No. 847/1090 Index Prev Next
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From: Hideaki Iwata 
Newsgroups: fj.soc.copyright
Subject: Re: 30条と49条 (
	罰則関係)
Date: Wed, 20 Sep 2000 00:37:47 +0900
Organization: WAKWAK Internet service
Lines: 147
Distribution: fj
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ひで@自宅、です。

Richter ABC wrote:
>  
>  こんにちは。
>  おひさしぶりです。

>  この点は、上記の記載から報告書がそのような法律解釈に立っているとまでは
>  言えないと思います。

いや、その、報告書は間違いなくそう述べています。
http://www.cric.or.jp/houkoku/s56_6.html より
-----------------------
 法第30条の許容範囲を超える録音・録画問題を考えるにあたっては、次のように
三つの類型に分けることが重要であると思われる。

1)そもそも法第30条の許容範囲を超える録音・録画の場合(例えば、使用目的とし
  ては営利目的、業務上使用するため、多数の者の間で使用するためなど、複製手段
  としては、他人の機器を使用するときなど、複製主体については第三者に複製を委
  託するように主体が使用者でないときなど)

2)法第30条の許容範囲内での録音・録画によって作成された物を事後に私的使用の
  目的以外の目的に使用する場合( 3)の場合を除く。)(例えば、個人使用のため
  に録音したテープを事後に事業のために使用したり、第三者へ貸与したりするなど)

3)2)と同様の場合であるが、その録音・録画が他の著作権の制限規定に該当すると
  評価できる場合(例えば、教員が自己の私的使用のために作成した録音物・録画物を、
  自己が担任するクラスの授業において使用するときなど)

 以上のうち、1)及び2)の場合には著作権者等の権利が及ぶこととなり、著作権者等
の許諾を得ずに行われるときには著作権等の侵害(違法)となるが、3)の場合には、
制限規定によって著作権等が制限されるので、著作権等侵害の問題は生じないところか
ら、両者を区別して論ずることが適切である。
-----------------------
カット&ペーストしただけだから、一字一句違っていないはずです。
これのどこを見て「そうではない」とおっしゃるのでしょうか?

「事後に私的使用目的以外の目的に使用する場合」は「著作権者等の許諾を得ずに行わ
れるときには著作権等の侵害(違法)となる」と明言しています。

>  また、仮に、そのような立場に立っているとしても、法律論の場面では、一つ
>  の見解に過ぎず、しかも、報告書には理由が付されていないので、評価のしよ
>  うがありません。

確かに、一つの見解である、という点は間違いないでしょう。学説の一つ、と言っても
過言ではありません。故に先の私の記事でも「著作権審議会報告書の見解に従えば」と
いう類の断り書きを何度かしているはずです。

問題は、その学説を通説とするか?という点にあるのでしょう。
これは著作権法の解釈論からはずれ、一種の政治論、立法論の登場をも願わねばなりま
せん。

>  なお、判決において上記報告書の該当部分が30条の解釈の根拠とされること
>  は100パーセントないと思います。

失礼な言い方かも知れませんが、「理由が付けられていないので、100%ないと思
います、って記述を評価のしようがありません」(^_^;;)

既に別の記事で述べたことですが、私がこの見解を「通説」とみなす理由は以下の
通りです。

1、昭和56年6月の著作権審議会報告では、今日では私的録音・録画補償金制度と呼
  ばれている制度の導入の是非について議論している。結果として、同制度の導入は
  時期尚早であり、更なる議論による国民理解の形成、及び国際的コンセンサスの形
  成が必要である、と述べるに止まっている。
2、平成3年12月に答申された「著作権審議会第10小委員会(私的録音・録画関係)
  報告書」(http://www.cric.or.jp/houkoku/h3_12.html)では上記報告書の内容を
  受け、私的録音・録画補償金制度の導入を提言している。その際、上記報告書が示
  した「30条(当時)の法解釈」に対しては、特に異論は述べられていない。逆に、
  同解釈論に立脚した形で、制度の導入を強力に答申している。
3、平成3年報告書を受け、文化庁では同制度の導入を含めた著作権法の改正案を作
  成し、国会に提出している。
4、国会の議論を経て、平成4年には同制度を含む著作権法の一部を改正する法律が
  施行されている(30条2項の新設等)。

国会での審議内容についてまで、私の調査は進んでいませんが、以上の経過を見る
限り、行政及び立法の場では、先の解釈論が妥当との判断を受けているとみなすこと
ができると考えられる、ってのが私の考えです。

# 国会審議の中で、上記解釈論を否定する結論が出されている可能性はありますが、
# そういった資料が提示されない限り、上記見方は妥当だとみなしています。

以上の状況から、「判決において上記報告書の該当部分が30条の解釈の根拠とされ
ることは100パーセントない」とは言い切れないと断言します。

# 確率がどれぐらいか?ってのは判りませんが、100%ない、とは言えないことは
# 証明できると考えます。

あとは、上記解釈論の妥当性って議論になるんでしょうね。
実際、法律学におけるより高次の視点から見て、上記解釈論がどの程度妥当なのか?
は判断しかねます。
しかし、著作権審議会第5小委員会(録音・録画関係)のメンバーは

(主査)
池 原 季 雄    上智大学教授・東京大学名誉教授

(委員)
黒 川 徳太郎    前日本放送協会著作権部主査
斎 藤   博    新潟大学教授
田 中 達 雄    通商産業省機械産業情報産業局電子機器電機課長(54.7.16〜)
(小林久雄 同前電子機器電機課長52.10.4〜54.7.15)
竹 内 年 雪    (株)松下電器産業 東京支社 業務部長
月 洞   譲    元東京都立西高等学校長
行 方 正 一    前(社)日本レコード協会専務理事
野 田 康 正    (株)日本ビクター 特販・輸出部長
野 村 義 男    著作権法学会理事
林   修 三    元内閣法制局長官・前行政監理委員会委員
半 田 正 夫    青山学院大学教授
久 松 保 夫    (社)日本芸能実演家団体協議会専務理事
松 井 正 道    弁護士
松 下 直 子    全国地域婦人団体連絡協議会事務局次長
満 間   猛    (株)ソニー 業務部長(54.7.16〜)
(森 義雄 同前広報室室長52.10.4〜54.7.15)
森 田 正 典    前(社)日本音楽著作権協会常務理事
谷 井 精之助    (社)日本民間放送連盟著作権部長

となっております。半田先生も名を連ねていらっしゃる訳ですから、それほど無
茶苦茶な説であるとは、私には考えられません。

>  しかし、既に別の投稿で述べましたように、30条により適法に行われた複製
>  行為が後に遡って違法とされることは、特別の規定又は複製の許諾行為が詐欺
>  を理由として後に取り消された場合(民法96条)といった他の要件がない限
>  り有り得ません。
>  
>  上の考えに異論を述べる法律専門家はいないと思います。

上記報告書の作成に関わった学者は最低でも3名、著作権法学会関係者1名、
弁護士1名、内閣法制局長官経験者1名となっていますよ:-)
彼らは「法律専門家」ではない、との判断でしょうか?
彼らが答申した報告書では、貴殿が「有り得ない」と言っている状況を「30条の
解釈」として示しています。これは純然とした「事実」です。まずはその事実を
受け入れた上で、同報告書の内容が間違っている、との論を張られた方がよろしい
かと考えます。

私論:
私がこういった審議会の委員になることはまずありえないと思いますが、仮に
なったとしましょう(将来は、地域のちょっとした委員会:県や市町村が召集
する懇談会:のメンバーになる可能性は十分あります:-)。その際、己が専門
とする学問分野において到底納得できない文面が報告書に含まれているとする
のならば、学者の良心の問題として、私は同報告書の答申に断固反対するで
しょう。また、その反対にも関わらず答申が決定したのならば、己の学問的威信
に掛けて、同委員を辞職するはずです。それが「学者」であり専門家だと私は信
じています。

大体、審議会の委員なんて委託されているだけなんだから、辞任はいつでも可
能でしょう?委員としての責任の取り方の一つに、辞任ってのは常に存在する
と考えますが...
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