分野を問わず最終講義は面白い

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大学教授が定年により退官(退職とは呼ばないらしい)する年には、「最終講義」なるものをやることが多いです。絶対ではないし、実際やらなかった先生もみたことあるんですが。個人的には専門性の近さとは無関係に、単純に「その人がどう世界を見てて、それをどう解釈して、歩んできたのか」がとても楽しいので、都合つくときには参加するようにしてます。下手な映画やドキュメンタリーよりよっぽど面白いことが多いし。

今日のは建築系の小倉先生の最終講義「熱帯へのまなざし」。元々は本土出身で、当時たまたま琉大募集があったこと、またそのタイミングではまだ1期生1年目で共通科目しかなかったこと等が重なり、最初は留学しながら研究されてたとか。その際に「沖縄の暑さ」から始まり、根本的に違うこと、それを踏まえた建築を学びたいということでアフリカに興味を持ったらしい。そのために直接そこに行く前に、まずは最先端の何でも知ってるだろうということでイギリスに飛んで関連資料収集、研究者らとの討論。

そこで想定外だったのが、当時の西洋からすると「他はうちらのコピーに過ぎず、研究する価値ない」というのが大多数でそもそも知らないケースの方が多かったという事実。それに対して「イギリス・ルネッサンスはフランスなりのコピーじゃないの?」と言ったら黙ってしまい、コピーはあるにせよそれだけではないこと、環境や歴史的文化的背景に基づいた独自性もあるといった話に納得して貰え、討論が進んだとか。

ちなみに専門家自体はいて、亜熱帯地域における建築物系の最初の教科書を書いた先生らへヒアリングできたらしい(数年後亡くなられたとかで運が良かったのか悪かったのか、とにかくいい経験に)。十分準備ができたところでアフリカへ。行こうとしたら「え、現地行くのは危険すぎるだろ」と止められたとかw。その一方で、本気であることが伝わったらとても協力してくれて、現地の大学・研究所等へのコネクションを活用してあれこれ手配してもらえて、実際の現場活動はかなり助かったとのこと。その後はアジア圏にも進み、亜熱帯地域における自然的特性、認知的傾向、歴史的背景等を踏まえた分析と、それに基づく新しい建造物の設計等をやられてきたようです。

「呼吸する壁」みたいなやつの走りの時代ですね。まだクーラーがなく扇風機の時代だったり、そもそも電力も安定してない場所だったりで如何にして過ごしやすい、快適な建造物を実現するか。雨は通さないが風は通す壁とか、「手品のネタような工夫」と表現されてましたが、そういう設計も含めて楽しまれてきた研究生活だったようです。