No. 887/1090 Index Prev Next
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From: kumasan@rinc.or.jp
Newsgroups: fj.soc.copyright
Subject: 30条と著作権審議会報告書
Date: Sat, 23 Sep 2000 22:27:23 +0900
Organization: rinc.or.jp
Lines: 153
Message-ID: < kumasan-2309002227230001@rinc.or.jp> 
References: < m3pum22c0g.fsf@dolphin.eco.wakayama-u.ac.jp> 
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NNTP-Posting-Date: 23 Sep 2000 13:31:28 GMT
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Xref: ie.u-ryukyu.ac.jp fj.soc.copyright:11889

とりあえず30条を云々する前に岩田氏が引用する資料がちょっと古い事
を指摘しておこう。

In article < m3pum22c0g.fsf@dolphin.eco.wakayama-u.ac.jp> ,
 Hideaki Iwata  wrote:
> 第三十条 (私的使用のための複製)
>   著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」
>   という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内
>   において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とする場合
>   には、公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機
>   器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動
>   化されている機器をいう。)を用いて複製するときを除き、その使用す
>   る者が複製することができる。
>   (以下略)

平成11年6月23日改正

 第30条(私的使用のための複製) 
 (1)  著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著
 作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた
 範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とす
 るときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することがで
 きる。
 1  公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器
 (複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化
 されている機器をいう。)を用いて複製する場合
 2  技術的保護手段の回避(技術的保護手段に用いられている信号の除
 去又は改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去
 又は改変を除く)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止
 される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行
 為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第120条の2第1号及び
 第2号について同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じな
 いようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合 
 (2)  私的使用を目的として、デジタル方式の録音又は録画の機能を有
 する機器(放送の業務のための特別の性能その他の私的使用に通常供さ
 れない特別の性能を有するもの及び録音機能付きの電話機その他の本来
 の機能に附属する機能として録音又は録画の機能を有するものを除く。)
 であつて政令で定めるものにより、当該機器によるデジタル方式の録音
 又は録画の用に供される記録媒体であつて政令で定めるものに録音又は
 録画を行う者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならな
 い。

岩田氏はその昔「コピープロテクションについては不正競争防止法でやる
と聞いているのだが・・・」と述べていたのが思い出されるが、資料が古
すぎるということだけでなく現状の把握もあまり出来ていない事を示す好
例であると言えるのではないだろうか。

さて本旨に戻るが、fjにおける私的録画ビデオの無許諾でのやりとりを一
律違法と決めつけている人たちの拠り所は度々引用されている昭和56年
の著作権審議会報告書
http://www.cric.or.jp/houkoku/s56_6/s56_6.html
の以下の部分が主たる根拠となっている

 第三に、使用目的は、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られ
 た範囲内において使用することを目的」とする場合でなければならない。
 個人の娯楽や学習などのために録音したり、家族で楽しむために録画し
 たりする場合などが典型例である。また「これに準ずる限られた範囲内」
 とは、人数的には家庭内に準ずることから通常は4〜5人程度であり、か
 つ、その者間の関係は家庭内に準ずる親密かつ閉鎖的な関係を有するこ
 とが必要とされる。したがって、例えば、親密な特定少数の友人間、小
 研究グループなどについては、この限られた範囲内と考えられるが、少
 人数のグループであってもその構成員の変更が自由であるときには、そ
 の範囲内とはいえないものと考える。

確かにこの様な考え方から言えばfjでの無許諾なやりとりは適法とは言え
ない側面をもつ。
しかしながらその前提となる前文では以下の様に述べている

 著作権制度は、第一義的には著作者等の権利の保護を目的とするもので
 あるが、併せて社会における著作物の利用が円滑に行われるよう配慮し、
 それにより文化の一層の普及と発展に寄与しようとするものである。こ
 の点に関し、現行著作権法は、その第1条にその目的を掲げ、「この法
 律は、著作物……に関し著作者の権利………を定め、これらの文化的所
 産の公正な利用に留意しつつ、著作権等の権利の保護を図り、もって文
 化の発展に寄与することを目的とする。」としている。この「公正な利
 用」の具体的な措置の一つとして、著作権の制限、すなわち著作権の内
 容が一定の場合に一定の条件の下において制限されることが定められて
 いるが、著作権の制限は、著作物の利用の面からは「公正利用」又は「
 自由利用」といわれている。どのような範囲や態様における利用をもっ
 て「公正利用」であると考えるべきかは、経済、社会、文化の発展段階
 に応じて変化していくものであろうが、いずれの場合においても、その
 根底には著作権者の利益を不当に害するような利用であってはならない
 という認識が存在するものである。従って、法第30条をはじめとする著
 作権の制限規定は、本来認められるべき著作権を制限するものであると
 いう条文の性格上、厳格に解釈されなければならない。」

ここで最も注意したい一文が存在する。
‘いずれの場合においても、その根底には著作権者の利益を不当に害する
ような利用であってはならないという認識が存在するものである。’
である。

即ち著作権の制限事項(私的使用の複製)はTPOに因って変化する可能性
を示しつつ、最も重要な点は「その行為は著作権者に不利益をもたらすか」
にあるとしている点である。

先の改正された30条も時代に合わせて私的使用が不正(不利益をもたら
す様)に使用されるのをコピープロテクトする事で防止する事が可能な事
を示している。また私的複製によって生ずる不利益の一部は補償金により
緩和する事で使用者の便宜をはかっている場合もある事を示している。

話をfjでの私的TV録画物のやりとりに話を戻すがS56の著作権審議報告書
の解釈は‘経済、社会、文化の発展段階に応じて変化していくもの’であ
り、特に最近は先の改正された30条を見ても分かるよう私的複製からの
著作物の保護をコピープロテクションや補償金で補う方向にある事を考え
れば必ずしもS56当時の考えが現在に通じるかどうかは考慮の余地がある
だろう。
いやむしろS56の著作権審議報告書を読むと後半は私的録音録画補償金の
導入についてが主題であり、つまり補償金導入を正当化する為に‘私的録
音録画’の境界の曖昧さと、著作権者が考える‘私的使用範囲’とユーザ
ーが考える‘私的使用範囲’のギャップを示し、これを取り締まる事の難
しさを示したに過ぎない(著作権法で規定する私的使用範囲は現実的には
取締りの対象足り得ない)と見るのが正しい見方ではないだろうか。

技術的な事を考えれば現在の放送時にプロテクト信号をもうけ私的録画や
その器機以外の再生を制限する事はBS、CS或いは有線を使った有料放送を
みれば不可能ではない事が分かる。
それを要求するかどうかは放送物の私的録画やそのコピーの氾濫により現
実に著作権者に不利益をもたらしているかどうかにあり、もし不利益が有
ると認められるならそれらの努力を放送者側に求めても不合理ではないは
ずである。
補償金にしても文化庁の天下り先を単に増やすだけという側面や、補償金
の掛け方、分配の公正さに欠けるという問題があるにしろ不利益があると
考えられるなら器機、媒体に補償金を求めて行く方向にあるのだ。

この様にプロテクトが施されていない、国内で誰でも視聴可能な放送を補
償金のシステムが導入されていない器機、媒体により私的録画した物を、
レンタルや再放送等の代換え手段が無い事を理由に善意で第3者に一時的
に都合したところで実質的な被害があるとは言えないであろう。
実際には著作権者側には視聴の拡大を望んでいる場合も多々有るであろう
事は想像にかたくない。
一般論として不法行為と一律に断ずるには難しい事がこの件に関しての違
法論・不法論を唱える者に対し繰り返し指摘されている内容である。

--
閑話休題
たとえば憲法9条により自衛隊を違憲と考える事は法律論のみに終始すれ
ばさほど難しい話ではない。
現実はあの日本共産党でさえ自衛隊の存在を容認せざるを得ないのが時代
の流れである。
昔、物議を醸し出したその自衛隊の拡大範囲を規定した‘GNP1%以内’論は
何処に行ってしまったのだろう。

著作権者が私的録画物の貸与、複製を問題と考えていない場合、その行為
に勝手に「違法」「不法」のレッテルを貼り不当にこれ貶める行為は著作
権法でいう所の「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利
の保護を図り、もつて文化の発展に寄与する」ことや「著作者はその著作
権を専有する」ことに反するのではないだろうかというのが私の持論であ
る。
-- 
Kazuya Kumazawa
kumasan@rinc.or.jp

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