NLP2011, 併設ワークショップ「自然言語処理における企業と大学と学生の関係」に参加しての感想
細かいメモもありますが、togetterによるツイートまとめ(午前、午後)に譲るとして、ここではパネリストによる意見の中をグルーピングしつつ、感じた感想を述べたいと思います。グルーピング次第でどうにでも取れる文面もあるので、実際にどういう流れで討論されていたかは前述のtogetter見る方が良いでしょう。
まず前提その一として、今回の討論は「何かを決めよう」ということは目的にされていません。互いに意見を主張し合い討論することで多くの視点や意見をアウトプットすること自体が目的のようです。
その二として、タイトルに「自然言語処理における」とあり、確かにそういう側面の話も含まれていたのですが、結果としては分野に囚われない一般的な話が多かったように思います。
その三として、そこが削れたためか、就職活動に関連した話題が多かったです。
その四として、往々に起こる状況と思いますが、「声の小さい学生」の話題が少なかったです。
これらのことを踏まえて、企業・大学・学生の三者がどのように考えているか、という議論についての感想になります。
目次
超約
- 自分で考えて行動しよう。行動しないことには何も得られない。
- 行動した結果失敗したとしても、大した事なく済むことが殆ど。失敗してそこから学び、次ぎに活かそう。
- 強い動機を持って行動する人には手を差し伸べようとする人が多い。公開し続けていれば仲間が増える。
- 具体的に行動する(e.g.,対面する)のを躊躇してしまうのだとしても、メールやツイッターみたいなカジュアルなツールならそうでもないのでは? 手段は豊富にあるのだから自分にあった方法で行動しよう。
読誦論
- 基礎か、応用か、悩んでいる暇があったら基礎を身につけよう。
- 読誦すべき。何をやったとしても局所解に陥らないことを保証することはできない。読誦し、いろんな視点を得よう。
- 読書は大切だが、優秀過ぎて「簡単に読めてしまう」のは少し問題。時間をかけて向き合うことで読み解けるものもある。相手の求める速度に合わせて読もう。
- 本を捨てて街に出る(行動す)べき。勉強/努力することは大事だが、全て万全に整うまで挑戦/行動しないというのでは時機を逸することが大半。行動し、失敗しながら学ぼう。若いことはそれだけで勝っている。失敗しても大したことが無いことが大いし、若いうちの方がやり直す時間が多い。
- 面白いことを見つけよう。学生なら教科書、論文、書籍、ネット、友人、先生、両親あたりが多いだろう。企業では、例えば、リアルデータ、異分野異業種、多様な現場といった「知らない所」からも見つけている。
- 違和感を感じるためにも外(専門外の専門や、学外)に出よう。初めての体験をすることで感じる違和感は想像の種になる。
大学論
- 目的次第になるが、中途半端に企業に歩み寄っても、企業/大学/学生三者にとって不幸になることがあり得るのでは。大学はどうあるべきかといった理念・目標を見据え、行動すべきだろう。
- 大学でないとやれないことは何か、と突き詰めるのも一つの道。
- 古い技術を工夫して具体的な応用に結びつける所も大切なこと。ただし、大抵の「やってみた」レベルのことは企業でもやっている。大人の事情で見えないだけ。努力しよう。高度に知的な作業が努力である。
- 企業/大学の双方にとって有益な紳士協定なりの協力の仕方もあるだろう。例えば、大学ではコア部分(差別化)を作成し、企業ではリスク部分(大きなエラーはぜ絶対に起こさない)を構築するなど。対価として金銭的なやり取りだけじゃなく、データやノウハウでの交換等柔軟なやり方が考えられると思う。
企業論
- データを出して欲しいとか言われるが、具体的にどう役立てたいからどういう切り口で取得したデータが欲しいのか、明示して欲しい。持ってるもの全てと言われても、基本的に持ってるデータはこちらの意図で収集したもので、それがマッチしているとは限らない。
- データと向き合うことで真実を探るというスタンスも良いと思うが、データを蓄積するというのはコストがかかるということ。タイムライン的に見返りが得られる等の説明ができないと、データを出すよう説得するのも困難。
- そもそも「本当に解決したいこと」があるならデータが出てくるのを待つのではなく、企業に来てやるという選択肢もある。何故そうならない?
- 企業にもいろいろあり、自社ではデータを持たず、大学より大学らしく活動している所もある。
学生論
- 地方の学生は東京と比べて勉強会自体の機会が少なく、選択肢以前の問題。
- 逆説的だが、お膳立てされてる環境では学べないことも多くある。主催することで学べることも少なくない。それが何かに役立つとは限らないが、身に付くものはある。
- 言われたことをやるだけの人材は要らない。例えば「一見完成しているように見えるサービス」から課題を抽出し、それにどう取り組むかを考える力が必要。それらは一つ一つの課題に丁寧に取り組むことで身に付く力なはず。一つの専門分野で解決できることも年々減っているので、いろんなことに興味を持って取り組もう。
- アメリカにインターンに行った経験からすると、TG(学生なら誰でもFreeDrinkFreeFood)など企業の方と接するカジュアルな場がちょくちょくある。日本でももっと用意して欲しい。
- (プチ)ロールモデルになる目標になる人を探し、そうなるよう努力しよう。全てが困難なら一部でも良い。
- やってることを分かりやすく公開しよう。公開手段は豊富にある世の中になった。
- 就職するときというのは、自分が何をやりたいかというのがまだ見つかっていない状況かもしれない。しかしだからこそ、興味ない会社でも良いと思うから、会って話をすることが大事。まとめて話せるようになることによって自分が見えて、自信が生まれてくるのだと思う。
- 学生の頃、入社した時点では良くも悪くもぱっとしなくとも、入社後に光り輝く人材も少なくない。それまで見えていないだけだったかもしれないが、具体的な問題に対面することでモチベーションを持って取り組んでいるからかもしれない。こういう人材をどうやったら探せるのだろうか。
- 友情(一人でできることなんてたかがしれている。一緒にやる人を探し互いに助け合う。信頼関係)、努力(努力せずにやれることはどこかで既にやられている)、勝利(小さくていいから目標を決めて、達成する。それを徐々に上げていき繰り返す)!
- 今は、効率とかそういうのが求められていて、車輪の再発明は怒られることが多い。ただ個人的には良いと思っていて、学生には再発明で良いからどんどん人の真似をして欲しい。やってみて初めて見えてくるものがある。
リスク・テイカー論
- リスク・テイカーになろう。そのための教育というのはあるのだろうか。
- そもそも「何もしない」という大きなリスクを選択していることに気づこう。
- 「リスク=自分の何かを犠牲にすること」ではない。好きなことに没頭してやっていることが、他人から見ると結果的にリスクを選択していたということが少なくない。好き勝手にやろう。
- 外に出ない学生は危機感が欠落し過ぎ。中国も教育レベルは向上しており、国際全体が競争相手の世の中に突入するのは目前ということに気づいていない。例えばスタンフォード大で大挙して留学に訪れ「俺ここで学ぶんだぜ!!」と熱意を持ってる学生の割合は年々増加している。日本人もいないわけではないが、少ない。一度は留学なりで外に出よう。
- 日本に留学に来ている身としても実感しているが、留学するリスクは比較的得られるものが多く、積極的に取るべき候補だと思う。
- 優秀な学生とか何とかよりも「やったか」「やらなかったか」。失敗してもそこから学べば身になる。
就職活動論
- 学生は何故ここまで凝り固まった考え方/アプローチの仕方を選ぶのだろうか? 就職活動時期を柔軟にして欲しいとの声もあったがどちらかと言うと紳士協定があるから「新卒採用枠」を一定の時期に設けているだけで、そこに拘っているわけではない。むしろ今なら中途採用の方が見てもらえることの方が多い。中途採用以外にもいろいろルートはあるが、一般的なルートでないところを強行突破するにはそれなりの「何か」は必須。強者論の話。
- 今回のワークショップに学部生も結構参加してくれていることは素直に喜べる。だけど、懇親会で企業の人から名刺貰った人はどれぐらいいる?勉強会でも何でも良いから、切っ掛けがモノにする努力をするべき。自分から声をかけ難いなら先生に取り次いでもらうのも良いだろう。
- 一方で、いろいろお膳立てしてもらわないと動けないという学生は、就職後に本当に役立つのだろうかという不安を感じている側面もある。本当にやりたいことがあるなら、学会でも良いし、ブログなりツイッターなりカジュアルな方式でも良いからどんどん学外/企業/世間に向けてPRするべき。情報発信する努力をしない人は、そもそも企業からは「見えない学生」。
- 就職すると縛られてやりたいことがやれないとか考える人もいるかもしれないが、就職してみた立場としては案外そうでも無いなという印象。見えないから分からない、だから何となく不安というのであれば、会社見学でも勉強会でも今回のようなワークショップでもイベントをセッティングして呼んでください。企業は忙しいからイベントをセッティングするまでやるのは大変だが、呼ばれれば喜んで行く所が多い。
インターン論
- 企業を知る一つの方法。
- インターンは数ヶ月以上長期のものがベターだとは思うが、それ以上に大切なのは「インターンで何かを持ち帰る」という強い意識。目的が不明確なまま来ても身に付かない。
- 留学兼ねて海外インターンもある。最低限の英会話は必要だが、それ以上にモチベーションが重要。世界各国からインターンに来る学生らとどう絡むか。積極的に交流する努力も大切。
- インターンに行ったことは無いが、学生と企業の関係にもいろいろあるのでは。