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From: Hideaki Iwata 
Newsgroups: fj.soc.copyright
Subject: Re: 30条と49条 (罰則関係)
Date: 21 Sep 2000 13:48:23 +0900
Organization: Center for Information Science, Wakayama University
Lines: 98
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ひで@和大、です。
やっぱ視点が違うんでしょうね。

Richter ABC  writes:
>  自分で後で見るためにテレビのオリンピック中継を録画したとします。
>  会社の上司にオリンピックの話をしているときにそのことをしゃべったところ、
>  上司から自分は見過ごしたからそのビデオを貸して欲しいと言われたらどうす
>  るか。これと同種の質問がどこかでありましたね。
>  
>  私は、気持ちよく貸してあげるべきだと思います。
>  法律は、それができないような国民感情を無視した規定を設けてはいません。

規定を設けています。なぜ「設けていない」と考えるのか、説明して
下さい。
たぶん、ほとんど全ての著作権法の解説書で説明されていると思いま
すが、30条1項を適用する以上、複製物を融通し合う二人の関係は
「家庭内に準ずる限られた範囲」でなければなりません。

つまり法は、「上司」「部下」といった人間関係を求めてはいません。
二人の肩書きはどうでもいいのです。二人の間に存在する(はず)の、
日常的な人間関係を客観的に評価することを要求しています。

だから、「上司」ってのは著作権法上は何の意味も持ちません。
二人が「家庭内に準ずる限られた範囲」にあると客観的に認められる
ならば30条を適用して著作者の権利を制限できますし、認められなけ
れば、他の権利制限に合致しない限り、著作者に無断で同行為を行な
うことは不法行為に当たります。

この大原則を無視する理由は何ですか?

>  しかし、あまりにも規制を厳しくすると、国民感情に合わない場合が出てくる
>  ので、そのあたりはやかましく言わないで、弊害の出るような場合、公衆に貸
>  与するような場合のみ、その貸与行為を複製とみなすようにして、その範囲で
>  複製権の効力を広げたのが、49条です。

で、その判断は誰がするのですか?ABC氏ですか?
人は神様にはなれません。またなるべきでもありません。
人が神として振舞っていた時代に、幾多もの悲劇が生じたから、人は
法を民主的な手段で整備し、出来る限り公平かつ民主的に法を運用す
る手段を模索し続けているのです。
その「法の現実的運用」部分と、「法が唱える理念/理想」とを
ごっちゃに議論することに、何か意味はあるのですか?

先日、たばこ三本を窃盗した罪である男に実刑判決が下されました。
また、以前には確か3円だか5円だかの窃盗でも、実刑判決が下されて
います。社会的に言えば、罪の重さに窃盗額の大小は影響を与えませ
ん。被告人が、どういった状況でどういった行動を取ったのか、が
その罪の重さを決定しています。
当人が不法行為を行なったか否か?という問題とは、全く別の次元の
話なんです。

佐々木氏以下が何度もおっしゃってますが、30条はあくまでも著作者の
権利を制限している条項に過ぎません。本来著作者が専有する複製権を、
ある状況下では制限しましょう、と、人為的に定めているに過ぎません。

# もちろん、複製権自体も人為的に定めたものですけどね:-)
# 神様が与えたもうた権利じゃない(^_^;;)

30条を含む制限条項に合致しない場合は、著作者の専有権は成立します。
それが現実です。

>  「趣旨に大きく反して」というのは、49条に規定している「公衆要件」を備
>  える場合です。
>  
>  もっとも、立法当時は、そのような趣旨で各規定が設けられたとしても、メデ
>  ィアの進歩、複写技術の進歩などにより、当否ということでは問題が出てくる
>  場面もいろいろあるでしょうね。その場合、解釈で補えない場合には、法改正
>  をすべきです。

いや、その、解釈において、30条の適用ケースで貴殿が言う「上司」を是
とする説ってどっかに存在しますか?
私が知る限り、全ての解釈論において、「家庭内に準ずる限られた範囲」
に「上司」「部下」という肩書上の人間関係を含む、とは論じてません。
そういった肩書には関係なく、二人の実質的な人間関係こそが、30条に
よって制限を加える趣旨である、と論じています。

だからこそ、fjに貸与を呼びかける記事が載ると、

「あなたがしようとしていることは、著作者の許諾を得るか、あるいは
貸してくれる人と客観的に見て家庭内に準ずる親しい人間関係を得るまで
熟成を重ねない限り、不法行為となりますよ。」

との指摘がなされる訳です。また、この指摘は十分に妥当なものなんです。
法律の解釈論(通説)に載っとれば。

この原則を敢えて無視する理由が、私には判りません。

# 匿名投稿というのと関係あるのですかね?
# 実名じゃあこんなことは恥ずかしくて言えない?

私を含め、多くの論者は、法律の解釈論を続けているはずです。
それが場合によっては「建前」で終るかも知れませんが、たとえ「建前」
で終ったとしても、解釈論として適正であれば、十分に有意義なんです。

# 建前と現実と本音(己の感情の露呈)を切り分けられない論者っての
# は、非常に困った存在となる訳です。

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