No. 882/1090 Index Prev Next
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From: Richter ABC
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Subject: Re: 30条と49条 (罰則関係)
Date: Sat, 23 Sep 2000 15:25:07 +0900
Organization: Nifty News Service
Lines: 178
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NNTP-Posting-Date: 23 Sep 2000 06:25:09 GMT
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こんにちは。
"Nakagawa" さん wrote:
> 30条の、大変すっきりとした説明で、専門外の私も、一つ疑問が
> 解けた気がしますが、一方で、私的利用に限定した条項がありながら
> 以後の利用法に対する規定がないのは不思議にも思います。
法により禁止されていない行為、他人の権利の侵害にならない行為は、
法上は、誰でも自由に行うことができるので、何も規定していないのです。
当然のことです。
法律は、行為の自由を前提として、ある行為を禁止したり、ある行為をするこ
とを命じたりするものです。
他人の権利を侵害してはならないことは、民法709条(不法行為)に一般原
則が規定されています。
契約関係にある当事者間の同様の規律は、民法412条以下の債権の効力に関
する規定で一般原則が規定されています。(ただし、裁判規範としてというべ
きかもしれません。)。
> 以下のいくつかの解釈は、考慮の余地があるのでしょうか?
> (法律用語には疎いので、法律用語が使われていても、
> 日常用語の意味であるとお考え下さい)
>
> 1.30条の立法趣旨からして、それは、著作権の実質的侵害となる
> 複製行為を制限しようとするものであるから、
> そこで複製された著作物は、私的利用の制限が当然に
> ついたものである。
30条は、一般国民の複製行為を制限するための規定ではなく、一般国民が行
う一定の複製行為が適法であることを規定している条文です。
30条により適法に複製した複製物を私的使用目的以外の目的に使用すること
が、30条が私的使用目的を有する場合に複製を認めた趣旨に反するかどうか
は、意見の分かれるところだと思います。
私は、趣旨に反するという意見です。しかし、趣旨に反するからといって、そ
の行為が法律上、禁止されているとは言えません。
まして、複製権の侵害になるとは言えません。それを複製権の侵害とするため
の規定として49条があるからです。
例の審議会の報告書の見解を法的に説明する方法としては、30条の趣旨を強
調することが考えられるのですが、著作権法が複製権、貸与権、譲渡権という
ように独占の対象となる行為を個別化して著作者に与えているために、どの権
利も侵害しないという結論になってしまいます。それが立法政策であるとも言
えるのですが、うまく切り分けられていない部分もあるように思います。
これは、制定法主義をとることから来る一種の限界でしょうか。
著作権という単一の権利を認め、それを判例、法律で拡張していく場合には、
谷間を埋めるということも可能かもしれませんが、制定法主義をとり、著作権
を複製権等の個別権利の集合体としている我が国では著作権法を全面改定しな
い限り無理な解釈でしょう。
立法的には、複製権を、「著作者は、その著作物を複製し、当該複製物を使用
し、譲渡し、貸し渡し、若しくは輸入し、又はその譲渡若しくは貸渡しの申出
をする権利を専有する。」というように規定して、複製物の使用も含め、包括
的に著作者に帰属させた上、一定の要件を充たす場合にのみ、複製等が制限さ
れるという方法をとることも考えられますね(特許法68条、2条3項1号参
照)。しかし、そうすれば、多分、別のところで問題が出てくるでしょう。
プログラムなどは、本当は、著作権の一種とするのではなく、プログラム権と
いう別の権利にして特許権と同様に複製物の「使用権」を著作者に専有させる
方がよかったように思います。
確かに、著作権法は、性質の異なる著作物をいろんな方法で規律しているので、
一種のモザイクのようになっていますね。
> 2.個人的もしくは家庭内およびそれに準ずる範囲での使用を
> 目的とした複製は著作物を有効利用するためのものであり、
> 著作物に対する価値を増加させるものであって、
> 仮にそれが禁止されていたとしても、複数個の著作物を
> 手に入れる事は考えがたい。一方、私的利用を越えた
> 複製物の貸与などは、実質的に著作権者がもつ頒布権の
> 効果を減殺させるものであり、頒布権の実質的侵害となるため、
> 当然に制限される。
> (この場合、著作権者が頒布を停止している著作物については
> 目的外使用が認められる。テレビ録画も、ビデオ化の予定が
> なければ同様)
「実質的に侵害する」というのが法律のレベルでは説明できないでしょう。
この理論のうち、「実質的に著作権者がもつ頒布権の効果を減殺させるもので
あり」というのは、事実又は事実に対する評価を述べているので正しいのです
が、さらに、そこから、「頒布権の実質的侵害」という表現を導き出していま
す。実質的な侵害に当たるかどうかは別として、「実質的」という言葉から、
直ちに、法的に権利侵害に当たるということを導き出すことはできません。も
ちろん、「当然に制限される」といった結論も論理的には出てきません。
(ちなみに、法的に権利侵害に当たらないからこそ、実質的に権利侵害に当た
ると言うしかないわけでしょう。実質的に権利侵害に当たれば、法的にも権利
侵害に当たるという結論を導き出す「理由」が必要です。)
この見解は、実質的侵害となる行為を新たに法律で禁止しようという意見を出
すときなら説得力があるでしょうが、法の解釈としては無理でしょう。
> 3.私的利用のために録画しようという、個人の動機については、
> 理性的人間として、ある期間の意思の一貫性が要求される。
> 従って、複製直後に容易に人に貸す行為が行われるとするならば、
> 複製の際に私的利用以外の目的を予定していたといわざるをえず、
> 私的利用のみを考慮していたという主張は採用できない。
法律論のレベルでは、便宜上、常に、神の目から見た真実を前提として、その
事実関係の下で法的な結論はどうなるかを判断します。
しかし、日常生活や、裁判においては、神様が真実を教えてくれるということ
はないので、間接的な事実により、動機(法律用語では主観的事実の一つです。
)がどのようなものであったかを判断します。
そうすると、真実は私的使用目的で録画しても、それを録画直後に販売したり
すると、録画直後に販売したという間接事実から元々私的使用目的がなかった
と判断されることがあるでしょう。
しかし、それは、事実認定の問題であって、法律論の問題ではありません。
裁判においては、法律は、そのようにして裁判所により真実であると確定され
た事実に対して適用されるのです。
したがって、複製をした当の本人にすれば、間違いなく私的使用目的で複製し
たのにそうでないと判断されるということが有り得ることになります。
しかし、それは、人間が神でない以上仕方がないとしかいいようがありません。
他方で、販売目的で複製しておきながら、私的使用目的であったという言い逃
れもほとんどできないことになります。
> テレビ録画の貸与という例を挙げると、
> 私的利用以外の利用も許されるのは自然に思いますが、
> 30条がありとあらゆる著作物の複製に関する規定であることを考えると、
> 分野によっては、著作権者に酷な規定になり得ると思います。
>
> 著作物の性質によって法解釈に差をつけるとすると、
> 49条の頒布・提示ぐらいしか思いつきませんが、
> 現在の著作権法では、それ以上に差をつけるのは困難なのでしょうか?
すみません。具体例が浮かばないので何とも言えません。
> fjでのこの議論は、テレビ録画のビデオを貸してほしいという投稿に対して
> 大変に威嚇的なフォローがつく事があるというのが発端です。
> フォローが威嚇的なのは良くある事にしても、
> その内容が決して適切ではないと、私も感じていました。
>
> その一つに、「貸してほしい」の記事での録画内容は、
> 多くが、借りない限り(少なくともすぐには)見れないものであり、
> 映画のように、テレビで見そこなったら買えば良いものは、
> 有意に少ないと感じられます。
> それは、著作権法では何の意味もない区別かもしれませんが、
> 著作者が本来守りたいと思っている著作権の軽重を、
> おおまかにではあれ、推測しての行動であり、
> それは(法から離れた)著作権を正しく尊重する態度でもあります。
>
> それに対して、一律に適法・違法を指摘するのは、
> 著作権の啓蒙であるように見えながら、
> 著作権者が望む著作権への、
> 利用者の理解を混乱させるものではないかと考えます。
私も、基本的には、以上の見解に賛成です。
しかし、法律のレベルの問題ではありませんが、やはり、ネット上で貸して欲
しいといった申入れをするのは妥当だとは思っていません。
私は、著作者の権利は十分守られなければならないと思っています。
そして、権利侵害行為やそれを助長する行為、あるいは誘発する行為はすべき
ではないという考えでいます。
ネット上での貸与の申入れは、違法行為を誘発したり、それの隠れ蓑になった
りする可能性があります(通常の社会生活での人間関係とは異なります。)。
問題は、注意の仕方ではないでしょうか。
注意の仕方というのは、一般社会でも難しいのですが、文字だけしか見えない
ネット上で、しかも、初対面の相手に注意をするのは非常に難しいですね。
残念ながら、私にも良い考えは浮かびません。
それでは。
法律論 大歓迎!
Richter ABC
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