No. 1038/1090 Index Prev Next
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From: Hideaki Iwata 
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Subject: Re: Re[2]: Re[2]: Re[2]: 30条と49条 ( 	罰則関係)
Date: 05 Oct 2000 12:45:59 +0900
Organization: Center for Information Science, Wakayama University
Lines: 66
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ひで@和大、です。
なんか、やっと自己主張できそう:-)

Ritter ABC  writes:
>  そこが私が最初に誤解があるのではと述べたところだと思います。

でしょうね。それに対して、あなたが「誤解」と思われるところは、
実はある主義に基づけば「誤解」ではない、ってのが私の主張な訳
です。

>  田村先生の記述では、fair use の抗弁と表示されていて、それが権利の濫用
>  の抗弁と別個のものであることを前提としています。
>  そして、そもそも我が国では、fair use の抗弁そのものが成り立たないと述
>  べているわけです。そこでは、権利濫用のことは述べていません。

でね、繰り返しになるけど、田村先生の理論に基づけば、権利濫用
を論じる余地が現制度下でも存在する理由は、個別具体的な制限規
定方式(以降、「個別制限方式」)が持つデメリットによってもた
らされている現象、つまり「人の行動の自由が万全に確保されてい
ない」状態が存在するからだ、なんですよね。

一方で、個別制限方式の上記デメリットを解消する手段がない訳で
はない。その一つは、社会情勢の変化に合わせて、可能な限り迅速
に、かつ誠実に法を改正する方法ですよね。
状況変化に合わせて機動的に法を改正し、可能な限り「人の行動の
自由を確保」していけば、デメリットを許容十分な範囲に収めるこ
とができる(もちろん、理想論ですけどね)。

仮に、十分に機動的な法改正を主権者が心がけているとすれば、著
作権制度に個別制限方式を採用している国でも、権利濫用って事態
は実質的には生じないことになる。

# 概念としては民法1条が存在する以上、成立しますよ。ただ、実
# 際の争議の場で、権利濫用って主張が認められる可能性は限り
# なく0に近い、って話ね。

>  他方、権利の濫用を論ずる余地はあるとしているわけです。
>  なお、権利の濫用に当たらないとした裁判例も、権利濫用の抗弁というのが著
>  作権について成り立たないとしているものではなく、その事案では、権利の濫
>  用に当たるというほどの事情がないということで抗弁を排斥していると思いま
>  す。

そうですよね。現実には、権利濫用という抗弁が認められた裁判例
は存在しない。ならば、逆説的に言えば、上記した「十分に機動的
な法改正を主権者が心がけている」可能性も存在する訳です。

田村先生のお考えでは、その可能性は認められない(少なくとも十
分ではない)訳なんだけど、本当にそうなんだろうか?っていう
部分の考察もあってよかったんではないか?っていうのが、私の考
えだった訳です。その部分の議論を排しているってのは、田村先生
が信じる主義(「べき」論って言ってもいい)が結縁しているんだ
ろうなあ、って想像してます。

もちろん、田村先生の記述そのものは、限りなく中立公平です。
この議論も、十分に許容の範囲内でしょう。私が求めることまで記
載するよう求める方が、無茶な気がします。ここまで中立公正な立
場を貫く自信は、私にはありません。
入門書として、この本はお勧めの一冊です。

ただ、この部分に関しては、私はちょっとした突っ込みを入れたく
なった、っていうだけです。

# 本を読むとき、常に批判精神を持つことはいいことだと、私は
# 信じてますからね。

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