既約と拡大体

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ここでは

     f(x) = aₙ xⁿ + aₙ-₁ xⁿ⁻¹ ... a₁ x + a₀ 

という形の多項式のみを扱う。

f(x) = 0 となる x の値を f(x)の解という。

解を見つけたら、因数定理で割り算するのを繰り返し

     f(x) =  k (x -  α₀ ) ( x - α₁) ... ( x - αₙ )

という形にできたら、
     f(x) = 0 となるのは、 x = α₀ ,  x = α₁, ...  x = αₙ

の場合だということがわかる。

この形にで変形できる場合を可約といい、できない場合を既約という。


問題 6.1 *

x が自然数なら
    x + 1
    2x -1 
    3x + 1

は解を持たない。 なぜかを説明せよ。


問題 6.2 *

負の数と逆数を導入した場合の上の式の解を示せ。


解の性質と置換群

     f(x) =  k (x -  α₀ ) ( x - α₁) ... ( x - αₙ )

という形になったら、\(α_i\) と \(α_j\) を交換して得られる g(x) は同じ解を持つ。f と g を展開し標準形にすると同じxの多項式になるはずである。ならないと違う解を持つ。

多項式の変数を交換しても同じ形になるものを対称式という。多項式の標準形の係数は解の対称式になる。

三種の記号αβγの並べ替えは群になる。これを置換群または対称群という。

3次方程式と3次の対称群は対応していることになる。


問題 6.3 *

αβγを αγβに並べ替えるのを(βγ) と書くことにしよう。βをγ、γをβに置き換えるという意味である。() は何も置き換えないので単位元になる。(αβγ)によって、 αβγはどう置き換わるか?

3次の置換群が実際に群であることを確認せよ。


代数方程式の解法と体の拡大

自然数に負の数、逆数を導入すると方程式の解が増えることがわかる。

    x²- 2

の解が有理数にならないことの証明を調べよ。

x²- 2 の解を\(\sqrt{2}\) と書く。+ と - の両方が解になる。すると、因数定理により

\[ \] \[

    x²- 2 = (x + \sqrt{2} )(x - \sqrt{2} )

\] \[ \]

と因数分解できる。つまり、 x²- 2 は有理数の範囲では既約だが、\(\sqrt{2}\)があると可約になり解を持つ。

    x²+ 1

は実数の範囲では解を持たない(なぜか?)。この解を i と書くことにする。やはり、+ と - の両方が解になる。

    x²+ 1 = (x + i)(x - i)

\(x^n - a\) の解をaの原子根と言う。a がマイナスな場合はiを含む。

\[ \] \[

    x^3 - 1 = (x - 1) ( x^2 - x - 1)

\] \[ \]

ここまではすぐにわかる。二次方程式は平方完成を使って解くことができる。

一般的に1のn次の原子根はn個あると予想される。1は必ず含まれる。


問題 6.4*

n次の原子根の簡単なものを探していくつか計算してみよ。


代数的拡大

複素数と原子根を含めて、四則演算できるようにしたい。それぞれをxのような項だと思えば多項式なので四則演算できる。(標準形はどうなるのだろうか?)これを代数的拡大という。

x²- 2 や x²+ 2 は有理数の範囲では既約な式になっているが、√や複素数iを入れると可約になる。つまり、方程式の解を増やすために、有理数や原子根、そして複素数が必要だったことがわかる。

5次以上の方程式は根号(xⁿ- a = 0 の解)を用いる方法では解けないことが知られている(ガロア)。(5次以上の置換群はそれ以下の次数の置換群と性質が違うのを使う)

解けないということは多項式を既約式の積にした時に、根号な既約式以外の既約式が含まれしまうということ。


実数

5次以上の方程式の解は一般的には原子根を使っては表すことはできない。\(x^5+x+1\) でさえ解けないが、グラフを書くと0になるところがあることがわかる。なので解はある。例えば二分法で解をの値を好きなだけ正確に記述できる。(高次方程式では一般的に精度良く求めるのは難しい)

有理数で近似していく値がありそうである。とりあえず、それを実数と呼ぶ。


代数学の基本定理

xのn次多項式は実数な複素数の範囲で解を持つ。重根を含めn個の解を持つ(ガウス)。

証明はあとまわしにしよう。つまりn次方程式の解を求めて代数体を拡大する作業はこれで終わったことになる。実数をまだちゃんとやってない。

解が一つあれば、それを使って因数定理で割り算できるのでn個の解があることはわかる。


問題 6.5

gnuplot または /System/Applications/Utilities/Grapher.app を使って複素数xを二次元の y + z iとして図示し、 実数上に解のないn次多項式を使って代数学の基本定理を確認するグラフを 作成せよ。


問題 6.6

2次方程式の平方完成を使って、解の公式を導出せよ。


問題 6.7

\(\sqrt{2}\) による有理数の代数的拡大の標準形が、有理数x , y を用いて

 x + y \(\sqrt{2}\)

であることを示せ。


問題 6.8

Wolflumalpha を用いて、n次方程式が面白い代数解を持つ場合をいくつか見つけよ


問題 6.9

18世紀には数学者が方程式を互いに出し合い、解いた数で勝負する数学試合が流行った。

簡単には解けない代数解のある方程式を作成してみよ。それがなぜ解くのが難しいのかを自慢すること。

たとえば0次の係数の約数を調べるとわかってしまうようなものは難しいとは言わない。


問題 6.10

ガロアの生涯について調べ、簡単に感想を述べよ。


問題 6.11

ガウスの生涯について調べ、簡単に感想を述べよ。


Shinji KONO / Thu Apr 22 12:26:03 2021