No. 348/1090 Index Prev Next
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From: Richter ABC 
Newsgroups: fj.soc.copyright
Subject: Re: Nスぺをダビングさせて下さい
Date: Sat, 22 Jul 2000 19:48:24 +0900
Organization: PLALA
Lines: 98
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References: < stae5.18$yK1.101@news4.dion.ne.jp> 
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NNTP-Posting-Date: 22 Jul 2000 10:48:27 GMT
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In-Reply-To: < stae5.18$yK1.101@news4.dion.ne.jp> 
Xref: ie.u-ryukyu.ac.jp fj.soc.copyright:11337

こんにちは。

Catastrophe さん wrote:

>  はて、客体が「私的使用目的の範囲」を逸脱するものであれば直ち
>  に「公衆」に該当する、と言う解釈も不可能では無いのでは?
>  
>  そもそも「赤の他人」と言うことで「不特定」であるのだから、少
>  数と多数とに関わらず「公衆」である、と。
>  
>  「特定」=「個人的又は家庭内これに準ずる限られた範囲」である、
>  と。
                     ↑
        なるほど、上の疑問は、著作権法上の重要な論点を含んでいますね。

「公衆」というのは、著作権法上、非常に重要な法概念です。そこで、2条5号は、
「この法律にいう「公衆」には、特定かつ多数の者を含むものとする。」と規定し
ています。
もっとも、その文言から明らかなように、同号は、もともと「公衆」という概念が
存在することを前提として、著作権法においては、通常、法令用語として使用され
ている「公衆」のほかに、「特定かつ多数の者」を含むとして、著作権法上の「公
衆」を定義しているわけです。

そして、著作権法は、本来の「公衆」の概念がどのようなものであるかを明らかに
していませんが、法律用語として使用される場合には、他の投稿に書きましたよう
に、「公衆」とは、「一般人、すなわち特定の法律関係における当事者以外の不特
定多数の者をいう。」とされています(法令用語辞典(6訂版)・林修三ほか共編)。

なお、それぞれの法律で定義をしている場合が多いでしょう。

上の定義を一言でいえば、「不特定多数人」です。これに対し、「不特定人」で足
り、「多数人」である必要はないという考え方がありますが、少数説でしょう。

通説を前提とすれば、著作権法上の「公衆」とは、「不特定多数人と特定多数人」
をいうことになります。いずれにしても、「多数人」ということになります。
私の前の投稿でレンタル料を取るつもりで店に陳列しておいて最初の一人に貸与し
ても「頒布した」、つまり、「公衆に貸与した」ことになるというのは、上のよう
な「多数人」という要件があることを前提とした上、不特定多数人に貸与する意思
の下に陳列しておいた場合には、最初の一人に貸与した時点で頒布したことになる
という見解を示したものです(これには異論が有り得ます。)。

これに対し、「公衆」を「不特定人又は特定多数人」と解する説を取ると、最初の
客に貸与した場合でも、「不特定人」に貸与していますから、頒布があったといい
やすいことになります。

そこで、Catastropheさんが提示された疑問が出てきます。
つまり、ネット上で貸与を申し込まれた人に貸すのは、相手が最初の一人であって
も、「不特定人」に貸したことになるのではないかという疑問です。

私は、そのような疑問が生じることを予想して、まず、「ネット上で自分がビデオ
を持っているから希望者には貸しますよ。」といった投稿等をした上で貸すことは、
一人に貸す場合でも頒布に当たると述べました。

他方、次のようにも述べました。

>    私が、頒布に当たらず適法であるといっているのは、上の場合とは異なり、そ
>    の希望者に対して同情し、そういう事情があるのなら、あなたにだけ貸してあ
>    げますという状態で貸す場合のことです。
 
この二つの違いは、何か。それは、貸す相手が「特定しているかどうか」です。
「特定しているかどうか」というのは、種々の法律でその適用上問題となることで
すが、著作権の本では、「特定している場合」とは、「行為者との間に個人的な結
合関係がある場合」をいうとしているものが多いようです。しかし、そのように定
義をしても具体的事例においてはどちらに当たるのか一概に決めることはできない
ことが多いのも事実です。

私は、ニューズグループの場合であっても、貸与者が相手方の個性に着目してその
人だから貸すという関係が認められれば特定していると考えます(そうすると、ど
のような要件があれば、そのような関係があると認められるのかということにが問
題となるかも知れませんが、今日は、時間がなくなったので、これくらいにしま
す。)。

さて、本題の、

>  はて、客体が「私的使用目的の範囲」を逸脱するものであれば直ち
>  に「公衆」に該当する、と言う解釈も不可能では無いのでは?

ですが、法律の解釈においては、公衆という法概念(不特定多数人)があり、また、
特別の定義規定がある場合には、そのような公衆の定義を前提として考えるべきも
のです。
また、30条は、私的使用目的の「複製」を可能とするための規定にすぎず、著作
権法上で種々の重要な規制について使用されている「公衆」の概念をそこから導き
出すのは法解釈としては取り得ないでしょう。

もっとも、実際上、その範囲が非常に近いということは言えるかもしれません。

なお、上の点について、著作権法コンメンタール「上巻」金井重彦・小倉秀夫編著
の126頁(小倉秀夫担当)は、「特定」とは、「家庭内又はこれと準ずる限られ
た範囲内」よりは、広い概念であり、家族、友人、同僚、同一のサークルのメンバ
ー等が含まれるとしています。

御参考になれば幸いです。

それでは。

Richter ABC  
 

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