第三話 時を越えて・・・(後編) 


 かごめ:「(一体何かしら?)」

     かごめは、家族しか知らない戦国時代に行けると言うことを口にしたあかね達を
     警戒している。

 コロン:「そんなに警戒線でくれ。わしらは怪しい者のではない。」

 かごめ:「いえ、怪しい人達ではないのはなんとなくわかります。ただ・・・。
      どうして私が向こうへ行けるのを知っているのかなと思って。」

 コロン:「おお、それはじゃな・・・。」

     コロンがかごめに乱馬たちが八宝斉によって戦国時代へと行ったこと
     なぜかごめのことを知ったかをすべて話した。

 かごめ:「そうでしたか、そんな本があったなんて。事情は大体わかりました。けど・・・。」

  右京:「けどって、何か問題でもあるん?」

 かごめ:「はい。」

 あかね:「どんなことなの?」

     あかねが不安そうに聞く。

 かごめ:「それはですね、向こうへ行けるのが私と犬夜叉って奴だけなんです。
      他の人は、何度か試したみたいなんですけど・・・。」

 あかね:「いけなかったてことね。」

 かごめ:「はい。」

     かごめがすまなそうに答える。

  右京:「それでも、何か方法はあるはずや。とにかくその井戸があるとこに案内してくれんか?」

 かごめ:「はい、それじゃあこっちです。」

     右京に言われかごめは井戸へと案内する。移動のさいあかねが重たそうにリュックを運ぶ
     かごめに声をかけた。

 あかね:「かごめちゃん、そのリュック重たそうだね。持ってあげようか?」

 かごめ:「いいですよそんな。え~っと・・・。」

 あかね:「あ、自己紹介がまだだったわね。私は天道あかね、あかねでいいわ。」

  右京:「うちは、久遠寺右京。右京でええで。」

 コロン:「わしはコロンじゃ。呼び方はお主に任せるよ。」

 かごめ:「あかねさんに、右京さん、コロンばあちゃん、でいいですか?」

     かごめが改めて名前を確認する。

 コロン:「コロンばあちゃんか、ちと照れるのぉ/////」

 あかね:「上出来、上出来。話戻すけど、私こう見えても結構力あるのよ。だから遠慮しないで。」

 かごめ:「はぁ~、じゃあお願いします。」

     かごめは少し遠慮がちにリュックを渡した。するとあかねは、今までかごめが重そうにしていたのが
     嘘のように軽々と持ち上げた。それを見たかごめが驚く。

 かごめ:「あかねさんってすごぉ~い!」

 あかね:「そうかな、あははは/////」

     あかねはちょっとうれしいのか少し照れている。

  右京:「かごめちゃん、驚くことないで。うちや婆さんかてそのぐらいは平気なんやから。
      それに、乱ちゃん達に会ったらもっとびっくりするできっと。」

 かごめ:「そうなんですか~。(一体どんな人たちなんだろう乱馬さんたちって?)
       あ、着きました。ここです、この井戸から向こうへ行くんです。」

 コロン:「ほっほう~。この小屋の中にあるのか?」

 あかね:「なんか、でてきそうね。」

  右京:「あかねちゃんこわいんか?」

     小屋を前にしてあかねが震えているのを見て右京がからかってみる。

 あかね:「こんなの全然平気よ!!」

 かごめ:「では中に入ります。暗いですから気をつけて。」

     かごめを先頭に中へと入っていく。

  右京:「この井戸やなぁ。一見普通の井戸みたいやけど。」

 コロン:「どうやっていくのじゃ?」

 かごめ:「それはですね、ただ井戸の中に飛び込むだけです。ですが、さっきも言ったように
      みなさんが行けるかどうかなんです。」

 あかね:「とりあえず私が試しに飛び込んでみるわ。」

     そう言うとあかねは井戸の前に立った。

 かごめ:「あかねさん気をつけて。」

 あかね:「平気よ平気。それじゃあ行くわよ、てやぁ~!!」

     あかねが勢い良く飛び込むが・・・。

 あかね:「・・・・・・・・・・・あれ?」

 かごめ:「やっぱりだめかぁ~。」

  右京:「それなら今度はうちが。とりゃぁ~!!」

     右京も飛び込むが結果は同じであった。

  右京:「・・・・・・・・・・・駄目かぁ。」

 コロン:「何か良い方法はないかのぉ~?」

 かごめ:「そうですね~。」

     しばらく四人は考え込む。が、すぐには良い考えは浮かばない。


―――20分後―――

  右京:「ん?」

     右京がかごめのリュックを見て何かに気づいた。

  右京:「ちょっとええか?」

     そう言うと右京はリュックを持ち、そして井戸の中へ落とした。

 あかね:「ちょっと右京、何してるのよ!?」

  右京:「いやね、あのリュックはどうして戦国時代に持っていけんのかなぁ~って。」

 あかね:「そうじゃないでしょ。もし大事なものが入ってて壊れでもしたらどうすんのよ?」

 かごめ:「大丈夫です。あの中には食料と薬しか入っていませんから。」

     かごめがあかねを静めるように言ったその時だった

 コロン:「かごめや、おぬしそのリュックどうやって向こうへ持っていくんじゃ?」

 かごめ:「いつもは背負っていきますが、それがどうしたんですか?」

 コロン:「先ほど右京が落とした時は向こうへ行かず、かごめが背負った時には行った。
      と言うこと、リュックはかごめに触れていたから向こうへ行けたわけじゃ。
      すなわち、わしらもかごめに触れていれば向こうへ・・・。」

  右京:「いけるんやなっ!」

     右京がコロンの言葉を先読みして言う。

 コロン:「わしの考えが正しかったらの話じゃ。」

 あかね:「でも試してみる価値はありそうね。早速やってみましょうよ!」

 かごめ:「じゃあ、誰がまず行って見ますか?」

  右京:「うちが行く。」

     真っ先に右京が言い出す。

 あかね:「右京!?」

  右京:「あかねちゃん達はうちが行ってみて成功しはった後にくればええで。」

 あかね:「でも右京。もし駄目だったら・・・。」

  右京:「ええからええから、気にせんといて。うちかてかごめちゃんにええとこ見せたいんやから。
      婆さんはええ考え出したし、あかねちゃんだってリュック持ってあげたやないか。
      うちだけやで、まだなんもしとらんの。」

 あかね:「右京・・・。わかったわそれじゃあ頼んだわよ。」

 かごめ:「それでは、良いんですね右京さんで。」

  右京:「おおぅ。いつでもええで。」

     そう言って右京はかごめの隣に立ち手を握った。

 かごめ:「では行きますよ。」

  右京:「じゃ行って来るであかねちゃん。また向こうで会おうな。」

     言い終わると右京とかごめは井戸に飛び込んだ。すると右京だけだった時は
     何の変化もなかったのに今度はすっと消えてしまい二人の姿は井戸のそこにはなかった。

 あかね:「消えた・・・。」

 コロン:「成功したのかのぉ?」



  右京:「かごめちゃん、ここは・・・?」

     右京が辺りを見まわすと、目の前には先ほどとは違って、のどかな森の中にいた。

 かごめ:「ここは・・・、成功です右京さん!」

  右京:「じゃ、ここは戦国時代!?」

 かごめ:「はい!あ、それじゃ私はあかねさん達のところに行ってきますのでしばらくここで待っててくださいね。」

     かごめはそう言ってまた井戸の中へ飛び込んだ。

  右京:「消えはった・・・。」

     右京はもう一度辺りを見まわした。

  右京:「ここに乱ちゃん達はいるんやな。絶対探したる待っててや乱ちゃん!!」

     しばらく右京は次が来るのを待っていた。

 コロン:「おお、どうやら成功のようじゃな。」

  右京:「次は婆さんか。それじゃ最後はあかねちゃんか。」

     かごめはまた井戸へと飛び降りた。

  右京:「かごめちゃん大変そうやなぁ。」

 コロン:「さて、右京。あとはあかねが来るのを待つだけじゃが、ここからが大変じゃな。」

  右京:「そうやな。なにも情報があらへんからな、見つけるのは苦労しそうや。
      しかし、空気がうまくてええとこやなぁ。現代とはえらい違いや。」

 コロン:「これ右京、本来の目的を忘れるではないぞ。」

  右京:「はいはい、わかってるって。乱ちゃん達を探さんとな。」

     そうして、大きなリュックとかごめと共にあかねもこちらに来た。

 あかね:「うわ~、ほんとに来れたんだ。」

  右京:「あかねちゃんも来はったか。」

 コロン:「かごめ、こちらで共にしている仲間とやらはどこにいるんじゃ?」

 かごめ:「向こうに村がありますので多分そこで待ってます。」

     かごめは村の方向があるだろうと思われるほうを指差して言った。

 あかね:「ここにいつまでもいるのもなんだし行きましょうよ。」

  右京:「案内と紹介頼むでかごめちゃん。」

 かごめ:「はい、まかせてください!!ではこちらです。」

    そう言うと楽しそうにかごめは歩き出す。

 かごめ:「そうそう、連れの中にいる法師様には気をつけてくださいね。」

 あかね:「どうして気をつけないといけないの?」

 かごめ:「会えばわかります。とりあえずその人の前では油断しないで下さいね。」

 あかね:「わかったわ。」

  右京:「油断しないよう気つけるわ」

     笑いながら話すかごめに不思議そうにあかねと右京が了解した。





―――その頃の乱馬達―――

  良牙:「てんめぇ~何が戦国時代だ。さっさともとの時代に戻しやがれ!!」

 八宝斉:「いやじゃよ~だ。まだ目的をはたしとらんもん。」

  乱馬:「じじぃ、何だよその目的ってのは?」

シャンプー:「私達連れてきたことと何か関係あるのか?」

 八宝斉:「シャンプーちゃんは鋭いのぉ~。そうじゃ関係大有りじゃ!」

    良牙の拳から逃げ回っていた八宝斉がピタっと立ち止まり答える。

  良牙:「ほっほう、じゃあその目的とやらを聞かせてもらおうか!!」

     良牙が八宝斉の後ろに立ち指に骨をボキボキと鳴らしながら話す。

 八宝斉:「わしの目的はのぅ。この時代にある四魂の玉と言うものを手に入れることじゃ。」

  早雲:「何です、その四魂のたまって言うのは?」

 八宝斉:「なんじゃ無知な奴らじゃの、そんなことも知らんのか。しょうがないのぅ~。」

  乱馬:「いいから、さっさと話せ!!」

     乱馬が八宝斉の頭をつかむ。

 八宝斉:「わかった、話すからその手をどけんかい。いいか、四魂の玉と言うのはじゃなぁ、
      手にいれた者の願いをかなえてくれると言う代物なのじゃ。その願いが例え女を治せや
      豚を治せ、アヒルを治せと言った無理難題でもかなうのじゃ。」

     八宝斉の話を聞いた全員それぞれの願いを頭に浮かべた。

  乱馬:「(その四魂の玉とか言うのを手に入れれば・・・、女が治る!!)」

    良牙:「(豚が治る!!)」

シャンプー:「(乱馬は私のものね!!)」

 ムース:「(シャンプーをおらの嫁にするだ!!)」

  九能:「(おさげの女と天道あかねは僕のものに・・・。)」

  早雲:「(あかねと乱馬くんの祝言をあげられる。これで天道道場は安泰!!)」

  玄馬:「(これでわしにもまた髪が生える!)」

パンスト太郎:「(じじぃに名前を変えさせることが出きる!!)」

     しばらく沈黙が入る。

  乱馬:「おっしゃー、協力してやるぜじじぃ!」

  良牙:「俺も協力してやるぜ!」

 ムース:「じゃが、その四魂の玉は一体どこにあるのじゃ?」

シャンプー:「それもそうね。ハッピー、もちろんありかは知ってるのか?」

 八宝斉:「ギクッ!」

     それを聞かれた八宝斉は一瞬固まる。その様子を誰一人ここにいる者は見逃さなかった。

  乱馬:「おい、じじぃ、今の『ギクッ』ってのは何だ?」

  良牙:「てめぇ~まさかとは思うが、知らないとかぬかすなよ。」

 八宝斉:「・・・・・・・・・・・。」

  早雲:「まさかそんな、何とか言ってくださいよお師匠さまぁ~。」

 ムース:「黙ってるのも良いが、いつまでも黙っておるのじゃったら・・・。」

パンスト太郎:「吐かせるしかね~なっ。」 

  九能:「ご老人を痛めつけるのは僕の主義に反するが、正直に言わないのであれば仕方あるまい。」

  玄馬:「お師匠さま、正直におっしゃってください。」

     八宝斉ににな詰め寄っていく。その異常な闘気は殺気のようにも見える。
     その気配は一般人にもわかるくらいだ。

 八宝斉:「正直に話したら、みんな殴らない?」

  乱馬:「その内容によるな。」

     八宝斉は観念したかのように口を開く。

 八宝斉:「実はわし四魂の玉のありか・・・。ぜんぜん知らん。」

  良牙:「てめ~、それじゃあどうやって探すつもりだったんだ!?」

 八宝斉:「それは、みんなで力を会わせて協力し合って・・・・・。」

  全員:「一人で探せっ!!!」

     全員の蹴りが八宝斉を空へと誘う。

 八宝斉:「OUCH!!」

  乱馬:「けっ、ざま~みやがれ。」

  良牙:「ったく、あのじじぃはろくなことしねぇな。」

シャンプー:「ま、これでハッピーも少しは懲りるね。」

  玄馬:「あ~っ!!」

     突然玄馬が大きな声をあげた。

  早雲:「どうしたんだい、早乙女君?」

  玄馬:「南蛮ミラーはお師匠さまが持ったままだ~!!」

 ムース:「なにぃ~!!」

  乱馬:「本当か親父!?」

  玄馬:「ああ、間違いない!」

     全員静まり返った。

パンスト太郎:「冗談じゃないぜ!おれはじじぃを追いかける。」

     そう言ってパンスト太郎は持っていたボトルをあけた。ボトルの中身は水だったらしく
     中身をかぶったパンスト太郎は変身して八宝斉が飛ばされた方向に飛んでいった。

  良牙:「おい、おれたちも追いかけようぜ!!」

  乱馬:「おう、はやいとこじじぃ見つけてさっさと元の時代に帰ろうぜ!」

シャンプー:「乱馬が行くと言うならわたしもいくね。」

 ムース:「シャンプーが行くのだったらおらも。」

  九能:「僕も行こう!こんなとこにいつまでもいたくはないからな。」

     五人が八宝斉をいざ追いかけようとした時・・・。

  早雲:「待ちたまえ!」

  乱馬:「なんだよ、おじさん」

  良牙:「そうですよ。何で止めるんですか。早くしないとじじぃの奴を見失ってしまうじゃないですか!」

  早雲:「お師匠さまの狙いは四魂の玉。と言うことは、四魂の玉を探していけばどこかで会うと思う。
      しかも、お師匠さまも自分の目的が果たせていない以上変えるはずがない。
      それに、もう暗くなってきている。とにかく今は近くに人がいないか探そうではないか。」

     気づいてみれば空は赤く染まっている。こんな森、しかも戦国時代ともなれば何がでて来るかわからない。
     みんな早雲の話に賛成した。

  乱馬:「おじさんの言うことも一理あるな。」

シャンプー:「でも、ここは一体どこか?」

  九能:「わからん。この頭脳明晰の九能帯刀にも戦国時代のこととなると・・・。」

  良牙:「とにかく、歩き回っていりゃそのうち見つかるだろうぜ。」

     そう言って歩き出す良牙の襟を乱馬は掴む。

  乱馬:「良牙勝手に行くなよ,お前は方向音痴なんだから。それに戦国時代で迷子になりたいのか?」

     良牙は乱馬にそう言われ身震いをした。

  良牙:「おれは絶対離れない!!」

  玄馬:「それがいいぞ良牙君。」

 ムース:「しかし、どうする?このままここにおってもしょうがないだ。」

シャンプー:「そうだムース。お前アヒルになって空から様子見てくるよろし。」

     シャンプーはそう言って先ほどパンスト太郎が持っていたボトルを拾い、中に残っていた水をかけた。

 ムース:「グァーガー!!」

     ムースは辺りの状態がわかるくらいの高さまで飛んでいった。

  乱馬:「シャンプー良く考えたな。お~いムース何か見えるか?」

     するとムースは、羽で指差すようにして鳴いた。

 ムース:「グァ―グァ―、グァ―ガー!!」

  良牙:「きっとムースの奴何か見つけたんだ。向こうへ行ってみようぜ。」

  乱馬:「良牙、はやる気持ちは分かるがお前はみんなの中心を歩け。いいな。」

  良牙:「ああ。」

シャンプー:「それじゃあ、いくね!!」

  全員:「おおぅ!!」

     一行はムースの示す方へと歩き出した。良牙を中心にして。



 (第三話・完)



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