「複雑系科学と応用哲学」沖縄研究会第1回大会, day3

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「複雑系科学と応用哲学」沖縄研究会第1回大会、最終日3日目のメモです。

古典論理〜関連論理周りの話については殆どついていけてなかったのですが、可能世界における矛盾やギャップを埋め合わせるために指標やスターを導入している人らがいる一方で、それらを関連性’→’のみで説明できる(=記述できる)ようにしようとしている人らがいるということは分かりました。

言語進化学の方は、関連学会がとても面白そう。最近は実験検証が増えてきているようですが、それ以上に結果をどう解釈するのが妥当かについての討論が大変そうな印象。獲得できた言語にcompositionalな性質があるからといって、それが自然界にあるものを模写したに過ぎないという観点は目から鱗。環境要因重要だ。


目次


「関連論理の可能性を探る」, 吉満昭宏(琉球大学)

関連論理から見た古典論理のアノマリー
 C.I.ルイス
 CL:古典論理→数学等
  リッチ過ぎて都合が悪いケースが。
  CLからリッチな部分を除いて構成したものがRL(関連論理)。
  他にもRL(R), RL(B) 等いろいろある。
  Rは最も強い構成、Bが中間?、Sが最も弱い構成。

アノマリー  古典論理(?)では上手く説明できないもの。  関連論理から見ると妙に見える古典論理。   含意、否定、連言を使った例題5ケース(式)    *含意と条件の区別が必要で、文字通りの「含意」ではない   a. ~p⊃(p⊃q): 偽な命題は任意の命題を含意する   古典論理では形式的真理であるが、   どの式も「命題p,qの間にある演繹的な関連性を無視している」ように見える。  様相論理   〜ねばならない(必然性)    □(1+1=2)    必然性オペレータの導入→可能性を考慮せざるを得なくなった    様相論理のように単純にオペレータを導入するのではなく、    導入することで何が起きるかを、オペレータが何を意味するのかを考える必要がある。   〜はできる(可能性)    ◇(1+1=2)
 意味論  ラウトリー=マイヤー・パラダイム:純粋意味論  「p→q」への意味を与えた。   様相論理と比較して、人工的過ぎて本質的な意味が分からないという批判。   →応用意味論    自然な解釈まで得られている意味論    例「全てのwでpが真」。wに解釈を加える。

関連論理へ意味論の付与  Copeland: 自然な解釈を与えたが、複雑。  真理値が公理に則して演算できるように演算子を導入しただけ。

実は二種類あったアノマリー  古典→関連   含意/演繹的関連: '⊃' → '→' *Aアノマリー(式a,b,c)   否定: '〜' → '¬'    *Bアノマリー(式d,e)  関連論理はAアノマリーだけで説明するんじゃないのか?  Bアノマリーがあっても良いが、Aアノマリーとの関係性はある(説明できる)のか?  2本立てで説明するならそこにも関係性があるべきでは?

意味論のアプローチまとめ  A~Cは応用意味論、Dは全く異なる方針。  A. 簡潔化された意味論: G.プリースト、R.シルヴァン   殆ど説明できてないし、スターはそもそも無理。  B. 状況意味論: E.D.メアズ、G.レストール   状況と状況から新しい状況を生成して説明。  C. 内容意味論: R.T.ブレイディ  D. 非形式論理への転換: コープランド, R.L.イプステイン   '→'関連性のみで説明できるようになるだろう。   でも、それだと形式論理ではない。

可能世界 vs 状況  '可能世界'では完全性がある。必ず真偽がある。   矛盾やギャップを含めて説明しようとすると指標やスターが必要になる。   でも矛盾が存在する世界を可能世界と呼んで良いのか?    pure semantics 込みだと矛盾がある世界はどうなの?  '状況'では良い(え、何で?)   矛盾した信念を持ってても良い。   信念分析の場合にwを使うのは宜しくない(?)    別の指標が望ましい(?)   →矛盾が存在するからといって何でも真になる世界ではない。    古典論理だと何でも真になってしまう。

applied semantics situation / state / event


討論3「複雑系科学と応用哲学のコラボレートの可能性」

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「言語とコミュニケーションの進化~実験アプローチの展開」, 橋本敬(JAIST)

アウトライン
 自己紹介
  JAIST知識科学研究科
   人文社会系の知と理工系の知の融合
   知識の想像・共有・活用を科学する
    言語と社会制度から生まれる知識というフレームワークについて
    複雑系科学でアプローチ
  伝達創成機構
   ヘテロ複雑システムによるコミュニケーション理解のための神経機構の解明
   コミュニケーション神経情報学
   コミュニケーションとダイナミクスの次元の関係
    非線形ダイナミクスとしてできるだけ力学系として捉える(イメージ)
    理解(意味の共有):N+N2N
    協調・共感:N+N=N
     N=ダイナミクスの次元
  EVOLANG IX(国際会議)
   言語学/生物学/進化学/工学等々が集合

言語進化の紹介 進化言語学の問題設定 言語の起源と進化  言語起源   言語を用いる能力の生物進化過程  言語進化   (言語を用いる能力による)言語の複雑化・構造化の文化進化過程
 比較認知科学  鳥との比較が多い   鳥は低レベルのセマンティック(?)があり、それとの比較。   言語としての比較ではなく、言語を構成する要素/機能/程度等で比較。

前適応  別の機能を発揮することでセレクションされた能力が言語能力にも使えた。  分解された能力の「元」は何なのか。   例:ミラーニューロン

進化という観点から、人間の本性としての言語、人間そのものを理解する。  数理モデル、シミュレーション

Chomskyらの仮説  広義言語能力(FLB)  狭義言語能力(FLN)   再帰操作。    計算システム→再帰→内部表現+有限要素→無限の表現    音韻システム:知覚・運動システム    意味システム:概念・志向システム  あくまでも候補であって、これ以外を持っていても良いという立場。  生成文法学者が支持。   認知言語学者は誤りという立場。

言語の定義  チョムスキー一派は明確に与える  認知言語学派はあやふや   進化言語学として科学的に捉えやすくなってきてはいる。

自己組織化 言語進化の実験アプローチ  合成性:単語や文の意味が、その部分と組み合わせ方の何らかの関数になっている   赤い丸/walk+ed=walked  構造により意味が異なる:taro watched a girl with telescope.  繰り返し学習を実験室で実現   Cumulative cultural evolution in the laboratory: An experimental approach to the origins of structure in human language, Kirby, S., Comish, H., & Smith, K., 2008  シミュレーションでも実験でも自己組織化された   言語は言語能力が獲得しやすいように進化するし、   言語獲得能力はより複雑な言語を獲得しやすいように進化する共進化。  inductive bias がある。  ベイズ繰り返し学習, Kalish, Griffiths & Lewandowsky, 2007   汎化学習されやすいように言語が構造化(文化進化)   その結果として、合成的言語ができる   Kirby, 2002; Brighton, 2002; Smith 2003; Griffiths & Kalish, 2005   情報伝達システムの法則。言語はその一事例。

合成性/compositionalな構造  言語がcompositionalな構成を獲得したのではなく、  最初から自然/世界にはcompositionalな情報があり、  言語はそれを写し取ったに過ぎない。   世界を分節して認知する力?   人間だけが何でこうなった?   情報伝達システム全般でそうならないのは何故?    人間固有の能力に関して論じるには不十分な実験    メタファー

機能語/内容語:認知意味論  人間特有:機能語がある  機能語は内容語から意味変化して生成。   行く→未来  一方向性がある意味変化。逆方向は殆どない。抽象度の上がる方向へ。  内容語→機能語の中に抽象度が上がる方向への意味変化。   何故一方向性が生じるのか?    人間特有の現象なのでこれを明かすことで特有の言語認知能力についての説明を。   「抽象」が元々無いからでは?   一方向性が実現する認知的なバイアス?

言語の働き  新しい概念を生み出す

構成論的手法の弱み  シミュレーション結果の解釈

コミュニケーション  動物のコミュニケーション   平均すれば送り手が受け手の反応によって利益を得るような、   ある動物から他の動物への信号の伝達(Slater, 1983)    あざむき     動物:刺激反射系でも結構複雑なことを学習できる     心の理論/刺激反射  ことばによるコミュニケーション  記号コミュニケーション

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