No. 1027/1090 Index Prev Next
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From: Hideaki Iwata 
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Subject: Re: Re[2]: 30条と49条 ( 	罰則関係)
Date: 04 Oct 2000 16:07:43 +0900
Organization: Center for Information Science, Wakayama University
Lines: 124
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ひで@和大、です。
なんだかなあ...................

Ritter ABC  writes:
>  この点少し誤解されているようです。

どの辺が?きちんと指摘してくれないと、こっちは判らないよ。

>  分かりやすく言うと、fair use というのは、
>  
>  著作権法に30条以下の詳細な個別的制限規定がなく、
>  ただ、1条だけ、「一般利用者は、著作物の公正な利用と認められる場合には
>  複製等をすることができる。」という条文があるようなものです。

いや、その、河野氏がいつも主張する論理だけど、田村先生の著書にも
書かれている通り、

「アメリカ合衆国には、一般的に著作権の制限を認める fair use の
法理が存在する(合衆国著作権法107条だそうです)」

って前提が必要ななずですけど。

>  これだと、「公正な利用」というのが漠然としているので、個別具体的事例
>  において総合判断すればよく、結果的には、なるほどという結論が出せるとい
>  えます。他方、権利侵害となるかどうかの予測が非常に難しいことになります。

それに対して、日本の著作権法は詳細な制限規定を置く一方で、著作権
を一般的に制限する条項を欠いている。
だから、

「個別の制限規定の運用により著作権を制限していく趣旨であると解さ
れるから、解釈論として fair use の抗弁を認めることは困難である」
	田村/前著 166頁より引用

なんですよね。十分承知しています。

>  そうすると、そのような日本法の下では、立法者がどれが公正利用であるかを
>  細かく決めてしまっていることになるので、現行法の解釈論として、米国のよ
>  うな、公正な利用という一般論から著作権の制限をすることはできない、とい
>  うのが、田村先生が前段で述べている内容です。

前後が逆の気もするけど(fair useって概念はアメリカ法に依頼する訳で、
順序としてはそっちを先にしないと正しい説明にはならないと思うけど)、
原則その通りですよね。

>  しかし、日本のように類型化して個別規定を設けた場合には、逆に融通性がな
>  くなり、具体的事例にあてはめると、著作権者になんの不利益もないことなの
>  だからその程度のことは認めてあげても良いのではと通常の人は思うような場
>  合でも、複製権等の侵害に当たるということになる場合が生じます。
>  
>  これは、制定法主義をとる場合には、どの法律分野でも起き得ることです。
>  そこで、民法1条は、権利濫用等の規定を設けているのです。

権利濫用に関しては、裁判例(判例と言った方がいいかな?)も非常に
たくさん蓄積されてますから、民法の入門書でも詳しく解説されていま
すね。必ず出てくるのが「宇奈月温泉事件」かな?

>  以上のことを前提として、日本法の下では、複製権等の侵害に当たるとして差
>  止や損害賠償を求めてきた場合において、30条以下の制限条項に当たらない
>  ため、著作権者の権利行使に当たるとすべき場合でも、権利濫用の法理により、
>  その著作権者の権利行使を否定することが理論上可能である、と述べているの
>  が、田村先生が後段で述べている内容です。

はい、理解してますよ。
コンメも、田村先生とほぼ同じ論理展開がなされていたはず。
fair useを小見出しにした一節が存在したと記憶します。

# 今、手元にない。

>  しかし、権利濫用というのは、そう簡単に認められるものではありません。だ
>  から、これを認めた裁判例はありません。また、実際には、権利濫用と認めら
>  れるような場合に差し止め等の権利行使をする著作権者は、ほとんど、いない
>  でしょう。そのために事例がないのが実情だと思います。

だからね、その後で、「権利濫用が否定された裁判例」しか羅列されてな
い訳。理論上可能なはずだ、って主張は判るけど、その主張を裏付ける証
拠は、裁判例としては提示できない、と非常に正直におっしゃっている
わけ。その上で、先に引用した文章の次に

「ただし、別途、権利濫用を論じる余地はある」

って続くのね。
この時点で、一読者の感想として、「だからどっちなんだよ!」って突っ込
みを入れたくなっただけ。
ただ、その次の節を見る限り、田村先生は、

「一般条項の導入を含めて、制限規定のあり方を検討する必要があること
は否めない。」

っておっしゃっているから、

あ、なるほど。現行制度下ではfair useに基づく「権利濫用」って抗弁
を個人的には認めたっていいじゃないか、って思いはあるけど、解釈論
として認めることは困難だってのが通説であり、解説書としてもその通
説に従うべきだと考えているんだなあ。しかし、将来の制度作りに向け
た議論の中では(つまり立法論としては)、合衆国法の様な一般条項の
設定も十分に検討する価値があるし、俺は大いにそう主張するぞ、って
お考えなんだなあ。

ってことが判る。

>  私は、著作権法の場合は、30条以下の制限規定自体は、できるだけ厳格に解
>  釈しておいて(そうすれば、著作権者の権利行使と認められる場合が多くなり
>  ます。)、逆に権利濫用と認める要件を fair use ほどではなくとも、ある程
>  度、緩やかにするという方法をとることができれば、社会の実情に応じた法の
>  運用ができるのではないかという、一応の考えを持っています。

ということで、ABC氏と田村先生とは違った意見な訳です。
田村先生は、現行法の解釈論としては困難であることを認めた上で、しか
し自説として、合衆国法的な一般条項の導入も将来に向けてぜひ検討すべ
きであり、それを検討することは、本来的な著作権制度の中においては
別に間違った考えではない、という考えを紹介されているのです。

でね、ただ、そういった直線的な記述をせずに、ちょっともったいぶった
記述手段を用いている様に私には見える訳。
その辺に、先生が信じる「べき」論と、現行法の解釈論にギャップがある
ことを認めつつ、でもそれらは全然別個の問題なんだよ、ってことを言い
たかった心のうちを察している訳です。

でね、「だからどっちなんだ!」って突っ込みを入れたくなる、と:-)
もどかしい表現だよなあ.....って感想なのよ。もっとストレートに
言っちゃえばいいのに、言えない胸の内があるんだろうなあ....と:-)

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