No. 217/305 Index Prev Next
Subject: 皇帝の新しい心 __
       ペンローズ
From: kono@ie.u-ryukyu.ac.jp (Shinji KONO)
Organization: Information Engineering, University of the Ryukyus
X-Image-URL: http://www.ie.u-ryukyu.ac.jp/~kono/skono.gif
Fcc: send
References: < 3990888news.pl@rananim.ie.u-ryukyu.ac.jp>  < 3991092news.pl@rananim.ie.u-ryukyu.ac.jp>          
    
X-Newsreader:  news.pl,v 1.11 2003/10/08 11:51:01 
Message-ID: < 3991652news.pl@rananim.ie.u-ryukyu.ac.jp> 
Date: Thu, 14 Apr 2005 21:05:04 +0900
Newsgroups: fj.rec.sf
MIME-Version: 1.0
Content-Type: text/plain; charset=" iso-2022-jp" 
Content-ID: 
Content-Transfer-Encoding: 7bit

河野真治 @ 琉球大学情報工学です。

SFだよね。SFでしょ? ってわけで、fj.rec.sf なんですが...
まだ、読んでませんでした。ごめんなさい。(なんでごめんな
さいかは秘密)

長い。数式結構あるし。でも横書きだから読みやすい。これ横書き
にするの大変だったろうなぁ。内容的に多肢に渡っているわけです
けど、僕には筋があるように読めました。SF として面白いと思う。
ペンローズ博士はノーベル賞はどうなんだろう? 

テューリングマシンから古典力学、相対論、量子力学、一般相対論、
宇宙論と広がって行くわけですが、狙いは意識と観測理論にあるわけ
だね。

いくつか期待外れの部分があるのは15年前の本だから仕方ないか。
コンピュータ素子の非可逆性に関する議論はないし、量子コンピュ
ータはほとんど出て来ないし、最後の脳の部分は大雑把だし。まぁ、
知っている範囲の話が多かったので楽に読めました。計算可能性
の部分とかは本当はいらなかったんじゃなかと思う。

やっぱり、面白いのは、UとRの話かな? 波動関数の時間発展演算子
Uと、観測による波束の収縮を表す演算子R ですね。

    U はunitaryの略だな。Rはなんだろう? 

特に、位相空間の例は、エントロピーの増加という熱力学の第二法
則の説明として秀逸。これだけビジュアルに説明したのは初めて見
た。ただ、本人も書いている通り、古典力学の位相空間と、量子力
学的なヒルベルト空間は別物なんだよね。シュレディンガー描像
からしか見てないのも少し残念。(RとUにわける以上、しかたないけど)

    位相空間ってのは、古典的物理状態を一点で表す超多次元空間。物
    理状態の変化は、その中で一つの軌跡になる。位相空間の体積がエ
    ントロピーに相当する。

で、宇宙論的に、位相空間の配置と第二法則、つまり、時間が
若い頃のエントロピーの異常な小ささを、時間的非対称な重力
理論(CQG)でなんとかしたいってわけなんだよね。WCH みたいな
のは、一般相対論的な言葉でなくてもいいと思うんだけど。
ブラックホールとホワイトホールがおなじだけある時間的に
対称な宇宙っても面白い。

なんだけど、何故か話は、
    ブラックホールが、位相空間の領域を減少させる
のに対応して、
    収縮演算子Rは、位相空間の領域を拡大させる重力作用
って方に。

でも、重力と意識が関連するってのは、原初エントロピーの小ささ
が重力から生じることと、第二法則が時間の不可逆性に関わってい
るってことから、確かに、ありそうではあるんだよな。ただ、重力子
の話は、僕は良くわからなかった。

R と脳の機能と構成の関係を解き明かしたかったのでしょうけど、
今一歩かな。今は、どんな研究があるんでしょうね。論文探して
見るか。

物理学者って時間空間を「強固な実在物」として扱うのが好きなん
だけど、僕は割と、場の量子論以前の「時空間はオブザーバブル」
って方が正しいと感じてます。なので、宇宙論に、あまりにビジュ
アルな図や感性が入っていると疑う。位相空間から見れば、時間空
間はごく一部の次元に過ぎない。位相空間主体に宇宙論を展開する
方がいいと思うんだけど。

---
Shinji KONO @ Information Engineering, University of the Ryukyus
河野真治 @ 琉球大学工学部情報工学科
Next
Continue < 3991868news.pl@rananim.ie.u-ryukyu.ac.jp>