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Newsgroups: fj.1st-readme.discussion,fj.soc.copyright
Subject: Re: recommendation about crosspost
Message-ID: < 20000607231458cal@host.or.jp> 
References: < 20000531131554Z.sakai@revegw.reve.iijnet.or.jp> 
	< 550.959786707@rananim.ie.u-ryukyu.ac.jp> 
	< 20000601004222cal@host.or.jp> 
	< 8hlhcv$12u$1@meshsv230.tk.mesh.ad.jp> 
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Content-Type: Text/Plain; charset=ISO-2022-JP
From: cal@host.or.jp (SASAKI Masato)
Organization: cal personal
X-Posting-Software: WSNews 2.027
Lines: 172
Date: Wed, 07 Jun 2000 23:14:58 +0900
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NNTP-Posting-Date: Thu, 08 Jun 2000 01:05:51 JST
Xref: ie.u-ryukyu.ac.jp fj.1st-readme.discussion:56 fj.soc.copyright:11093

佐々木将人@函館 です。

fj.soc.lawでの議論ではないので
通説判例には必ずしもこだわっていないのですが
そのことを明記すべきであったかとは反省しています。

>From:"ueshiba kouji" 
> Date:2000/06/07 21:39:41
>Message-ID:< 8hlhcv$12u$1@meshsv230.tk.mesh.ad.jp> 
> 
> 加戸守行氏は、「放棄できる」とはっきり書いておられるのだけれ
> ど・・・

で、放棄の要件をなんとしています?

> せん。ただし、著作権を放棄することができるというのは、単に
> 著作権を行使しないということではなくて、新聞広告その他によって
> 著作権を放棄するという積極的意志表示があった場合にだけ
> 放棄の効果が発生すると解すべきであります。・・・」
>                (「著作権法逐条講義」 改訂新版 p.316)
> 
> また、半田正夫、紋谷暢男両氏編による「著作権のノウハウ」にも
> 
> 放棄の意思表示は、たとえば新聞広告における放棄の宣言の
> ように、明示的に行わなければならない。放棄をすれば、その
> 部分について権利は消滅する。・・・」  ( 第5版 p.176)
> 
> このような部分に学説の違いがあるようにも思えないのだが・・・

ですよね?

で、例えば使い古した鉛筆にも当然所有権という財産権はあるし
函館市の場合私がそれをゴミに出せばゴミ収集の人が集めて
日乃出町にある焼却場で燃やされてしまう……。
その途中で使い古した鉛筆の財産権を放棄するにあたり
私は新聞広告で所有権を放棄したことをいちいち言わないし
函館市だってそんな新聞広告は出していません。
だけどこの鉛筆の財産権が放棄されていることに異論のある人はいますか?

物権法で言われるのは
放棄は物権を消滅させることを目的とする単独行為で
所有権及び占有権の放棄は、特定の人に対する意思表示を必要としない。
占有の放棄その他によって、放棄の意思が表示されればよい。
(我妻栄「物権法」物権の消滅の項、新訂版第2刷だとp248による説明)
だし
(だから使い古した鉛筆の占有を放棄した私は
 鉛筆の財産権について放棄の意思を示したと評価できるのでしょう?)
その他の権利の放棄は、
放棄によって直接利益を受ける者に対する意思表示を必要とするんだから
(我妻栄「物権法」物権の消滅の項、新訂版第2刷だとp248による説明)
著作権の場合「直接利益を受ける者」って誰ですか?ってことになります。
そして相続法においては相続によって得るはずの財産権の放棄は
一定の要件を満たして様式をふまなければ効力が認められません。
また他の権利の目的になっているような場合や
他者に害をなす場合には放棄はできません。
不動産の場合には登記がなければ対抗力がないとされています。

こういう状況下で
「一般的に財産権は放棄できる」って言えるんですか?

一般的に財産権は放棄できるのが根拠になるのなら
なんで「新聞広告」なんて要件が加わるのですか?
(逆に直接利益を受ける者全員に意思表示しなくとも
 権利が消滅してしまうんですか?)

この場合の放棄って
「権利を消滅させることを目的とする単独行為」としての放棄ではなく
単に「その権利を権利者が主張できなくなる状態にする」という意味の
放棄じゃないんですか?

だから権利が放棄されたと理解してある行為をした者が
放棄前の著作権者からなんらかの請求を受けた場合
「著作権者は著作権を放棄する旨(例えば新聞広告で)述べており
 それを信頼して行為をしたのであるから
 その発言に反することを根拠に請求することは
 禁反言によって許されない」
と構成して反論する。
禁反言だからこそ新聞広告であっても
それを読んでいさえすれば相手の主張を否定できるんじゃないんですか?

さらに法律によって無条件に与えられる権利について
法律に書いていない理由での消滅を認めるのであれば
そもそも法律に書いていない理由で
著作権の発生を阻止してもいいんじゃないんですか?
(その方がよほど簡明。)
実際にはそんな議論はしない……。

それは全て
「放棄-> 禁反言による相手方の保護-> 権利を法的に実現することが不能
 -> 権利消滅」
という論理を採用してはじめて理解されるのではないでしょうか?
そして「放棄-> 権利消滅」ではないからこそ
一般的な財産権には見られない
「放棄には明示の意思表示が必要。例えば新聞広告。」
という要件を加えることが正当化されるのではないでしょうか?

私はそのように理解すれば民法等の説明と著作権法の説明が
統一的に理解できると考えていますし

> > ……だって「権利の放棄」って一般的な言い方自体
> >     法律の定めがないし
> >     法律学辞典でもとりあげていないというもの……。
> >     「放棄」って言葉の
> >     意味・定義から明らかにしなければならないのです。

という言明はそういう問題意識からです。

少なくとも
上記3先生の文献をもうストレートにあるがまま受け取って
「一般的には放棄できる」として
私の指摘した反例は全部「一般的な例とは言えない」って切り捨てて
しかも「放棄-> 権利消滅」だと言うこととしても
そこから言えるのは「著作権もまた放棄できる」というところまでで
「放棄の要件まで一般的な財産権と同じだ」とは言えないのは
もう明らかでしょう。

そして私はストレートにあるがままに受け取るのは
誤りだと思っています。

仮に誤りじゃないとしたところで
「放棄できる。それは一般に財産権は放棄できるから。
 でも明示の意思表示が必要だ。」
と主張して
「一般に財産権を放棄するには明示の意思表示が必要だとは言えない」
と反論された時に
「それが著作権の特色なんだ」
なんて言うくらいなら最初から
「(一般的に財産権が放棄できるか否かとは別に)著作権は放棄できる」
と主張する方がよほど簡明だし
この点では不相当じゃないんでしょうか?

さらにこれも不相当ではないとしても(既に仮定が3段目です。)
その場合に

|放棄はできます。できないとかいう話もあったが、「放棄します」
|と書いておけば確実でしょう。放棄できるということを明示した文
|はあるのかってことだと見つからなかったはずです。
|
|僕が良く使うのは、一般的に財産権は放棄できるって根拠ですね。

という主張が正しいかどうかははなはだ疑問です。

……これで
 「一般的に財産権は放棄できるから著作権も放棄できるけど
  どうすれば放棄と認められるかは一般的な例からは導けない」
  と読めと言われても私には無理です。

私は「一般的に財産権は放棄できるとは言えない」
という点を否定すれば足りると今も思っていますが
もし私の主張に反する3段の仮定の線でいくべきだということになれば
「一般論として放棄できる」という点はペンディングにして
「「放棄します」と書いておけば確実でしょう」
の方を否定した方がよかったかもしれませんし……。

fj.soc.lawではないことに鑑みれば
一般の人にとって
「権利を消滅させる効果を持つ単独行為としての放棄」と
「権利を行使できない状態にする点に注目して
 権利の消滅と評価するという意味での放棄」の違いなんて
どうでもいいでことでしょうから
「権利を行使するのは義務ではないんだから
 権利行使をしたくなければしなければいいだけの話。
 放棄をするかどうかは大勢に影響なし。」
とコメントするのが正解だったか……とはちょっと思ってます。

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