No. 877/1090 Index Prev Next
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From: Richter ABC 
Newsgroups: fj.soc.copyright
Subject: Re: 30条と49条 (罰則関係)
Date: Sat, 23 Sep 2000 02:08:34 +0900
Organization: Nifty News Service
Lines: 322
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NNTP-Posting-Date: 22 Sep 2000 17:08:38 GMT
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こんにちは。

Hideaki Iwata  さん wrote:

>  >  30条1項は、複製権の制限規定であり、複製行為の適法要件を規定した条項
>  >  です。
>  >  そのことは、「複製することができる。」としている条文の文言から明らかで
>  >  す。
>  
>  はい、そうです。
>  その際、複製権を制限する条件として三つ上げています。
>  その中には
>  
>  「私的使用を目的とする場合に限り」
>  
>  という一項が存在します。結局、この項目に対する理解の問題でしょう。

そのようにも言えるとは思いますが、前提が少し違うのでもう一度説明します。

権利の侵害を問題とするときは、まず、その権利の内容範囲がどのようなもの
かを決定する必要があります。

複製権について言えば、21条において、著作者は、その著作物を複製する権
利を専有すると規定して、複製権というものが著作者に原始的に帰属すること
を明らかにするとともに、その「複製」という概念を明らかにするために、2
条1項15号において、複製を録画等により「有形的に再製すること」をいう
と定義しています。

したがって、著作者が複製権を有するということは、著作者が著作物を有形的
に再製する権利を専有しているということです。
「専有する」というのは、文字通り、「専ら有する」ということであり、「独
占する」という意味です。

そして、ここで重要なのは、著作者により独占されるのは、「有形的な再製」
のみであるということです。ビデオの録画、ダビングは、有形的な再製ですが、
そのように再製したビデオテープ(複製物)を貸与したり、譲渡したり、使用
するのは、「有形的な再製」ではないので、その行為については、元々、著作
者の複製権の及ぶ「独占の対象」に入っていないのです。
そのように、元々、貸与、譲渡等は、複製権の独占対象ではないので、複製物
を貸与又は譲渡してもその行為は複製行為ではなく、複製権の侵害にはなりま
せん。
そこで、例外的に、そのような貸与、譲渡、提示などを一定の要件の下、複製
とみなすことにより複製権の対象に含めることにしているのが49条です(1
13条も同じです。)。
したがって、49条により複製とみなされる行為以外の貸与、譲渡には、複製
権が及ばないので、一般国民において貸与等をしても複製権の侵害にはなりま
せん。
それは、著作権法制定と改正の経過、法律の条文の構成からも、明らかなこと
です。

そのように、複製権が複製行為にした及ばないので、法は、頒布権(26条)、
譲渡権(26条の2)、貸与権(26条の3)などを設けることにより、著作
者の利益保護を図っているのです。
元々複製権が、貸与や譲渡に及ぶのであれば、そのように別な権利を作る必要
はありません。

以上のように、複製権は、複製行為にしか及ばないという前提がまず必要です。

そのような前提の下、30条1項は、同項の規定する3要件を充たす場合には、
「複製することができる。」として、3要件を充たす「複製」には、21条の
複製権が及ばない、すなわち、著作者の独占している複製の中に入っていない
ということを規定しているのです。

なお、「私的使用を目的とするときは」という要件は、「複製することができ
る。」ということにかかっていて、複製の要件であることが規定の文言上明ら
かです。すなわち、複製行為をする時に、私的使用目的を有することが複製行
為の適法要件とされているのです。

そして、30条は、そのように私的使用目的で複製された複製物(ビデオテー
プ)を、複製行為の後に他に貸与したり、譲渡したりするのが適法であるとか、
違法であるとかについては全く規定していないのです。

したがって、私的使用目的で複製された複製物を他に貸与したり、譲渡するこ
とが複製権の侵害になるという見解をとる場合には、なぜ、複製権の侵害にな
るのかを法律の条文や法理論に従って根拠付ける必要があります。

>  私の主張は、複製著作物を私的使用の目的以外に使用することは、30条が認
>  めた権利の制限条件に反するため、同行為に及んだ場合は、不法行為(権利
>  侵害行為)に当たる、です。先に紹介した、昭和56年審議会報告も同様の論
>  理を提示しています。

先に述べたとおり、30条1項は、複製行為の適法要件を規定したものであっ
て、同項により複製された複製物の貸与、譲渡などの要件を規定したものでは
ありません。
30条1項の「私的使用目的」というのは、複製を適法に行う要件であるのに、
いつのまにかそれが「30条が認めた権利の制限条件」といった趣旨不明の要
件になっています。文言から出てこない要件を付加するのであれば、その法的
根拠を示すべきです。
しかも、30条は、複製行為の適法要件しか規定していないのに、いつのまに
か30条が有形的再製に当たらない「貸与」や「譲渡」の適法要件まで規定し
ているといった結論になっています。そのような結論がどのような法解釈の下
に導き出されるのかそれが示されない限り、法律論として、その見解が成り立
つとは言えないというのが私の意見です。

それが示されて初めて、そういう解釈が成り立つかどうかが検討できるのです。

>  貸与行為を含む全ての行為に対し、著作者に無許可で「私的使用」以外に使用し
>  ても良い、とは30条は一切述べていない。この点は理解してくれますよね。
>  佐々木さん風に言えば、「いいとも悪いとも書かれていない以上、法はどちらとも
>  定めていない。だから、使用してもいい、って論も成立すれば、使用しては駄目、
>  って論も成立する。」ですよね。30条に限定して言えば。

30条に限定して言えばそのとおりです。

だから、私は、何度も、複製物の貸与、譲渡、提示は、30条の問題ではない
と言っているのです。
そこで、原則に戻って、21条の複製権が及ぶかという問題になるのですが、
先に述べたように、貸与、譲渡等は、有形的再製ではないので、複製権の及ぶ
行為ではなく、それによって複製権の侵害ということが生じる余地はないので
す(ただし、49条は、その特別規定として、一定の要件を充たす場合には、
複製権が貸与、譲渡等に及ぶことにしています。)。

>  その点を理解した上で、この問題に言及している唯一の文書として昭和56年報告
>  書を提示し、それをもって「通説」と主張しています。

趣旨は、理解できましたが、法律の議論をする場合には、報告書の意見は1意
見に過ぎず、それをもって通説ということはできません。


>  ABC氏が唱える説も成立する余地は十分にあると考えますし、また、非常に有力
>  なのかも知れない、と考えています。しかしながら、審議会報告書という形で文
>  書が存在する以上、「通説」はこちらである、と主張しているだけです。

「通説」の用語が法律論において使用されるものと異なります。

>  ABC氏は、審議会報告が示す解釈論は成立する余地は限りなく0に近い、ってお
>  立場ですよね。残念ながら、そういった立場は私は許容することはできません。

報告書が示す結論に理由が示されていないので、解釈論として成立するかどう
か検討のしようがないというのが私の意見です。訂正します。

>  >  私は、「家庭内に準ずる範囲内」にない例とするために「上司」という例を出
>  >  しているのです。
>  
>  繰り返しますが、この点については了解しました。
>  私が誤解していた様です。謹んでお詫び申し上げます。

いや、そう率直に謝られると、こちらが困ってしまいます。説明に言葉が足り
なかったことは事実ですからね。

私は、いつも法律家と議論しているので、ここで投稿する場合に、前提をどこ
まで説明すべきかがまだ良く分からないのです。御容赦を。

>  >  「本来著作者が専有する複製権」という部分が異なるのです。
>  >  そうではなく、価値中立的に法は切り分けているというのが私の意見です。そ
>  >  して、私が読む限り、どの基本書もそうです。
>  
>  コンメンタールの366頁には
>  
>  ----------------------------
>  著作権者は、その著作物を著作権法所定の方法で利用する排他的権利を
>  有している。したがって、第三者がこれを利用するためには著作権者か
>  ら使用許諾を受けるのが原則である。30条から49条はその例外、すなわ
>  ち著作権が制限される場合について定めたものである。
>  ----------------------------
>  
>  って書かれてますね。この文章をどう理解するのか、って問題なのかも
>  知れませんが、複製権は著作権者の排他的権利であるが、30条に示され
>  た要件に合致する場合は、著作権者の許諾なしに複製権を行使できる、
>  と解釈するのが妥当ではありませんか?

少し違うと思います。
一般国民は、複製権を有していません。私は、30条も一般国民に限定された
複製権を認めているものではないと思います(ここは、積極的に権利を認めて
いるという異論がありそうですが。。。)。
30条1項は、その要件を充たす場合には、著作者の複製権が及ばないものと
して、その限度で国民に著作物の自由利用を認めている規定です。

>  で、30条に示された「私的使用を目的とする場合に」って表現の解釈が
>  私(昭和56年著作権審議会報告)とABC氏とで異なっている、って話では
>  ありませんか?

この点については、最初に触れました。
その要件の表現の解釈の違いではなく、その要件が何の要件であるかの解釈の
違いでしょうね。


私は、上記の要件は、複製行為の適法要件と解していますし、それが条文の文
言の文字通りの解釈です。

岩田さんは、それが、貸与、譲渡などの適法要件であると主張されるのでしょ
うか?


>  法論理に従えば、30条では複製著作物(30条の三条件に則って適法に複製さ
>  れた著作物)を使用目的以外に使用する行為に対し、良いとも悪いとも述べ
>  ていない、ってのが現実ではありませんか?

現実という意味がよく分かりませんが、何も述べていないというのが私の見解
であることは何度も述べています。


>  その上で、49条は公衆に提示あるいは頒布した場合は、頒布者が複製を行った
>  とみなすと定めているから、著作権者に無断で頒布等をすると、複製権侵害に
>  当たるだけ。

そうです。しかし、わざわざ、そのような規定を設けるのは、それがなければ、
貸与等が複製との関係ですべて適法になってしまうからです。逆に言えば、4
9条は、同条の適用のない貸与等は複製とみなさないという規定でもあるので
す(いつか話題になっていたラムへの複製に関する東京地裁判決は、確か、そ
れを前提にしていたと思います。)。

これを、その点について触れていないというのは、制定法規の条文解釈として
は、特別の理由がない限り成り立ちません。みなし規定は、一般原則に対する
例外を設ける規定ですから、そのような例外に該当しないものは「複製」とみ
なさないという両面性を持っているのです。

条文の解釈は、単なる日本語の解釈とは異なります。法には、構造というもの
があるのです。法解釈の一般論、立法技術の約束事を前提として、各条文の位
置関係、文言等を見れば、その構造が論理的に説明できるようになっています。
 
>  30条が言う「使用」は、私が従来から「融通(貸与や譲渡)」と称している状
>  態以外に、翻訳や翻案、改変やデータベース化等の行為も含んでいますよね。
>  私はこれらを含め、30条では私的使用目的以外の使用については言及していな
>  い、という認識に立っています。

そうであれば、正しい認識をされていると思います。
別の見解をとっておられるのかと思っていました。


>  繰り返しますが、その認識に立った上で、この問題に言及しているのは著作権
>  審議会の報告書のみであり、その説を否定する解説書の記述もみつけることが
>  できないでいる。また、審議会報告自身には法的拘束力はないが、その後の政
>  治的状況を鑑みると、報告書が提示している論が「通説」であると判断してよ
>  い、と主張しています。

法律論では、そのような見解を「通説」とは言いません。

ですから、もし、法律論の中で取り上げる場合には、報告書の見解といった表
示をされた方がいいと思います。

>  30条はABC氏が言う説を肯定も否定もしていない。

30条自体は、そうです。私もそれを何回も述べています。

>  同時に、30条は審議会報告が唱える説を否定も肯定もしていない。

いや、報告書の意見を肯定しようとすると、30条を根拠にする必要があるの
ではないでしょうか。

30条を根拠にしないとすると、審議会報告の意見というのは、一体、何を根
拠としていると言われるのでしょう?


>  弁護士の中にも、「死刑制度は憲法違反である」と訴えつづけている人がいる訳
>  ですよね。実際問題としては、最高裁判所は現行の死刑制度は合憲であると判断
>  しつづけており、かつ、実際に死刑を確定させ続けているにも関わらず。死刑制
>  度を廃止するには、死刑制度廃止法を国会で可決・成立せしめれば良いだけですが、
>  直近の世論調査では死刑制度の存続を国民の73%が望んでいる現状からみれば、
>  立法化は困難。だからこそ、死刑制度は違憲だ、って主張しつづけているわけで
>  すよね。弁護士ともあろう方々が。
>  
>  # 通説では違法でないことを百も承知の人達のはずなのに。
>  
>  それは単なる主義の違いだ、ってことで決着つく話ですから。また、現行制度に対
>  する議論は常に行いつづけなきゃあいけないし、法なんてのは人間が作ったもので
>  あって普遍である訳ないんだから、社会状況の変化に応じて改正していけば良いだ
>  け。

私は、死刑は、違憲ではないという見解をもっていますが、違憲であるという
見解は法律論としては十分なりたつと考えています。
そして、違憲説を唱えている弁護士等も同様であり、判例もいつかは変わる、
あるいは変えようとして自説の正当性を主張されているのです。
最高裁も違憲説が法律論として成り立ち得ないなどとは述べていません。

私も、法律論として成り立つ見解は尊重します。
成り立つかどうかは、結論ではなく、理由が示されないと判断できません。
どこどこの文献に載っているということまで示される必要はありません。

 
>  ただ、30条はあくまでも「著作者の権利を制限する要件」を述べているに過ぎず、
>  同要件に合致して複製された著作物の事後の使用にまでは一切言及していない、
>  だからいいとも悪いとも30条からだけは判断できない、という部分に対し、異議を
>  唱えるってのは納得できない。

全く逆で、異議を唱えたりしたことはありません。むしろ、私は、最初からそ
のように主張しているのです。この点こそ、私の見解の最大の根拠なのです。

>  その上で、言及していない以上私的使用以外に使用する場合は他の制限に合致しな
>  い限り著作者の許諾が必要、とするのが審議会説であり、言及していない以上他の
>  条項に反しない限りどう使ったっていいんだ、ってのがABC説。

言及していないことから、直ちに著作者の許諾が必要であるという結論を導く
ことは、論理的にできないというのが私の見解であり、私が、審議会説は法解
釈としての理由を述べていないというのは、その点をとらえて言っているので
す。

これに対し、私の説は、権利侵害に当たるとする規定がない限り、権利侵害と
はならないと述べているだけであり、論理的に当然のことを述べているにすぎ
ません。

 
>  両説とも、この部分で見れば同レベルではありませんか?
>  後は、周囲の状況をもってどちらの説が通説か?を議論すればいい。
>  
>  これじゃあ駄目ですか?

どちらが通説かといったことは全く問題ではありません。
もし、両説とも法律的に成り立つとすれば、後は、その適用の結果、どちらが
いろんなケースで妥当な解決を導き出すことができるかが問題でしょう。

>  ABC流法律論では、審議会報告説の存在は絶対に認められない?

存在というのは、事実レベルのことですから、報告書の該当部分の解釈につい
ては異論を持っていますが、岩田さんのように解釈することも可能なので、そ
のような見解が示されているということには、ここで異議を唱えるつもりはあ
りません。

それが、法律論として成り立つかどうかは、理由が示されてからでないと判断
できません。
私自身は、報告書の結論をなんとか理由付けしてみようとしましたが、納得で
きる理由付けができませんでした。
 
>  # だったら永久に理解し合えない気がする。

岩田さんにも理解して頂ければ嬉しいです。

法律論  大歓迎!

Richter ABC  
 

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