56. レポート課題5:AIと労働・雇用の変容#
56.1. 概要#
生成AI・LLM の普及は、医療診断支援など知識労働の多くを変えつつある。しかしその影響は「全員に等しく」ではなく、職種・学歴・地域・収入水準によって異なる。本課題では指定の読み物2件(資料A・資料B)を精読し、「AIによる労働変容の恩恵と不利益が社会的にどう分配されているか」を分析した上で、自分の立場から主張を述べよ。
56.2. 読む資料(2件)#
56.2.1. 資料A|全体動向#
Generative AI could raise global GDP by 7% (Goldman Sachs Economics Research, 2023)
生成AIが今後10年間でグローバルGDPを最大7%押し上げる一方、全世界で約3億人の雇用が代替される可能性のある業務にさらされると試算した調査報告。職種別の代替可能業務割合を数値で示している。英語、数ページ。
56.2.2. 資料B|具体的分野の事例(医療)#
Ethics and governance of artificial intelligence for health (WHO, 2021) 第3章・第5章を精読すること
WHO が発表した医療AI に関する包括的なガイダンス文書。第3章(Applications of AI for health)では医療AIの応用領域(画像診断・創薬・臨床意思決定支援など)を、第5章(Key ethical principles for use of AI for health)では医療AIに関する倫理的原則(恩恵と不利益の公平な分配・学習データの偏り・説明責任・プライバシー)を論じる。英語、対象章は20ページ弱。
資料Bは長文の英語文書です。次節の「生成AI利用ガイドライン」を参照し、読解補助に積極的に活用してください。
56.3. 生成AI利用ガイドライン#
56.3.1. 利用を推奨する用途#
資料B(WHO報告書)は長文の英語文書であるため、次の用途での生成AI利用を推奨する。
資料の段落・節ごとの日本語要約の取得
専門用語(医療・倫理・統計用語)の意味確認
その他理解補助
56.3.2. AIの回答の正確性確認(義務)#
生成AIが要約・翻訳した内容をレポートの執筆に使用する場合は、資料の該当箇所(段落)を引用してAIの回答が正確であることを確認し、報告すること。この検証用引用はレポートの字数にカウントしない(付録の「利用内容の概要」欄に記載してよい)。(1)検証用引用がない場合や、(2)引用箇所が出典として誤っている場合は減点対象とする。
報告例:AIが「専門医と同等以上の精度を達成したと書いてある」と要約した場合、資料Bの該当段落(例:Ch.3 p.48 “AI systems for radiology…”)を自分で確認し、その箇所を付録に記録すること。
56.3.3. 利用を禁止する用途#
レポート本文の文章をAIに作成させること(要約・引用・分析・主張のいずれも自分で書くこと)
AIが生成した文章をそのままコピー・貼り付けすること
56.3.4. 付録(利用ログ)の提出義務#
生成AIを利用した場合は、レポート本文とは別に(別ファイルで)付録として利用ログを提出すること(形式は後掲のテンプレートを使用)。利用していない場合は「生成AI未使用」と1行記入して提出する。
56.4. レポートの構成(必須)#
以下の4つの見出しをこの順番で使うこと。見出しを変えたり省いたりしてはならない。
56.4.1. 見出し①「資料Aの要点」(目安:200〜300字程度)#
書くべき内容:
資料Aが示す「AI・自動化によって影響を受けやすい職種・業務」は何か。具体的な職種名と数値(割合・件数など)を最低1つ引用すること。
恩恵を受けやすい層と不利益を受けやすい層が、資料Aではどのような属性(学歴・収入・職種・国・地域など)で分けられているか。
NG例(不十分な記述):「資料Aによると、AIにより多くの仕事が変化すると予測されている」
→ 数値なし・具体的職種なし・分配の非均質性が見えない。
56.4.2. 見出し②「分野事例の分析(資料B)」(目安:250〜400字程度)#
書くべき内容:
資料Bの医療分野では、AIによってどのような業務変化が起きているか。資料Bから直接引用できる事実・数値を少なくとも1つ含めること。
その変化によって利益を得ているのは誰か(例:企業・先進国の専門医・患者)。具体的に述べること。
不利益を受けている、または将来受ける可能性があるのは誰か(例:特定の地域の患者・一部の医療専門職)。「全員に影響がある」という記述は不十分とする。
NG例:「AIにより医療分野は変化しており、メリットとデメリットがある」
→ 誰がメリットを受け誰がデメリットを受けるかが示されていない。
56.4.3. 見出し③「全体動向と事例の接続」(目安:250〜500字程度)#
書くべき内容: 資料A(全体動向)と資料B(分野事例)を突き合わせること。次の2点を必ず含めること:
一致点または相違点:資料Aの予測・主張は、資料Bの具体的事例と一致しているか。どこが合い、どこが違うか。「資料Aでは〇〇と言っているが、資料Bの事例では△△という点が異なる/一致する」という形で示す。
時間軸の評価:「短期的な効率化・恩恵」と「中長期的な雇用リスク・不利益」は誰にどのように分かれるか。
NG例:「資料Aには〇〇と書いてある。資料Bには△△と書いてある」
→ 両者を並べているだけで突き合わせていない。一致点・相違点・時間軸の評価がない。
56.4.4. 見出し④「自分の主張」(目安:300〜600字程度)#
上記①〜③の分析を根拠として、以下の問いに答える形で自分の立場を述べること。
問い:AIによる労働変容において生まれる不利益は、誰が・どのような形で引き受けるべきか。
この問いに対して、個人・企業・政府・国際機関のいずれか1つ以上について「誰が・具体的に何をすることで・誰のどのような状況を改善するか」まで踏み込んで書くこと。
NG例:「AIと医療が適切に連携できるようにルール整備が必要だ」
→ 誰がどのルールを誰に対してどう整備するかが不明。「必要だ」で終わっている。
良例のイメージ:「資料Bによれば、医療AIの学習データは高所得国の病院データ中心であるため、途上国の患者は精度の低い診断を受けるリスクがある。この格差に対して、WHO 等の国際機関は低・中所得国の病院との医療データ収集協定を主導し、参加病院には診断ツールの無償提供という対価を保証すべきだと考える。その根拠は、②で示した…」
56.5. 自己チェックリスト(提出前に確認)#
提出前に以下をすべて確認すること。チェックしていない項目があれば加筆すること。
見出し①に資料Aからの具体的な職種名と数値が含まれている
見出し②に資料Bからの直接的な事実・数値引用が1つ以上含まれている
見出し②で「利益を受ける層」と「不利益を受ける層」がそれぞれ具体的に書かれている
見出し③で資料AとBの「一致点または相違点」が明示されている(「〜という点で一致/相違する」という形で)
見出し③で「短期」と「中長期」の時間軸が区別されている
見出し④で「誰が・何を・誰のために」という形で提言が書かれている
「〜と思う」「〜が必要だ」だけで終わる段落がない(根拠・具体的主体・行動が書かれている)
本文中に「資料A(Goldman Sachs, 2023)」「資料B(WHO, 2021)」のように出典が一度明示されている
付録(生成AI利用ログ、または「未使用」の記入)を添付している
56.6. 形式条件#
パラグラフ・ライティングで段落構成する(1段落=1トピック)
事実と意見を区別する(「資料Aによれば〜」「私は〜と考える」のように明示する)。
引用は「資料A(Goldman Sachs, 2023)」「資料B p.〇(WHO, 2021)」など出典を本文中に明示する。ただし出典参照は一度とする。例えば一度「資料A(Goldman Sachs, 2023)」と書いたら次回以降は「資料Aによれば〜」のように書くこと。
別紙:付録(生成AI利用ログ)を必ず添付する(未使用の場合は「生成AI未使用」と記入)
56.7. 付録テンプレート:生成AI利用ログ#
このテンプレートを模倣し、レポートとあわせて提出すること。生成AIを利用していない場合は「生成AI未使用」とだけ記入して提出すること。
56.7.1. 使用したツール#
例:ChatGPT-4o、Claude 3.5 Sonnet、Gemini 1.5 Pro など。バージョンも調べて記載すること。
56.7.2. 利用内容の概要#
記入ルール:レポートにまとめる内容の単位(読み取った内容のかたまり)ごとに1行記入すること。「資料B全体」ではなく「資料B 第3章の診断精度に関する記述」「資料B 第5章の途上国への影響」のように、章・節・トピック単位で分けて記録すること。資料Bに関してはPDFでページが明確に分かれているため、ページ数+αで指定することを推奨する。
利用した内容の単位 |
プロンプト(指示文)の要旨 |
出力の利用方法 |
AIの回答を検証した資料の該当箇所 |
|---|---|---|---|
例:資料B 第3章 画像診断AIの精度 |
「この段落を日本語に翻訳してください:…(原文)」 |
翻訳を参考に見出し②の第1段落を執筆した |
Ch.3 p.48 “AI systems for radiology…” 第2段落で一致を確認 |
56.7.3. 会話ログの全文#
AIとのやりとり全文を以下に貼り付けること(または会話履歴のスクリーンショットを添付)。レポートの文章の出所が確認できる程度の範囲を含めること。
(ここに貼り付け)
56.8. 補足#
56.8.1. 評価指針#
観点 |
配点 |
「満点」の目安 |
|---|---|---|
①資料Aの理解 |
20% |
具体的職種名と数値を正確に引用し、影響の非均質性(誰が・どの程度)を示している |
②資料Bの分析 |
25% |
事実・比較基準を引用して「利益を受ける層」と「不利益を受ける層」が明確に分けられている |
③接続分析 |
30% |
AとBの一致・相違点が具体的に示され、短期/中長期の時間軸で評価されている |
④主張の具体性 |
25% |
「誰が・何を・誰のために」という形の提言になっており、根拠(①〜③)に基づいている |
56.8.2. AI利用ログの評価方針#
AI利用ログそのものは採点対象としない。ただし以下の場合は大幅減点とする。
ログの内容とレポートの文章がほとんど一致しており、AIの出力をほぼそのまま提出していると判断できる場合