12. 特徴ベクトルと数値データ


12.1. 達成目標

  • 同じデータセットであったとしても、タスク毎に適切な特徴量は異なることを理解する。

  • 数値データに対する前処理の意義を理解する。

  • 前処理のいくつかの手法を適用し、特徴空間の可視化による比較や、学習結果の比較から前処理の妥当性について検討することができる。


12.2. そもそも特徴ベクトル(データ)とは何か

  • Twitterが持つデータを全て利用できると仮定して検討してみよう。

    • 全利用者を「似たようなユーザ群、例えばゲームに興味があるといった趣味を主体としたクラスタ」に分けるには、どのような特徴が有効に機能するだろうか?

    • あるユーザの年齢層を推定するには、どのような特徴が有効に機能するだろうか?

  • クラスタリングタスクの検討例

    • 下記9サンプルからなるデータセットを与えられたとき、どう特徴ベクトルを設計するとよいだろうか?

    • クラスタリングタスクの検討例

      • 「図形の形」でクラスタを作らせたい?

      • 「図形の色」?

      • 「着色パターン」?

  • サマリ

    • 特徴ベクトル(feature vector) とは、その名の通り特徴量で構成されたベクトルのこと。一つのサンプルは、N次元ベクトル空間における1点として表されることになる。近い点は類似しているサンプルになっていることが理想的だが、「似ている」といっても多面的であり、特徴量の用意の仕方や、距離もしくは類似度の尺度等、はたまたデータセット自体に含まれるミス・ノイズ等、多様な要因により必ずしもその通りになるとは限らない。

    • 一般的には、生のデータは多様な情報が複雑に絡みあっており、そのままでは利用しづらいことが多い。そのため、解決したい問題を機械学習しやすいタスクとして設計し、そのタスクに有効に機能する 特徴量(feature) を用意してやる必要がある。 特徴量エンジニアリング(feature engineering) とは、与えられたデータ、モデル、タスクに適した特徴量を作り上げるプロセスのこと。

      • Feature engineering

        • Feature engineering is the process of using domain knowledge of the data to create features that make machine learning algorithms work.


12.3. 数値データ

12.3.1. カウントデータ

Twitterにおける1ユーザの、1日あたりの投稿数やlike数。もしくはfollowerの多いユーザ数等、日常には様々な「カウントデータ」が存在する。カウントデータは、「実在する店舗における入客数」「在庫数に伴う販売上限」のように実世界における数である場合には上限が定まることもあるが、物理的な障壁がない場合、例えばYouTubeにおける動画再生数等のような場合には天井知らずである。このため、基本的には「カウントしたデータ」は上限がなく、外れ値(極端に大きい数値)が出現しやすいものとして扱うほうが良いことが多い。

  • そもそも外れ値とは?

    • Wikipedia: 外れ値

    • 「統計学において、他の値から大きく外れた値」

    • 同ページにある外れ値検定の手法例についても参照。

  • 外れ値があるとどういう問題がある?

    • 極端に大きな数値をそのまま扱うと、例えば、線形回帰モデルで構築したモデルが外れ値に引きずられすぎてしまい、真のモデルからズレたモデルとなる可能性がある。

  • どう対応すると良いのか?

    • 外れ値をデータセットから除外する。

      • 目的達成のために不要であれば、除外するのが最もシンプル。ただし、外れ値判定に注意。どのようなケースでも適している「銀の弾丸」は存在しないため、タスクに応じて検討することになる。

      • e.g., 動画再生数100回未満はあまりにも少ないので、無視しよう(データセットから除外しよう)。

    • 特徴空間、もしくは特徴ベクトル空間を調整(別空間に写像)する。


12.3.2. 説明変数毎の大きさの違い

1週目に例示した血液検査における検査項目は、数値で表されている項目に限定すると、すべての項目が数値で表されているため、多次元空間上の点としてプロット可能である。その一方で、属性ごとの値の意味や高低の基準は不揃いであり、ASTが30U/L, 総コレステロールが150mg/dLのように桁が異なる数値が並んでしまうと扱いにくくなることが多い。例えば \(y = x_0 + a*x_1 + b*x_2\) という線形モデルで何かを検討することを考えてみよう。説明変数\(x_1\)がASTであり、\(x_2\)が総コレステロールである。このとき、パラメータ\(a\)が1ずれた場合の出力\(y\)に与える影響はたかだか30なのに対し、パラメータ\(b\)が1ずれた場合の影響は150にもなる。

このように数量的に意味合いや度合いが異なる特徴量を上手く取り扱うための前処理は スケーリング(scaling) と呼ばれており、特に 正規化(z-score normalization)標準化(standalization; min-max normalization) が良く用いられる。正規化は最小値を0、最大値を1となるように調整する。これに対し標準化は平均が0、標準偏差が1となるように調整する。

Note

どちらのケースも省略して normalization と書いていることがある。前後の文脈から正規化のことか標準化のことか読み分けるようにしよう。


12.3.3. 相対的な値

これまで見てきた観点とは異なり「方角」「緯度経度」のような毛色の異なる数値がある。何が異なるかというと、例えば北を基準方向として時計回りに角度を設定する場合を想像してみよう。北は0度、東90度、南180度、西270度である。このとき数値だけを見ると \(北 - 東 = -90度\) なのに対し、\(北 - 西 = -270度\) となってしまう。これは直感的な「差」や「距離」と一致しているだろうか。

このように相対的な(ここでは更に周期性をもつ)説明変数は取り扱いが難しい。あらゆる変数に対し画一的に利用できる手法というものは残念ながら無いため、ここでは基本的な考え方を述べるに留める。

距離として利用したいのであれば、距離を測定できる形に写像しよう。前述した方角の場合には \(\theta = \theta + 360度\) となる周期性のあるモデルで表現するのが一つの手です。つまり、周期性があり、かつそれが0から始まり360でもとに戻るようなモデルです。わかりやすい例は \(cos(\theta)\) でしょう。


12.4. 数値データに対する前処理コード例

ここまで見てきた前処理の実例を眺めてみよう。


12.5. 課題レポート2:前処理してみよう or 演習

  • 課題レポート1で取り上げたデータセットについて、以下のことに取り組め。

    • Level 1. preprocess_numerical.ipynbを参考に、何か一つ以上の特徴に対して前処理を施せ。なお、選択理由についても検討すること。

      • 例えば、2値化(binarization)を選んだのであれば、その理由は何故か?

    • Level 2. 適用前と適用後の値がどのように変わっているか、確認しやすいように可視化せよ。可視化の手法は問わない。

    • Level 3. 前処理後のデータを用い、分類タスクを実行せよ。課題レポート1の結果(前処理なしでの結果)と比較し、考察せよ。

      • 前処理後のデータを用いる際には、前処理した特徴を置き換える形で利用することを想定しているが、何か理由があって「前処理前のデータとまえしょり後のデータを同時に特徴量として扱いたい」のであれば、その理由を述べた上で使おう。


12.6. 予習:カテゴリデータの前処理

  • カテゴリデータに対する前処理(特徴として扱うための方法)について概説している5.3.4. Encoding categorical featuresを読み、自分なりに疑問点等気になる事柄を整理せよ。

    • 疑問等は、次回授業の前日までに、別途用意するフォームに入力すること。