No. 1030/1090 Index Prev Next
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From: Hideaki Iwata 
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Subject: Re: Re[2]: Re[2]: 30条と49条 ( 	罰則関係)
Date: 04 Oct 2000 20:15:56 +0900
Organization: Center for Information Science, Wakayama University
Lines: 85
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ひで@和大、です。

Ritter ABC  writes:
>  田村先生は、米国法のfair use と同様の考えを日本法に持ち込み、それを抗
>  弁として主張することは日本法の解釈として無理であると述べた上で、その注
>  書に、それと同趣旨の裁判例をあげているのではないですか?
>  
>  その後、田村先生は、ただし、我が国でも、権利濫用の抗弁として主張された
>  場合なら、fair use において考慮される事情をある程度考慮できるのではな
>  いかということで、fair use の抗弁ではなく、権利濫用の抗弁として主張す
>  ることも可能な場合があると述べ、その注書に、実際に、権利濫用の抗弁とし
>  て主張された例はあるが、認められていないとして、権利濫用の抗弁が排斥さ
>  れた裁判例をその次に記載しているのでしょう。

なるほど。ABC氏は fair use と「権利濫用」との間には排他的概念
が成立する、という理解を田村先生の記述からしている訳ですね。
それに対し、私は、fair use と「権利濫用」はどこかしらで繋がった
概念であることを田村先生自身が認めており、それゆえに「歯痒い」
表現になっている、と考えている訳ですね。

>  どっちという疑問は生じないと思いますが。。。

しかし、最後の文節において田村先生は、一般条項(アメリカ法にお
けるfair useに類する条項)をわが国の著作権制度に採り入れていく
ことを検討する必要性を提示しています。「必要性があることが否め
ない」と論じる理由は、私が読む限りでは、

現在の制限規制が人の行動の自由を万全に確保しているとは考えられ
ず、著作権者による「権利の濫用」と言える現象が起きていると田村
先生は考える(ただし、裁判例ではその主張が認められた例はない)。
従って、著作権者による「権利の濫用」を防止する規定、つまりは
fair use条項を設けることも立法論としては検討をすべきだ。

なんですけどね。だから、fair useと「権利の濫用」は一種のコイン
の表と裏の関係にある、って認識に田村先生は至っていると分析して
いるんですけど..........

「人の行動の自由を万全に確保できない状態」が現在の著作権法の運
用面で認められる部分があると田村先生は分析されているからこそ、
「権利濫用」を論じる余地はある、と発言されているんではないんで
すか?(まだ認められた裁判例はないそうだけど)
そういった(田村先生が考える)問題点を解決する一つの方策として、
立法論として一般条項の導入を検討するってのも是でしょう?って主
張ですよね。

一方の私の思いは、

fair useって主張も裁判例では認められていないし、権利濫用って手
も現状では認められないのに、解釈論としてまだ「権利濫用」を論じ
る余地がある、ってのは、これ如何に?

なんですよね。結局は、先に示した通り、立法論への繋ぎの中で自分
の「べき」論を紹介したいがための表記なんだろうなあ、ってこと。

だって、

「人の行動の自由を万全に確保できない状態」が現在の著作権法の運
用面で認められる部分がある

って前提を設けないと、現在の解釈論の中で「権利濫用」は成立しな
い訳でしょう?かつ、先生自身が紹介している裁判例では、いずれも
権利濫用による抗弁は認められていないんですよね。

ならば、別の結論として

「人の行動の自由を万全に確保できない状態」が現在の著作権法の運
用面で認められる部分はない

って可能性も考慮しないと。でも田村先生はその可能性を特に理由を
明記することなく(個別具体的な制限規定導入のデメリットは紹介
されているけど)否定している様に私には見える。

個別具体的な制限規定導入のデメリットはデメリットとして認めるけ
ど、そのデメリットを容認した上で適法な立法手続きに従って定めら
れた現行制度上では、デメリットはデメリットとして容認する、って
立場からの法解釈論も当然存在しうる訳で

# そういう意味で、「どっちなんだよ」ですけど.............

でも、これまでのABC氏との議論からすると、デメリットをデメリット
として容認した上で現行制度を解釈しましょうよ、って主義は、ABC
氏はあまりお好きではないみたいなんだよなあ.......
結局、この問題も根っこは「権利の制限」論争と一緒かもしれない。

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