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From: Richter ABC 
Newsgroups: fj.soc.copyright
Subject: Re: Nスぺをダビングさせて下さい
Date: Thu, 20 Jul 2000 17:09:54 +0900
Organization: PLALA
Lines: 113
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NNTP-Posting-Date: 20 Jul 2000 08:09:57 GMT
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こんにちは。
興味のある点ですので、私見を述べさせて頂きます。

"岡っ引き" さん wrote:

>  日本語が変でした。
>  
>  >  # テレビで放送したものの場合, 「私的複製」の目的はふつうは「あと
>  >  # で (繰り返し) 見るため」じゃないでしょうか? 「他人に貸す」とい
>  >  # うのは, 目的に入らないという判断をされると思う.
>  
>  人によって解釈が違うということでしょうか?
              ↑
    ここは、法律論としてであれば、解釈が異なることはまずないでしょう。
	
    自分や家族が見るためにテレビの放送を録画することは、私的使用目的による
    複製行為の典型であり、著作権法30条1項により認められています。
	
    しかし、自分が見るためではなく、他人(家庭内の人とこれに準ずる範囲内の
    人を除く。以下、同じ。)に交付して見させるため(貸すため、又は譲渡する
    ため)にテレビ放送を録画するのは、私的使用目的の複製には当たりません。
    ですから、違法な複製です。
    
    また、自分が私的使用目的の下に録画したビデオテープを使って、他人が見る
    ためのテープを作成すること(ダビング)は、私的使用目的とはいえないので
    30条1項により認められた複製行為ではなく、違法な複製行為になると思い
    ます。
    
	もっとも、ここが重要なところですが、私的使用目的の下に録画したテープそ
    のものを、後に他人に貸したり、譲渡することは、それが「頒布」といえない
    ものであれば、違法ではありません。著作権法49条1項1号は、30条等の
    目的以外の目的で、30条1項の適用を受けて作成された著作物の複製物(最
    初の録画ビデオ)を頒布する行為は、21条の複製行為とみなす旨規定してい
    ますから、「頒布」に当たる行為のみが、違法な複製行為になるわけです。
	
    そこで、次に、「頒布」とは何かが問題となりますが、これは、著作権法2条
    1項19号で次のように定義されています。
    「有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は貸与
      することをいい、映画の著作物又は映画の著作物において複製されている著
      作物にあっては、これらの著作物を公衆に提示することを目的として当該映
      画の著作物を譲渡し、又は貸与することを含むものとする。」
	
    つまり、テレビ放送は、映画の著作物に当たるでしょうから、録画又はダビン
    グしたテープを公衆に譲渡又は貸与する行為はもちろん、そのテープを使って
    公衆に当該テレビ放送を見せることを目的として、そのテープを譲渡又は貸与
    する行為も頒布に当たります。
    
    そうすると、次に「公衆」とは何か、ということが問題となります。
    一般に「公衆」とは「一般人、すなわち特定の法律関係における当事者以外の
    不特定多数の者」をいいますが、著作権法2条5項は、「この法律にいう「公
    衆」には、特定かつ多数の者を含むものとする。」と規定しています。ここが
    重要です。
	
	
>  録画したテープの貸し借りはごく普通に行われているように思うのですが
>  それらが問題だっていうのは、すこし抵抗があります。
>  
>  「先週のBSでやってた、レイソル対アントラーズ戦のビデオ貸しくれない?」
>  
>  と、懇願されたら
>  
>  「あなたの行為は著作権法に違反する可能性があります。NHKからの許可
>  はもらいましたか?」
>  
>  とは、とても言えん。(私は)
           ↑
先に述べたことを前提として、上の設例について考えてみましょう。

あなたが、後で自分が見るためにテレビ放送を自分で録画することは私的使用目的
による複製行為ですから適法です。
また、特定の友人から、自分も見たいからそのビデオを貸して欲しいと言われて録
画したテープそのものを貸す場合には、貸す相手は、特定人であり、かつ、1人で
あって、公衆ではありません。また、自分で見るために貸して欲しいというのです
から、公衆に提示するための貸借でもありません。したがって、上記のような貸与
行為は、頒布には当たりません。ですから、適法です。

設例の中心は、以上のようなものですから、違法な複製には当たらないでしょう。

しかし、職場のみんなで見るためにとか、クラスの人たちで見るために貸して欲し
いという場合には、特定多数の者に提示することを目的とするものですから、その
ような目的のために自分が録画したビデオテープを貸す行為は、頒布に当たり、私
的使用目的でもありませんから、そのための譲渡又は貸与は、複製とみなされるこ
とになります。そして、著作権者から複製権原を与えられていないので、違法な複
製になります。

さらに、職場やクラスの人たちが順次持ち帰って見るために録画ビデオを職場やク
ラスに持ってきて貸す行為は、公衆(特定多数)に対する貸与になりますから、頒
布に当たり、これも違法な複製行為となるでしょう。

以上の中心点を再度述べますと、私的使用目的でその使用者自らが録画したビデオ
テープそのものを、特定の個人に対し、その人が見るために、貸したり、譲渡した
りする行為は適法であるということです。

そして、そのようにして借り受けた人が、借り受けたビデオテープを使って放送を
見ることが適法であることはいうまでもなく、また、私的使用目的でそのビデオテ
ープから自らダビングすることも違法な複製行為ではないというべきでしょう(著
作権法30条1項)。

しかし、以上のように、複製を許されている場面が非常に狭いことに注意する必要
があります。

なお、以上の点と、ネット上で、ビデオテープを貸して欲しいという依頼をするこ
とが妥当かどうかとは、別の次元の問題であり、私は、ネット上で依頼をするのは
よくないと思っています。善意の他人に違法行為をさせてしまったりするなど(例
えば、上記のとおり、善意の人が、ネット上の依頼者のために、自分が私的使用目
的で録画したテープからダビングして送付しようとすると、そのダビング行為は、
違法な複製行為に当たります。)、いろんな弊害があるからです。

以上の点は、一応の私見ですが、間違っている点等がありましたら、御指摘下さい。

Richter ABC  
 

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