日本認知科学会第29回大会 3日目(最終日)

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日本認知科学会第29回大会3日目(最終日)が終了しました。まだまだ咀嚼できてないですが、自分の考えを整理するのは後にしてここでは参加メモの備忘録です。

初日に「会期中に地震あるでしょう」という話だったのですが、最後の口頭発表セッション中に2回来ました。1回目は結構震度あった気もしたけどあれで震度3だったのか。2回目は震度1だったらしい。こっちももうちょい強かった気がしたけど。

最終日は気仙沼食堂に行く予定だったんですが、満席で入れず。仕方ないのですぐ近くにあったかきやNO海鮮丼ぶりや ととびすとに突撃。牡蠣蒸し焼きは当然として、海鮮丼も旨し。やっぱり海産物を一度は食べておくべきだな。適当に入ったお店でこんなに美味しいとか羨ましすぎる。

最終日のプログラムは以下の通り。

 シンポジウム2: 知覚アプローチの現実場面への適用
 ポスターセッション4
 口頭セッション5: 言語・認知
 ワークショップ3: t検定・分散分析から混合モデルへ:文理解研究の導入事例から学ぶ
 ワークショップ4: 進化言語学の方法論的基盤

シンポジウム(知覚アプローチの現実場面への適用)は良い意味で期待を裏切られて面白かった。一つ心残りがあるんだけど、「網膜に映る二次元画像から外界三次元構造復元し、物体や光景を認識」という従来の復元スキームで説明できないことが「二次元画像特徴の集合/統計量からほとんど「直接に」認識」という新しい把握モデルとして説明できることがあるという話は、復元スキーム全体を否定しているのだろうか?

最後の口頭セッションは自分的に一番気になってたセッションなんですが、実態が「言語の認知」というにはちょっと違いすぎるように感じたセッション。2,3件目は言語全く関係ないし。良い悪いじゃなくてセッション名と違いすぎるのはちょっと。

ワークショップも少し残念。ワークショップ3(混合モデル)はどちらかというとレクチャー。ブログ: Mixed Effects Modelsを通して整理発信していくらしい。ワークショップ4(進化言語学)は、参加者に何を伝えたいのかが謎なパネル討論。

以下、當間解釈の備忘録メモです。


<目次>
[ シンポジウム2 ] : S2 知覚アプローチの現実場面への適用
[ ポスターセッション4 ]

[ 口頭セッション5: 言語・認知 ]

[ ワークショップ3 ] : t 検定・分散分析から混合モデルへ:文理解研究の導入事例から学ぶ
[ ワークショップ4 ] : 進化言語学の方法論的基盤


シンポジウム2: S2 知覚アプローチの現実場面への適用

企画: 永井聖剛(産業技術総合研究所)
話題提供者: 渡邊克巳(東京大学),
 本吉勇(NTT コミュニケーション科学基礎研究所),
 熊田孝恒(理化学研究所)
指定討論者: 齋木潤(京都大学)

[ 現実場面の「複雑さ」をどう扱うか(渡邊克巳(東京大学))]  複雑(と思われている)現象?   刺激の複雑さ:刺激をきちんとつくる    見た目の複雑さ/数式モデル上の複雑さを混在して考えない   操作的定義:受容野とか閾値は操作的定義。脳には存在しない。   差分を取る:「絶対値」は扱いにくい。変化に注目。   限界を調べる   エッセンスを残したまま単純化する:被験者が捉えるストラテジーを最小化(最大化)する  刺激や現象の見かけの複雑さに騙されないこと  実験に落とし込む前に、どのように現象のエッセンスを残したまま単純化すべきか  高次・複雑な刺激をあえて「低次」なものとして扱ってみる   低次のプロセス組み合わせで説明?高次受容野として説明?  操作的定義を設定   有効視野での例: 操作的定義を設定し、それをベースに比較検証   主観的指標と客観的指標のズレをどう説明するかの面白み  刺激をきちんと作る   人,喋り,対話: e.g., パージカルモーション+α?   刺激つくりだけで手間が大きいが、最初にきちんと作っておく   現実社会からの収集でも良いが、どうエッセンスを抽出するかが重要  差分に注目する   歴史的: 単純接触効果(直前の刺激と比べてどうか。刺激そのものの良さは置いておく)    頭の中の過程を抽出することができる    e.g., CMの良さを評価するのではなく、直前と比べてどうかをシーケンスで見る  系列効果  ミニマルな状況を作る   高次・社会的インタラクションにも低次な側面は含まれる    日常観察だけでは分からない部分をどう引き出すか    e.g., こっくりさん/指追従: 同期にはフォロワーがどう追従するかが大きな要素

[ 知覚情報処理に基づく美学(本吉勇(NTT コミュニケーション科学基礎研究所))]  復元から把握へ   過去数十年:網膜に映る二次元画像から外界三次元構造復元し、物体や光景を認識。    疑念     1990年代末, 動物のいる/いないシーンを100msec以下で、     注意を向けていなくてもできる。(赤い縦線と緑の横線を見分ける方が時間がかかる)     2000年代, 画像のスペクトル形状から大まかなシーンのカテゴリ認識可能。   新パラダイム:二次元画像特徴の集合/統計量からほとんど「直接に」認識。    事細かに復元(高コスト)する必要はなく、    例えばヒストグラムの一部に着目するだけで「把握」している?    人間の知覚はルールさえ分かれば簡単に欺くことが可能。     e.g., 形/質感/物体カテゴリの内部表現: 錯視を用いた実験モデル     ->復元が必要だと思われていた知覚は、実際やってることは非常に低次コード?      入力画像->画像特徴->統計量->オンデマンドな意思決定      ≒コンピュータビジョンと同じ方向  低次の画像特徴の集合に基づく高次の物体・質感表現  形式の微を証拠だてて論じることはできないか?(審美眼の自然科学的理解)   個人の好き嫌いを越えたもの   一握りの集団の好き嫌いも越えた、普遍的なもの(作品そのものを分析する情報美学)   絵画の画像統計量は自然照明下における物体の画像統計量と相関(生態光学的要因)

Q: 2次元から奥行きがでてきた西洋絵画ものとの関係は? A: 何かしら科学的思考法があり、遠近法は幾何学のオンパレード。  陰影リッチについていうと、古代ローマまで遡っても違いがある。  認知モデルの背後にも自然環境の影響があるかもしれない。  例えば直線的な建造物が多かったから遠近法が生まれたとか?

[ 日常生活場面における情報選択や行動選択:神経心理学からのアプローチ(熊田孝恒(理化学研究所))]  神経心理学:脳の器質的ダメージによって生じる認知機能の変化を実験心理学的に理解する。  高齢者/障がい者/初心者などの特殊なポピュレーションの認知・行動特性を理解する必要性  前頭葉機能に焦点をあてた事例  視覚探索の例: 注意のスポットライトを移動して、ターゲットを見つけ出す過程   ボトムアップ情報:視覚的顕著性   トップダウン情報:ターゲットに関する知識   半側空間無視    刺激の差で起こることも起きないこともある    特徴探索(線分)だと生じない    結合探索だと生じる->ボトムアップとトップダウンどちらに問題?    -> 知識を要する課題、顕在的に解ける課題で比較  加齢による認知機能の個人差と日常生活における問題   注意/ワーキングメモリ/プランニングのいずれか一つだけが劣っている人を集めて比較    高得点/ワーキングメモリ低下では顕著パターン無し    注意機能低下: 探索範囲の不十分さ(どこを探すべきか分からない)*非注意    プランニング機能低下: ゴール設定の不十分さ(何を探すべきか分からない)    過去の経験やメンタルモデルに従った行動が共通してみられる(機能低下を補う行動?)    -> 駅構内の案内表示を増設・改良しても有効ではない。   高齢者と一括りに扱えるようなものではない  注意が向かない人たち、向けようとしていない人たちの認知モデル   どうサポートするか   心理認知学的に把握するところから

Q: 要素数が多少が左右に差が出るのは何故か? A: 密度が影響している可能性。まだ仮説で検証できていない。 A: 課題の難易度だけで説明できないか?

[ 指定討論: 齋木潤(京都大学)]  タイトルについて、   知覚研究者が認知科学で役立つのは実験方法論のみ?   知覚が基礎研究で現実場面は別世界で切れ目がある?  知覚研究のリアリティと認知研究のリアリティの接点が少ない?  問題を絞って掘り下げていく方法論 vs 問題を広げていくアプローチ?  知覚/認知や基礎/応用といった区分はナンセンス。  全ての研究はそれなりのリアリティ、何らかの現実場面との接点がある。  現実場面の一側面を切り出しているだけに過ぎない。  Q: fundamental な問題はまだまだ解けていない。   今やってる視野を広げる研究はどう寄与するのか。  A: 知覚系研究で数十年かけて解決されてないのは、見方が間違ってたという見方もできる。   駅表示板大きくしても駄目という話でも、5mぐらいの表示だと気づくかもしれない。   実環境に依存しているにも関わらず、切り出してしまっている。   世の中の統計的なものが体にしみ込んでしまっていて、そこから外に踏み出せない。   応用に対して方法論を提供するだけではないと思う。   横に広がることは物事を深めることと同値。   表示板を見やすくするにはどうしたら良いかという発想ではなく、   問題発掘していく見方をする人が増えると嬉しい。  A: 若い人も国際会議にシフトして国内会議に出てこない。   fundamental な問題というからには問題は見つかっている。   知りもしない問題を見つけてくる所はクリエイティブだと思うが、   視野を広げることはそこに役立つと思っている。   自分がやってるところでしか成り立たないと思っていたことについて、   他でも成立するアナロジーだったりすることがあると、そこに普遍性が   見つかる切っ掛けにもなると思う。  A: 基礎から応用へというストーリーは自然科学的な発想。   基礎が開けたら繋がるというものではないように思う。   日常場面を切り出す程度の問題。   抽象化の仕方が間違っていないかということに気になっている。   緩和していった時の傾向確認など。   実験室の外でやると想定外の面白さがある。   実験室ではモデルを想定して行動するが、予想しない結果が出て来るなら、   そのモデルの作り方が間違っている可能性がある。そこにヒントが現場にあるのでは。

naltoma: ここで題材にしている知覚すべき対象の「複雑さ」は、  乳幼児のようなレベル? ある程度発育した子供以上?  という発達段階に応じて知覚の仕方によっても変わったりしない? naltoma: 新パラダイムの把握は、復元スキーム全体を否定する話? Q: リアリティとの差分について。  いくつかの目標を遂行してからゴールに行くことについて思い出すと、  何かしら若い頃からいくつかゴールを忘れてしまうことがある。  プランニングの問題は若い人でも高齢者でも強弱がある。  ワーキングメモリの不足?  一つのことをやっている内に二つ目三つ目、、、どれかを忘れてしまう。  個人的な体験ではワーキングメモリ不足が影響していないか? A: 実験室レベルでの実験が良いのか

Q: 地震でも生物でもいろんなところにべき乗則が成り立っている。  人間の知覚は昔のように物体を細かく分けて認識統合してる訳ではなく、  統計的に判断しているのではないかという話だったが、これはべき乗則?  そういうものを頭が認識しているという考え方で合っているか? A: 統計的にはそういうことが言えると思う。  ただ、画像の中にある統計量という点では違う話だと思う。

ポスターセッション4


P4-2: 階段状の語彙発達曲線の成因:語とその参照物の共起パターンの生起確率は閾値を一斉に超える, 荒木修(京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科情報工学専攻)ら

従来は、子供の語彙発達時の傾向として推移時の段差は小さく、
大きい目で見れば滑らかな曲線的に発達が進むと想定されていたのに対し、
そのように進む子供もいるが、大きくはっきりした階段状の傾向を示す子供
もいるという観察結果が報告されているらしい。
それを前提に、「こういう傾向を引き起こす原因」の一つを提示するために
シミュレーションした結果、「指示対象となりうる物体との特異的な共起」
に要因があるというのが前回までの話で、今回はさらに複数条件を追加した
シミュレーションを通して「説明」してみるという話。

勿論今回の結果(から考えられる説明)が正しいかは別ですが、 シミュレーションを通してモデル構築するという点ではとてもスマートな アプローチという印象。


P4-4: 極めのアクションが1 つのエピソードユニットとなる幾つかの出来事をつなぐ, 榎本美香(東京工科大学)ら

時間推移に伴って体験している出来事(イベント)は、
それを体験している最中には細かく区切っているだけで、
後で「極め」に相当するアクションが起こることで不要なイベントを取り除き、
その極めアクションに関連したイベント群を繋げることで「エピソード単位」になるという話。
どういう風に繋げるのかなという点ではこういう考え方もあるか。
具体的な記録からコーパス化&分析するアプローチも一つの参考になるかも。


P4-5: マンガのシーンの想起における境界拡張, 船津徹(東北大学大学院情報科学研究科)

以前見た写真風景を後で思い出そうとする時、
実際に見た写真よりも広角なシーン(被写体が元画像よりも小さく)として
想起される現象を「境界拡張」と呼ぶらしい。シーンの境界が拡張されるのね。
これが4コマ漫画でも見られましたという話。
狙いとしては、「単純なオブジェクトで描かれた線画では境界拡張が見られない」
という報告があり、それに対して漫画では生じることからどのような認知過程が
生じているかを迫っていくことに繋げていきたいみたい。


P4-6: 各特徴の出現頻度がカテゴリ学習と典型性評定に与える影響, 京屋郁子(立命館大学文学部)

狙いは面白そうなんですが、個人的には実験設定が目的にマッチしていない気が。
独立した特徴をいくつか用意し、それらを組み合わせて絵を用意することで
カテゴリ学習への影響を見ようとしていますが、個人的には「絵」になってる
時点でそれらが複雑に組み合わさってしまう刺激に解釈されてしまうような気がする。


P4-7: 因果構造の学習における課題の複雑性と判断方略の変化―観察と介入に関する実験的検討―, 斎藤元幸(関西学院大学大学院文学研究科)ら

面白そうなんだけどタイミング合わず。


P4-9: ベイズ的枠組みにおける対称性推論のモデル化と認知バイアスの体系化に向けて, 大用庫智(東京電機大学大学院)ら

確率的にはあり得ないモデル(認知バイアス)を作ってしまうことを、
緩い対称性(LSモデル)と経験ベイズモデルでうまく説明できないかという話。
具体的な認知バイアスとしては、ギャンブルにおける「確率的に平等」な状態
から「ギャンブラーの誤謬」に推移し、さらに「ホットハンド」へと辿るという
時系列的なモデル修正を扱っていて、この認知モデル更新をうまく記述する
モデル化をしてみることでより汎用的な認知モデルに繋がることを目指しているみたい。


P4-12: 大学生を対象とした即興ダンス授業実践とその効果, 中野優子(東京大学大学院学際情報学府)ら

授業として「即興ダンス」をすることを前提に、
「即興ダンスをすることで認知モデルがどのように変化するか」に
迫ってみたという話。即興ダンスは「構想をその場でどのように
表現するかは個人に委ねられているので指導困難」で、「学習効果
も良く分からない」らしい。大学での授業を通して数回に分けた調査
からは、「普段時の姿勢や呼吸といった身体に意識を向けるようになる」
みたいなものから「自分の身体は好きだ」「日々の生活で発見が多い」
「他者を位置づける」「客観視」とかいろいろ出てきたらしい。


P4-14: 言語統計解析に基づく文生成の計算モデル構築, 堀田崇史(東京工業大学大学院社会理工学研究科)ら

ベイズと何が違うのかが分からない(という質問で集中してた)のですが、
本質的な所はベイズでそれを組み合わせてて、それを誤解を招きそうな別称
で呼んでいるのが問題なだけかも。コーパス次第でどういう文を生成させ
たいかを切り替えられそうですが、このあたりもう少しうまくやれないものかな。

口頭セッション5


O5-1: 言語経験による音象徴処理の変化, 浅野倫子(慶應義塾大学/日本学術振興会特別研究員(PD)/玉川大学)ら

音表象: 「ことばの音」自体が何らかの意味(概念)と結びつくケース
 ブーバ・キキ効果: 言語圏によらず95%が同じ傾向
 抽象度の高い/低いシンボル
  低いシンボルへの音表象は言語発達との関連?
 前言語期の乳児は音表象を[意味的に]処理する
  「言語音は意味と結びつく」ことへの気付き(意味≒物体or事象?)
  個々の音と意味のマッピング
 Q: 成人も同じように音表象を脳内処理しているのか?
 -> N400は生起しない(意味的には処理していない)
  P600(刺激全般に対する再解析処理)では生起(音表象の関係性自体の評価はしている)

naltoma: 言語経験によって音表象の脳内処理が変容するとして、
 それを脳波測定で捉えた際に「脳波上は違う」ということと
 「音表象の脳内処理が異なる」ことは同質なのか?
naltoma: 変容するとして、変容するのは何故か?
naltoma: 意味的に処理するとは?
 音表象との適合度合い(親和度)は、意味的な処理?(統計的な処理ではない?)


Q: 共感覚者ではどうなると考えられる?
A: 計測していないが、個人的にはブーバ・キキ効果と共感覚とでシェアしている
 部分はあると思うが、違う側面があると思う。計測結果は似た結果が出そう。

Q: P600が何故出てくるのか?  課題はさせている? A: 課題はさせず、自動的に見聞きしているだけ。 Q: 何か大きな課題させるとP600出て来るというのはあるが、  今回のケースでは何故でてくるのか? A: 理由は私も知りたい。  赤ちゃんと条件を揃えるため今回の実験設計になっている。 Q: Semantic P600は意味的なものにも何らかの形で影響しているということも  言われてきているが、まだ良く分からない。可能性としては Semantic P600かも? A: 突き詰めていきたい。


O5-2: 思い出工学:タイムカプセルによる思い出の保管の検討, 新垣紀子(成城大学社会イノベーション学部)ら

思い出工学
 思い出の危機(311,サーバトラブル)
 思い出の定義
  記録や記憶を手掛かりにして自分が作りだす「物語」 [野島,2003]

タイムカプセルワークショップ  イベント・モノ・語りの記録 思い出保存実験の目的  実物は必要か  デジタルで良いのか  思い出の語りは必要か タイムカプセル実験の意味  残したい自分、卒業したい自分  残したいものは変わる  語りを残す

naltoma: 思い出工学によるログ化とタイムカプセルとで何を工学or認知科学したい? naltoma: 目的はいろいろあって、例えば「過去の自分」を追体験すること?  目的次第で何をどう残すかが変わってくるのでは? naltoma: タイムカプセルをタイムスケール短く&複数回やることで  教育的効果(振り返り追体験)に繋がる? Q: 思い出工学とタイムカプセルについては、  生活の場じゃない所に置く、手元から一度離すことに意味があるかなと思ったが。 A: タイムカプセルはやっぱり特殊な例。  一定の時間経った後でどう変わったかを見れる。  野島先生的には思い出を共有することが目的。

Q: 残した時の語りを覚えているけど、今見直すと時期がずれてるというのは面白い。  いろんなものをデジタル化するというより、  思い出深いアナログを残すことが想起しやすそう。 A: 関わり方によって思い出がどう変わるかもポイントだと思う。

Q: 思い出を残すということは個人や集団にとってどういう意味を持つのか?  逆に残さないことはどういう意味を持つのか? A: 必ず残したいものだけではなく、思い出したくない過去もある。  想像してなかったものも入っており、動揺したという例もあった。


O5-3: 人工物利用のためのコミュニティ:アクションリサーチ報告, 原田悦子(筑波大学人間系心理学域/JST-RISTEX)ら

みんなの使いやすさラボ(みんラボ) CUAR 中間/構想報告
なぜ高齢者のための「使いやすさ」か?
 使わない人は相対的に「不便化」
 低コストで支援するためにはICT機器は必須
  何故使わない?

高齢者へ社会貢献としての参加:モノの使いやすさを検証する活動 ラボ: 使いやすさ/人工物研究支援ツール/コミュニティ研究  高齢者はユニバーサルデザイン的にネックな所に気づきやすい  逆に若年成人はネックをどうして自力で乗り越えられるか?  みんラボ内でどのようなコミュニティが発生し、どのような支援が可能か?

naltoma: ラボ紹介だけだったのが残念。  コミュニティ研究側で入ってるようなのでそっちでどうなってるか聞いてみたかった。 Q: 素直的学習、水平的学習に並んでる「関係的学習」とは? A: 自分が見ているものが過去の経験に照らし合わせてどう関係しているのか、らしい。

Q: 高齢者は「開かれた社会に踏み込む」か「内向きか」に二極化していく。  後者も含めた全体が促進できるようにならないか。 A: 今までの施策では「そこまで必要か?」ということを言う人もいる。  ただ、そういう人も外向けになれるかなと思えるので頑張っていきたい。


O5-4: 定言三段論法推論の内容効果と等確率性仮定:確率サンプリング・モデルによる検討, 服部雅史(立命館大学文学部)

内容効果
 主題材料効果: Wason選択課題、THOG問題
 信念バイアス
  交互作用: 結論と知識が一致すると反例を見逃す傾向
 メンタルモデル理論(MMT)の複数表象
  良い点: 表象・アルゴリズムの水準での説明
  悪い点
   モデル構成原理(仕様)が不明確、難易度予測が低精度かつ不正確
   内容効果や格効果を説明できない

確率サンプリング・モデル(PSM) [服部, 2011; Hattori, 2012]  PSMは内容効果による格効果も説明可能?  -> 少なくとも一部は確率表象のことばで説明可能

naltoma: 結果が近いモデルを構築することは工学的には理解できるが、  ここでは認知的なモデルの理解が目的ではない?  理解が目的だとするとどう寄与する? Q: 今回やったことは先行研究の再分析ではできなかった?  全体としては合ってるけど細かく見ていったところに出てくるズレは問題にならない? A: AやIが絡んで来る部分はfitが良いが、悪いところもある。  検討中で、現時点では多少改善が見られている。  今回の分析が先行研究ではできない。  先行研究ではニュートラルを使っており、デフォルトに落ち着く。  今回は外れるようになって欲しかったので、そういう実験設定をしている。

Q: PSMは個人の内的なプロセスのモデル?  それとも実験時の集団特性のモデル? A: 基本的には個人プロセスを想定している。  ただしランダムサンプリングは実際にはそうしていないと思う。  そういう意味では同質のプロセスを辿っているとは限らない。


WS3: t 検定・分散分析から混合モデルへ:文理解研究の導入事例から学ぶ

企画: 神長伸幸(理化学研究所),井上雅勝(武庫川女子大学)
話題提供者: 神長伸幸(理化学研究所),井上雅勝(武庫川女子大学),新井学(東京大学/日本学術振興会)

ブログ: Mixed Effects Models Blog

盛況でPC広げられないぐらい混んでたけど、
上記ブログ等で関連資料は整理公開していくみたい。


Q: モデル調整の際にAICのような基準を使わないのは?
A: AICだと使い方によってはランダムサンプリングの影響を無視してしまうことがある。

Q: 混合モデルだと3変数時にどれか一つをベースラインにすると
 残り2変数間の関係を見づらいため、場合によっては手間がかかる。
 これに対してMCMCなら最初から3変数でも見れるが、
 そうしない理由は?
A: 文理解の分野では今の所混合モデルが主流であるという点と、
 t検定・分散分析をしている人からすると飛躍が大きすぎるため。


WS4: 進化言語学の方法論的基盤

企画: 岡ノ谷一夫(東京大学),橋本敬(北陸先端科学技術大学院大学)
話題提供者: 岡ノ谷一夫(東京大学),橋本敬(北陸先端科学技術大学院大学),上田雅信(北海道大学),水本正晴(北陸先端科学技術大学院大学),大谷卓史(吉備国際大学)
指定討論者: 藤田耕司(京都大学),池内正幸(津田塾大学)

[ 言語の起源を科学的にやる取り組み (イントロ by 橋本先生)]  様々な分野の有機的な融合   理論言語学的アプローチ+比較認知科学的アプローチ   生物学/遺伝学/人類学/複雑系科学/コンピュータ・モデリング/etc.  WS目的:方法論的基盤の構築と確立のための議論

[ 進化言語学における構成論と実験の論理(橋本敬(北陸先端科学技術大学院大学))]  構成論的アプローチ   無いところからあるところへの変化をシミュレート    コンピュータシミュレーションor実験室内で構築   リアルに再現しようとすることは考えていない   操作や観察可能性を上げることで科学的アプローチを取りやすいように   言語が成立する要因を探るという点ではアブダクション

[ 進化言語学における6つの主要な誤謬(藤田耕司(京都大学))]  文化進化の誤謬  単一起源の誤謬  過剰適応主義の誤謬  コミュニケーションの誤謬  連続性の誤謬   「シンタクスは人間固有である」という言語学(生成文法)の主張   ->中身次第。本質を改竄してはいけない。  「人間中心主義の誤謬」の誤謬  言語の成立は創発を含んだ進化過程であることを前提とする(そうじゃないと神存在説しかない?)  進化言語学が進化学であるために   神経系の進化的連続性を前提とする   仮説形成の過程を許容する    概念的定義を行動的定義に着地させること    言語現象と対応させる行動を特定するため、神経処理レベルの相同性を利用すること  生物心理学ができること   併合がラベル付けを必要とするなら、メタ認知は併合を促進する   パターン学習

[ 生物言語学におけるガリレオ流思考法について(上田雅信(北海道大学))]  ガリレオスタイル:近代科学の基礎   言語と心への切り込み   理想化   理解可能な説明手段:抽象的な数学モデル   why -> how

[ 言語と生活形式~哲学的観点から(水本正晴(北陸先端科学技術大学院大学))]  問い: 母音a[あ]の色は? 赤/青: 共感覚者87%赤  問い: 90%の人が「え」の色は?と問われて「緑」と答えるとすれば、   日本人にとって「え」は緑を意味するといえるか?   数字的な問題?納得できない?  意味は規範的なものだから多数決では決まらない   規範性とは?  哲学方法論   伝統的方法論: 概念分析(直感頼み?)  研究者が何をしているのか、何をしようとしているのかを「像」として共有する方法?
 ウィトゲンシュタインのパラドクス  言語の規範性   規則性の科学/規則の科学   規範性(規則)が入ってくると科学では扱えない?  規範性とは何か   「誤り」の事実がある、ということ    「全ての人間は寝る」というのは規則でも何でもない(?)  規範性なき言語?   単なる規則性(傾向性,法則性)でなく規則(規範性)こそが言語を言語たらしめている   これこそが人間以外の動物の「言語」と我々の言語を分けるものでは?  原形言語と規範性: 傾向性がかけているだけの言語?  生活形式としての理解することの重要性  チョムスキーとクリプキの誤謬   規範性は個人の心の内面、脳内にまで浸透しているようなもの(?)

[ 構成論的研究の方法論的基盤について(大谷卓史(吉備国際大学))]  実験としてのコンピュータ・シミュレーション   理論における実験: 数学的に処理が難しい方程式の数値解析(理論存在)   コンピュータ実験: モンテカルロ法のような現象の近似的モデルの構築(理論存在)   人工生命: 一般的理論が存在しない現象に関するモデル構築(理論無し)  共通な点   現実の抽象化、モデル化  違う点   実験は対象やターゲットとなる現象と「深い、物質的な」類似性を有する。   同じ「物質的原因」が働いている。   コンピュータシミュレーションは「物質の介入がない実験」。  実験としてのコンピュータシミュレーション   物質的な類似性ではなくformal similarityを有している   formal similarityの良し悪しが信頼性に影響   世界屋現象の表象   対象の振る舞いを理解しようとする科学者の活動  構成論的手法には何が期待されるのか?   背景知識の良し悪しが信頼性に影響   どれだけうまく把握して利用していけるか   アブダクティブな仮説形成やモデル、仮説の理解に有効  コンピュータ・シミュレーションにはできない実験   アブダクションと仮説演繹法の違い   仮説やモデルの限界?   適用分野の限定?(将来的には解消するかも)   反証自体の発見には使えない(経験的テストの必要性)

動物認知研究から考える言語の起源(岡ノ谷一夫(東京大学))

[ 進化言語学研究における“方法論”をめぐって(池内正幸(津田塾大学))]  実践的方法論   生成文法理論研究がそうであった/あるように反証主義に拠るのがよい。   仮説演繹とアブダクションの違い?

指定討論者  進化言語学は何を説明しようとしているかについての合意ができていない   生成文法ではどうか、etc., といった前提に合意してもらう必要がある。   反対は合っていいが前提合意がないと建設的にならない。

naltoma: 哲学における規則と規則性/規範性の違いとは?? naltoma: 意味の規範(哲学ではこっち?)と、社会的規範(一般的な意味がこっち?)  というカテゴリで使い分ける必要があるみたいだけど、意味の規範とは? Q: 言語の進化について。  言語の原形を探るための方法として、規範性/構成論/アブダクション, etc.,  こういう構造を数学的な意味でのラティスにどう当てはめるべきかを考えるべきでは。 A: そういう問いではサイエンティフィックな話が進まなかった。  過度に一般化してはいけない。

Q: 共通の目的がコンセンサスではないという理解で良い?  何を知りたいのか。 A: 個人的には言語が進化するのではなく新しい認知能力を持つ人の進化に興味がある。  別の人は言語がどう変化していくか、  言語の起源(生物学)や進化(文化進化)の両方に興味がある人もいる。  何を知りたいかが起源なのかどうかでそもそも「言語とは何か」について合意がなされていない。  少なくとも10年前に比べたら良くなったが、完全な合意ではない。  チョムスキーのマージにおいて何が問題かを共有した理解を持つところには辿り着いた。

Q: チョムスキアンな前提に基づいているように見えるが、  他のフレームワークは考慮しているのか? A: 今日はチョムスキアンだったが、全員がそうということではない。 A: 認知言語学については生成文法からの派生。  言語の進化や起源についてはUG自体がどう出てきたかが問題。  UGがどこから出てきたかという点ではどちらも同じ。  個体発生/系統発生から始めているというところがエラーかもしれない。 A: 人にだけ役立つものとして生まれているということを認めているのなら、  そんなに差は無いように思う。 A: 両方とも人間specficなのは、言語固有なのは何かが問われるべきだが、  問題はそこが出発点。 A: 背景知識の共有については、「背景知識」自体が定義されていない。 Q: 規範はどこにある? A: 規範性は頭の外、いろんな事実の中にある。哲学的な見解。 Q: 頭の外にある? Q: 数学的な意味だとか第三世界論として説明するというのは一つの手段だとは思うが、  それとは違う?  心理的事実でも物理的事実でもないけど、客観的な何かとして。 A: 何と呼ぶかは分からないが、その通り。 Q: 間主観的に頭の中にあるものを  頭の中に無いと呼ばれるとサイエンティフィックな手法は無理では? Q: 進化心理学はまさに規範性の起源を追求していると思うが、うまくいかないと思う。  言語の起源にサイエンティフィックに取り組むためには?

Q: 言語の進化について Q: 人間固有の規範が存在するのであれば、このような多様な言語が何故存在するかという  問いには答えられないのでは? A: 規則自体が多様で、そもそも「言語にとっての規範性」は切り離せないと思う。 Q: 規範というのは個々のありようではなく、意味の規範と社会的規範から  話して独立して話すべきもの?

Q: 言語学からするとチョムスキーのような考え方では、  言語に関する知識・仕様・神経的基盤等の観点から取り扱う。  進化を考える場合には言語の仕様や神経的基盤が重要なのかなと思っていた。 A: 神経基盤については鳥や人間などの例で一部進んでいる。  仕様については起源じゃなくて文化進化の点では関与していると思う。

Q: どうやったら知り得るのか?そもそも知り得るのか? A: 正解かどうかは分からないが沢山の知見が積み重なって何かしらの合意ができる  ということはありえる。人間使った実験もコンピュータシミュレーションも必要。  フォーマルセオリーを作って行くことが重要。 A: 物理的基盤は因果関係を含むが、  生成文法については因果関係を無視している。  因果関係は複数あるのでそこを見ていくフォーマルセオリーが必要。