第九話 温泉で発見四魂のかけらと・・・・・ 良牙:「おい、本当にこっちで良いんだろうな?」 ムースを先頭にして日の光があまり入ってこない、深い森を一行は歩いていた。 ムース:「大丈夫じゃ、安心せい。」 良牙:「じゃあ、どうしてこの間のムカデの化け物みてーなのがたくさん出てくんだよ!?それに、今おれ達が 歩いてるとこだって道じゃねえじゃねえか!」 ムース:「やかましいのぅ。おのれは、おらの事を信用できないとでも言うだか?」 歩き始めてからここまできて何度か良牙がムースと言い争いをしてきたが、 ついにここで痺れを切らした良牙がムースに食って掛かる。 良牙:「当たり前だ!!だいたい、貴様はこの森を抜けた所に大きな街道があったと言ってたが、よくよく 考えてみれば、昨日だってそれを信じて歩き詰めになったんじゃねーか!この、近眼野郎!!」 ムース:「なんじゃと!?良牙、おのれとておら達が戻ってきたときに迷子になっていたではないか? どれだけおのれを探すのに時間を費やしたのか忘れおっただか、方向音痴野郎!!」 良牙:「なんだとぉ!?黙って聞いていれば、この野郎ォ!」 ムース:「それはこっちのセリフじゃあ!」 お互いに不満を全て吐き、しばらく睨み合いが続いていたが、やがて取っ組み合いに移った。 その二人の横で玄馬と早雲が体力の限界だとぼやいてその場に座り込む。 玄馬:「天道君、わしもう駄目。」 早雲:「私もだよ、早乙女君。歩き詰めでもうへとへと。」 そんな実の父親を見て乱馬が呆れた様に声をかけた。 乱馬:「親父・・・。稽古サボって将棋や囲碁打ってたつけが出て来たみて~だな。」 玄馬:「乱馬、貴様実の父を愚弄する気か?」 乱馬:「別に愚弄するも何も、自分の父親のこんな姿を見りゃ誰だって愚痴の一つもこぼしたくなるぜ。」 玄馬:「貴様と言うやつはぁ・・・。」 玄馬は乱馬に一発いれようと思ってたちあがろうとした。だが・・・・・。 玄馬:「・・・やっぱ、駄目。」 そんな気力もなく、グテ~っとまた座り込んでしまった。 乱馬:「まったく、だらしね~なぁ。」 九能:「ところで早乙女乱馬。いつまでここにいる気だ?」 丁度良い倒れ木を椅子にしていた九能が不満そうに声をかけてきた。 乱馬:「ん~、あの二人の決着が済むまでで良いんじゃねーか?どっちにしたって、親父達がこうだと どの道休憩は必要だからな。先輩だって少しは休みたいだろ?」 九能:「ふっ、しょうがない。僕も疲れてきたところだ。気に食わんが、貴様の意見に賛成してやろう。」 乱馬:「そりゃど~も。・・・・・ん?」 ふと、九能から少し目線をそらすと、シャンプーがしゃがみ込んでこそこそとしているのが 乱馬の視界に写って見えた。その姿は、他人から見るとなんとも言いがたい怪しい姿であった。 何かと不思議に思い、乱馬はシャンプーに近寄って行った。 シャンプー:「・・・・・・・・・・。」 乱馬:「・・・・・(何してんだシャンプーのやつは?)。」 乱馬はシャンプーの後ろにつき、何をしているのかを背中越しに覗く。覗いてみると、シャンプーの 手には紫色に輝く宝石のような物のかけらとそれを魅入る様にして眺めるシャンプーの顔が見えた。 乱馬:「シャンプー。それなんだ?」 シャンプー:「ひゃっ!?」 不意に声をかけられ、シャンプーはそのかけらを握り締めてその手を胸に抱え、パッと振り返った。 シャンプー:「・・・乱馬。いきなり声をかけるの良くない。私とてもビックリしたね。」 乱馬:「悪ぃ悪ぃ。で、そのかけらみたいなのは?」 シャンプー:「これか?これは、あの驚異的大きさのムカデの頭についていた物ね。綺麗だから、私がもらてきた。」 乱馬の目の前にそのかけらを突き付けるようにして見せた。 乱馬:「ふ~ん。なんかの宝石のかけらみてぇだな?なんの宝石か知ってんのかシャンプー?」 シャンプー:「ううん、知らない。だけど、綺麗だからそれで良いね♪」 乱馬:「・・・・・。もしかしたらよぉ、じじぃの言ってた四魂の玉ってやつのかけらだったりしてな?」 乱馬はかけらを眺めながらそんな事を言い出した。もちろん冗談でだ。 シャンプー:「ははっ、そんなわけないね。こんなに簡単に見つけられるんだたら苦労しないよ。」 乱馬:「そうだな。こうもあっさりと見つかるような代物じゃないみてぇなことじじぃも言ってたしな。」 シャンプー:「そうね。ところで乱馬、いつまでここにいる気か?」 乱馬:「あいつ等の勝負にけりがつくまでさ。」 シャンプー:「はぁ~、それでは当分ここにいるようか。」 シャンプーはまだ勝負の真っ最中の二人を見てため息を漏らしながらそう言った。 良牙:「てーいっ!」 ムース:「っく。なんのこれしきぃ!」 良牙の蹴りを腕で受けとめ、反撃に両腕の暗器で応戦した。 良牙:「へっ、そんなもんがあたるかよ!てやっ!」 良牙はムースの暗器をいとも簡単に避け、バンダナを投げつけた。良牙の投げたバンダナは当たりは しなかったものの、ムースに一瞬の隙を作り、その瞬間に間合いを詰め寄って行く。 ムース:「なにっ!?」 良牙:「もらったぁ!!」 次ぎの瞬間、良牙はバンダナに怯んで隙が出来たムースの懐に入り込み力を込めて突きを放つ。 ムース:「っ!?」 良牙の突きがムースの腹部にもろに入り、その衝撃でムースは10Mほど後ろへ吹き飛んだ。 良牙:「ハァハァハァ、どうだ、ど近眼野郎。」 ムース:「くっ、無念・・・じゃ。」 勝負に負けたムースは、そのまま気絶してしまった。 乱馬:「けりついたみてぇだな。」 良牙:「ああ、手間かけちまったがな。」 乱馬:「んじゃ、行くぞ。」 良牙:「おい、ちょっと待て。行くって一体どこへ?」 乱馬:「おめぇバカか?先に進むに決まってんだろ。また、真っ暗闇の中をさ迷いたいのか?。」 乱馬は木々の間にかすかに見える空を指差して言った。少し見えた空は、薄っすらと紅く 彩られているのが見えた。そろそろ日が暮れるのは時間の問題だ。 乱馬:「よ~し、そうと決めたら良牙、ムースの事はよろしくな。」 良牙:「な、何でおれが!?」 シャンプー:「ムース気絶したの良牙、お前のせいね。それぐらいの責任は取るよろし。」 シャンプーがそう言って良牙の背中を押してムースの側まで連れていく。 シャンプー:「気がつくまでの辛抱ね。我慢する、よいな?」 良牙:「ちっ、こんな事になるんだったらするんじゃなかったぜ。」 渋々ながらも良牙は律儀な性格のため、任された事はしっかりと守ってしまう。 良牙:「くっ、こいつ見ための割に、結構重い。」 ムースを背負おうとした良牙はそのムースの意外な重さに驚いたように声を上げた。 乱馬:「そりゃそうだろ。こいつ、かなりの暗器を隠し持ってんだぜ。」 良牙:「そ、そうだった。こいつは馬鹿でかい鉄球まで隠し持てるんだったな。」 乱馬:「ああ、あれはさすがに驚いたっけな。」 二人はその時の事を思い出し、気絶しているムースを見て改めて思った。 乱馬&良牙:「(一体こいつの服のどこにそれだけのスペースがあるんだ?)」 ちなみに、あの時の事とは、良牙とムースが同盟を組んで乱馬に挑戦した時の事だ。 乱馬:「親父、おじさん。そろそろ行こうぜ。日が暮れちま・・・・・あぁ?」 振りかえって、玄馬と早雲に出発を促そうとしたが・・・。 早雲:「早乙女君・・・・・いつの間に。」 玄馬:「ZZZZZ~。」 見事、玄馬はいびきを掻いて熟睡しきっていた。 乱馬:「親父、いつまた迷うかも知れねぇって時に、のんきに寝てんじゃねえ!!」 気持ちよさそうに寝ている玄馬の頭を、力いっぱい殴りつけて眠りから呼び戻す。 玄馬:「痛っ!?何するんじゃいきなり?痛いではないか。」 乱馬:「寝てんのが悪いんだよ。それじゃあ、クソ親父も起きたことだし、長居は無用。 さっさとこの薄気味悪い森を抜けちまおうぜ。」 良牙:「そうだな。こんな落ちつかねぇ所さっさとおさらばして、人のいるとこでまた休もうぜ。 こいつも早く降ろしてぇしな。」 良牙はムースを背負い直しながら言う。 シャンプー:「そうと決まったら、早く行くね。」 乱馬:「ああ、そんじゃあ人里目指して、しゅっぱ~つ!」 全員:「おおぅ!!」 こうしてまた、当てもないまま森の中を歩き始めるが、この後一行がまた迷うのは言うまでもない。 一方、この時の犬夜叉達はと言うと、すぐ近くまで追いついていたのだったが・・・・・。 あかね:「焚き火の跡がある・・・。どうやらここで、お湯を沸かしたみたいね。」 右京:「そうなると、シャンプーもここで元の姿に戻ったちゅー事か。どおりで犬夜叉がシャンプーの匂いを 見失うわけや。猫が人になったんやからな。」 乱馬達がここで休息を取ったことを物語る焚き火の跡を見て二人はすぐ近くまで追いついたと確信した。 その横で、犬夜叉は目当てにしていたシャンプーの、つまり猫の匂いがしなくなってしまい、ここに来てから ずっと地面に這いつくばって匂いを探っている。 犬夜叉:「ああ、ちくしょぉーーー!やっぱりだめだっ!」 かごめ:「どうしたの、犬夜叉?」 順調にここまで進んできた犬夜叉一行にここでトラブルが発生した。追いかけていた匂いがここで 嗅ぎ取れなくなってしまったからだ。 犬夜叉:「ここまで一番匂ってた猫の匂いがここで突然消えてやがる。」 弥勒:「と言う事は、匂いを見失ったんですね?」 犬夜叉:「そうじゃねぇ!ここには、人間の匂いしか残ってねぇんだ。」 犬夜叉は地面に這いつくばって懸命に匂いを探ろうとするが、お目当ての匂いが嗅ぎ取れずに 段々と焦り始める様子が分かる。 弥勒:「確かに・・・。私もここにはなんの邪気も妖気も感じません。珊瑚、何だか分かりませんか?」 珊瑚:「あたしだってこんなのはじめてだよ。」 弥勒:「そうですか、・・・・・となると、考えられる事がひとつあります。」 弥勒はある一つの考えが浮かんだ。するとすぐに犬夜叉が食らいついてきた。 犬夜叉:「なんだよ。もったいぶってないでさっさと教えろよ。」 弥勒:「はい。私達が追っている連中と言うのは、妖怪ではなく人間なのではないでしょうか?」 全員:「はぁ?」 弥勒のとんでもない考えには、全員ただビックリするだけであった。あかねと右京とコロンを除いては。 犬夜叉:「馬鹿言うなよ。どこに男から女に変身するやつがいるんだ?どこに人から猫やアヒルに変身する やつがいるんだ?んなもんいるわけねえだろ。」 七宝:「そうだぞ弥勒。そんな妖怪みたいな人間がおるものか。」 あかね:「(それがね七宝ちゃん、いるのよ・・・五人ほど。)」 あかねは苦笑しつつ、心の中で乱馬・シャンプー・ムース・玄馬・パンスト太郎の面々を 思い浮かべていた。 弥勒:「ですが、そうでも考えないと納得が出来ません。」 コロン:「だったら、早くその連中に追いついて正体を明かせばよかろう。」 突然、それまで静寂を保っていたコロンが口を開いた。 コロン:「そやつらは幸か不幸か四魂のかけらとやらを持っているんじゃろ?だったら、今度はかごめの力で そのかけらの気配を追えば良いだけの話ではないか。」 犬夜叉:「お、良い事言うじゃねえかばあさん。よし、かごめ、ここからはお前が頼りだ。しっかりしろよ。」 かごめ:「そうね、ここでこうしていても埒が明かないわ。コロンばあちゃんの言う通り先に進みましょ。 かけらの気配は・・・・・こっちからするわ。」 そう言ってかごめは気配を感じる方向を指差した。しかし、その先はどう見ても道とは言えない森の中へと 続くけもの道であった。と言うのもそのはず、この道は乱馬達が強引に切り開いた道だったのである。 七宝:「と、と言う事は、おら達もここを通るのか?」 あかね:「ふふっ、七宝ちゃん、もしかして怖いのかしら?」 七宝:「な、何を言いだすんじゃあかね!おらはれっきとした妖怪じゃ。こ、こんな薄気味悪いだけの森など 怖がるはず無かろう。」 右京:「ははっ、とか何とか言うて、ひざが震えとるやんかぁ。」 あかねと右京は、ひざを震わせて強がる七宝のあまりの可愛らしさにただ苦笑してしまった。 しかし七宝は、からかわれたと思ってふてくされてしまった。 七宝:「なんじゃいなんじゃい!二人ともおらの事をからかうのがそんなに楽しいのか!?」 あかね:「ごめんごめん、あんまりにも七宝ちゃんが可愛かったから、ついからかいたくなっちゃたの。 そうよね右京?」 そう言って、あかねは横にいる右京に話しを合わせるようにと目で合図を送った。 それに、右京はなんとか理解して話しを会わせる。 右京:「あ、ああ、そや。七宝の姿があまりに可愛かったからや。」 七宝:「そ、そうか/////。まぁ、おらは魅力的じゃからな、それなら仕方無い。」 右京:「(七宝も犬夜叉みたいにおだてると機嫌がよくなるみたいやな。)」 七宝はあかねに可愛いと言われ少し照れながらも上機嫌になっている様だ。 そのようすをみて右京は、七宝の扱い方を少しわかったような気がした。 コロン:「さて、七宝の機嫌も良くなった事じゃし、行くとするかのぉ、皆の衆。」 珊瑚:「うん、いくら何でも途中で夜になったら大変だからね。」 犬夜叉:「よ~っし、そんじゃあ先に行くぜ!」 犬夜叉は、我先にと森の中へ続く道を歩きはじめる。その後に、かごめ・あかね・七宝・コロン・ 右京・珊瑚・弥勒の順に続いていく。そんな中、七宝は顔を変にこわばらせながら歩いていた。 そんな七宝に気付き、コロンが声をかけた。 コロン:「七宝、おぬし顔が引きつっておるぞ。」 七宝:「だ、大丈夫じゃ。べ、別に何ともない。」 コロン:「そうか?なら良いんじゃが、あまり無理はするんじゃないぞ。」 あかね:「そうよ、まだ小さいんだから無理しちゃダメよ。」 あかねも背中越しに、声をかけてきた。そこに、かごめも話に入ってきた。 かごめ:「大丈夫よあかねさん、七宝ちゃんは結構頼りになるんだから。前にね、サツキっ言うて女の子を 助けるために一人で妖怪と戦った事もあるのよ。」 あかね:「へぇ、そうなんだぁ。あ、七宝ちゃんってそのサツキって子の事好きだったんでしょ?」 コロン:「ほぉ、そうなのか七宝?」 七宝:「も、もうそんな過ぎた事、忘れてしまったわい/////。」 何とか必死に誤魔化そうとするが、一度その様な話しが始まってしまっては、このぐらいの年の 女子ではそう簡単に誤魔化しきれない事だったが、あんまり七宝が必死だったためあかねはそこで 七宝への追求を終わりにした。 あかね:「そぅ、分かった。もういいわ。無理に聞くのもかわいそうだし。」 かごめ:「そうね。それじゃあ、次ぎに休む時に私が詳しく教えてあげるから楽しみにしてて。」 あかね:「わかった、楽しみにしてる。」 七宝:「(ふぅ~、おなごは本当にこう言う話となると目の色が変わるのぉ。)」 七宝は、改めてそのような事を実感していた。 良牙:「くっそ~、歩き詰めでクタクタだってのになんでこんな事しなくちゃなんねんだ?」 ここは、とある宿場町にある宿の裏方。良牙、ムースの二人は薪割や水汲み、風呂焚きなどと言った 雑用をこなしている真っ最中である。 ムース:「仕方ねぇだ、なんとかして金を稼がなければ飯も食えんことなんじゃし。」 良牙:「そう言う事言ってんじゃねえ。何でおれ達二人なんだ!?まぁ、らんまは女になってシャンプーと 仲居の仕事をしているのは良いとしてだ、あの三人はどうしたんだよ!?寝てるだけじゃねえか!」 良牙の言うあの三人とは、言うまでもなく九能に玄馬に早雲のことである。で、この三人は言うと、 疲れ果てていたため、『宿の人間に働いても大して使えないから明日から』と言われ、貸された部屋で ぐっすりといびきを掻いて寝ていたのであった。 ムース:「あの様子じゃいてもいなくても変わりねえだ。それより、明日に今日の分も含めてこき使えば良い。」 良牙:「ま、もうほとんどやる事は終わったんだし、おれ達はそろそろ休もうぜ。」 ムース:「ああそうじゃな。シャンプーには悪いが、おらたちは先に休みを貰ってくるとしよう。良牙、頼んだぞ。」 ムースはそう言うと、どさっとその場に倒れ込むように座った。 良牙:「しゃ~ねぇ、じゃあちょっと行って来るぜ。」 ムース:「頼んだぞぉ、良牙~♪」 ムースは宿の中へと向かっていく良牙の背中に向かって、手を振って見送った。 そのころ、仲居の仕事をしているらんまとシャンプーは最後の仕事に取り掛かっていた。 仲居1:「じゃあ、あんたは二階の座敷から終わった食事の御膳を持ってきて。」 シャンプー:「はい!」 仲居2:「ほらほら、ぼ~っとしてないであんたも行くんだよ!それが終わったら今日はもう休んで良いから。」 らんま:「は、はい!」 宿に着く前に、あれだけの道のりを歩いてきたのにもかかわらず、シャンプーは普段猫飯店で ウェイトレスをしてるためここまで難無く仕事をこなしてきたが、らんまはいくら運動神経が 良いとは言え、慣れない仕事のために心身ともにボロボロであった。 らんま:「はぁ~、シャンプーよくそんなに動けるなぁ?」 シャンプー:「私普段からこう言う仕事は慣れてるね。でも、さすがにちょっと疲れてきたね。」 らんま:「ちょっとだぁ?おれなんかもうクタクタだぜ。でもまぁ、さっきこれで今日は終わりとかなんとか 言ってたな。早いとこ終わらせて休みたいぜ。」 らんまは愚痴をこぼしながら、二階へと続く階段をを登っていく。ちょうど二階に着いた時に シャンプーがらんまにある提案を持ちかけてきた。 シャンプー:「それじゃあ早く終わらせるために、私とらんまでそれぞれ右側と左側の部屋を分担して早くに 御膳を回収できるかで勝負するね。そうすればきっと早く終わるよ。」 らんま:「冗談じゃねえよ。さっきも言ったとおりおれはクタクタで、勝負なんか出来る状態じゃねえぜ。」 シャンプー:「はは~ん、負けるのが怖いのだなんま?」 らんま:「な、なんだと!よ~っし、そこまで言うんだったら、この勝負受けてやる。」 らんまは見事にシャンプーの兆発に引っかかり、勝負をする事になった。 シャンプー:「それじゃあ、私が勝ったら私とデートするね♪」 らんま:「よ~し、おれが勝ったら猫飯店の料理を一週間ただにしろよ。」 両者ともに、もうお約束事となっている条件をそれぞれ出した。 シャンプー:「わかた。そのかわり、らんまもちゃんと約束守る。よいな?」 らんま:「おぅ、男に二言はねぇぜ。」 シャンプー:「それじゃあ、はじめるね。三・・・・・二・・・・・一・・・・・零っ!!」 掛け声と共にらんまは右側の、シャンプーは左側の部屋からものすごい速さで膳を回収して行った。 座敷にいた客もあまりの速さにただ唖然と見ており、途中すれ違った仲居も驚いた表情で唖然としていた。 そして、勝負の結果・・・。 らんま:「ちっきしょ~、あともうちょっとだったってのに・・・・・。良牙、おめぇがあんなとこで出てこなきゃなあ、 おれが勝ってたんだぞ!どうしてくれるんだ、せっかく一週間無料だったのに!?」 良牙:「うるせえ!貴様ら二人がこんなしょーもないふざけた勝負なんてしてるからだ!」 そう、この勝負途中までらんまが優勢だったのだが、らんまの前に良牙が現われて、そのまま二人とも ぶつかってしまい、その隙にシャンプーがらんまを抜かして勝負が決まったと言うわけである。 シャンプー:「でも、そのおかげで私勝てた。良牙、感謝するね♪」 良牙:「こんな事で、感謝されても嬉しくもないぜ!せっかく、これから一眠り付こうと思ってたのによお、 どうすんだよ、このありさま?」 良牙はぶつかった際、膳に残っていた食べ残しを頭から被っていたのだった。 らんま:「どうするって言ってもよぉ、何ともできねえしなぁ・・・。」 仲居1:「こらあんた達!なにこんなとこでサボってんだい!?って、なんだいその格好?良牙って言ったっけ? そんな姿でうろつかれたら、お客さんに迷惑だよ!西外れに温泉があるからそこ行って洗っといで。」 そう言い残して、突然声をかけてきた仲居1は、やれやれといった雰囲気でまた仕事場へ戻って行った。 シャンプー:「温泉があるのか・・・。らんま、これからそこに行ってみないか?」 らんま:「温泉かぁ。別にこの後どうするでもねえし、ムースも呼んで行ってみるか。」 良牙:「んじゃ、早いとこ行ってゆっくりと浸かってこようぜ。」 らんま:「そのまえに、男に戻って行かねえとな。このままじゃ入れねえよ。」 らんま達は裏口にいるムースを呼びに行き、教えられた場所へと向かって行った。 しかしここで、先ほどらんま達に温泉がある事を教えた仲居1はある重要な事を思い出した。 仲居1:「しまった、あそこは女しか入れなかったんだ。あっちゃ~、悪い事したなぁ。ま、いいか。」 と簡単に流して仕事に取り掛かった。一方、そんな事とはつゆ知らず乱馬達はその温泉があるところに 到着してしまった。着いたとたんに乱馬達は衝撃の事実に唖然とした。 乱馬:「何!?」 ムース:「それは本当だか?」 管理者:「はい。ここは女性専用の温泉場ですので、男性が入る事は許されてはおりません。入るのであれば、 こことは正反対の東外れにある男性専用の温泉場まで行って下さい。」 『女性専用』と聞いて乱馬、良牙、ムースはがっくりと肩を落とした。 シャンプー:「三人には済まないが、先に入らせてもらうね。乱馬達もゆっくりしてくるよろし。」 シャンプーはそんな三人をよそに、一人温泉へと向かって行ってしまった。 良牙:「と言う事は、ここまで来たのは・・・。」 ムース:「無駄だった・・・と言う事のようじゃ。」 乱馬:「そりゃねーだろ・・・。」 三人はがっくりと肩を落として、正反対の所にある男専用の温泉に向かって歩き始めた。 夕日が沈む美しい景色もあって、その三人の姿はより情けない姿に見えたと言う。 犬夜叉:「はぁ~、もう夕暮れじゃねえか。」 犬夜叉達一行は、乱馬達を追って日の光が差し込んでこない程の薄暗い森をやっと抜け出し、 乱馬達がいる宿場町へとやってきたのだった。 弥勒:「夜にならなかっただけでもましです。」 犬夜叉:「それもそうだな。んでかごめ、どっちから気配するんだ?」 かごめ:「ん~っと、こっちの方。」 犬夜叉:「こっちだなっ!!」 そう言ってかごめは気配がするほうを指差した。するとすぐに、犬夜叉がその方向へ駆け出していった。 その後にかごめと七宝も追いかけて駆けて行った。 かごめ:「ちょっと、一人で先に行かないでよ。」 珊瑚:「まったく、犬夜叉のやつは・・・。」 弥勒:「まぁまぁ、私達も後を追いましょう。」 弥勒と珊瑚も犬夜叉達の後に続いて歩いていった。 右京:「うちらも行こっか、あかねちゃん?」 あかね:「ええ、そうね。・・・この町にいるのね乱馬達は・・・。」 あかねと右京、そしてコロンも犬夜叉達のあとに続いて歩き始めた。 右京:「そやね、うちらやっと追いついたんやね・・・。そうそう、そう言えば一つやらなあかん事があったな。」 あかね:「え・・・?」 右京は?マークを浮かばせるあかねの前でちっちと指を振って見せた。 右京:「はぁ~~、かごめちゃん達の誤解を解くんやろ。このままやったら、乱ちゃん達が退治されてまうで。」 あかね:「そっか、かごめちゃん達は今追ってるのが乱馬達とは思ってなかったんだったわね。」 コロン:「おぬし忘れて追ったのか?じゃがまぁ、なるようにはなるじゃろうて。」 あかね:「そうね・・・って、私たち置いてかれちゃったわよ!」 犬夜叉達はすでに遥か前方を歩いていた。よく見ると、こちらに向かってかごめが手を振って 呼んでいるのが見える。 かごめ:「そんなところで何やってんの~!置いて行っちゃうわよ~!」 コロン:「すまんすまん、すぐ行く!ほれ二人とも、もたもたするでない。走って追いかけるぞ。」 かごめの呼びかけにコロンが答え杖を使って駆け出し、二人に走るよう促す。 二人も置いて行かれないように走り出した。 右京:「(もうすぐ会えるさかい、乱ちゃん待っててや。)」 あかね:「(乱馬達はここにいるとしても、おじいちゃんも一緒にいるのかしら。あのおじいちゃんの事だから きっと一緒には行動してないんじゃ・・・?)」 それぞれ思い思いの事を考えながら走って追いかける。そしてその後、かごめの先導により ある建物の前に到着した。そこは、数分前に乱馬、良牙、ムースが追い返された温泉場だった。 弥勒:「ほぉ~、温泉ですか。しかも入浴料が無料とは。良いですねぇ、みんなで入りましょうか?」 犬夜叉:「何馬鹿な事言ってやがんだ、さっさと中に入るぞ。」 弥勒:「はいはい、分かりましたよ。まったく、本当に犬夜叉は仕事熱心ですなぁ。」 ????:「お待ちください!」 温泉に入ろうと入り口に差し掛かった犬夜叉と弥勒の前に一人の女性が中から出て来た。 弥勒:「あなたは?」 管理者:「私はこの温泉の管理を任されております者です。それよりも、ここはご婦人のみしか入ることが 出来ませんので殿方は悪いのですがご遠慮ください。」 弥勒:「そ、そうでしたか・・・・・はぁ~。」 珊瑚:「何がっかりしてんのさ?」 弥勒はがっかりと肩を落としため息を漏らす。かごめや七宝は毎度の事に笑いながら呆れている。 犬夜叉:「そんじゃ、しょうがねえ。かごめと珊瑚で行ってきてくれ。」 かごめ:「うん、わかった。あかねさん達も行く?」 あかね:「もちろん行くわ。私温泉大好きっ♪」 右京:「うちも行く。せっかくただで入れるんやったら、入るっきゃない。」 あかね、かごめ、右京の三人は大はしゃぎで中へと入っていった。 犬夜叉:「ったく、あいつら・・・・・目的忘れてんじゃねえのか?」 珊瑚:「心配しなくても大丈夫だよ、ああ見えてもかごめちゃんはしっかりしてるんだし。」 犬夜叉:「とにかく、おれ達は中に入れねえんだ。しっかりとかけら見つけて来いよ・・・・・。 ん、ばあさんなにしてんだ?」 犬夜叉は横を通り、入り口へと向かうコロンに気いて声をかけた。 コロン:「なにって、わしも入ってくるに決まっておるじゃろ。」 犬夜叉:「ばあさんも入るのか!?」 コロン:「何を言っておるんじゃ。何か、おぬしはわしが入ったらいかんと言うのか?」 コロンは何か不服そうな表情で犬夜叉を睨みつけ、。 犬夜叉:「だって、ばあさんは齢五百歳の妖怪だろ風呂なんて関係ねえんじゃ・・・・・。」 コロン:「誰が齢五百歳の妖怪じゃ、誰が!」 コロンは犬夜叉が全て言い終わる前に、杖で頭を殴った。殴られた犬夜叉は頭を抑え痛みを堪えている。 コロン:「まったく・・・珊瑚、そんなやつは放って中に入るぞい。」 珊瑚:「は、はい。じゃあ、入ってくるからかけらの事は私達に任せておいて。」 コロンと珊瑚も続いて中に入っていった。その後に七宝もついて行ったが、いくら小さくても男であるには 変わりないと言われ中には入ることが出来なかった。 弥勒:「さてと、これからどうしましょうか?出てくるまでここにいるのもなんですし・・・」 犬夜叉:「そうだな・・・。なぁ、あんた。どこか暇つぶしでも出来るところないか?」 と犬夜叉は、先程の管理者の女性に声をかけた。 管理者:「そうですねぇ、しいて言えば、町の東はずれに、殿方だけが入れる温泉がありますのでそちらに 行ったらどうですか?先程のお連れの方には私から言っておきますので。」 犬夜叉:「温泉ねぇ、かごめ達だけが入るのもなんかつまらねえしな、行ってみっか?」 弥勒:「男だけですか・・・・・。ま、暇つぶしにはなりますし行きますか。」 七宝:「その言い方、しょうがなく行くみたいに聞こえてくるんじゃが。」 犬夜叉:「おっし決まりだ。そんじゃあ、事伝え頼むな。」 犬夜叉と男だけと言う点であまり乗り気ではない弥勒は、その東はずれにあると言う温泉へと向かった。 その頃かごめ達は、温泉の脱衣所にいた。 あかね:「わぁ~、広~い!ここが本当にただでは入れるなんて信じられない。」 右京:「ええやん、ただに越したことはないっ。ゆっくりと浸かってのんびりしようや。」 広々とした温泉を目前にあかねと右京は、はしゃぎにはしゃぎまくっている。 が、かごめと珊瑚はそうではなかった。 珊瑚:「かごめちゃん、どこにあるかわかる・・・と言っても、着物が置いてあるかごは一つだけだけど・・・。」 かごめ:「うん、やっぱりこのかごから気配がする。」 珊瑚:「と言うことは、今入ってるのがこの着物の持ち主だね。」 かごめ:「そうなるわね。とにかく、入って様子を見ましょ。あかねさんも右京さんも 気をつけて入ってね・・・って、二人とも!?」 かごめが二人にそう言おうと思って振り向いたところ、二人はすでに服を脱いで温泉へと 入っていった後だった。しかも、どうやら追っている連中のうちの一人と思われる人影に 近づいていってるところであった。 かごめ:「ちょっと二人とも~!!」 珊瑚:「そいつに近づいたらダメだ!」 しかし、二人はそんな事が聞こえないと言ったように人影に近づいていく。 かごめ:「どうしよう、もしかしたら大変なことになっちゃうかも!」 珊瑚:「しょうがない。こうなったら・・・飛来骨!!」 珊瑚は背中に背負っていた大きなブーメラン状の武器、飛来骨をその人影に向かって投げつけた。 だが、飛来骨はいとも簡単に手ぬぐいで弾き飛ばされてしまった。すると、人影が立ち上がって 珊瑚に向かって大きな声で怒鳴りつけてきた。 ????:「いきなり何するね!?私、お前にこんな事される覚えはないね!!」 と怒鳴りつけてくるその人物にあかねは、かごめと珊瑚が予想もしなかった事を口にした。 あかね:「やっぱり。シャンプーだったのね。」 シャンプー:「・・・ん?あいやぁー、あかね!?」 右京:「うちもおるで、シャンプー。」 シャンプー:「右京まで!?どうしてここにいるのか二人とも!?」 いきなりここにいるはずのない知人が二人も現れたことに、シャンプーは混乱し始める。 だが、ほかにもう二人頭の中がパニック状態になっているものがいた。 珊瑚:「こ、これは一体・・・?」 かごめ:「ど、どういう事なの?」 (第九話・完) 目次へ 次のお話へ