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Path: ie.u-ryukyu.ac.jp!agent
From: kono@ie.u-ryukyu.ac.jp (Shinji KONO)
Newsgroups: fj.soc.copyright
Subject: 「貸してください」記事に関して
Date: 9 Sep 2000 05:21:01 GMT
Organization: Information Engineering, University of the Ryukyus
Lines: 163
Message-ID: < 18380.968476892@rananim.ie.u-ryukyu.ac.jp> 
Reply-To: kono@ie.u-ryukyu.ac.jp
NNTP-Posting-Host: rananim.ie.u-ryukyu.ac.jp
Originator: agent@rananim.ie.u-ryukyu.ac.jp
Xref: ie.u-ryukyu.ac.jp fj.soc.copyright:11714

河野 真治@琉球大情報工学です。

今までの経験からいって、引用抜きで自分の意見をまとめるのが自
分に取っても、他人に取っても良いらしいです。ここには、それが
できない人も多いようですけどね。人言うことを「そうじゃない」
とかしか言えない人とか... そういう人も、自分の言葉で、自分の
考えをまとめてみましょう。

まず、問題から。

    [A] fj で、たまに以下のような記事をみかけます。これは、どう
    しましょう? 「XXXの番組を見損なってしまいました。録画されて
    た方がいましたら、ビデオをコピーしてくれませんか? 謝礼 5,000
    円さしあげます。」

    [B] さらに、これにたいして、そういう記事は違法だとか、コピー
    は違法だとか、いや記事は違法でないとか、いろんな記事がでます。
    これを繰り返すことがfj にとって良いことでしょうか? 

で、いろんな見解があるわけですが、わりと一致した意見もあります。
以下では、僕が、一致を見た意見を列挙します。

    [C] fj では、[A]の記事自体が著作権法上違法となることはない。
    著作権法は、複製行為や頒布行為を問題にしているのであって、fj
    のこの手の記事に関しては直接関係しない。

    [D] この記事が教唆として刑事上問題になることもない。教唆では、
    正犯が、実際に、特定の行為によって犯罪におよぶ具体的な手順が
    要件となる。この記事では、そのような具体的な犯罪手引とは言え
    ない。

    [E] 番組をビデオで録画すること自体は、私的使用のための複製と
    して許されている。(著作権法30条)

    [F] 私的使用とは、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限ら
    れた範囲内において使用すること」である。この使用に、貸与が
    含まれないという根拠はない。

	(私的使用のための複製)
	第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において
	単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準
	ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」とい
	う。)を目的とする場合には、公衆の使用に供することを目的とし
	て設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する
	装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用
	いて複製するときを除き、その使用する者が複製することができる。

    [G] 私的使用のための複製の特定少数への貸与が著作権法上の頒布
    と見なされると言う根拠はない。

    [H] 著作権法の38条では、無償を条件とした公衆への提示が許され
    ているが、映画の著作物は除かれている。

	 (営利を目的としない上演等)
	4 公表された著作物(映画の著作物を除く。)は、営利を目的と
	せず、かつ、その複製物の貸与を受ける者から料金を受けない場合
	には、その複製物(映画の著作物において複製されている著作物に
	あつては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆
	に提供することができる。

    [I] 少数特定は、公衆とみなさないと言う根拠はない。が、私的使用の範囲内
    を公衆とみなす根拠もない。

    [J] 私的使用の範囲内で「親密さ」あるいは「家族同然」を要求する
    根拠はない。

    [K] 私的使用の範囲外の利用についての問題が記述されているのは、

	(複製物の目的外使用等)
	第四十九条 次に掲げる者は、第二十一条の複製を行つた ものとみなす。

	 一 第三十条第一項、第三十一条第一号、第三十五条、第三十七条
	第二項、第四十一条、第四十二条又は第四十四条第一項若しくは第
	二項に定める目的以外の目的のために、これらの規定の適用を受け
	て作成された著作物の複製物を頒布し、又は当該複製物によつて当
	該著作物を公衆に提示した者

	 二 第四十四条第三項の規定に違反して同項の録音物又は録画物を
	保存した放送事業者又は有線放送事業者

	 三 第四十七条の二第一項の規定の適用を受けて作成された著作物
	の複製物(次項第二号の複製物に該当するものを除く。)を頒布し、
	又は当該複製物によつて当該著作物を公衆に提示した者

    である。

    [L] 複製権の侵害は、親告罪であり、著作権者側からの告訴がない限り、
	刑事上、民事上、問題になることはない。しかし、形式的な違法で
	ないとはいえない。告訴がないが違法であるなどと主張して、何かを
	することはできない。

    [M] 今まで、私的使用のためのビデオの複製を(家族外あるいは、まっ
        たくの他人に) 特定少数に数回、私的使用として貸与あるいは見せ
        たことを、告訴した判例は存在しない。

    [O] 私的使用のための複製を営利に使用した場合に関する判例は存在する。

で、次に僕の考えを述べます。

    [0]
    「貸してください」記事に対して、自分で録画した私的使用のための
    複製であるビデオをを、見せたり、貸したりすることは、私的使用の
    範囲内であり、問題はない。

さらに、複製でなくオリジナルの場合には、そういう私的使用という制限も
ないので、

    [1]
    「貸してください」記事に対して、市販のビデオなどを、見せたり、
    貸したりすることは、問題はない。

ってわけです。なので、

    [2]
    「貸してください」記事自体が違法行為を誘発するってことは、まったく
    ありません。

ついでに、そんなことを言っている奴は馬鹿だとも思ってます。

なんですが、

    [3]
    fj で、私的使用のための複製を、有償貸与することを認めるのは、
    僕は、頒布に近い

と思うので、以下のような自主規制案を提案しています。

    [4]
    fj で見のがしたテレビプログラムを探す場合は以下のような投稿を
    認めることとする
    (1) 無料放送あるいは公共放送(含むNHK)に限る
    (2) 放送日から一か月いないであること
    (3) 文面は「X月Y日にZを見逃しました。だれか見せてくれませんか」
        であること。(貸与を要求してはいけないわけね)
    (4) 金銭授受をともわないないこと (謝礼5000円差し上げますとかはだめ)

ここでのいろいろな制限は、

    [5]
    ビデオを提供する側が私的使用の範囲内となり、ビデオを見る側が、
    公正利用となるのが望ましい。

という考えからつけています。貸与を文章的に禁止しているのは、
貸与は違法だとか勘違いしている人が多いからです。

あと、放送局側が、

    [6] 放送をちゃんと受信できるようにする義務がある

と、放送法とか会社定款とかを根拠に思います。なので、再放送と
かは、放送局の義務とみなして良いと思います。なので、ちゃんと
再放送しない局を告訴することはできるんじゃないかと思いますが、
この議論は、ここでの議論とはあまり関係ないですね。

というわけで、[4] を合意すると、わりと「貸し出しはかんべんな
らん」と法律とは関係なく信じている人達も幸せになれるし、僕も
いちいち「それは、問題ないです」「また、河野の気違いが..」と
かいうつまらん繰り返しをしなくて良いので幸せになれると思いま
す。

---
Shinji KONO @ Information Engineering, University of the Ryukyus
河野真治 @ 琉球大学工学部情報工学科
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