて社会における著作物の利用が円滑に行われるよう
配慮し、それにより文化の一層の普及と発展に寄与しようとするもの
である。この点に関し、現行著作権法は、その第1条にその目的を掲
げ、「この法律は、著作物………に関し著作者の権利……を定め、こ
れらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護
を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする。」としてい
る。この「公正な利用」の具体的な措置の一つとして、著作権の制限、
すなわち、著作権の内容が一定の場合に一定の条件の下において制限
されることが定められているが、著作権の制限は、著作物の利用の面
からは「公正利用」又は「自由利用」(Fair use, Fairdealing)と
いわれている。どのような範囲や態様における利用をもって「公正利
用」であると考えるべきかは、経済、社会、文化の発展段階に応じて
変化していくものであろうが、いずれの場合においても、その根底に
は著作権者の利益を不当に害するような利用であってはならないとい
う認識が存在するものである。従って、法第30条をはじめとする著作
権の制限規定は、本来認められるべき著作権を制限するものであると
いう条文の性格上、厳格に解釈されなければならない。
(中略)
 第1に使用の目的であるが、個人的な立場において又は私的な場であ
る家庭内若しくはこれと同一視し得る閉鎖的な範囲(例えば親密な少数
の友人間)内において使用するための著作物の複製(Personal use又は
Domestic useのための複製)を許容したものであり、例えば、企業その
他の団体内において従業員が業務上利用するため著作物を複製する場合
には、仮に従業員のみが利用する場合であっても、許容されるものでは
ない。言い換えれば、その個人が何らかの組織の一員としてその組織の
目的を遂行する過程において複製する場合は、本条に該当しないものと
考えられる。私的な領域のものであるか公的な領域のものであるかを明
確に区分することが困難な場合もあるが、一般に複製する者が所属する
組織の業務にかかわる場合は、私的な領域における複製に該当しないも
のと理解すべきであろう

また、同報告書を受けて昭和56年6月に文化庁に答申された
「著作権審議会第5小委員会(録音 録画関係)報告書」
では次の様に述べられています。

------------------------------------------------
 第三に、使用目的は、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限ら
れた範囲内において使用することを目的」とする場合でなければならな
い。個人の娯楽や学習などのために録音したり、家族で楽しむために録
画したりする場合などが典型例である。また「これに準ずる限られた範
囲内」とは、人数的には家庭内に準ずることから通常は4〜5人程度であ
り、かつ、その者間の関係は家庭内に準ずる親密かつ閉鎖的な関係を有
することが必要とされる。したがって、例えば、親密な特定少数の友人
間、小研究グループなどについては、この限られた範囲内と考えられる
が、少人数のグループであってもその構成員の変更が自由であるときに
は、その範囲内とはいえないものと考える。

以上は、我が国政府における審議会制度に則って報告された
文書であり(審議会制度の根幹は国家行政組織法の第8条)、
その決定なり報告が何らかの法的強制力を有することはないが、
しかしながら政府による国会への法案提出に多大な影響を与え
ていることもまた、事実である。
昭和56年報告書は、最終的には著作権制度改正の指針を示すこ
となく報告を終えたが、平成3年12月に答申された著作権審議
会第10小委員会(私的録音・録画関係)報告書は、昭和56年
報告書での議論を踏まえた上で、私的録音録画補償金制度の
設置を提案している。また、平成4年には同答申を受け、30条
2項の新設を含む著作権法改正案が政府より国会に提出され、
議論の末、可決成立している。

平成3年報告書では、昭和56年報告書の内容を否定する記述は
なく、むしろ、昭和56年当時は時期尚早との反対意見が存在
することから見送られた私的録音録画補償金制度の導入を強く
政府に求めている点からみても、30条に対する上記の解説を
容認していると判断できる。

以上より、少なくとも立法府並びに行政府においては、
「法第30条をはじめとする著作権の制限規定は、本来認められ
るべき著作権を制限するものであるという条文の性格上、厳格
に解釈されなければなら」ず、「これに準ずる限られた範囲内」
とは、「人数的には家庭内に準ずることから通常は4〜5人程度
であり、かつ、その者間の関係は家庭内に準ずる親密かつ閉鎖
的な関係を有することが必要」であるとの認識に達していると
判断するのが妥当である。

# 注目すべきは、人数は通常4,5名 and 親密かつ閉鎖的な関係、
# と二重の制約を求めている。orではない点に注意

その上で、瀬尾氏が提起している「fjで知り合ったばかりの
二人が30条における家庭内に準ずる範囲と呼べるか?」という
命題に対しては、「知り合った」という点から「家庭内に準ず
る親密かつ閉鎖的な関係」を見い出すことは常識的に見て不可
能である。

よって、「fjで知り合ったばかりの二人」は30条における「家
庭内に準ずる範囲」とは呼べない、と判断するに至っている。

いかがでしょうか?

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