No. 866/1090 Index Prev Next
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From: Hideaki Iwata
Newsgroups: fj.soc.copyright
Subject: Re: 30条と49条 (
罰則関係)
Date: Thu, 21 Sep 2000 22:47:55 +0900
Organization: WAKWAK Internet service
Lines: 176
Distribution: fj
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ひで@自宅、です。
まず、先の「上司」ってのは30条との絡みで出てきたのではない、という
部分は了解しました。私の誤解が原因だったみたいです。
その部分は取り下げた上で...
Richter ABC wrote:
> 30条1項は、複製権の制限規定であり、複製行為の適法要件を規定した条項
> です。
> そのことは、「複製することができる。」としている条文の文言から明らかで
> す。
はい、そうです。
その際、複製権を制限する条件として三つ上げています。
その中には
「私的使用を目的とする場合に限り」
という一項が存在します。結局、この項目に対する理解の問題でしょう。
> 30条1項は、貸与行為が適法かどうかについては、なんら規定してません。
> 貸与の適法要件を規定するのであれば、「貸与することができる。」と規定し
> ます。
その点について私は反論していません。
> そうでなければ、どうしてわざわざ、貸与権(26条の3)などを規定を新し
> く設ける必要があるのでしょうか。
今、貸与権は関係ありませんよね。
「私的使用を目的とする場合に限り」著作者の承諾を得ないで複製を許され
た著作物(以下、複製著作物)を、「私的使用の目的以外に」用いることが
できるか?が議論の焦点ですよね。
> 貸与行為が複製権との関係で違法となる場合を規定しているのは49条です。
> それと、113条もそうですね。
私の主張は、複製著作物を私的使用の目的以外に使用することは、30条が認
めた権利の制限条件に反するため、同行為に及んだ場合は、不法行為(権利
侵害行為)に当たる、です。先に紹介した、昭和56年審議会報告も同様の論
理を提示しています。
> 30条が貸与行為の適法性の要件を規定しているというのであれば、
> 上記のようにその文言が「複製することができる。」として複製要件しか記載
> していない以上、そのように主張する者がその法的根拠を論理的に説明すべき
> です。(もし、私にそのようにして見ろといわれれば、一応、法理論らしい説
> 明はできますが、著作権法全体を見た場合には、どうしても無理だと思ってい
> ます。なお、私は、職業柄、常に自説に反対の立場から自説を検討しています。)
貸与行為を含む全ての行為に対し、著作者に無許可で「私的使用」以外に使用し
ても良い、とは30条は一切述べていない。この点は理解してくれますよね。
佐々木さん風に言えば、「いいとも悪いとも書かれていない以上、法はどちらとも
定めていない。だから、使用してもいい、って論も成立すれば、使用しては駄目、
って論も成立する。」ですよね。30条に限定して言えば。
その点を理解した上で、この問題に言及している唯一の文書として昭和56年報告
書を提示し、それをもって「通説」と主張しています。
ABC氏が唱える説も成立する余地は十分にあると考えますし、また、非常に有力
なのかも知れない、と考えています。しかしながら、審議会報告書という形で文
書が存在する以上、「通説」はこちらである、と主張しているだけです。
ABC氏は、審議会報告が示す解釈論は成立する余地は限りなく0に近い、ってお
立場ですよね。残念ながら、そういった立場は私は許容することはできません。
# 国会審議の過程等で、上記報告書の記述を否定するような政府答弁があるの
# ならば話は別ですけど。仮にそういった資料をご存知なら、ぜひお教えくださ
# い。
> 私は、「家庭内に準ずる範囲内」にない例とするために「上司」という例を出
> しているのです。
繰り返しますが、この点については了解しました。
私が誤解していた様です。謹んでお詫び申し上げます。
> 「本来著作者が専有する複製権」という部分が異なるのです。
> そうではなく、価値中立的に法は切り分けているというのが私の意見です。そ
> して、私が読む限り、どの基本書もそうです。
コンメンタールの366頁には
----------------------------
著作権者は、その著作物を著作権法所定の方法で利用する排他的権利を
有している。したがって、第三者がこれを利用するためには著作権者か
ら使用許諾を受けるのが原則である。30条から49条はその例外、すなわ
ち著作権が制限される場合について定めたものである。
って書かれてますね。この文章をどう理解するのか、って問題なのかも
知れませんが、複製権は著作権者の排他的権利であるが、30条に示され
た要件に合致する場合は、著作権者の許諾なしに複製権を行使できる、
と解釈するのが妥当ではありませんか?
で、30条に示された「私的使用を目的とする場合に」って表現の解釈が
私(昭和56年著作権審議会報告)とABC氏とで異なっている、って話では
ありませんか?
> 例えば、半田正夫先生の「著作権法概説」第1版は、52頁で次のように述べ
> ています。
(中略)
> 私は、立法政策として採用された結論を条文の文言に従い、かつ、法論理に従
> って忠実に述べているだけです。
法論理に従えば、30条では複製著作物(30条の三条件に則って適法に複製さ
れた著作物)を使用目的以外に使用する行為に対し、良いとも悪いとも述べ
ていない、ってのが現実ではありませんか?
その上で、49条は公衆に提示あるいは頒布した場合は、頒布者が複製を行った
とみなすと定めているから、著作権者に無断で頒布等をすると、複製権侵害に
当たるだけ。
30条が言う「使用」は、私が従来から「融通(貸与や譲渡)」と称している状
態以外に、翻訳や翻案、改変やデータベース化等の行為も含んでいますよね。
私はこれらを含め、30条では私的使用目的以外の使用については言及していな
い、という認識に立っています。
繰り返しますが、その認識に立った上で、この問題に言及しているのは著作権
審議会の報告書のみであり、その説を否定する解説書の記述もみつけることが
できないでいる。また、審議会報告自身には法的拘束力はないが、その後の政
治的状況を鑑みると、報告書が提示している論が「通説」であると判断してよ
い、と主張しています。
> 一時的に感情的になって批判されているのではないかと思いますが、私が述べ
> ていることが法律の解釈論でないと本気でお考えですか?
>
> なお、私は、匿名を用いてはいますが、公正な法律論を展開しているつもりで
> す。そして、冷静に判断される読者は、そのように理解して下さると思います。
うーん、まあ、私に誤解があったことは割り引いてもらうとして、審議会報告が
提示している説が100%近く成立する余地はない、って主張には断固異議を唱え
ます。理由はこれまで述べた通り。
30条はABC氏が言う説を肯定も否定もしていない。
同時に、30条は審議会報告が唱える説を否定も肯定もしていない。
この部分まで「後退」なさる意思はありますか?
ないとするなら、話は永遠に噛み合うことはなさそうです。
審議会報告が唱える説が法理論としては不当である、と論理的に述べた公文書
(解説書の記述でも可)の存在が示されない限り、同説の存在可能性を否定す
ることは私には出来ません。
# 同説が通説かどうか、って部分なら争うことはできると思いますけど。
# それでも多分、永遠に平行線、って気がしますが、それは主義主張の違いだ、
# って部分で決着つくかも知れません。
弁護士の中にも、「死刑制度は憲法違反である」と訴えつづけている人がいる訳
ですよね。実際問題としては、最高裁判所は現行の死刑制度は合憲であると判断
しつづけており、かつ、実際に死刑を確定させ続けているにも関わらず。死刑制
度を廃止するには、死刑制度廃止法を国会で可決・成立せしめれば良いだけですが、
直近の世論調査では死刑制度の存続を国民の73%が望んでいる現状からみれば、
立法化は困難。だからこそ、死刑制度は違憲だ、って主張しつづけているわけで
すよね。弁護士ともあろう方々が。
# 通説では違法でないことを百も承知の人達のはずなのに。
それは単なる主義の違いだ、ってことで決着つく話ですから。また、現行制度に対
する議論は常に行いつづけなきゃあいけないし、法なんてのは人間が作ったもので
あって普遍である訳ないんだから、社会状況の変化に応じて改正していけば良いだ
け。
ただ、30条はあくまでも「著作者の権利を制限する要件」を述べているに過ぎず、
同要件に合致して複製された著作物の事後の使用にまでは一切言及していない、
だからいいとも悪いとも30条からだけは判断できない、という部分に対し、異議を
唱えるってのは納得できない。
その上で、言及していない以上私的使用以外に使用する場合は他の制限に合致しな
い限り著作者の許諾が必要、とするのが審議会説であり、言及していない以上他の
条項に反しない限りどう使ったっていいんだ、ってのがABC説。
両説とも、この部分で見れば同レベルではありませんか?
後は、周囲の状況をもってどちらの説が通説か?を議論すればいい。
これじゃあ駄目ですか?
ABC流法律論では、審議会報告説の存在は絶対に認められない?
# だったら永久に理解し合えない気がする。
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