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From: Hideaki Iwata
Newsgroups: fj.soc.copyright
Subject: Re: 法30条と49条の関係
Date: Mon, 28 Aug 2000 12:45:28 +0900
Organization: WAKWAK Internet service
Lines: 240
Distribution: fj
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ひで@自宅、です。
ばっさりと焦点を絞って。でも長い。
# 引用順序が異なっている部分があります。
Richter ABC wrote:
> しかし、それは、半田先生が法律と立法技術、さらには、外国の著作権に関す
> る法令、学説等を十分理解されていたからでしょう。
うむ?
私は20冊以上の著作権関係の法律解説書に目を通してますが、
30条から50条までを「権利の制限」として解説している以外の
記述を知りません。
よかったら貴殿の考えを補強している書籍をお教えいただけま
せんか?
私は法律の専門家でもないし、専門教育も民法や商法程度しか
受けてないんで断言はできないけど、これまで調査した限りで
は、日本の著作権法はドイツ法(大陸法?)的な概念とアメリカ
法的な概念の混合物であり、概念の統一性に欠ける、と分析して
います。著作者人格権の扱いもしかり。
その上で通説に従えば、第一条の「著作物の公正な利用」を利用
者の立場から具体的に記述したのが30条から50条である、となって
いるはずなんですが...
# だからこそ、13条で「権利の目的とならない著作物」を先に
# 定めている訳なんですけど....
> そこで、私は、49条により、本来複製行為には当たらない頒布(公衆への譲
> 渡又は貸与)及び公衆への提示行為が複製とみなされる結果、それらの行為を
> 許諾を得ないで行えば、複製権の侵害になるといっているのです。(その結果、
> みなされた複製行為は、頒布又は提示がされた時点でされたことになります。)
> そこで、私は、前に次のように述べたのです。
この点では貴殿と私との見解は一致している様です。
しかし、30条の法的位置付けに見解の相違があると判断します。
私> 第三に、複製物を当初は私的使用に合致して使用者自身が使用していた
私> が、ある時で私的使用の範囲を超えた使用を使用者本人が行なったとし
私> ます。
私> この際、複製行為自体が権利侵害かどうかの判断は難しいですが、
↑
> 全く難しくありません。30条により適法に行われた複製行為が遡って違法に
> なることはありません。どうして遡って違法となるのですか。
その前に、「著作者が専有する複製権に対し、公正な利用のため
に30条によってその権利行使が制限されている」=「著作者の許
諾を必要とせず可能な」複製行動の要件は
1、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内にお
いて使用すること
2、衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製
機器を用いて複製するときを除き
3、その使用する者が
ですよね。いずれも、必要条件ですよね。
その上で30条はその文末を「複製することができる」で閉じている。
つまりは、1から3に一つでも反する場合、「複製できない」訳
です。
このうち、複製行為実施時に関係している項目は2と3です。
つまり2と3は、複製行為を行った時点で、適法か違法か(著作者
の許諾を必要とする行為なのか否か?)を判断することができます。
しかし、1に関しては、あくまでも複製後の規定です。
つまり、「複製物の使用」は「複製行為」の後に起こります。
もちろん、複製すること事体が「複製物の使用」の一形態である可能
性は否定しませんが、それとて、微小な時間軸で見ればあくまでも
複製行為の後に複製物の使用が来ることは間違いありません。
従って1の要件は、複製物の使用範囲を後々まで拘束する、と
考えるのが妥当です。
では、なぜ49条をわざわざ入れたのでしょうか?
先にも紹介した通り、119条との絡みです。
119条では、
第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。)に
定める私的使用の目的をもつて自ら著作物又は実演等の複製を行つた
者を除く。
と明記されています。つまり、30条に基づいて複製した複製物を目的
外に使用した場合でも、119条の罰則は適用しない、と定められていま
す。しかし、目的外使用の中でも特に、頒布あるいは公衆への提示に
関しては、49条を設けることによってその頒布あるいは提示者をもって
複製権侵害であると定め、119条の適用を求めています。
しかし、だからといって、頒布あるいは公衆への提示以外の1の要件
に反する行為が「適法」であるかといえません。むしろ逆で、
1に反する利用方法は法律上許されません(これを違法と呼ぶことに
私は抵抗を感じますが)。だから、1に反する使用方法は著作者の
権利を侵害しています。従って、刑事上の責任は追及されませんが、
民事上の損害賠償請求及び差止請求、それに民法に則った原状回復
請求は可能です。
くりかえしますが、30条に則って権原者に無断で複製した複製物を、
1の要件に反して使用することは、権原者の権利を侵害する行為で
ある、という認識が必要だ、という点です。
> 私的使用を目的として複製している以上、通常、複製後に「著作物の使用」はあ
> ると思いますが、「著作物の利用」が常にあるとは言えません。
私が使用と利用を使い分けているのは、例えばビデオを例に取ると、
テープに録画する行為が複製行為であることは間違いありませんか、
それを見ることだけが「使用」ではない、という点を明らかにした
かった訳です。番組を録画したテープを棚に陳列する行為自体も
「使用」ですよ、という点を強調したかっただけです。
> 録画したビデオ
> を自分で見るのは「著作物の使用」ですが、その上に別の番組を録画するという
> ことは通常のことですから、必ず「著作物の利用」を伴うとは言えません。
ビデオテープにおいては、「複製=印刷、写真、複写、録音、録画その
他の方法により有形的に再製すること」ですから、テープ自体に著作物
性が発生すると考えることはまずないでしょう。
テープに固定された情報が著作物である可能性は否定できませんが。
そういや、先日大阪は日本橋に遊びに行くと、そのはずれにある店が、
棚一面にビデオテープを並べて販売していました。一本400円から、と
書いてあるんですが、そのテープの背ラベルには、様々な映画のタイトル
が手書きされていました。
店側は中古テープの販売、って意識でいるのかも知れませんが、仮に
そのタイトル通りの著作物が記録されたまま販売されているのであれば、
仮に録画時において30条に合致していても、49条に基づき、複製権
侵害行為に当たりますよね。
# 今時、こんな店を見るとは思わなかった:-)
> それとも、「複製物」の使用、利用という語に何か特別の意味を与えて
> いますか ?
> 「複製物」というのは、例えばビデオで言えば、テレビ放映された著作物を複製
> して磁気的に記録しているビデオカセット(正確にはテープの部分のみか?)の
> ことのはずですが(だからこそ、複製物の「譲渡」ということが問題となるので
> す。)。
家庭用ゲームソフトの裁判においては、ある程度のインターラクティブ
性を持っているゲームであっても、その変化が設計者(著作者)の意図
の範疇である限り、半導体素子やCD-ROMなどのメディアに記録されている
時点で、「物に固定されている」と判断するのが一般的ですよね。
> 目的外使用であれば、直ちに権利侵害となるという条文はどこにもありません。
> しかも、49条は、目的外使用の中で特に権利侵害となるものを規定している
> わけですから、そこから除かれているものは、目的外使用でも侵害とはならな
> いことを規定しているとも言えるのです。
違いますって。49条は貴殿が指摘した通り、119条と30条の関係の中
で考えなければなりません。
49条の言う「目的外使用」は、おっしゃる通り、30条における要件の
上記1に定める目的外の中でも特に、限定して定めています。
しかし、だからといって要件1に反した目的に複製物を利用することを
30条は言及していないわけでもありません。
要件1を見直してください。
「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用
する」場合に限り、権原者に無断で複製できる、と書かれているに過ぎ
ません。
「範囲外において使用する場合」については言及していません。
従って、その場合は21条に基づいて、著作者が専有する訳です。
だから、著作者に対し「もともとは30条に則って複製したんだけど、今度
は30条の範囲外に使用したんで、その旨を許可してください。」とお願い
しなければならないんです。
その手間を省いて目的外に使用すれば、権原者の権利を侵害することに
なります。
> 上記の部分は、全く論理的ではないし、それより先の説明から導き出されるも
> のではありません。したがって、法律解釈とはいえません。
> 初めの部分は、非常に論理的なのに、ここに来るとどうしてこんなに非論理的
> になるのか不思議です。
> きっと、結論が先行しているからでしょうね。
いや、私から見ればむしろ貴殿の方が、結論が先行している様に見えます。
どこがどの様に論理的でないのかのご指摘をして頂かないと、当方としても
議論に窮します。
> 著作権を尊重すべきであるという立場の人が無理な解釈を主張すると、かえっ
> て反対意見の人に反発され、著作権自体に対する反発まで招きかねません。
第一に、私は著作権を「尊重すべき」だと確信しています。
しかしながら、同時に「公正な利用」にも心がけるべきだと考えています。
ただ、何をもって「公正」と言うのか、は法律によって定めるべし、という
のがわが国の著作権制度の根幹だと考えています。
また、その考えは通説にも合致するはずです。
で、河野氏の様に「俺の考える公正が社会の公正なんだ」っていう主張には
断固反対しますし、その様な考えが広まることは阻止します。
あくまでも「法律」の制定を通じて、「社会が考える公正な利用」を表現
すべきです。
著作権神授説と私は呼んでますが、神が著作権を人間に与えたもうた訳では
ありません。人間がその営みの歴史の中で生み出した概念(権利)です。
従って、社会的議論の末に、現行とは異なった概念が生み出されても何ら
不思議はありません。もちろん、十分に民主的で論理的な議論の末に、という
注釈は必要ですがね。
その上で、私は現行法の解釈を「無理なくする術」を議論しているつもり
です。その中で実際の社会情勢に合わない部分が明らかになったとするなら、
社会情勢を合わせるのではなく、法律を合わせれば良いのです。
それこそが主権者たる我々の責務です。
> また、誤った解釈がネット上に蔓延して混乱が生じ、あちこちで、無用な論争
> が生じてしまいます。
はて?
混乱が蔓延するのは人類の歴史の常では?
それをもって無用な論争と呼ぶのは無茶ではありませんか?
河野氏自身のそれこそ10年来の「見解垂れ流し」は、個人的には迷惑ですが、
だからといって「無用」ではないでしょう。
もちろん、河野氏が求める「fjでの合意」を実現することは、多くの人が指摘
している通り、無用な混乱を引き起こす以外の何者でもありませんが。
だからといって、彼の意思表明自体は「無用」ではありあせんん。
これを機会に著作権に興味を持ち、勉強を始めてくれる人が一人でも多く出て
くれることを願っています。
# 河野氏本人に対しては、もう何を言っても無駄だって良く理解してますからね。
> 私は、元々、ネット上では、法律に関して発言をしたくなかったのですが、匿
> 名で敢えて発言しているのはそのような現状を憂えたためです。
厳しいことを言うと、発言したくなければ発言しなければいい。
発言したければ発言すればいい。
匿名を私は好みませんが、現状のNews Systemでは匿名での投稿を阻止
できない以上、匿名を選択するならすればいい。
だからといって、それらの理由を「ネットの現状に対する憂い」などに
求める必要はどこにもないんじゃないですか?
匿名による貴殿の法律に関する発言が、存在するか否かもまだ証明さ
れていない、貴殿が言うところの「憂うべきネットの現状」の改善に
役立つと信じる方が、滑稽ではありませんか?
名を名乗って正論を述べても耳を傾ける人は極少数である、ってのが
人類の歴史の必須ではありませんか?ましてや匿名ならば、その効力は
半減以下でしょう?
著作権に関して互いに意見交換し、己の見識と理解を深める場が
fj.soc.copyright である、と気楽に考えるのが精神衛生上も良いのでは
ありませんか?
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