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From: Hideaki Iwata 
Newsgroups: fj.soc.copyright
Subject: Re: Re: 30条と49条 (罰則関係)
Date: 26 Sep 2000 13:28:01 +0900
Organization: Center for Information Science, Wakayama University
Lines: 122
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ひで@和大、です。

"Kouichi Niimi"  writes:
>  新美@MOMOたろうです。

>  このスレッドでの岩田氏とRichter ABC氏の記事に目を通し直してい
>  たんですがRichter ABC氏は「映画の著作物に限定する」という前提
>  を考慮していないようですね。ですから岩田氏との意思疎通がちぐは
>  ぐになってると。

まずこの点ですが、私とABC氏の議論は、30条1項が示す「著作者の
権利の制限の限界」がどこにあるか?が焦点となっていますから、
映画の著作物か否か、は全く関係ありません。
なぜなら、30条は映画の著作物であるかどうかの判断を要件には含
んでいないからです。

>  (映画の著作物に貸与権とか譲渡権は無関係ですよね?)

「貸与権」や「譲渡権」という風に「権」がついた時点で、貸与行
為や譲渡行為そのものを指すのではなく、法が定める著作者の権利
の範囲を意味するのであれば、映画の著作物に貸与権や譲渡権は登
場しません。映画の著作物の場合は頒布権と呼ばれる権利がそれに
代わります。しかしながら、現在では、頒布権=貸与権+消尽なし
譲渡権、という数式が成り立っていますから、その差をあまり意識
する必要はないでしょう。

# 平成11年の改正前は、映画の著作物以外の著作物には譲渡権が
# 認められていなかったから、話はちょっとややこしくなるけど。

>  もっとも、TV番組の録画に関して言えば、「生放送は映画の著
>  作物とはみなさない」のが法解釈のようですから、あながち無駄では
>  ないでしょうが。

えーと、これはちょっと注意が必要です。
昭和48年のビデオ関係報告書は、「生放送」って用語を使っていません。
「生テレビ番組」を使っています。我々が一般に意識している「生放送」
とは違ったものとして定義しています。

http://www.cric.or.jp/houkoku/s48_3/s48_3.html

カメラを固定し、何らの編集手段も加えずただひたすらに放送する番組
をもって「生テレビ番組」と表しています。現在の様に、技術が発達する
前のイメージで解釈する必要があります。
従って、「生放送」であっても、カメラ移動が頻繁であったり制御室から
カメラの切替を指示したり、といった複雑な作業の中に、何らかの著作物
性が新たに見い出せたとしたら、映画の著作物となりうる可能性はありま
す。

>  で、「映画の著作物」と「それ以外の著作物」に分けた場合、前者の
>  複製物は「有償・無償を問わず権利者に無許諾では頒布できない」、
>  後者の複製物は「営利を目的とせず、かつ料金を受けない場合であ
>  れば貸与は認められる」(38条の4項)という差があると理解して宜し
>  いのでしょうか。

正確には、映画の著作物と認められた場合、38条の適用からは除外される、
でしょうね。

>  ただ後者の複製物の場合でも、複製は21条に従って権利者に許諾
>  を受けて作成された物でなければならないように思うのですが。

田村先生の著書によれば、既に引用した通り、「合法、違法を問う
ことは38条4項の適用要件には含まれていない」だそうです。

>  というのが私には理解できないんです。49条1項1号ににより「第30
>  条第1項(中略)に定める目的以外の目的のために、これらの規定
>  の適用を受けて作成された著作物の複製物を頒布し」た場合、21
>  条の複製と見なされますが、その目的が31条1号・35条・42条の適
>  用を受ければ、その時点で権利者の複製権を制限できる、と読み
>  取るのが自然ではないでしょうか。
>  
>  たとえば岩田氏が手持ちの録画物を授業で使用する場合、
>   1) 複製は21条に従い許諾が必要
>   2) しかし30条1項に従い私的使用目的なら無許諾で複製可能
>   3) 目的を私的使用目的から変更するため30条1項適用破棄
>   4) あらためて21条に従い許諾が必要
>   5) しかし35条に従い授業で使用する場合は無許諾で複製可能
>  という流れになると思うんです。(まぁ4)以降は事後承諾になります
>  が本質ではないですよね)

そこまで踏み込んだ議論は目にしたことがないです。
コンメは今手元にないんで、例えば田村先生の著書、「著作権法概説」
有斐閣出版、1998年を参照するとすると....(169頁から170頁)

-----------------------------------
  私的使用目的は複製時点に存すれば足りるが、作成時点で私的使用
目的があったとしても、結果的に私的使用を越えた範囲で当該複製物
が利用される場合には、30条1項の趣旨が潜脱されることになりかねな
い。そこで、30条1項に従って作成された複製物、翻案物であっても、
それを頒布したり、公衆に提示した者は、複製ないし翻案を行なった
ものとみなされる(49条1項1号、2項1号)。
(中略)
  49条所定の行為をなすには、著作権者の許諾を得るか、もしくは、
複製、翻案に関する著作権の制限規定に該当しない限り、複製、翻案
禁止権の侵害となる。たとえば私的に複製した資料を目的外とはいえ
裁判手続きのために用いた場合には42条により複製権侵害とはならな
いが(加戸・前掲:筆者注/逐条講義のこと:263頁)、私的に映画を
複製したビデオ・テープを目的外の公の上映に用いた場合には、上映
した者に複製禁止権侵害が成立する。

ということです。

# そろそろ引用するのがしんどくなってきた。
# 本業が忙しいんで、今後は著書名他のデータと頁数だけにさせて
# もらいます。各人で参照してください:-)

>  で、38条4項に従って貸与しようとした場合、手元にあるのは「権利
>  者に無許諾で複製された複製物」(上記の流れで言えば4)の状態)
>  しかない訳で、これが適法に利用できるというのは…… やっぱりど
>  こかおかしい気がします。
>  
>  私はどこで間違っているのでしょうか?

うーん、ちょっと判りません。
田村先生の著書に従えば、複製された著作物(映画の著作物の複製物
を除く)は、非営利・無償の場合は権原者の許諾なしに貸与による公
衆への提示は不法行為に当たらない、と私には見えるんですけど....

# ところで、この問題は私とABC氏じゃなくて、私と亀山氏の議論
# から出てきたのではありませんでしたっけ?

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