No. 177/1090 Index Prev Next
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Newsgroups: fj.soc.copyright,fj.soc.law
Subject: Re: recommendation about crosspost
Message-ID: < 20000620231114cal@host.or.jp> 
References: < 3269.961431590@rananim.ie.u-ryukyu.ac.jp> 
	< 8imo97$3t$1@father.asahi-net.or.jp> 
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From: cal@host.or.jp (SASAKI Masato)
Organization: cal personal
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Lines: 126
Date: Tue, 20 Jun 2000 23:11:14 +0900
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NNTP-Posting-Date: Wed, 21 Jun 2000 00:05:30 JST
Xref: ie.u-ryukyu.ac.jp fj.soc.copyright:11161 fj.soc.law:35779

佐々木将人@函館 です。

> From:Kuroda Toshio / 黒田 俊雄
> Date:2000/06/20 03:26:31
>Message-ID:< 8imo97$3t$1@father.asahi-net.or.jp> 
> 
> (1) 「許諾後の権利の留保」は上記のように無制限にできるのでしょうか?

できません。
って言うかね、
こういう現象をあんまり「留保」って言葉では説明しません。
だって権利というのは行使するか否かが権利者の自由であるからこそ
「権利」なのであって
その行使が自由でないものは「権利」ではなくて義務でしょう?

だから他者が権利を侵害する行為をする場合に
事前に許可を与えておいたり
事後に(侵害があってもなお賠償を求めないように)
権利を行使をしなかったりしたって
それは権利の性質上当たり前の話であって
あえて「留保」って言葉は使いません。
……法律学小辞典では国際法における使い方と
  公示催告における使い方しか載ってないのはその証左
  ……あたしには「留保」はだいぶんなじみあるけど
    普通はあんまり気にしなくてもいい用語だよね。

で、ね。
権利を行使するにあたってはだ、
勝手気ままに何でもできる訳ではないのです。
民法1条2項が
「信義に従い誠実に之を為すことを要す」(信義則)
3項が
「濫用は之を許さず」(権利濫用)
と定めているのはその実定法上の表れで
私が「著作権って本当に放棄できるの?」って言いつつ
「放棄した後で「やっぱりやめた」と言っても
 結局それは通らないだろう。」
とする根拠に使っている「禁反言」は
民法に書かれざる原理の1つです。
(禁反言の説明として例えば内田貴「民法I」東京大学出版会p154の
 「自らの言動によってある事実の存在を相手に信じさせた者は、
  相手がそれを信じて自己の利害関係を変更した場合、
  その者に対して当該事実の不存在を主張できないとする原則」
 ちなみに民法に書かれざる原則を書いてしまった(笑)文献として
 5年くらい前の法学教室(有斐閣)の特集があったんだけど
 今手元にないんで手元にある人はみておいてください。)

で、所詮あたしはパソコン通信相互乗り入れ後のfj参加者だから
それ以前の状況は体験ではなく本の記述によらざるを得ないけど
その時点でもfjの記事をニュースシステムのとおりにばらまくのは
問題がないけど
その記事を何か他の用途に使う(例えばそれをまとめて本にする)とかは
かならずしも問題がないとは言えないって共通認識でいたと
私は認識しています。

これを前提にすると
記事として流した後に当該記事の著作権を主張して
複製にあたるからダメなんて言うのは
fjにおける常識外れの行為であって
記事を投稿した以上ニュースのシステムを利用して配る分には
「ニュースのシステムを利用して配ることに対する同意」
があると解さざるを得ず
そうなると後でダメなんて言うのは通る訳がありません。
実際の裁判の時に「禁反言」で行くか「権利濫用」で行くか
「信義則違反」で行くかはわからないけど
どれか(もしくは複数)を理由に切ることは間違いありません。
(民法の権利濫用・信義則違反については1条2項3項の他
 90条の公序良俗違反のあたりの解説や判例を参照してください。)
#ちなみにこれは典型的な禁反言です。
 禁反言も切る理由としてあっさり認めてくれればもう話が早いです。

一方でこのことは
記事を勝手に本にされたりすることを我慢する理由にはなりません。
……だって「ニュースとして配るのはOKだけど
      それ以外にはOKした訳じゃあない。」訳だからして……。
そしてこれは「権利は放棄されたけど(この限りで)留保されている。」
なんてまず言いません。
「権利というのはそもそもそういうもの」で終わり。

だいたい「放棄」を権利の消滅事由にあげるんなら
「留保」というのは「条件付きの消滅」なんで
そんなのは普通「消滅していない」って評価します。

> (2) いわゆる「放棄」は「不行使の明言」にすぎない(佐々木将人さんの説)
>     のに、それだけで(1)のようなことが起こるのを防げるのでしょうか?

あれ?あたしの名前が出ているあたり
あたしはフォローしちゃだめだったのかな?
……でももう遅いもんね。(笑)

業界には「一般条項は負け戦」って伝説があって
禁反言もその例にもれず否定されている判例が結構あるけど
(特に行政がらみの更正決定関連は
 正しい姿に戻すことを止めることはできないとして
 たいてい禁反言を否定していますが。)
きちんと認められている判例もあります。

このあたりも先ほどの条文関連の解説や判例を見ればわかります。

> (3) (1)(2)が正しいとして、「ある日突然許諾内容が変わる」ような許諾に
>     著作権法上どのような意味があるのでしょうか?

結果としては「許諾の内容を変えた」とする裁判上の請求が
ことごとく否定される訳ですから
「許諾内容が変わらない許諾がなされた」というのと
同じことになってしまいます。

> 以上3点、回答ならびに回答へのポインタをご存じの方がいらっしゃいましたら
> 教えていただけるとfj.*の著作権に関する議論が進むので嬉しいです。

民法は普通の人同士の法律関係を規律する法律であるにとどまらず
権利関係全般の基本法でもある訳だから
著作権法の権利関係の規定を議論するのには
民法の勉強も必須なんだな。

大ざっぱな議論するなら民法うろ覚えでもいいけど
デリケートな局面になったら民法の勉強をしていないのは
「と」な議論一直線なんで注意が必要だお。

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Talk lisp at Tea room Lisp.gc .
cal@host.or.jp  佐々木将人
(This address is for NetNews.)
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磯脇やそよさんにルフィミアの声で
「まさと先輩!」って呼ばれてみたい!?
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