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From: Ritter ABC 
Newsgroups: fj.soc.copyright
Subject: Re: Re: 30条と49条 (罰則関係 	)
Date: Fri, 29 Sep 2000 23:46:52 +0900
Organization: Nifty News Service
Lines: 177
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NNTP-Posting-Date: 29 Sep 2000 14:46:54 GMT
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こんにちは。

Hideaki Iwata  さん wrote:

>  一つは「もともと著作者の権利に含まれていないケース」であり、もう
>  一つは「概論的には著作者の権利に含まれるが、様々な理由からそれを
>  法が制限しているケース」です。
>  
>  その上で、コンメは、30条はその両方の性質を持っている、と述べてい
>  ます。なぜそう述べざる得ないか、ってのは、多分、ABC氏も小倉氏も
>  ご存知のはず。

それは、どこに記述されているのですか、御指摘下さい。


>  30条2項に「補償金制度」が含まれているからです。
>  補償金って言葉からも判る通り、
>  
>  もともとは著作者の権利であるが、社会的要請によりその権利の一部を
>  法により制限している。しかしながら、その制限によって著作者の経済
>  的損失が著しい旨を認めたから、補償金制度を整備することによって、
>  その経済的損失を最少ならしめ、文化の発展を図ろう!
>  
>  ってのが、その趣旨です。
>  従って、補償金って言葉を条文上に含んでしまった以上、30条は上記
>  した二つの類系のうちの前者でのみ存在することはできなくなったので
>  す。

上記の点は、全くの誤解としか言いようがありません。

まず、そのことは、法改正の経緯からして明らかです。

そもそも、30条2項は、それまで私的使用目的により適法に行うことができ
た複製行為のうち、デジタル方式による録音、録画が大量に行われることによ
ってCD等の売上げが減少しているという状態(複製権者が経済的に不利益を
受けている状態)が妥当ではないとして、それらの行為に限って、私的使用目
的により適法に複製できる場合でも補償金を支払わなければならないようにす
るために設けられた規定です。

つまり30条1項により、一般利用者の自由利用とされ、複製権の範囲外とさ
れている複製行為の一部について、補償金を支払わせるという規定です。

補償金を支払わなければならないことになる複製行為は、30条1項により適
法に行うことができるので、その行為が違法であることを前提として損害賠償
や不当利得の返還をさせることはできません。そこで、「補償金」として支払
わせることにしたものです。

その限度では、立法者は、30条2項を設けることにより、複製行為につき、
複製権の対象とするものと一般利用者の自由利用とするものとの切り分けをし
なおして、複製権の及ぶ範囲を拡大したことになります。

30条2項は、私的使用目的による適法な複製行為について、それがそれまで
複製権の範囲外であったために、法律上何ら対価を要求をすることができなか
った複製権者に補償金を受領する権限を付与するための規定です(補償金の根
拠規定といいます。)。

30条2項がなければ、複製権者は、補償金を得ることはできません。もとも
と著作者の権利に含まれるものであれば、そのような規定がなくとも、損害賠
償金をとることができるのです。

したがって、30条2項も、著作権の権利制限に関する規定であり、30条1
項により制限された複製権を一定の範囲で拡張するものです。

補償金を請求する権利が元々著作者の権利であるなどという論理はどこからも
出てきません。

それどころか、改正前と比べると、著作者の権利でなかったにもかかわらず、
著作者に補償金を受領する権利が与えられたのです。

 
>  「著作者が被っている経済的損失」って概念自体、「何らかの理由によ
>  り法が著作者の権利を制限している」っていう前提がないと導入できま
>  せん。

そのようなことはありません。
私的使用目的で簡単にCDが複製できるようになると、本来ならCDを購入す
るはずの人達が購入しなくなり、著作者は、経済的な不利益を被ります。
しかし、そのような複製は30条による限り全く適法な行為であり、仮に著作
者がそのために経済的な不利益を被っていたとしても、著作者の権利侵害とは
なりません。そこには著作者の複製権が及んでいないからです。

経済的損失は、権利侵害を前提とはしません。

権利侵害ではないから、「補償金」なのです。


>  百歩譲って、現行著作権法が制定された昭和45年当時、30条以下が全て
>  前者の類系だったとしましょう。(仮定ですよ、あくまで)
>  しかし、補償金制度が導入された時点で、その考え方は一部修正された、
>  ってみなすのが適当であり、また、それこそが立法趣旨な訳です。
>  
>  # もともとがそうでなかった可能性は、例えば「著作権法概説」半田
>  # 正夫 著/一粒社  1996年第7版第3刷発行 の第5章「著作権の限界」
>  # 第一節「序説」154頁の記述に記されています。
>  # 半田先生はこの著書の中で、著作権の公的限界と時間的限界に分け
>  # て現行法の立場を説明されています。
>  
>  この現実を、ABC氏も小倉氏も良くお判りのはずだ、と私は思っている
>  んですけどね。

この現実とは何でしょうか。
半田先生の教科書にも岩田さんのような見解は、どこにも述べられていないは
ずです。
30条以下を著作権の「内在的制約」と説明される先生の理論から岩田説は到
底導き出すことはできません。


>  立法(「著作権法の一部を改正する法律」の国会審議と可決・成立)の
>  中で、時代と共に著作権制度が変容しているのは、明らかです。
>  また、そういった変化を受け入れることこそが、法解釈論だ、と私は
>  主張しているだけです。
>  
>  # 理念は別ですよ。でもそれは立法論でやって下さい、ってこと。

趣旨不明です。
 
>  なぜ、コンメなり田村先生の著書なり(私は確認してないけど)加戸先生
>  の著書では「本来的に含まれない」部分と「法により制限している」部分
>  がある、と述べているのか、が。

これ、田村先生の本のどこを指摘されているのでしょうか。
御教示下さい。

>  
>  # 補償金って用語が悪い。その言葉が誤解を生んでいる、って主張も出来
>  # るけどね:-)個人的には、作花先生の、「制限って言葉を使ったのが悪
>  # い。それによって誤解を生んでいる。」って説は、受け入れる気がない。
>  # だって、それって一種の「葵の御紋」なんだもん(^_^;;)
>  # どんな状況でもこの論理を適用すれば、無敵になっちゃうよ:-)
>  
>  ABC氏にお聞きしたい。
>  本来著作者の権利に含まれていないはずの「私的使用のための複製行為」
>  に対し、デジタル方式の記録媒体に限って「補償金」という制度が導入さ
>  れた理由はどこにあるのか、を。
>  私的使用のための複製が本来的に著作者の権利に含まれないのならば、
>  「補償」などという用語を使うことは適当ではないはず。
>  せいぜい「寄付」って言葉を使うべきではなかったのか?
>  これもまた「条文上の用語選択のミス」だと主張されるのか?


上記の点については、すでに十分説明しました。
法30条2項が「補償金」という語を使用していることは、むしろ、私が述べ
ていることが正しいことを示しています。

なお、私的使用のための複製が本来的に著作者の権利に含まれているというの
であれば、その根拠規定を示してください。

もっとも、21条は、包括的に「複製をする権利を専有する」と規定している
ので、同条の規定する「複製をする」という内容の中には私的使用目的による
複製も当然に含まれます。だからこそ、30条以下に、その範囲を制限する規
定を置くことにより(分かりやすく言えば、21条と30条以下の条文があい
まって)、著作者が享有する複製権の対象となる複製と一般利用者の自由利用
とされる複製とを切り分けているのです。

しかし、法が21条と30条以下の規定を用いてそのような切り分け方をして
いるのは、作花氏が述べておられるように、立法技術の問題であり、著作権は
本来全部著作者に属すべきものであるとの価値判断の下にされているものでは
ないのです。
ですから、法が21条において複製権を包括的に規定し、30条以下で複製権
の範囲を制限するという立法方法を採用している点をとらえて、30条以下の
規定により「本来著作者が有する権利」が制限されていると述べるのは、法解
釈として間違っているのです。

もし、以上の法律の条文の構成を正確に述べるとすれば、「21条において包
括的に定められている複製権が30条以下の規定により制限されている」と表
現すべきでしょう(表現として「包括的」が良いか、「概括的」が良いか、ち
ょっと判断できません。)。

そして、著作者が有する複製権は、当初からそのように制限された権利なので
す。

法律論  大歓迎!

--
Ritter ABC  
 

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