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From: Richter ABC
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Subject: Re: 法30条と49条の関係
Date: Thu, 24 Aug 2000 21:05:26 +0900
Organization: PLALA
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こんにちは。
Hideaki Iwata さん wrote:
> > 上記の点も、岩田説では、「30条と49条に整合性がなければならない」という
> > 前提そのものが法律解釈的に論証されていません。
>
> しかし同時に、両者に整合性を見出す必要がない、という点も検証
> されていないと考えますが如何でしょう?
↑
まず、岩田説との関係でのみ述べます。
岩田説では、「30条と49条に整合性がなければならない」という前提に立
ってそこから30条などの解釈が導かれていると思います(間違っていますか
?下の方では、否定されているようですが。)。
そうすると、岩田説は、上記の前提が法解釈的に成立する論理であることとそ
の結論の妥当性とを論証しなければなりません。
仮に、「整合性を見出す必要がない」という点が論証されていないとしても、
そのことによって岩田説の正当性を根拠付けることはできません。
他方、後で説明しますが、私は、法律の条文の建て方、伝統的な著作権の考え
方などから、「整合性はなくともよい」ことは、法解釈として当然と考えてい
ます。
もっとも、まだ、ここでいう「整合性」という言葉が定義されていませ
んが、私は、ここでは、「整合性を欠く」という意味を、「私的使用目的で複
製されたものを私的使用目的以外の目的で使用又は譲渡する場合のうち、49
条の公衆要件を欠く場合があると解釈すると30条と49条とが整合性を欠い
ている。」という意味で使用しています。
> 大体、49条と30条の関係を考える場合、49条は30条がいうところの
> 「私的使用目的で複製された著作物」が、結果的に目的外使用された
> 場合、当該著作物は30条に基づく複製物とは見なさない(つまり目的外
> 使用である)、と宣言している条項だと私は認識しています。
↑
そもそも、ここが間違っています。
まず、21条は、著作者に複製権を占有させています。そして、30条は、そ
の複製権の範囲を画する規定です。
つまり、著作者が専有する複製権は、元々、30条の適用を受ける複製行為に
は及ばないのです。
著作者がすべての複製について専有権を有していて、例外として恩恵的に30
条に該当する場合に複製を認めてやっているというものではありません。
他方、49条1項は、複製行為に該当しない頒布(公衆への譲渡又は貸与)及
び公衆への提示について、上記のように認められている著作者の複製権を実質
的に保障するために特に複製とみなすことにしている規定です。
複製とみなされるのは上記の頒布又は提示行為です。頒布又は提示された複製
物が遡って違法に複製された物になるのではありません。もちろん、30条に
よって適法に行われた複製行為が遡って違法な複製行為になるものでもありま
せん。
なお、49条の行為主体は、30条により複製をした者に限定されていません。
30条も49条も、「行為」について規定していることに注意する必要があり
ます。
特に、49条は、113条を介して犯罪構成要件ともなるのです。その規定を
むやみに拡張解釈したり、法が特に定めている「公衆」の意義を無視した解釈
をすることは許されません。
確かに、49条に公衆要件があるため、公衆要件を欠く譲渡、貸与及び展示は
、複製とはみなされないことになりますが、それは、立法政策の問題です。
なぜ、そのような立法政策をとったかは、その立法当時の社会の実情を前提と
して著作者の権利と使用者の利益との調整を図ったからです。その程度のこと
は自由にしておいても、著作者の経済的利益を害することはないであろうとい
う考えがあったからだと思います。
なお、私は、著作権のような新しい法分野では、複写等の技術の進歩や社会状
況の変化によって立法当初の法律あるいは法律解釈では著作者の利益が十分守
れない状況が生じるということは十分認識しています。
そして、それを解釈で補うべき場合があることも知っています。
> これは47条の2と49条の関係でも一緒ですよね。
> 30条にしても47条の2にしても、複製行為の正当性(著作者の権利の
> 制限)を定義しているだけであり、権原者の権利が制限された上で
> 複製された著作物を、正当に利用する方法の一部を定義しているのが
> 49条だと理解しています。
>
> 従って、私的に言えば、両者が完全に整合している必要はない、です。
↑
この部分は、趣旨を理解しかねます。「整合」というのをどのような意味で使
用されているのでしょうか?
> > 法律の文言に立法ミスが絶無であるとまでは言えませんが、上記の条文が立法ミス
> > であるという人は、法律家にはいないでしょう。
>
> 私は「立法ミス」があるとは言っていません。むしろ、立法ミスはない、
> との立場に立っています。
↑
そのとおりですね。私の記載も岩田さんの引用元に対する意見です。
> ただ、技術は進歩します。著作権を含む知的所有権は無体財産であるが
> 故に、常に「技術の進歩」による影響を受ける、というのが私の持論です。
↑
法律解釈は、技術の進歩をも踏まえて適性にされる必要がありますが、
技術の進歩に合わせて法律の内容まで自動的に変わることはありません。
必要があれば、法改正をすべきなのです。
類推適用、拡張解釈とういのも、著作権法の場合、条文が犯罪構成と密接に関連
しているので非常に難しいですね。
> つまり、立法時の概念が以降現在までの技術革新によってあやふやになって
> いる、という主張です。
<中略>
> 公衆の概念は、昭和45年の現行著作権法の成立時から存在します。
> 敢えて言えば、旧著作権法にも登場しています。ただ、情報通信技術
> の進歩の前では、立法時の「公衆」の概念が日々あいまいになっている
> のではないか?というのが岩田説(というか岩田理論)の出発点と
> なっています。
↑
法概念自体がが技術の進歩によってあやふやになるということはあり得ないと
思います。
公衆の概念も、説が別れる部分はありますが、それほど曖昧ではありません。
ただし、限界事例では公衆に当たるかどうかの判断が難しいということは言え
ます。また、この分野では、技術の進歩により法令の適用が難しい事例が多く
なるということは言えると思います。
> > 法律論、大歓迎!
>
> うーん、やっぱ純粋な著作権法論をする場(fj.sci.copyright)があった
> 方がいいのかなあ。でも、法律解釈論と立法論ってオーバーラップする
> ところがありますからねえ。特に民事裁判などで自分の正当性を主張する
> 場合はね。もっとも、どちらが論理的かを判断するのは裁判官ですけど:-)
↑
法律解釈論をする場と立法論をする場とを明確に分ける必要はないでしょう。
法律解釈論というのは、社会の変化に応じてある程度変化するものです。
そして、法律の解釈の限界を超えるけれども、著作者の利益を守るためにこの
ようにすべきであるというようなことになれば、つまり、解釈の域を超える場
合には、立法論となるのです。
法律家は、解釈論と立法論とを明確に区別します。
民事訴訟では、立法論は問題となりません。
> 著作権法の論文を書くために数十の判決文に目を通した感想です:-)
↑
判例を十分読まれたならば、私が判例と同じ法的思考をしていることがお
分かりになるでしょう。
法律論 大歓迎!
Richter ABC
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