第1話 時を越えて・・・(前編) とある昼下がりの午後、ここ天道家の屋敷にある一室から妙な物音が聞こえてくる。 八宝斉:「あったー!あったぞー!」 と喜ぶ八宝斉の手には、何やら古ぼけた書物が握られている。 八宝斉:「これで世界中のパンティとブラジャーは、わしのもんじゃ~! ・・・しかし、わし一人であれを手に入れるのは難しい。う~む、どうしたら良いものかのぉ~?」 喜びに浸っていたと思ったら急に考え込み、書物を持って部屋から出ていき茶の間の方へと 出て行ってしまった。そして、片方の手にが赤い割れた手鏡を持っていた。 茶の間には、パンダになっている玄馬と早雲が将棋を指していた。八宝斉はパンダ玄馬の背中に 寄りかかり、タバコをふかし始める。そして、二人に尋ねた。 八宝斉:「お前ら、乱馬とあかねちゃんはまだ学校から帰ってこんのか?」 早雲:「はい、まだですが。・・・お師匠さま、それが何か?」 八宝斉:「いやなんでもない。そうか、まだ帰ってきてないのか。」 そう八宝斉が答えると、二人は顔を近づけてヒソヒソ話をはじめた。 玄馬:「あぽぽぃ。あぽぽ、あぽ~。(怪しい。きっと何かある。)」 早雲:「(そうだね早乙女君。またお師匠さま良からぬ事を考えているんだよ。きっと。)」 そんな二人の考えは当たっていた。タバコをふかし、空を見ながら八宝斉は、 ある計画を立てていた。 八宝斉:「(やはり、あれを手に入れるためには乱馬を一緒に連れて行くしかない。 それと、頼りないがこの二人も連れていった方が良いじゃろうな。 もうちっと人数が欲しいが、後はその場にいたもの全員連れていけばいいじゃろう。 よ~っし決まった。あとは乱馬が帰ってきたらすぐ出発じゃ!)」 乱馬:「ふ~っ。やっと、終わったぜ。」 授業が終わり、家に帰宅している途中だ。乱馬はいつものようにフェンスの上を歩いている。 あかね:「何言ってんのよ。今日の授業はほとんど寝てたくせに。」 乱馬の横を歩いているあかねが立ち止まって呆れながら言った。 乱馬:「うっせ~。別に全部ってわけじゃね~んだから良いじゃねーか。」 あかね:「寝てなかったのは、体育だけだったじゃない。そんなんで今度のテストは平気なんでしょうね? 前日になって『あかね、頼む教えてくれ~』なんて言わないでよね。」 乱馬:「うっ・・・。(やばい、今回もそれを使おうと思っていたのに。)」 あかね:「それに、ひなこ先生も言ってたじゃない。今度また補習を受けるようだったら進級が危ないって。 だからとにかく、まだテストまで結構あるんだからちゃんと勉強しておきなさいよ。」 勉強のことで少しブルーになった乱馬と呆れ顔のあかねは再び帰路についた。 歩き始めてしばらくすると後ろから二人を、正確に言えば乱馬を追いかけてくる人物がいた。 九能:「早乙女乱馬、覚悟ーっ!!」 シャンプー:「乱馬ぁ、私とデートするね!!」 乱馬:「九能先輩にシャンプー!?だぁ~、今はお前らを相手にする気分じゃねえ~んだ! あかね、おれは先に帰ってるからなっ。じゃっ!」 あかね:「ちょっ!ねぇ乱馬!」 あかねが言う間も無く、乱馬は走っていってしまった。 あかね:「ったくもぅ!勝手に行っちゃうんだから。」 シャンプー「あかねは、九能とデートするよろし。私は、乱馬と楽しいデートするね。」 通りすぎる際にシャンプーはそう言うと、乱馬の後を追いかけていった。 あかね:「勝手なこと言わないでよね!」 九能:「残念だが天道あかね。今日は君とはデートは出来ないのだ。なぜか今日の僕はいつもより 剣の調子が良くてな。きっと早乙女乱馬に勝てる気がしてならないのだ。 しかし、僕は約束しよう。早乙女乱馬を倒したあとに二人きりでデートに行こうではないか。」 そう言う九能だが、あかねに抱きつきほおずりをしていて一向に追いかけていく気配が無い。 あかね:「そんなにしたいんだったら、早く追いかけんかい!!」 九能:「やくそくだぞぉ~!!」 九能はあかねに乱馬が走っていった方向へ投げ飛ばされたのであった。 あかね:「ほんっとにシャンプーと九能先輩はしつこいんだから。毎度のことながらつかれるわ。 まったく、乱馬も乱馬よっ!シャンプーに迫られてる時だってでれ~ってしちゃってさ! はっきりしなさいよね!ったく。」 ムース:「シャンプーっ!!」 あかね:「キャーっ!!」 いきなり後ろから走ってきたムースがあかねに抱きつく。 ムース:「シャンプー!おらを置いていくなんてヒドイだ!!」 あかね:「だれが・・・シャンプーのなのよっ!!」 あかねはムースにエルボーをくらわせる。ムースは頭を押さえしゃがみこんだが、 すぐに立ち上がってメガネをかけた。 ムース:「何じゃ、天道あかねではないか。」 あかね:「シャンプーなら、乱馬とデートするために追いかけて家の方に行ったわよ。追いかけてみたら?」 ムース:「なんじゃと!?乱馬ぁ~許さん!よくもおらのシャンプーを!!」 あかねがそう言うとムースは目に炎を浮かばせて、天道道場を目指した。 シャンプー:「乱馬ぁ~待つねっ!!私とデートするよろし」 乱馬:「だぁ~しつこいぞ、シャンプー!おれは今日は静かにしていたいんだよっ!」 塀を飛び越えて二人は、天道家の庭に着いた。その後に、あかねに投げ飛ばされた九能が 遅れて到着した。 九能:「フッフッフ。早乙女乱馬、今日こそはこの九能帯刀17歳、人呼んで風林館高校の青い雷が 成敗してくれるわっ!! 」 乱馬:「うわっ九能先輩まで。しょうがね~、今日は気分が乗らないが相手してやるぜ九能先輩!!」 シャンプー、後ろに下がってな。」 シャンプー:「わかったね。!」 乱馬と九能は互いに間合いを取りつつ、攻撃のタイミングをうかがっている。 シャンプーは、二人の戦いを見ているが、実は乱馬のことしか見ていない。 将棋を今まで指していた玄馬と早雲も将棋をしながら見ている。が・・・ 玄馬:「ぱんぽ!!(ビンゴ!!)」 早雲:「あーっ!そのビンゴ待った!」 玄馬:「ぱっぽぱふぃ!(待ったなし!)」 早雲:「そんなぁ~早乙女君、そりゃ無いんじゃない!?この間だって君が待ったしたの OKしたんだからさぁ。良いじゃないか。」 玄馬:「ぽぽふぱぱぱふぱふぃ!(勝負は甘くない!)」 早雲:「そんなぁ~。ヒドイよぉ~早乙女君。」 やっぱりこの二人は、全く見ていない。自分たちのこと優先でどうでもいい様だ。 しかし、そんな中じっくりと見ているものが一人いた。それは、八宝斉だ。 真剣に見ているようだが、何やら怪しいこと企んでいるらしくニヤニヤしている。 どうやら先ほどの計画と何か関係があるようだ 八宝斉:「(シャンプーちゃんに九能か。やはり乱馬を待って正解じゃったわい。 人数はこれで足りたし、そろそろ用意をするかのぉ。)」 。 すっと立ち上がり、八宝斉は台所の方へ行ってしまった。 九能:「てやーっ!突き突き突き突き突き突き突き突き突き突き突き突きっお突きーっ!!」 乱馬:「はっ!どうした九能先輩?今日は調子が良いんじゃなかったのか?」 九能:「ふんっ。この程度まだまだ本気ではないわーっ!」 すると、九能は木刀を乱馬目掛けて振りかざした。 九能:「とりゃーっ!早乙女乱馬覚悟っー!!」 どっかぁ~ん!!! 九能:「何事だ!?」 乱馬:「な、なんだぁ~?」 乱馬と九能の目の前地面が突如盛り上がり、爆発した。 その爆発の煙の中から人影が現れた。 良牙:「ここはいったい何処だっ!?」 乱馬:「良牙か・・・お前なぁ~もうちょっとましな登場の仕方は出来ねえのか?」 九能:「貴様よくも、僕と早乙女乱馬の決闘を邪魔してくれたな!許せん、成敗してくれる!!」 乱馬:「おいっ、九能先輩!今はおれと決闘してんじゃなかったのか!? それに、良牙もなにしにきたんだよっ!」 相手を良牙に変え、木刀を構える九能に乱馬が口を開いた。 良牙:「おもしれぇ。そんじゃ~相手になってやるぜ。とりゃーっ!!」 九能:「こちらもいくぞ。でや~っ!!」 良牙:「あたるかっ!くらえ、爆砕点欠!!」 九能:「くっ、なんのこれしき。だりゃーっ!!」 二人は、声をかけてきた乱馬を無視して戦い始めてしまった。 乱馬:「おいっ、こらっ!無視すんじゃね~よ!!ったく、何なんだよ一体?」 ムース:「乱馬ぁーっ、覚悟するだ!!」 塀を飛び越え、乱馬目掛けて多数の隠し武器を投げつけた。 しかし、それを乱馬はどれも避けてしまう。 乱馬:「ムース!いきなり何すんだよッ。」 シャンプー:「やめるね、ムース!私の乱馬にちょっかいだす、許さないっ!」 ムース:「どうしてじゃシャンプー?なんで乱馬ではなく、おらじゃいかんのだ? おらはこんなにもシャンプーのこと愛しておるのに。」 シャンプー:「お前がどう思うと、私お前のこと嫌いね。 乱馬の方がお前の100倍いや、120倍好きね。わかたか。」 ムースはそれを聞くと、目に炎を浮かばせ乱馬を睨んだ。 ムース:「よくもっ、よくもおらのシャンプーを誘惑してくれただな。許さんぞ乱馬!」 乱馬:「ちょっ、ちょっと待てムース!八つ当たりはやめろ!」 ムース:「ええい、問答無用じゃーっ!!」 早雲:「ずいぶんにぎやかになったね、早乙女君。」 玄馬:「そうだね、天道君。さっきまでの静けさが懐かしいよ。」 いつの間にか人間に戻った玄馬は、早雲とまるで無関係のように 庭で繰り広げられている騒動を見ている。 早雲:「ん?お師匠さま一体何をしているんですか?」 台所から戻ってきた八宝斉の何か怪しげな行動に気づいた早雲が尋ねた。 八宝斉:「ん、これか?今な、この鏡にわしの涙をたらそうとして、玉ねぎを切っているのじゃ。 よく言うじゃろ、玉ねぎを切ると涙が出てくると。」 玄馬:「ですが、お師匠さま。涙なんかどうして・・・。うわぁーっ!そ、それは。」 早雲:「もしかして・・・。」 早雲&玄馬:「南蛮ミラーっ!!」 八宝斉:「そうじゃ。」 早雲:「しかしなんですか?そんなものを持ち出して。」 八宝斉:「ちとな行きたいとこがあってな。」 玄馬:「お師匠さま、それでしたらもう少しあっちの方でやってくださいよ。 また、いつかの様に連れていかれるのは嫌ですよ」 八宝斉:「バカもの、それが、年老いた師匠に対して言う言葉か!? わし一人で行くのはさびしいからここでやってるんじゃ!」 早雲&玄馬:「えーっ!ということは私達も行くんですか!?」 八宝斉:「当たり前じゃ。だが心配するでない。お前達のほかにも連れていくぞい。」 早雲:「連れていくったって誰を?」 八宝斉:「庭にたくさんいるではないか。みなこちらに気づいていないようだがのぉ。 では、そろそろ始めるから心しておけ。」 早雲&玄馬:「いやだ~いきたくないよぉ~。」 八宝斉:「いざ出発じゃ!!」 そう言うと同時に、八宝斉の目から出た涙が南蛮ミラーへとこぼれ落ちた。 その瞬間、八宝斉を中心とする半径10メートル以内の空間を閃光が包み込む。 乱馬:「なんだぁ、この光は!?」 ムース:「光のせいで乱馬が見えないだ!」 シャンプー:「乱馬ぁ~。どこいるね?」 良牙:「う、うわーっ!?」 九能:「今度は一体何事だ!?」 庭にいた乱馬達はこの突然の出来事に驚いている。 早雲:「早乙女君、私達どうなっちゃうの?」 玄馬:「そんなこと、わしに聞かれても・・・。」 八宝斉:「うははははっ!さあ、いざ戦国時代へ!!」 あかね:「はぁ~。どうせ、家の中でシャンプー達が乱馬と騒いでるんだろうなぁ~。」 あかねがそう思って自宅そばを歩いていると、何やらおかしな光景が目に入ってきた。 あかね:「ん、何よあの光は?一体今度は何やらかしたって言うのよ。キャッ!」 ???:「ぐもぉ~~!!」 あかねの頭上を巨大で奇妙な生物が光の中へ飛んでいった。 あかね:「あれは・・・、パンスト太郎!」 その生物が光の中へ消えていき、その光も消えると、あかねも後を追いかけて自宅へと急いだ。 しかし、自宅へ着いてみるとそこにはいるはずである乱馬とシャンプー達や縁側でのんびりしている父親と 玄馬の二人、さらにはいま自分よりも少し前にここに来たはずのパンスト太郎もいなかった。 あかね:「みんないないわ。一体どうなってんの?何が起きたっていうのよ!?ん?」 あかねは、茶の間のテーブルの上においてある古ぼけた書物を見つけた。 あかね:「何かしらこれ?四魂玉見聞録?」 (第一話・完) 目次へ 次のお話へ