No. 1088/1090 Index Prev Next
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From: "Nakagawa" 
Newsgroups: fj.soc.copyright
Subject: Re: 30条と49条 (罰則関係)
Date: Wed, 11 Oct 2000 23:20:17 +0900
Organization: PLALA
Lines: 61
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中川@つくば です

一点だけ。
# というか、私の著作権制度に関する疑問は、
# 主にこの一点に集約されている気もします。

ISHIBASHI wrote in message < 8rklnc$9g7$1@bgsv5905.tk.mesh.ad.jp> ...
> そして、特定多数人とはどの程度の範囲の集団かと考える時は、
> 著作者の利益と他の人の自由使用とのバランスをとりつつ文化
> の発展を図るという著作権制度の趣旨も考慮して解釈する訳です。


著作権法が、「著作者の利益と他の人の自由使用との
バランスをとりつつ文化の発展を図る」趣旨であることには
異存はないのですが、それによって具体的事例に関して、
どの程度フレキシブルな対応ができるかというと、
公衆の解釈でフレキシブルになる範囲は
殆どないのではないかと思います。

例えば、具体的に著作物Aの複製物が他人Bに譲渡されたとして、
それが、著作者の利益にとってどう影響するかは、
第一に、著作物Aの性質によります、
また複製物の複製としての完成度にもよるでしょう、
譲渡先がどのような人かに関しては、
むしろ相関が薄いのではないかと思います。
したがって、個別事例でバランスだけを考えると、
実は、著作物の性質などをも考慮したことになり、
法律で許される裁量の範囲を越えるのではないかと思います。
実際、完全にバランスだけで考えれば、それは、
河野さんが主張する「公正利用」の概念と殆ど同じになります。
(そしてそれは現行の法律では担保されていない)

逆に著作物Aに関しての性質に立ち入らずに、
抽象的にバランスを考えるとすると、
抽象的著作物Aとして何を想定するかによって、
答が大きく変わってきます。

映画、音楽、テレビ番組、本などに共通する
抽象的著作物などというものを考えるのに、
どれだけの意味があるのでしょうか?
それとも、映画、音楽、テレビ番組、本などで、
別のバランス点を考える、すなわち公衆の定義を変える、
等ということが、現行の法律で可能なのでしょうか?

こう考えると、現行の著作権法は、
具体的な著作権侵害の境界線を引くことを
そもそも予定しているのかという疑問が沸いてきます。

著作権侵害は親告罪です。
親告罪というと、婦女暴行のような陰湿な犯罪が思い浮かび、
告訴されないからよいと言うものではない、
と考えがちですが、こと著作権法に関しては、
もっとも広く著作権を設定したい人も適正に権利が主張でき、
著作権者の考え次第で自由に権利主張の範囲を
縮小できるようになっていると考えるべきでしょう。

そう考えると、現在のような著作権法では、
著作者が、著作権主張の範囲を明らかにしないのは、
著作物利用者に対して失礼な態度である、
という自覚を持つ必要があるのかもしれません。

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