No. 1019/1090 Index Prev Next
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From: Ritter ABC 
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Subject: Re[2]: 30条と49条 ( 	罰則関係)
Date: Wed, 04 Oct 2000 00:52:50 +0900
Organization: Nifty News Service
Lines: 71
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References: < m3pulizef0.fsf@dolphin.eco.wakayama-u.ac.jp> 
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NNTP-Posting-Date: 3 Oct 2000 15:52:53 GMT
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In-Reply-To: < m3pulizef0.fsf@dolphin.eco.wakayama-u.ac.jp> 
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こんにちは。

Hideaki Iwata  さん wrote in
Message-ID: < m3pulizef0.fsf@dolphin.eco.wakayama-u.ac.jp> 

>  ただ、この問題(権利の濫用)については、田村先生は「著作権法概説」
>  の中で少しですが論じられています。正確には、30条以下の「権利の制限」
>  に明文化されていない事象に対し、1条の「公正利用」を盾に著作者の
>  権利濫用を抗弁することは、解釈論として困難だ、と、裁判例を示して
>  論じています(166頁)。もっともその直後に
>  
>  「ただし、別途、権利濫用を論じる余地はある」
>  
>  と述べられていますが.....どっちなんだよ:-)はっきりしてくれ。
>  
>  # 権利濫用を否定する裁判例しか示されていないしなあ....:-)
>  # この辺に、田村先生の主義がうっすらと見えてきたりする:-)
>  
>  # でも、大半の記述は非常に中立的で公正ですよ、念のため。

この点少し誤解されているようです。

分かりやすく言うと、fair use というのは、

著作権法に30条以下の詳細な個別的制限規定がなく、
ただ、1条だけ、「一般利用者は、著作物の公正な利用と認められる場合には
複製等をすることができる。」という条文があるようなものです。
これだと、「公正な利用」というのが漠然としているので、個別具体的事例
において総合判断すればよく、結果的には、なるほどという結論が出せるとい
えます。他方、権利侵害となるかどうかの予測が非常に難しいことになります。

日本の著作権法は、公正な利用という観点からの制限として、一般利用者の自
由利用に委ねるべきものを類型化し、30条以下で規定しているわけです。
そうすると、そのような日本法の下では、立法者がどれが公正利用であるかを
細かく決めてしまっていることになるので、現行法の解釈論として、米国のよ
うな、公正な利用という一般論から著作権の制限をすることはできない、とい
うのが、田村先生が前段で述べている内容です。

しかし、日本のように類型化して個別規定を設けた場合には、逆に融通性がな
くなり、具体的事例にあてはめると、著作権者になんの不利益もないことなの
だからその程度のことは認めてあげても良いのではと通常の人は思うような場
合でも、複製権等の侵害に当たるということになる場合が生じます。

これは、制定法主義をとる場合には、どの法律分野でも起き得ることです。
そこで、民法1条は、権利濫用等の規定を設けているのです。

以上のことを前提として、日本法の下では、複製権等の侵害に当たるとして差
止や損害賠償を求めてきた場合において、30条以下の制限条項に当たらない
ため、著作権者の権利行使に当たるとすべき場合でも、権利濫用の法理により、
その著作権者の権利行使を否定することが理論上可能である、と述べているの
が、田村先生が後段で述べている内容です。

しかし、権利濫用というのは、そう簡単に認められるものではありません。だ
から、これを認めた裁判例はありません。また、実際には、権利濫用と認めら
れるような場合に差し止め等の権利行使をする著作権者は、ほとんど、いない
でしょう。そのために事例がないのが実情だと思います。

私は、著作権法の場合は、30条以下の制限規定自体は、できるだけ厳格に解
釈しておいて(そうすれば、著作権者の権利行使と認められる場合が多くなり
ます。)、逆に権利濫用と認める要件を fair use ほどではなくとも、ある程
度、緩やかにするという方法をとることができれば、社会の実情に応じた法の
運用ができるのではないかという、一応の考えを持っています。

それでは。

法律論  大歓迎!

--
Ritter ABC  
 

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