No. 980/1090 Index Prev Next
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From: Ritter ABC
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Subject: Re: 30条と49条 (罰則関係)
Date: Sat, 30 Sep 2000 17:44:14 +0900
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こんにちは。
"ISHIBASHI" さん wrote:
> ところで、例えば特許法29条では、「公に知られた発明」「公に
> 実施された発明」「頒布された刊行物に記載された発明」は特許を
> 受けることができない、と規定されていますが、日本語としてこれ
> らを読んでみても、Nakagawa さんは同じような感想を持たれるで
> しょうか?
>
> でも、この3つの文言は、現実には、たった一人に知られたり、
> たった一人に実施されたり、たった一人に刊行物が譲渡貸与された
> りした場合であっても適用可能な、「母集団説」と同じような考え
> 方に基づいて特許法上解釈されています。その解釈は多くの判例に
> 支持され、確固とした通説になっております。もちろん、時代の推
> 移によって解釈が次第に変化したのではなく、当初からの立法者の
> 意図がそうであったという解釈です。
ISHIBASHIさんのお考えや基本的考え方に異論を述べるつもりはありませんが、
特許法29条の条文は、「公然知られた発明」(1項1号)「公然実施された
発明」(1項2号)と規定されており、「公然」というのは、公開的という程
の意味であり、その発明が秘密を脱したことを意味するとされているのではあ
りませんか?
また、「頒布された刊行物」(1項3号)における「頒布」については、刊行
物が「不特定多数の者が見えるような状態におかれること」をいい、現実に誰
かがその刊行物を見たという事実を必要としないとされているのではありませ
んか?
これに対し、著作権法では、「頒布」は「複製物を公衆に譲渡し、又は貸与
すること」をいうものと定義され(法2条1項19号)、「公衆に」という場
合の「公衆」は、法2条5項において、「この法律にいう「公衆」には、特定
かつ多数の者を含むものとする。」と定義されています。
そして、「公衆」というのは、他の法令でも使用されている法令用語であり、
一般には、「不特定多数の者」をいうと解されています。ですから、通常の法
令用語としてみれば、上記のような定義規定があるので、「公衆」とは、「不
特定又は特定の多数の者」をいうことになると思います。
もちろん、著作権法において使用されている用語ですから、必ずしも他の法令
と同じ意味に解さなければならないものではなく、著作権法の性質から導き出
される合理的理由により多少異なる意味に理解することは可能でしょう。
しかし、その場合には、なぜ、そのように解するのか理由付けをする必要があ
ると思います。
> ですから、法律上の文言を解釈する上での「母集団説」のような考
> え方は、私があみ出した珍説ではない、という程度のことはご理解
> 戴けるのではないでしょうか。
>
> でも、もちろん特許法と著作権法は性質の異なる別個の法律ですか
> ら、特許法がこうだから著作権法もこう解釈しろ、などと言ってる
> わけではありません。上記はあくまで、立法者の表現能力を低く見
> ている訳ではないと言いたいが為の私の弁明です。
>
> で、わたくし事で恐縮ですが、私は、特許法等の工業所有権を勉強
> して、それが終了してから著作権法を勉強し始めたので、どうして
> も特許法的な考え方に引きずられ、著作権法における「公衆に貸与
> する」の言葉も「母集団説」を当然の前提として解釈してしまった
> のだと思います。この点が、私と Nakagawa さんとの考え方の間に
> 大きなズレが生じた原因かもしれませんね。
>
> ここで、他の法律を私の頭から外して、あらためて著作権法独自の
> 制度趣旨から考えてみます。立法者は、著作権者の利益と他の人々
> の自由使用の公正なバランスを保ちながら著作権の効力を規定する
> 意図を持っていたと思います。とすると、やはり、貸与の回数で制
> 限するよりも、「母集団説」的な考え方の方が私には納得できるよ
> うな気がします。実際、著作物の中には、安価なものから非常に高
> 価なもの迄あるわけですから、1回限りの譲渡貸与であっても著作
> 権者に大きな損失が生じる可能性はあります。その場合、どのよう
> な線引きで公正なバランスをとるべきか…。やはり「母集団説」的
> な考え方に基づいて、「公衆に向けた」譲渡貸与を禁止する方が
> スッキリするような気がします。
いえ、決して珍説ではありません。
問題の捉え方としては、正しいと思います。
貸与について言えば、例えば、Bさんがネット上で「テレビ放送の録画を持っ
ていますから、希望者には無料でお貸しします。」と投稿した後、これに応じ
てメールで希望したAさんに貸与した場合には、仮に、Aさんに貸与したのが
他人に対する初めての貸与であっても、公衆に貸与したことになるという説は
十分に成り立つと思います。(ただし、これに対しては、一人ではダメで、実
際に多数人に貸与しなければ公衆に貸与したとは言えないという異論がありえ
ます。)。
上の場合と設例の場合とでどこが異なるか。問題は、そこだと思います。
これは、会社の同僚間の貸し借りとは異なり、ネット特有の問題があるように
思います。
それでは。
法律論 大歓迎!
--
Ritter ABC
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