未踏ユース/スーパークリエータにまつわる座談会
大学サイトの「アクティブ学生」として記事が掲載された通り、与儀さんがIPA主催の未踏ユースにてスーパークリエータに認定されました(参考リンク1)! また、琉球新報さんにも記事にして頂けました(参考リンク10)!
【授賞式の様子】
未踏プロジェクト(正式には「未踏IT人材発掘・育成事業」)は、年と共に少しずつ変化して行っていますので、詳細はオフィシャルサイトで確認してもらうとして、与儀さんは「動的にフォントを生成/編集するためのフレームワークの開発」というテーマで2010年度・未踏ユースに採択され、首藤一幸PMによる指導のもとでソフトウェア開発を行いました(参考リンク2)。
以下、2011年度採択に挑戦したものの落選してしまった山内一騎くん(工学部情報工学科4年次)を聞き手に、与儀さんとの対談形式で事業を通したプロジェクトの様子等について紹介します。
<目次>
何したの?
聞き手・山内(以下、山内):まずはスーパークリエータ認定おめでとうございます!
話し手・与儀(以下、与儀):ありがとうございます!
山内:いきなりですが、未踏ユースでは国からお金をもらいながらソフトウェア開発できるそうで、最高180万ぐらいの費用を頂けるそうですね。ぶっちゃけいくら貰えたんですか?
与儀:途中で進展できない時期もあったのですが、合計で(検閲)ぐらいです。あれ、何か勝手に書き換えられてしまいますね。察してくださいw
山内:気になる人は個別に突撃してもらうということでw
山内:では気を取り直して、今回、未踏ユースに採択された期間内における活動が認められスーパークリエータ認定を受けたということですが、この「動的にフォントを生成/編集するためのフレームワークの開発」というプロジェクトはどのようなものなんでしょうか?
与儀:「動的に」とか言うと難しく聞こえるかもしれませんが、自分好みのフォントを誰でも簡単に作れるようにするためのソフトを開発するというのが目的です。そもそもの出発点というか切っ掛けになったものは、このIPAの事業に関する説明会(参考リンク3)に参加した際に紹介してもらったOBの岩崎さんの提案である「チャットシステムが味気ない。もっと書き手の気持ちを伝えたい」というものでした。岩崎さんの例では文字チャットにおいて「筆圧」等を加味して文字サイズを大小変化させるというものだったのですが、私は「その時々の感情に応じてフォント自体を作りたい」と考えました。例えば悲しい時は薄くかすれたフォント、楽しい時はポップ調のような形で自分好みのフォントを作ることができれば、書き手の気持ちを伝える手段が増える、つまり表現の幅が広がります。
山内:書き手の気持ちを文字内容だけではなくフォントの形でも伝えることができる、ということでしょうか。
与儀:そうです。例えば、ニコニコ動画では視聴者のコメントが埋め込まれた形で動画が再生されますが、基本的にはコメントの色を程度の変化しかありません。これがコメント内容に応じてフォントまでが変わると、例えばこういう感じに見えると、どうでしょう。
【ニコニコ動画でのイメージ図】
山内:こ、これはw
与儀:良いリアクションありがとうございますw
与儀:まだここまでは辿り着いていないのですが、こういうゴールを目指す第一歩として「好みのフォント」を作りやすくするためのソフトウェアの開発に着手した、というのが今回のプロジェクトです。
山内:なるほど、さらに先を見据えての開発なんですね。今後の発展も楽しみです!
育成事業らしいけど、何かレクチャー受けるの?
山内:次に、プロジェクトに関連して違う視点、「育成事業」という点についてお聞きしたいのですが、一般的な応募を募るケースでは「提案者が開発するだけ」のように思います。それに対して、今回の未踏ユースでは「プロジェクトマネージャのもとで発掘育成する」ということですが、具体的にプロジェクトはどのように進んだのでしょうか?
与儀:実はプロジェクトが採択される前からいろいろと指導頂く形になりました。応募したのが9月末で、書類審査を通過したのが10月中旬です。その後にプレゼンを含んだインタビュー形式での審査が10月下旬にあり、採択内定を頂いたのが12月中旬頃だったと思います。この内定を頂いてから実際の契約に至るまでの1ヶ月ぐらいの間に「プロジェクト期間中における具体的なゴールをどう設定するのか」「ソフトウェアとして実現するためのアイデアは練っているのか」「どのようなスケジュールで開発するのか」といった様々な視点からのアドバイスを頂き、少しずつプロジェクトを具体化するという作業を進めていました。
山内:事務方さんというか進捗確認的なもので済ませるだけじゃなく、かなり開発寄りの具体的な項目について話合うことまでされているですね。言ってみれば上司として部下の成功を導くというような形での共同作業といった所でしょうか。
与儀:そう考えてもらった方が分かりやすいと思います。
与儀:正式な契約を交わしたのが1月で、それからは討論だけではなく、開発を進める上でのサポートをいろいろとして頂けました。例えば、フォントをどう作るかということが焦点の一つですが、これに対して具体的なアイデアを考えていく際の討論だけではなく、フォントを販売している株式会社モリサワさんの中の人と話す場をセッティングして頂けました。
山内:それは羨ましいですね!
与儀:他にも、首藤PMが関わっているプロジェクトメンバやOBOG等未踏関係者の集まる場での討論や、合宿などを用意して頂け、いろんな分野、いろんな視点からの意見を交換し合える場を提供して頂け、交流の幅が広がったのがとても嬉しかったです。これが切っ掛けかもしれませんが、県内でもブロッコ・デリ・アーキテクツ有限会社さんとデザインについて話を聞くよう行動する等、これまで以上に「プロジェクトを成功させるために行動する」ことを心がけて行動することの大切さを体感することができました。
山内:ソフトウェア開発といった技術面だけでなく、視野や交流の幅を広げるといった間接的なサポートを通して得られるものがあったのですね。僕は与儀さんの講演会(参考リンク4)に参加してやる気になり、今回初応募して落ちてしまったのですが、とても悔しいです(笑)
与儀:「未踏」では自分の夢を持って具体的に行動している人が大勢いるのですが、大勢居ることで「専門分野」という垣根を越えた話題やアグレッシブな様子が身近に溢れていて、それが交じり合って行くのがとても面白いです! 山内くんも、その一員になれるよう何度でもチャレンジしてください(笑)
山内:はい、頑張ります!
応募の時に考えて欲しいこと?
与儀:ちなみに、これは首藤PMから言われたことでもあるのですが、一人のプロジェクトとして頑張る必要はないです。公募要領にも書かれてますが、複数人でのグループによるプロジェクトとしての提案で構いませんし、実際そのようなケースが少なくないようです。一人だとどうしても進展が見え難い時期等で精神的にキツいですが、それを和らげる意味でも共同作業するような形が望ましいという意見を頂きました。特に私の場合だと、修士論文とは関係ないテーマで提案したこともあって、どちらともやりたいテーマなんですが時間が有限なので、両立にとても苦労しています。目下修士論文作成マシーンと化しています(遠い目)。
山内:僕も卒業論文書いてる最中なので、そこはお互い頑張りましょうw
山内:話を元に戻してプロジェクトの流れについてですが、1月に契約が済んでから討論だけでなくいろんな交流イベントを通しながらの開発となったようですが、これはいつ頃まで続いたのでしょうか?
与儀:契約期間という意味では8月中旬頃で最終報告までを終えました。ただし、その後も9月上旬頃までは書類の書き直し等を含めたやり取りが続いていましたので、実質的な期間で言うと約10ヶ月間がプロジェクト期間と考えて良いと思います。
山内:10ヶ月間というと、フルに活動するとして40週間ですか。単純計算で1日8時間x週5日x40週=1600時間。安いバイトで換算すると、、というのは辞めておきましょうw
与儀:(^-^)
山内:最終的な成果物というのでしょうか、プロジェクトを終了する際に求められるものはどういうものなんでしょうか?
与儀:基本的には日々の作業日誌と、成果としてなるべく目に見える形でのデモを用意すること、デモを踏まえたプレゼンテーションや概要書を作成すること、といった所です。
山内:開発したソフトウェアそのものというかプログラムは提出しないのですか?
与儀:基本的に開発物はクリエータのものです。OBOGを見ていると多くのケースではWeb上で公開しているようですが、公開することも含めてクリエータが自分で決めることができます。
山内:では、商用として売り出すこともできるんですか?
与儀:自由です!
山内:うおおおおお!それは妄想が膨らみますね!!ww
与儀:落ち着けwww
山内:すいませんw
山内:そろそろ最後の質問、今回のスーパークリエータ認定を受けての気持ちや、この記事を読んでくれているであろう後輩に向けての言葉を頂けますか?
与儀:まさか自分のプロジェクトが選ばれるとは思ってなかったので驚きました。でも8ヶ月間の労苦と絶望感が報われたようで大変嬉しいです!こんな自分でもなんとかやっていけたので、つまりは誰でもやっていけると思います(笑) やりたい気持ちとアイデアがあれば技術はあとから身につくし、そのための最大限のサポートもしてもらえます。それに未踏は刺激に溢れているので、モチベーションは上がりまくりです。たくさんの面白い人とも出会えるし、面白い話も聞けるし、とにかく未踏の一番のウリはそんな出会いだと思います。何かやってみたい事があるなら、まず挑戦してみてはどうでしょう。
山内:ありがとうございます!
山内:長丁場になりましたが、今回は修論過渡期という多忙な時期にお時間頂き誠にありがとうございました!
与儀:ありがとうございました!
最後に
以上、當間による捏造対談でお送りしました。(本人達に承諾は得ていますよ!)
未踏プロジェクトに限った話ではなく学業/研究/趣味何でも良いですが、学生さんが学外にも目を向けて活動する切っ掛けになれば良いなとの思いで、記録を兼ねた対談形式の記事として作成してみました。
なお、この記事によると、未踏の公募(受付期間:2/7〜4/10)が始まっているようです。
ちなみに、与儀さんは「21世紀グローバルプログラム(参考リンク5)」で入学してきた学生の一人です。今回採択されたプロジェクトは卒業論文や修士論文とは無関係の個人的なプロジェクトとして応募し、採択され、努力した結果が評価されました。21世紀グローバルプログラムが廃止(参考リンク6)になったのはとても残念ですが、「学力、意欲、豊かな個性を兼ね備えた優れた学生」として入学し、学術研究活動だけでなく学外プロジェクトにもチャレンジし、その活動が高く評価されたことはとても喜ばしいことです!
参考リンク一覧
参考リンク1:
「未踏IT人材発掘・育成事業」スーパークリエータの認定について~採択、支援した34件の中からスーパークリエータ 15名を認定~
http://www.ipa.go.jp/about/press/20111215.html
参考リンク2:
2011年度 未踏IT人材発掘・育成事業 公募結果
http://www.ipa.go.jp/jinzai/mitou/koubokekka_index.html
参考リンク3:
未踏IT人材発掘・育成事業説明会(9/4 13:30-15:30)
https://ie.u-ryukyu.ac.jp/blog/2010/08/26/未踏it人材発掘・育成事業説明会94-1330-1530/
参考リンク4:
未踏にチャレンジしてみた琉大院生による紹介と中間報告 講演会のお知らせ
https://ie.u-ryukyu.ac.jp/blog/2011/01/29/「未踏にチャレンジしてみた琉大院生による紹介/
参考リンク5:
琉球大学21世紀グローバルプログラム
http://www.u-ryukyu.ac.jp/admission/nyushi/guide2007/p08.html
参考リンク6:
琉球大学 学内ニュース 2010年7月号(21世紀グローバルプログラムの廃止)
http://www.u-ryukyu.ac.jp/univ_info/inter_news/2010_jul.html
参考リンク7:
情報処理推進機構:未踏:未踏IT人材発掘・育成事業
http://www.ipa.go.jp/jinzai/mitou/
参考リンク8:
「2012年度未踏IT人材発掘・育成事業クリエータ委託契約」に係る企画競争
http://www.ipa.go.jp/about/kobo/20120207/index.html
参考リンク9:
リンク:「2012年度未踏IT人材発掘・育成事業クリエータ委託契約」に係る企画競争
http://d.hatena.ne.jp/next49/20120207/p3
参考リンク10:
リンク:与儀さん(琉大大学院)県内初認定 スーパークリエータ(琉球新報)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-187430-storytopic-7.html