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From: Hideaki Iwata 
Newsgroups: fj.soc.copyright
Subject: Re: Re: 「貸してください」記事に関して
Date: 21 Sep 2000 16:35:40 +0900
Organization: Center for Information Science, Wakayama University
Lines: 100
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ひで@和大、です。

"ISHIBASHI"  writes:

>  以下、法的に私が間違った説明をしている場合は、ご指摘のほどよ
>  ろしくお願い致します。

指摘できるほどの能力はありませんが、解説書及び六法を片手に...

>  民事訴訟においては「利益無ければ訴権無し」という原則がありま
>  して、裁判の結果によって何の利益も得られないのに告訴した場合
>  は、その告訴は却下されます。でも、ここで言う「利益」は、金銭
>  的な利益に限定されているわけではありません。著作権者は著作権
>  (無体財産権)を有しており、その財産権の侵害を止めさせること
>  は、差止請求権(112条)として認められております。しかも、
>  差止請求権と損害賠償請求権(民法709条)は別個に規定されて
>  いますから、損害が全く無い場合は損害賠償を請求できないけれど
>  も、将来の損害の有無にかかわらず差止を請求することはできる、
>  と私は理解しています。

おっしゃる通りなんです。が、しかし、民法709条が定める「不法行
為の要件」では「故意又は過失」となってますが、こと著作権に
限って言えば、113条の2ってのがありますので、善意者による譲渡
権の侵害に関しては、条件さえ整えば権利侵害行為とは認めないと
みなすケースもあります。
つまり、もともと不法行為ではなかったから、民法の709条を適用で
きない、と。

# なんか矛盾している気もするけど、「みなし条項」ってもともと
# こういったもんだから....:-)

>  なお、このような場合の差止は、権利の濫用(民法1条3項)に
>  当たる、と考えられる方が、もしかしたらおられるかもしれませ
>  んが…

ま、これは別途の議論ですよね。不法行為か否か、ってこととは別
の議論ですから。訴えられることはないから不法行為をやっても大
丈夫、って社会には住みたくありません。私は:-)

# それなら、法律を改正して不法行為を不法行為ではない状態に
# してしまえばいい訳で。

ついでに言うと、刑事上とは別個に、民法では719条で「共同不法行
為者の責任」に言及しています。その2項では

「教唆者及びホウ助者は之を共同行為者とみなす」

と定めています。つまり、貸与を依頼する記事を書いた行為が民事上
の「教唆」と判断されたら、共同行為者として709条に基づく損害賠
償請求を求められる可能性が出てきます。716条の「注文者の責任」
ってのも関わってくる可能性あり:-)

>  差止請求権(112条)は、損害が生じる可能性が有る行為をあら
>  かじめ有効に防止する為の規定です。著作権のような無体財産権の
>  場合特にこの予防的措置の必要性が高いことは、形の無い「無体」
>  の財産権であることから理解して頂けると思います。「あなたがそ
>  れをやっても私は全然損しない」という点は、将来的な損害の可能
>  性も含めると、通常の有体物の財産と比較して、無体財産権の場合
>  は極めて判断し難い類のものです。したがって、差止請求権(11
>  2条)を、著作権の侵害に対する民事上の救済措置として特別に設
>  けたことは至極妥当です。

民法上は「それが可能ならば現状の回復を請求する権利」ってのも認
められているってのが通説ですから、予防って概念と権利を侵害した
状態を元に戻す、って概念を合わせて112条になっている、って説明
してもいいかも知れません。

# 死んだ人間を生き返らせろ、って請求はできないけど(金銭で解決
# する以外にない)、隣が自分の土地に食い込んで私道を作った場合
# は、元の状態に戻せって請求は可能。金銭はいらない、って言って
# も良い。

現状を回復することが可能な状況ならば、金銭で賠償するだけで済む
ってもんでもない。可能ならば元の状態に戻すってのも、不法行為を
行なった側の責任。場合によっては、再発を防止する責務を相手に
求めてもいい。

>  あと、「私は全然損しない」場合にも差止を認めることの不合理で
>  すが、この点は、「私は全然損しない」という確信を持っている著
>  作権者は、当然、告訴しないであろうことが法上の前提にされてい
>  ると考えます。

なんで、「損はしてないけど侵害していない状態に戻せ」=「侵害
状態が生じない状態にしろ」って言い分も成立する余地があるはず
です。

隣の家の木の枝がうちの敷地内に入り込んでいる。
「損害を受けているから賠償しろ」って隣を被告として訴えることも
可能だろうし、「邪魔だからこっちの敷地に入っている部分の枝を
切ってくれ」と請求することも可能。
もちろん、実際に損害が発生していたら、「今までの損害を賠償した
上で、再発を防止する為に枝を切れ」って請求しても良い。

「今までの損害分と将来に発生すると考えられる損害分を支払うから、
枝の件は容認してくれ」って被告側が提案し、原告が受け入れたなら、
枝はそのまま、って可能性もある。

この辺が、民事と刑事の違いでしょうね。

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