No. 666/1090 Index Prev Next
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From: Richter ABC
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Subject: 法119条、30条、49条の関係
Date: Thu, 07 Sep 2000 02:15:30 +0900
Organization: Nifty News Service
Lines: 82
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こんにちは。
重要な論点についてコメントするのを忘れていました。
追加させて下さい。
Hideaki Iwata さん wrote:
> では、なぜ49条をわざわざ入れたのでしょうか?
> 先にも紹介した通り、119条との絡みです。
> 119条では、
>
> 第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。)に
> 定める私的使用の目的をもつて自ら著作物又は実演等の複製を行つた
> 者を除く。
>
> と明記されています。つまり、30条に基づいて複製した複製物を目的
> 外に使用した場合でも、119条の罰則は適用しない、と定められていま
> す。しかし、目的外使用の中でも特に、頒布あるいは公衆への提示に
> 関しては、49条を設けることによってその頒布あるいは提示者をもって
> 複製権侵害であると定め、119条の適用を求めています。
>
> しかし、だからといって、頒布あるいは公衆への提示以外の1の要件
> に反する行為が「適法」であるかといえません。むしろ逆で、
> 1に反する利用方法は法律上許されません(これを違法と呼ぶことに
> 私は抵抗を感じますが)。だから、1に反する使用方法は著作者の
> 権利を侵害しています。従って、刑事上の責任は追及されませんが、
> 民事上の損害賠償請求及び差止請求、それに民法に則った原状回復
> 請求は可能です。
119条1号を複製権との関係で分かりやすく簡略化して記載すると、次のよ
うになります。
複製権を侵害した者(30条1項に定める私的使用の目的をもって自ら著作物
の複製を行った者を除く。)
これは、条文の建て方からして次のような論理構成になっています。
まず、30条1項により適法に複製を行った者は、「複製権を侵害した者」で
はありませんから、そもそも1号には当たりません。
かっこ内の記載は、そのことを当然の前提としたものであり、複製権を侵害し
た者の中から一定の者を除くための記載です。
30条1項は、複製行為の適法要件として次の3要件を定めています。
1. 私的使用の目的をもって複製をすること
2. 公衆用の自動複製機器を用いて複製するのではないこと
3. 使用をする者が複製をすること
1. の要件を充たしていても、2.、3.の要件の双方又は一方を充たしていない
場合には、その複製行為は、適法要件を充たさず、著作権者の許諾等がない限
り、複製権の侵害となります。
かっこ内の記載は、そのような、1.の要件は充たしているが、他の要件を充た
していないために複製権を侵害した者となる者のうち、「自ら」複製行為をし
た者に対しては、刑罰を科さないことにしていることになります。
もっとも、「自ら」と「使用する者が」とを比較すると、「使用する者が」は、
「自ら」を完全に包含していると思います。その意味で、「自ら」の方が「使
用する者が」より範囲が狭いと思います。「使用する者が」というのは、誰か
を手足のように使って複製する場合を含むでしょうが、「自ら」になると本人
が自分で複製する場合に限定されるでしょう。その結果、3.の要件を欠く場合
には、「自ら」という要件も欠くことになり、かっこ内の除外には当たらない
ことになると思います。そうすると、結局、2.の要件のみを欠く場合(つまり、
公衆用自動複製機器を利用した複製)であって、「自ら」複製行為をした場合
のみがかっこ内の記載により除外されていることになります。
かっこ内の除外があるため、119条は、民法上違法ではあるが、刑法上違法
ではないとされるものがあることを認めていることになりますね。
ちなみに、民法上違法でなければ不法行為は成立しません。
それから、49条1項1号に該当する行為を行った者は、複製を行ったものと
みなされるので、許諾等がなければ複製権を侵害したことになります。しかし、
その行為は、私的使用目的によるとは言えないので(1号の要件を参照)、か
っこ内の除外の対象となる場合はないと思います。
それでは。
Richter ABC
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