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To: followup@rananim.ie.u-ryukyu.ac.jp
From: kono@ie.u-ryukyu.ac.jp (Shinji KONO)
Newsgroups: fj.rec.sf 
Subject: 宇宙消失  Quarantine
Organization: Information Engineering, University of the Ryukyus
Reply-to: kono@ie.u-ryukyu.ac.jp
Date: Thu, 23 Mar 2000 20:51:43 +0900
Message-ID: < 8816.953812303@rananim.ie.u-ryukyu.ac.jp> 
Sender: kono@rananim.ie.u-ryukyu.ac.jp

河野 真治@琉球大情報工学です。

順列都市にはまったので、グレッグ・イーガンの「宇宙消失」
も読んでみました。

こいつって、自分のアイデアを登場人物に、あまりはっきりと説明
させない人なのね。で、あるところから、登場人物は、すべてわか
っている... みたいになる感じ... ま、それは、それで悪くないん
ですが... 

原題は、タイトルはQuarantineだから、隔離ですね。日本沈没みた
いな邦訳よりは地味な隔離の方が好み。でも、創元だから仕方ない。
順列都市は Permutation city だから直訳でしたね。直訳路線にし
て欲しいところ... 

なんか最初は大薮春彦みたいな感じ。グレッグ・イーガンでなけれ
ば、途中でやめていたような気がする。順列都市も、エンジンがか
かるまで長かったけど、こっちは、もっと長いですね。後半は、
いっきに進むので許します。

似たようなネタだと、JPホーガンの量子宇宙干渉機ってのがあるん
ですよね。実験のところとかはそっくり。でも、ホーガンの方が力
尽きているのに対して、こっちは頑張ってます。

アイデアは面白い。順列都市もそうだったけど、こういうのが読み
たかったんだよなという話ですね。なので、期待に違わず面白い本
でした。

以下はねたばれ....







脳が波束の収縮を引き起こすってのは、割と古くさい考えかな... 
フォンノイマンとかは、そう考えていたようなので、まぁ、良くあ
る考えなのでしょうけど。多世界解釈を出すなら、もう一方の複雑
さに帰着させる説も出して欲しかったところです。でも、後者を認
めちゃうと、この小説ではまずいか。

僕は、コンピュータでも波束は収縮するという立場を取るので、
どちらかといえば、後者の説に近いかも知れない。そうすると、
この小説は僕に取っては間違いだけど、でも、そんなこととは
関係なく面白いことも確かなので、Okです。

エピローグは意見のわかれるところか? 僕は、結局、収縮しない
世界になったと解釈しますが、そうでないように解釈する人も
いるでしょうね。それが、まさに、ねらいのエピローグなんだろう
な。

むしろ、収縮しない世界での住人の話を書いて欲しかった気もする
けど、それは僕等には知り得ない世界なのかも知れない。

波束の収縮が時間の方向性を決めているというのは、確かにその通
り。簡単に書いているけど、結構理解してない人も多いかも知れな
い。そうはっきり書いてある物理の教科書は少ないんですけどね。

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Shinji KONO @ Information Engineering, University of the Ryukyus
河野真治 @ 琉球大学工学部情報工学科
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