第六話 よりお互いをことを 


  弥勒:「あいたたたたっ。」

     右京に突き飛ばされた弥勒が戻ってきた。すぐさま七宝が心配そうに駆けていく。

  七宝:「弥勒、大丈夫じゃったか?」

  弥勒:「ええ、腰の辺りが痛いですけどなんとか。」

     七宝の問いに腰を押さえながら答える。

  七宝:「それにしてもよく飛んだのぉ。おら、人が飛ぶ姿なんて初めて見たぞ!」

  弥勒:「そ、そうでしたか・・・。それは良かったですね七宝。」

  七宝:「しかし、右京のやつは凄いのぉ。おなごの身でありながらあれほどの力を持っているとは。」

     七宝が右京の方を見ながら話してくる。弥勒も続いて右京の方を向き口を開く。

  弥勒:「ええ、そうですね。あかねさまやコロンさま、それにお探しの人達もきっとお強いのでしょう。」

 かごめ:「ねぇ、二人ともそんなとこでなにしてるの?早くこっちにおいでよ。」

     二人から離れたところで話していたかごめが声を掛けてくる。

  七宝:「わかった、今行くぞ!」

     そうかごめに答えた七宝はとことこと歩きだすが弥勒は動こうとしない。

  七宝:「どうしたんじゃ弥勒?かごめが呼んでおるんじゃ早く行くぞ。」

  弥勒:「ですが、右京さまはまだ私の事でお怒りでは?」

  七宝:「なんじゃそんなことか。それなら平気じゃ。弥勒が戻ってくる間にかごめとあかねで
      気を鎮めておったから多分もう平気じゃろう。」

  弥勒:「そうでしたか、ならよいのですが。」

     弥勒はまだ納得できていない様だが仕方なく、七宝を肩に乗せかごめ達の方へと歩き出す。



 あかね:「いい右京?さっき言った事忘れないでよ。」

  右京:「わかってるさかい、もう大丈夫や。うちもさっきは少しやり過ぎだと思ってるんや。」

 かごめ:「すいませんね、右京さん。弥勒さまってきれいな女の人見るとああいうことしちゃうから。」

  右京:「ええって、ええって。早く乱ちゃん達探さなあかんしな、過ぎた事は水に流したる。それに、あれだけ
      かごめちゃんが注意しっとったのに油断したうちも悪かったんやから。」

     右京は先程の弥勒の行為を許したらしく、もう右京からは怒りの闘気は感じられなくなっていた。

 コロン:「おや、法師殿。どうやら無事に戻ってきた様じゃな。」

 犬夜叉:「へへっ、どうだったか弥勒、空を飛んだ気分は?」

     犬夜叉がからかう様に弥勒に聞く。

 かごめ:「やめなさいよ犬夜叉。」

 犬夜叉:「だってよぉ、弥勒のやつ女なんかにやられてんだぜ。笑っちまうぜ!」

     その「女なんか」言葉に右京がピクッと反応する。

  右京:「今の言葉、馬鹿にされた様で聞き捨てならへんなぁ。じゃあ、その女なんかと勝負せえへん?」

 犬夜叉:「っけ、人間の女相手に本気が出せるかよっ。」

  右京:「とか言って、あんたうちと勝負するのが怖いんやろ?そうやろなぁ、妖怪が人間の女に負けた
      なんてゆうたら馬鹿にされてしまうもんなぁ。」

 犬夜叉:「何だとぉ!?・・・おもしれぇ、勝負してやろうじゃねえか!言っとくが容赦しねぇぞ・・・。」

     そう言って犬夜叉が腰にある鉄砕牙を抜こうとした瞬間・・・。

 かごめ:「おすわり。」

 犬夜叉:「ぐぇ~!!」

     かごめの「おすわり」によってつぶされるのであった。

 かごめ:「たっくもぉ~、ほんっとに単純なんだから。右京さんも犬夜叉をからかわないでよね。こいつって
      ものすごく単純なやつなんだから。一応形だけでも謝っといてよ。」

  右京:「まぁ、かごめちゃんがそう言うなら一応言うとくわ。・・・悪かったな犬夜叉。」

 犬夜叉:「ふざけんなっ!このおれを馬鹿にして謝って済むと思うなよ。」

 かごめ:「いいじゃない犬夜叉。ほら、右京さんもこう言ってる事なんだし。」

 犬夜叉:「けっ!」

     犬夜叉は機嫌を悪くして背を向けてしまった。そんな犬夜叉にあかねが近づいていく。

 あかね:「ちょっといいかな?」

 犬夜叉:「な、なんだよ。」

 あかね:「あのね、右京はあなたに女なんかって馬鹿にした様に言われたのが嫌だったのよ。だから
      犬夜叉のことをからかったんだと思う。だから、許してあげてね。」

 犬夜叉:「お、おぅ、分かった。」

     あかねがやさしく言ってきたので犬夜叉もなんとなくつられて答えてしまった。

 あかね:「それとね、私達が探しに来た連れの中にシャンプーって言う女の子がいるんだけど、その娘は
      女だからって言われるのが嫌いなの。だから、注意してね。」

  弥勒:「あかねさま、今おっしゃったそのシャンプーと言うおなごはどのようなお方なのですか?」

     女の子と聞き弥勒がいきなり前に出てきた。

 あかね:「え~っと、どのようなって言うと~・・・。」

  弥勒:「例えば、容姿ですとか。」  右京:「それなら、うちの次くらいに可愛いかな。」

     次と言う言葉をこれでもかと思うほど強調して答える。

 コロン:「これ右京、うちのシャンプーはお主なんぞに劣っておらんぞ!」

  右京:「なんやて~、うちのどこがシャンプーに劣ってんねん!?」

 あかね:「まぁまぁ二人とも。」

     あかねが右京とコロンの間に入って二人を押さえる。

 あかね:「とにかく会ってみればどんな娘か分かるわ。」

  弥勒:「それでは、早速シャンプーさま達を探しに行きましょう。」

     両手を力強くガッツポーズをして弥勒が立ち上がる。

  珊瑚:「それはいいけどさぁ、どこを探せばいいんだい?」

 かごめ:「それなら平気だと思うわ。乱馬さん達は四魂の玉を探しに来たって話しだし。四魂のかけらの気配を
      探っていけばきっとどこかで会うわ。」

 犬夜叉:「何!?その乱馬とかシャンプーとか言う奴らは、四魂の玉を狙ってきたのか?」

  右京:「そんな心配せえへんでも、乱ちゃん達が見つかったらすぐにもとに時代に帰るさかい。その四魂の
      なんとかっちゅ―のは置いてくよって。」

 犬夜叉:「そ、そうか。かごめの世界に持って帰るんじゃねーんだな。」

     犬夜叉は現代に持っていかれないことを聞きほっとした様子だ。

 かごめ:「でも、どこにいったらいいのかな?」

  弥勒:「それならご安心を。かごめさまが戻ってくる間、とある村の使いから妖怪退治の依頼が来まして。
      それがどうやら原因は四魂のかけらの影響がらしいのです。ですからまずはそこへ行って見ましょう。」

 犬夜叉:「そうだな、どのみち四魂のかけらがあるならそこに行くしかないしな。」

 かごめ:「珊瑚ちゃん、雲母にあかねさんと右京さんとコロンばあちゃんを乗せられる?」

  珊瑚:「あたしを含めて三人が限界だね。それ以上だと雲母の動きが鈍くなるから無理だと思う。」

 あかね:「雲母って?」

      あかねが珊瑚に尋ねる。

  珊瑚:「雲母って言うのはねこの子の事だよ。おいでっ。」

  雲母:「ミィー。」

     珊瑚が呼ぶと足元に尻尾が二本ある猫のような小動物が現われた。

  珊瑚:「この子が雲母だよ。仲良くしてやってね。」

 あかね:「か、可愛い~!!」

 コロン:「ほぉ~、猫又かこれは珍しいのぉ。」

  右京:「猫又ちゅー事は、猫なんかこいつ?」

  珊瑚:「ま、そう言う事になるかな。」

     猫と聞くと右京とあかねは顔を見合わせ急に黙り込む。そんな二人を珊瑚は不思議に思い声をかけた。

  珊瑚:「どうしたの二人とも?」

 あかね:「あのね、もし乱馬達が見つかったら雲母を放さないでね。」

  珊瑚:「どうして?」

  右京:「それはやなぁ、乱ちゃんが大の猫嫌いなんや。いや、猫嫌いっちゅーよりも猫恐怖症って方が正しいかも
      しれんなぁ。そんな事やから、気いつけてや。」

  珊瑚:「へぇ~そんな人もいるんだね、ところで、どっちが雲母に乗る?コロンさまは体格を見ても問題ないけど
      あかねちゃんと右京はどっちかが乗れそうもないなぁ。」

  右京:「乗らないとしたらどないするんや?」

 かごめ:「私と一緒に犬夜叉に乗るのよ。」

     かごめが珊瑚の代わりに答えた。

  右京:「うち絶対、いやや!何であんなやつなんかに。」

 犬夜叉:「おれだってお断りだぜ!」

     犬夜叉がむっとして大声で言い返す。

 あかね:「右京が雲母に乗せてもらいなよ。私が犬夜叉に乗せてもらうから。」

  右京:「ええんか、あかね?」

 あかね:「このままじゃ出発できないからね。」

  弥勒:「それでは、私と七宝はかごめさまの自転車に乗っていきますか。」

  七宝:「そうじゃのぉ、頼むぞ弥勒。しっかり運転するのじゃぞ。」

     弥勒と七宝はかごめの自転車を取りに向かった。

  右京:「でも、こんなちっちゃいのにどうやってのるんや?このままやったらこいつが潰れてまうで。」

  珊瑚:「心配しなくても平気だよ。普段はこの姿だけど本当の姿になれば大丈夫だから。雲母っ。」

     珊瑚がそう言うと雲母は先程の可愛らしい姿とは違い、猛々しい猛獣の姿に変身した。

  右京:「化けた。」

  珊瑚:「雲母は妖怪だからね、これが本来の姿なんだよ。普段こうだと目立つからさっきの姿になってるんだ。」

  右京:「まぁ、確かにそうやなぁ。こんなんが街中を歩いたらどえらい騒ぎになるやろうな。」

  弥勒:「お待たせしました。それでは行きましょうか。」

     自転車を取りに行っていた弥勒と七宝が戻ってきた。

 犬夜叉:「おぅ、さっさと行こうぜ。」

 かごめ:「そうね、あかねさんも犬夜叉の背中に乗って。」

 あかね:「私も乗って平気なの?重くないかしら。」

 かごめ:「大丈夫、犬夜叉は力だけがとりえみたいなもんだから。」

 犬夜叉:「うっせ~余計なお世話だ!珊瑚に弥勒、行くぞ。」

     あかねとかごめを背負った犬夜叉が珊瑚に呼びかける。

  珊瑚:「ああ、こっちはもういつでもいいよ。」

 犬夜叉:「ほんじゃまぁ、行くぜ。二人とも、しっかり掴まってろよ。」

     そう言って犬夜叉は風の様に駆け出した。

  弥勒:「くぅ~犬夜叉、うらやましぃぞ。」

  珊瑚:「法師さま、早く行くよ。」

     雲母に乗っている珊瑚が出発と同時に告げた。

  右京:「ぼけっとしとると置いてくよって。」

 コロン:「法師殿、焦って転ばぬ様気を付けるんじゃぞ。」

     右京とコロンも通り際に声をかける。

  七宝:「ほれ、ぼさっととしとるから置いてかれたぞ。早く追いつかんと。」

  弥勒:「はいはい。そうだ七宝、お前は後ろに乗るより前にいなさい。その方が何かと安全ですし。」

     そう言いながら後ろにいた七宝を掴み前のかごに放り投げた。

  七宝:「痛いではないかっ。」

  弥勒:「すまんすまん、では行きますよ。」

     自転車をこぎ始めた弥勒だが、すでに他のみんなは遠くの方に見えている。

  七宝:「あぁ~、あんなに離れておるぞ。」

  弥勒:「大丈夫ですよ。その内追いつきますから。」

  七宝:「だといいんじゃが。」

     弥勒と七宝がこのあと犬夜叉達に追いつくのはこれから1時間ほど経ったあとの事だった。
     だがその時には、すでに日は暮れ、辺りは闇の世界へと変貌した。唯一の明かりと言えば
     夜空に輝く月と数多の星だけである。



 犬夜叉:「弥勒!てめぇ~がちんたらしてっから夜になっちまったぞ。」

  弥勒:「そうですね。では、今夜はここで夜を明かすとしましょうか?」

 犬夜叉:「ふざけんなっ!おれ達は奈落よりも先に少しでも多くの四魂のかけらを集めなきゃならねーんだぞ。
      先を越されちまったらどうすんだよ!」

     弥勒の耳元で犬夜叉が吠える様に大声で怒鳴る。そんな犬夜叉にかごめが後ろから近づいていく。

 かごめ:「いいじゃない犬夜叉、奈落が全部の四魂のかけらのありかを知っているわけじゃないんだし。今夜は
      ここで休んで明日にしましょうよ。」

 犬夜叉:「たくっ、しょうがね~な。でもよぉ、あかね達は野宿なんて平気なのか?」

 かごめ:「う~んそうねぇ、あかねさん達が平気かが問題よね。」

     犬夜叉に意外な盲点を突かれたかごめは考え込む。そこへ雲母を抱いていたあかねが声をかけた。

 あかね:「大丈夫よかごめちゃん、私達こう見えても結構野宿の経験があるのよ。だから心配しないで。」

 かごめ:「でも、現代とは違って何が出てくるかわからないし。」

  右京:「平気や平気。それにいざとなったら妖怪の一匹や二匹くらいうちがやっつけたる。」

 犬夜叉:「へっ、お前なんかが退治出来るほど弱かねーよ。返り討ちにされるのが落ちだぜ。」

     右京が大手を振って言った事に対して犬夜叉は水をさす。

  右京:「やってみんことにはわからへんやろ。」

 犬夜叉:「やらなくてもわかる。」

  右京:「何やて~!?」

  弥勒:「まぁまぁ、ここは抑えて抑えて。」

     弥勒は犬夜叉に食って掛かる勢いの右京をとめようと右京の横に出る。

  弥勒:「言い方は悪いが犬夜叉の言う通りです。我々の様に妖怪退治に長けている者でないと危険
      なのです。命を落としかねません。」

  珊瑚:「それにね、あたし達みたいな者でも命を落とすものだって少なくないんだよ。」

     後に続いて今度は珊瑚が横に出てきた。

  右京:「そうなんか?じゃあ、うちが出ても足手まといになるだけやな。」

 犬夜叉:「そうだ。妖怪退治はおれ達に任せてりゃ良いんだよ。」

  右京:「むっ。そんじゃあ、あんたの力見せてくれへんか?。そんなに言うんやったら強いんやろ?
      一応妖怪なんやし。」

 犬夜叉:「一応ってのは何だよ!?」

 かごめ:「まぁ、いいじゃない。犬夜叉の力を見ればビックリするって。そうすれば右京さんも無茶な事は
      しないと思うし。」

 犬夜叉:「しゃ~ね~、よ~っし一度しか見せねーからよく見ておけよな。」

     犬夜叉はそう言うと近くにある岩山とも言える岩の方へを向いて鉄砕牙を抜いた。

 あかね:「うわっ、おっきい刀。」

 コロン:「ほぉ~、妖刀か。半妖と言えどもさすがは妖怪といったとこかのぉ。」

 犬夜叉:「あぶねーから離れてな。いくぜ、風の傷!!」

     犬夜叉は岩山に向い力いっぱい鉄砕牙を振りかざした。すると凄まじい風が地面を切り裂いていく。
     その威力は、巨大な岩山を跡形もなく粉々にしてしまう程であった。

 犬夜叉:「どうでい、驚いたか!?これがおれの力だ!」

  右京:「凄いやんか犬夜叉。口だけやなかったんやな。」

 犬夜叉:「当たりめーだっ!!」

 あかね:「ねえかごめちゃん、今の技なんて言うの?」

     横にいたかごめに聞いてみる。

 かごめ:「今のはね、風の傷って言うあの鉄砕牙って言う刀の極意なの。よく分からないんだけど、犬夜叉が
      言うには妖気と妖気がぶつかりあってできる風の裂け目を斬ると出きるんだって。」

 あかね:「へぇ~。あ、それって飛竜昇天破みたい。ね、右京そう思わない?」

     犬夜叉から半ば強引に鉄砕牙を借り、試しに振りまわしてみている右京に聞いてくる。

  右京:「そうやな、言われてみれば確かに少し似とるなぁ。」

  七宝:「何じゃ、その飛竜昇天破と言うのは?」

 あかね:「乱馬の一番の必殺技で相手の闘気を利用して竜巻を起こす技なの。そこにいるおばあさん教わった
      のよ。」

 犬夜叉:「と言うことは、ばあさんも出来るってわけだな。おい、おれにもその飛竜何とかっての教えろよ。」

 コロン:「婿殿よりも気の短いお主には到底無理な話じゃ。」

 犬夜叉:「なんだと、そんなのやってみなけりゃ・・・。」

     犬夜叉が言い終わる前にコロンは持っていた杖で犬夜叉の額を軽く突いた。しかし、軽く突いた様に
     見えたが額を突かれた犬夜叉は、風の傷によって粉砕した岩の辺りまで突き飛ばされた。

 コロン:「その姿勢がだめだと言っておるんじゃ。」

 犬夜叉:「(な、何だ今のは?軽く突かれただけなのに、どうしてこんなに吹っ飛ばされたんだ?)」

  珊瑚:「へぇ~やるもんだね。」

  弥勒:「コロンさまは相当の手練のようですな。犬夜叉、どうやらお前が簡単に敵う相手ではないようだ。
      怪我をしたくないならやめときなさい。」

 犬夜叉:「うっせー!こんな老いぼればばぁに負けるほどおれは弱くねー!」

     犬夜叉は起き上がるとすぐさまコロンに向かって走っていき飛びかかる。だが、どれもコロンは
     軽々と避けてしまう。

 コロン:「ほっほっほ、口だけは達者じゃのう。じゃがそんな遅い拳をこのわしに当てようなんざ百年早いわ。」

 かごめ:「犬夜叉やめなさい。いい加減にしないとまた鎮めるわよ。」

 コロン:「かごめ、心配は無用じゃ。こんな遅い拳をいくら打とうがわしに当てることは出来ん。」

 犬夜叉:「何だと!?このばばぁ、言わせておけば。もう容赦しねーぞ!!」

     犬夜叉は拳の速度を上げるが全く当たる気配はない。

 コロン:「おやおや、どうやらお主は本当の拳の速度を知らんようじゃな。どれ、わしが手本を見せてやる。」

     と犬夜叉の爪をひらりとかわし、目にも止まらぬ速さで犬夜叉に拳を打つ。

 コロン:「火中天津甘栗拳!」

 犬夜叉:「っ!?うわっ!!」

     コロンの拳が数発命中し地面に倒れる。

 かごめ:「すっご~い。犬夜叉が全く歯が立たないなんて。」

  七宝:「・・・・・。(やはり、コロンは妖怪なのではないのか。)」

 コロン:「七宝、今お主失礼なこと考えていなかったか?」

     ギロリと七宝を睨みつける。すると七宝は、蛇に睨まれた蛙の如くすくんでしまった。

  七宝:「ギクッ!?」

 コロン:「まぁ、よい。それよりも犬夜叉、どうじゃこれが本当の拳の速さと言うものじゃ。」

 犬夜叉:「へっ、いくら速くたって人間に殴られてもちっとも痛くねーぜ!」

     すぐさま起きあがりもう一度コロンに飛びかかる。がやはり、いくらやってもあたらない。

 コロン:「ほぉ~、まだ来るのか。大したやつじゃのぉ。」

 犬夜叉:「当ったり前だ!人間の攻撃なんか痛くもなんともね~ぜ。」

 コロン:「それはどうかな?」

     犬夜叉の爪を避けながらニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

 犬夜叉:「何だと?てめーふざけるのもいい加減にし・・・・・な、何だ?体が動かねー。」

     当たらない攻撃を繰り返していた犬夜叉だったが、突然ピタリと動かなくなってしまった。

 コロン:「ほっほっほ、やっと効いたようじゃな。」

  弥勒:「犬夜叉、何をしてるんです?」

 犬夜叉:「わからね~。ばばぁ、一体おれに何をしたんだ!?」

 コロン:「何をしたかじゃと?先ほどの攻撃の際にお主の動きを止めるつぼを突いただけじゃ。」

  弥勒:「なるほど、それで犬夜叉は動けなくなったのですな。」

     ぽんっと手を打ち納得する弥勒であった。

 かごめ:「ねぇコロンばあちゃん、犬夜叉はどのくらい動けないままなの?」

 コロン:「ざっと、二時間くらいじゃ。こちらで言う一刻が三十分じゃから、四刻くらいかの。」

 犬夜叉:「ふ、ふざけんなっ!!今すぐ元に戻しやがれ!!」

  七宝:「なぁ犬夜叉。本当に動けんのか?冗談ではないのか?」

     犬夜叉に不思議そうに七宝が近づいていく。

 犬夜叉:「おれが冗談でこんな事してると思うか!?」

  七宝:「それもそうじゃな。そうかぁ、本当に動けんのじゃな・・・。」

 犬夜叉:「おい七宝、何企んでやがる。っておい、そんなとこ触んじゃね~!」

     七宝が犬夜叉の脇腹を突っついてくる。

  七宝:「なぁかごめ、そろそろ晩飯にしないか?おらもう腹が減ってしょうがないぞ。」

 かごめ:「そうね、そんな時間ね。じゃあ、何か食べましょうか。」

  右京:「そんならうちに任せとき。ごっつおいしいお好み焼きをたらふく食べさせたる。」

     そう言ってどこからともなくお好み焼きの道具一式を取り出した。

 あかね:「右京、そんな物何処から取り出したのよ。」

  右京:「それは企業秘密や。余計な散策はしたらあかんで。」

  七宝:「お好み焼きとは何じゃ?うまいのか?」

     七宝が犬夜叉から離れ右京の方へとことこと走っていく。

  右京:「何や七宝、お好み焼きを知らんのか?ああ、うまいで~。特にうちのは、朝昼晩の三食に加え
      十時と三時のおやつに食べ続けても飽きないくらいうまいんや。」

     自信満々に右京は自分の作るお好み焼きを自慢する。

  弥勒:「ほぉ~、それでは一つ賞味せねばなりませんなぁ。」

  七宝:「右京、早くそのお好み焼きとやらを作ってくれんか。おら腹が減ってもう倒れそうじゃ。」

  右京:「よっしゃ。今からすぐ作るよって少しだけ待っとってや。」

     そう言うとまたもやどこからともなく材料を取り出しお好み焼きを作り始めた。

 あかね:「右京一体何処から・・・・・ってこれも企業秘密よね。」

 かごめ:「右京さんの手つきすご~い。まるでプロみたい。」

  右京:「へへっ、こう見えてもうちはお好み焼きの店を経営してる女店長なんやで。」

     お好み焼きを焼きながら得意げに話す。

  珊瑚:「へぇ~、その歳で自分の店を持ってるんだ、凄いね。」

  右京:「でもそないに言うほどの店でもないんよ。ちっちゃい店やしね。」

 かごめ:「でも凄いわよ、私と同じ位の歳で店を持ってるなんて。」

 あかね:「あれ、そう言えばかごめちゃんって何歳なの?わたし達と同じ位ってことは高校生?」

 かごめ:「え、あかねさん達って高校生なの・・・?」

     かごめはあかね達が高校生だと知り驚ている。結構ビックリしたのか、しばし言葉が出てこない。

 あかね:「あれ、かごめちゃん違うの?」

 かごめ:「わたし中学生です。しかも、今年高校受験で。ごめんなさいっ!てっきり同い年かと思って
      タメ口きいちゃって。」

 あかね:「良いわよそんな事気にしないで。さっきみたいに普通に話してくれれば。」

  右京:「せやせや、それにこっちの世界ではかごめちゃんの方が先輩なんやし・・・よっと。ほら出来たで、
      七宝食べて見るか?」

     七宝に出来たばかりの熱々のお好み焼きを差し出す。

  七宝:「おぉ良い香りじゃ、早速頂くとするか。パクッ・・・モグモグ。う、うまいぞ右京!」

  弥勒:「どれどれ、わたしもお一つ・・・。ん、これはまたとない美味ですなぁ。」

  珊瑚:「そんなに美味しいのかい?じゃあ、あたしも一つ・・・。本当だ、美味しいっ!」

     三人共初めて口にするお好み焼きの味に絶賛する。

 あかね:「かごめちゃんも食べなよ。おいしいわよ右京のお好み焼きは。」

 かごめ:「あ、はい。それじゃあわたしも頂きます。」

  右京:「ちょっと待ち、そんな話し方せんでもええってさっきゆうたやないか。」

     お好み焼きを取ろうとしたかごめの手を止める。

 かごめ:「けど、右京さんとあかねさんは先輩なんだし・・・。」

 あかね:「これから仲良くしていくんだからそんな事気にしないで良いわよ。それに、ここは戦国時代よ。
      力を合わせて協力していくのに先輩も後輩もいらないでしょ?」

  右京:「そうそう、あかねの言う通りや。さ、冷めない内にはよ食べて。」

     右京はお好み焼きをかごめに差し出す。

 かごめ:「うん、いっただっきま~す・・・。うん、おいし~い!」

  七宝:「右京、もう一枚おくれ。」

  右京:「よしっ、すぐ焼くから待っといてや。」

 犬夜叉:「おいおめぇーら、おれの事忘れてねーか!?」

     犬夜叉は目をこちらの方へ向かせ叫んでくる。

  弥勒:「おや、犬夜叉。まだそこにいたのですか。」

  珊瑚:「右京の作ったお好み焼きってやつすっごく美味しいよ。早く来なよ。」

 犬夜叉:「動きたくてもそのばばぁのせいでまだ動けねぇんだよ!!」

 コロン:「おかしいのぉ?もうそろそろ動けるようになるはずなんじゃが。」

     コロンは不思議そうに首をかしげる。

  七宝:「まぁ、いいではないか。たまにはそうやっておとなしくしておるのも。」

 犬夜叉:「てめ~、人事だと思いやがって。ちっくしょ~、早くもとに戻しやがれ!!」

     犬夜叉の悲痛な叫び声は静かなる夜空へと響き渡るのであった。その後犬夜叉が動けるようになって
     コロンに再び挑み、またもや動きを止められてしまうのは言うまでもない。



  (第六話・完)



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