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From: Hideaki Iwata 
Newsgroups: fj.soc.copyright
Subject: Re: 30条と49条 (
	罰則関係)
Date: Sat, 23 Sep 2000 13:04:27 +0900
Organization: WAKWAK Internet service
Lines: 184
Distribution: fj
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ひで@自宅、です。
松阪が打たれたなあ....

ちょっと話を限定したほうがいいかな?

Richter ABC wrote:
>  複製権について言えば、21条において、著作者は、その著作物を複製する権
>  利を専有すると規定して、複製権というものが著作者に原始的に帰属すること
>  を明らかにするとともに、その「複製」という概念を明らかにするために、2
>  条1項15号において、複製を録画等により「有形的に再製すること」をいう
>  と定義しています。

ここまでは特に反論ありません。

>  そして、ここで重要なのは、著作者により独占されるのは、「有形的な再製」
>  のみであるということです。ビデオの録画、ダビングは、有形的な再製ですが、
>  そのように再製したビデオテープ(複製物)を貸与したり、譲渡したり、使用
>  するのは、「有形的な再製」ではないので、その行為については、元々、著作
>  者の複製権の及ぶ「独占の対象」に入っていないのです。

うーん、こういう書き方をされるとちょっと違和感を感じるなあ...
「複製権」「貸与権」「譲渡権」「上映権」「翻案権」「翻訳権」etc
これらは全て別個の権利ではないんですか?
「複製」の説明の中で「貸与」や「譲渡」が出てこないのは当然。

しかし、著作物に隣接する著作隣接権には有形・無形のいずれも存在する。
さらに言えば、著作物の成立要件に有形/無形は関係ない。
無形であっても著作物足りえる。

# 即行劇に著作物性が認められたら、劇自体が著作物になる。
# 2条1項3号の実演じゃない場合ね。念のため。

コンメの81頁にも書いてますが、上演、演奏、放送等の著作物の無形的な再
製行為っての存在していて、著作隣接権として保護されている。

ただし、こっから話がややこしくなる。
劇を例に取って見ます。仮に、劇のシナリオに著作物性が認められたとする。
すると、そのシナリオは著作物になる。
仮に、同シナリオが何らかの形で固定されておらず、一子相伝により口頭で伝
えられていてもいい:-)口頭で伝えられるもの自身が著作物になる。その場合、
口頭で伝えられたものを記録した紙や磁気テープは、著作物の複製物となる:-)

次に、同シナリオに基づいて劇を上演したとする。この上演行為は著作隣接権
として保護される(2条1項16号)。
その劇を、固定されたカメラにより記録したものの中で、編集等によって新た
に著作物性が加えられていないものは、昭和48年審議会報告が述べるところの
「生テレビ」であり、従って映画の著作物ではない。しかし、それをモノに固
定した時点で、著作物の複製物にはなる。放送権という著作隣接権の行使に
よって放送されたモノを固定化しても一緒。

ただし、カメラアングルの変化や影像・音の切り貼りなどが行われ、二次著作
物になり、その中でも特に著作物性に富んだ「映画に類する効果」が加えられ
たものに対しては、モノに固定化された時点で「映画の著作物」として、新し
い著作物と認めましょう、と宣言している。

結局、譲渡とか貸与って行為には、「有形的に再製(モノに固定化)された著
作物」っていう限定がどうしても必要になってくる(譲渡の場合は原著作物も
含まれる/詳細は後述)。

# こういった原則に一部反していたのが例えば電脳世界におけるダウンロード
# 可能な状態に置かれた電子情報化された著作物であり、だからこそ自動送信
# 化権という著作隣接権を新設した訳であり...その善悪は別にしてね:-)

で、何が言いたいのか、といえば、上演や上映という著作隣接権と、複製行為や
それに続く貸与や譲渡行為ってのがうまく切り分けられていない気がするんです
よ。ABC氏の説明の中では。

上映権が新設されることによって、例えば株主総会の模様を、会場に入りきれず
隣の部屋で待機している株主に対し、固定カメラを使って見せる、って行為も著
作隣接権として保護されるようになった。

# 株主総会に著作物性があるのか?は不明だけど、スクエアなんかは派手な演
# 出で退屈させないステージ性のある株主総会を目指しているそうだから、著
# 作物性が認められる可能性も否定できない:-)

しかし、それをビデオで固定化したら、それは複製行為であり、録画テープは
(映画の著作物ではない)著作物の複製物になる。また、そのテープを貸与した
り譲渡したりして公衆に提示する権利は、著作者が専有する。

それでいいんじゃないんですか?複製権と貸与権や譲渡権は全く異なる権利だけ
ど、貸与にしても譲渡にしても、著作者が専有する権利は「その著作物をその複
製物の貸与or譲渡により公衆に提供する権利」なんだ、でしょう?

# だから、(著作権法に基づく)譲渡権や貸与権、頒布権といえば、「公衆へ
# の提供に限定された権利」ってなる。

その上で、貸与権は著作物の複製物を用いた場合にのみ成立する。
(コンメの348頁等を参考に)
一方の譲渡権は、著作物の複製物と原著作物両方に成立する。
この違いはあるけど、こと、複製権の行使により作成された複製物に限って言えば、
譲渡も複製も扱いは原則同じ。
複製が行われなければ、複製物による公衆への譲渡や貸与なんて発生しない。
唯一存在するのは、原著作物の譲渡のみ。

>  そのように、元々、貸与、譲渡等は、複製権の独占対象ではないので、複製物
>  を貸与又は譲渡してもその行為は複製行為ではなく、複製権の侵害にはなりま
>  せん。
>  そこで、例外的に、そのような貸与、譲渡、提示などを一定の要件の下、複製
>  とみなすことにより複製権の対象に含めることにしているのが49条です(1
>  13条も同じです。)。

ちがうと思うんだけどなあ....(ニュアンスが)
49条のみなし条項ってのは、30条以下の「権利の制限」によって複製された複製
著作物が、本来社会が容認していた使われ方と違った使われ方をした場合、複製
者本人を権利侵害者とするのではなく、本来容認されていた使われ方と違った使
い方をした本人をもって権利侵害者と認めましょう、って条項のはずなんですが。
でもって、30条で制限されている著作者の権利は複製権だから、本来とは違った
使い方をした人は複製権侵害ですよ、ってみなしているだけ。

コンメの501頁、49条の趣旨より引用

---------------------------------------
本条は、本5款中の著作権制限規定に基づいて適法に作成された著作物の複製物
をその作成の目的や制限を超えて利用することが著作権の侵害となることを明ら
かにするものである。

>  したがって、49条により複製とみなされる行為以外の貸与、譲渡には、複製
>  権が及ばないので、一般国民において貸与等をしても複製権の侵害にはなりま
>  せん。

うーん、その「一般国民」って用語の定義をまずはきちんとしておかないと駄目
じゃないですか?
著作権法上、譲渡権や貸与権や頒布権には「公衆要件」ってのが存在します。
その「公衆」と「一般国民」の関係は如何に?

# 2条に従えば、「公衆」には特定かつ多数の者を含むから、日本国内に居住する
# という特定の上に一億二千万人という多数、となると、「公衆」に合致する、
# って論も展開可能なはずだけど:-)

>  それは、著作権法制定と改正の経過、法律の条文の構成からも、明らかなこと
>  です。

ほんとかなあ....49条の改正ってのは、著作隣接権の増設に伴う追加措置って意味
合いの方が強いはずなんだけどなあ。30条の改正なんてのは、まさしく「技術の
発達に伴う著作者の権利の制限の緩和、あるいは権利の制限は継続するが経済的補
償制度を社会として整備する」、のはずなんだけどなあ....

>  そのように、複製権が複製行為にした及ばないので、法は、頒布権(26条)、
>  譲渡権(26条の2)、貸与権(26条の3)などを設けることにより、著作
>  者の利益保護を図っているのです。
>  元々複製権が、貸与や譲渡に及ぶのであれば、そのように別な権利を作る必要
>  はありません。

誰も「及ぶ」とは言ってないはずですが....
しかし既に明らかにした通り、貸与権に関しては、原著作物は対象外です。複製行為
によって製作された複製物のみが対象です。譲渡権は、原著作物及び複製物が対象
となってます。

>  以上のように、複製権は、複製行為にしか及ばないという前提がまず必要です。

って、誰もその前提には反対していないはず。(繰り返し書いているけど)

>  そのような前提の下、30条1項は、同項の規定する3要件を充たす場合には、
>  「複製することができる。」として、3要件を充たす「複製」には、21条の
>  複製権が及ばない、すなわち、著作者の独占している複製の中に入っていない
>  ということを規定しているのです。

と取るか、「著作者の専有権ではない」と取るか、の違いはありませんか?
前から言ってますが、解説書のほとんどは、30条以下を「権利の制限」と称していま
す(条文上もね:-)。
本来著作者が有する権利ではあるが、一定の要件を満たした場合は制限される、と定
めたものなのだ、と説明しています。

コンメ366頁(多分二度目の引用)
---------------------------------------
  著作権者は、その著作物を著作権法所定の方法で利用する排他的権利を有している。
したがって、第三者がこれを利用するためには、著作権者から使用許諾を受けるのが
原則である。30条から49条はその例外、すなわち著作権が制限される場合について定
めたものである。この著作権の制限は、文化的所産である著作物の公正な利用という
観点から規定されたものであり、具体的には以下の4つに分類される(加戸・逐条179
頁、田村・概説164頁〜165頁もほぼ同様の分類をしている)。

まずは、この点を「一般論」として受け入れてもらわないことには、ABC氏との議論は
前には進まないと考えます。

# 学者の使命って、全体を見て各論をまずは調査する。その上で、一般論として認め
# られているのはどれであり、なぜそれが一般論とされているのかを分析することだ、
# って考えてますから、まずはこの出発点に立ってもらわないと話できない。

この前提に立って議論を進める気はありませんか?

# ないなら、「通説にあらず」ってことで私は降ります。
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