Archive for the ‘ススメ’ Category

参考文献に頼ろう

金曜日, 1月 13th, 2012

卒論修論シーズンということで、度々話題に上がる「参考文献が殆ど明示されていない、酷い場合には研究室内先輩の卒論/修論一つしか挙げてないケースも」を思い出したので、参考文献にまつわるコラムでも書いてみます。

参考文献の必要性ついては、Google先生にお伺いした所「参照文献はなぜ必要か : その目的と機能」という素晴らしいページが見つかりました。曰く、

「内容が思いつきや独り善がりでないことを示すこと」
「証拠立てられない私見だけでは論文にならない」
「先人の業績を知らなければ自分の研究の価値がわからない」
「研究の結果がどれほど興味あるものであっても,同じことをすでに他の学者が発見していたとすれば,多大の努力によって完成した業績も意味の少ないものになってしまう」
「参照した文献を明示することにより,著者側から読者に関連資料の存在を伝えると同時に,読者側からはその研究分野の動向を確認・評価することが可能になる」
「他人を模倣するのではなく、自分ひとりで他人とは違う考えを編み出せたと思ったとき、それがほんとうに独創的であるケースはめったにない」
「研究というものは、他人がすでに明らかにしてくれたことがらの莫大な蓄積の上に、ちょこっと、自分がはじめて明らかにしたことを付け加えることによって進んでいく」
「自分がどのような素材(調査、統計、テキスト、先行論文)を使ったのかを明示し、それがどこで手に入るのか、そのどこを使ったのか、第三者が必要とあればいつでもチェックできるように、こうしたことを論文の中にきちんと示しておかなくてはならない」

参照文献はなぜ必要か : その目的と機能より引用)

などなど、様々な視点から「参考文献」の意義について触れられていますので、そのページを参照するのが手っ取り早いですね。

ここでは上記ページで触れられていない点について書き加えます。
(そう、この記事も別の記事を参照しているからこそ多くのことを省略できるし、自分が主題にしたいことに注力することができる)


論点を絞り込むことができる

これまでは良く分かっていなかった何かしらの課題(問題点, issue)を明らかにすること自体が目的であったり、既に合意の得られている課題についてトライしたことについての議論であってり、何かしら論点が一つ以上含まれているはずです。このとき、自分にとっては「論点にしたくない課題/仮説/前提」について、他の論文で論じられているのであれば、それを参考文献として示すことで「この人が論じたことだ」として一種の逃げを打つことが可能になります。具体例として、先程のページ冒頭から引用すると、

日頃から習慣的に本を読むか読まないかは各人の自由、人それぞれの趣味嗜好に属することで、 本をまるきり読まなくても多くの人はなんら支障なく日常生活を送っているようです()。

参照文献はなぜ必要か : その目的と機能より引用)

では、「本当に支障無く日常生活を送っているかどうか」自体が一つの論点になり得ますが、ここでは「参考文献を付けることの目的と機能」について論じたいのであって、その前段について、もしくはその前段の前段、前段の前段の前段、、、についていちいち論じていては一向に進みません。本当に支障無く日常生活を遅れているかどうかなんてことには興味が無い(言い過ぎ)か、その参照した論文で論じられている内容で十分担保できると看做すことで、責任の一部をその参考文献著者に委ねることができます。これにより、自分が主題としたい論点に的を絞って論じることがしやすくなります。

もちろん、その参考文献自体の正確さや信頼性次第では「参考文献として妥当ではない」と看做されてしまい、場合によっては「こんなものを参考文献として挙げてるようでは論文の信頼性もたかがしれている」という評価に繋がることもあるでしょう。この意味で、適切な参考文献を列挙することが求められる訳です。このような「参考文献の適切さ」を互いに担保しようとする努力を延々と積み重ねることによって「今貴方が書いている論文の信頼性」を少しでも担保することができるようになりますが、このあたりは先に示したページでも述べられていることですね。

ということで、ある一面だけを強調すると「責任逃れ」のために引用するとも言えます。論文内の全ての論点に貴方自身が全責任を負えるなら、全ての論点について読者が納得できるよう全てについて論じましょう。それが無理なら、適切な参考文献を示して責任逃れをしましょう。参考文献を頼りましょう。

ということで、卒論/修論での適切な参考文献一覧を期待しています!

情報工学科新入生歓迎LT祭りを終えて(真面目な回答編)

土曜日, 4月 23rd, 2011

学生主催の情報工学科新入生歓迎LT祭りが終わりました。プレゼン資料もUstream録画もそこにリンクが掲載されていますので、今回来れなかった学生はちらほら眺めてみると良いんじゃないかと。

LT(ライトニング・トーク)というよりは、ライトなトークでお祭り騒ぎという感じでしたが、こういうのもやって見ると良いんじゃない?ということで特にコメントとかせずに「がんばれ〜」と応援だけしてました。お疲れさまでした。>主催者及び関係者の皆さん

テーマがあやふや過ぎて新入生固有の話って実は殆どなかった気もするんですが、それも加味しても初めてこういう場に参加する学生に取っては一つの切っ掛けとしてフラグ建てることが出来たんじゃないかと期待します。

私自身発表依頼が届いて発表する立場になってしまいましたが、ま、たまにはこういうのも良いか。ということでThink, Act and Shareというタイトルで発表したわけですが、発表時間をあまり気にしていなかったこともありスライドの半分ぐらいでタイムアップという体たらく。ごめんなさいw

時間不足過ぎたのでQ&Aでも一言で答えられるネタ回答をして済ませたのですが、真面目な回答は以下のようになります。

Q: 1万時間の話があったが、何か1万時間かけたものは?

A:
 学部生の頃、特に研究室配属前は正直「何となく面白い」ぐらいで真面目に課題やるぐらいの時間しかかけていませんでした。なのでそれ以外の時間はゲーム三昧。
 研究室配属後は文字通り朝から晩まで研究室にいて、土日も研究に打ち込んでいました。あまりにも楽しかったので。ゲームもこの頃からはほとんどやってなく、研究室の先輩から教えてもらった Diablo をたまにやるぐらいしかやってません(でもやってたという話ではある)。
 単純計算すると8hours/1dayぐらいは普通にやってたので、B4の1年間(300日換算)でも2400時間ぐらい。一度4,5ヶ月ぐらい本気で毎日やり続けし過ぎてしまい、居眠り事故やっちゃってからは休日も取るようにしたなぁ(遠い目)。
 このぐらい集中して時間を支払えるのも楽しいと感じるぐらいやり込んだから、B4の間に学外発表3件やってたし、それ以降も年3件ぐらいは普通にやってた。博士号取るまではずっとそんな調子だったので、単純計算すると

2400時間*(B4+M1+M2+D1+D2+D3)=14,400時間

ぐらいで、余裕で1万時間以上注いでますね。研究に打ち込むかどうかは置いといて、そのぐらい時間を支払えるぐらい楽しめるものを探した方が、人生楽しめますよ。

ま、私の発表はお座なり具合は置いとくとして、記事にも書いてた「裏テーマ」として伝えたかったことの下記2点が、学生発表から出てきたので発表前に満足しきってました。

・好きをモチベーションに。(Like by Shou KYUSHIMA)
・就職そのものは目的ではない。やりたいことをやれる場所を探すのが良い。(就職活動って何するの? by Tomonori ARAKAKI)

直接伝えたかったものがこういう言葉というわけではないですが、根っこは似たようなことで「好き」とか「やりたいこと」が無いと人生楽しくないと考える人なんです。私は。こういう「好き」とか「やりたいこと」を通して社会と繋がることで、自然と就職なりに繋がらないと数十年働くなんてやってられないと思うんですよ。少なくとも私は。

言い換えデザイン(設計)のススメ

火曜日, 4月 19th, 2011

前回のネタ出し記事に含めて書くか迷ったのですが、別記事として書く事にしました。ということでこの記事も「アイデアを検討する」に関連した話題になります。

言い換えてデザインすることでアイデアを練り上げよう

これだけで全てを言い切っているのですが、少し解説します。

あるアイデアについて、日本語の文章で記述したのならそれを、(例えば)以下のようにすることをここではまとめて「言い換えてデザインする」と表現しています。列挙している順序にはあまり意味がありませんが、大まかには「汎用的に使える言い換え方→専門寄りの言い換え方」という流れで配置したつもり。

  • 英語で書き直してみたり。
  • プロジェクト名を付けてみたり。
  • キャッチコピーを考えてみたり。
  • 可能な限り要約してみたり。
  • ポンチ絵(=「イメージが伝わる簡単なスケッチ」)書いてみたり。
  • 使ってる単語(e.g., 名詞/形容詞/動詞)を具体的にどのようなイメージで使っているかを言い換えて解説してみたり。
  • 各単語が互いにどのような関係になっているのか、どのように(相互)作用するのかを列挙してみたり。
  • 手続きとして疑似コードで書いてみたり。
  • (上記と似ていますが)要素と演算子を洗い出して数式モデルとして記述してみたり。
  • UMLで書いてみたり。

このような言い換えをすることの意図は、

どのような表現方式であれ、それが得意/不得意な表現対象がある。
その不得意な部分を補うために他の表現方式でも書いてみる。
複数の表現方式を用いて記述することで「気づいていなかった観点」への気付きを得られる。
新たな観点を得ることで、考え方の幅が広がり、洗練されたアイデアを練りやすくなる。

ことにあります。

タイミング的には「アイデアがある程度の骨格が形成されつつある頃」を想定して練り上げるための方法として書いていますが、必ずしもそうとは限らず例えばブレインストーミングでの「叩き台」を多数抽出するための切り口としても使えるアプローチだと思います。

新入生向けLT: Think, Act and Share

金曜日, 4月 15th, 2011

新入生歓迎の一環で、大学院生が情報工学科新入生歓迎LT祭り~Hello world~なるイベントを企画しているようです。

新入生に学科のこと、大学のことを楽しげに紹介しましょう。
LT発表者とスタッフを募集してます。

—LT発表者

・募集対象 : 在学生、教員、卒業生
・発表の内容 : 学生生活、学業、技術面、等の先輩が直面してきた問題や、気づき、雑談、を伝えられるもの。

発表例 : ツイッターの使い方、紹介。
    : Skype の使い方、紹介。情報工の板紹介。
    : 所属している研究室の紹介
    : 講義の紹介
    : 心構え
    : 就活の話
    : etc

軽めで構いません。お気軽にどうぞ!

ある程度のテーマは設定してありますが、何でもアリと解釈できちゃうぐらいの緩い設定。被ることは無いと思うのですが、資料を準備し終えているので先に晒しておきます。新入生が先に見てても別に問題無いし。

何を話そうかとあれこれ考えた結果、表題の「Think, Act and Share」にしました。元ネタはこの間参加してきたNLP2011, 併設ワークショップ「自然言語処理における企業と大学と学生の関係」に参加しての感想で、いろんな視点/意見がある、それらを踏まえて自分で考えて行動しようよ。そしてその結果を何らかの方法でシェアすることを通して社会と繋がりを持とう。そこで得られる経験だけでなく、そういう行為自体がいろんなことに繋がっていく。ということを伝えられればなと思います。表のテーマとして。こっそり(?)裏のテーマも設定してあるんですが、それを話すかどうかはその時の状況次第の予定です。

slideshare: 新入生向けLT: Think, Act and Share

試しに slideshare 使ってみたけど結構汚くなっちゃうのね。
ということで普通にPDFファイルで見たい人はこちら

ネタ出しのススメ with 論理的思考

木曜日, 4月 14th, 2011

新年度に入り、卒業研究に着手した学生だけでなく、学生実験などいくつかの科目で「アイデアを考えてくる」ことが目的になってる人が多いかと想像します。何かしらやりたいことが既にあるならそれに向かって突っ走れば良い(ブレイクダウンするなり取り組むのに必要な努力をする)ですが、そこまで具体的なものが無く、何となく興味あるキーワードがある程度では不十分です。それらを種としていろんな花を咲かせる(思考する)ことが必要です。

アイデアを検討するにもいろんな方法があります。代表的なものは下記3つ。

上記以外の方法だとしても、これらを多少変更/混合したものであることが多いでしょう。例えば、エディタのアウトライン機能を使ってテキストベースで構造化しながら考える(e.g., emacsのorg-mode)のは、階層構造を持つという点ではマインドマップに、順序を含むという側面ではKJ法に近いですね。

自分に合う方法で発想を広げてもらえればそれで良いのですが、ここではもう一つ別の例を紹介したいと思います。

出典: オタキングex、「岡田斗司夫のひとり夜話」の「ノート術」より。

(06/12)オカダノート離陸、上昇、論理とは?

上記動画の3分あたりから、次の動画途中までで「論理的思考」について話されています。私がこれを紹介したいと思った観点は次の2点です。

  • 正解/不正解を気にせずに数をこなすこと。
  • なぜ、なぜ、、と掘り下げるだけでなく「何故私はこれに興味を持ったのか」といった主体を置くフェーズを設けている点。

重要なのは、それぞれの特性を把握した上で、もしくは自分に向いている手法を選択して、休憩を挟みながら数をこなすこと。一つ一つのアイデアが大した事なくとも、数をこなして多数のアイデアを検討し続けることでそのうち脳内で様々な結合が自然と行われ、より斬新で面白みのあるものが構築される可能性が高くなります。机に向かってばかりでもダメで、新しいことを生み出そうとしているのに身体が同じ姿勢で同じ動作ばかりしてたら脳細胞だって新しい結合を作り難いですよ(妄想)。だから休憩も大切。

天才なら一つ一つのアイデアが素晴らしいものかもしれませんが、大抵は「そんなの誰かが思いついてるよ」になるのが普通でしょう。でも、継続的に発想を広げる行動を続けることで、「99%の努力と1%のひらめき」に近づけるのだと思います。

東北関東大震災とソーシャル・メディア(ショートバージョン)

月曜日, 3月 28th, 2011

学科システム落ちてる間にmixiに投稿済みの内容ですが、学生向けという意味でここでも紹介。

ほんの少ししか手伝いできていませんが、ANPI NLP というプロジェクトを通したボランティア活動をしました。某所への寄稿したものなので、ここでは圧縮してかいつまんで紹介してみます。いろんな支援の仕方があるよね、という意味を込めて。


 ほんの数年前までのソーシャル・ネットワークでは人間関係を構築する場といった側面が強調されていましたが、今回の震災を切っ掛けに、緊急を要するタスクとして認知し合った人らを中心として繋がり、互いに知識やデータを提供し合い、タスクを分割して協力するといった具体的な活動を行う場やその活動を支援する場(ソーシャル・メディア)としても有効に機能し始める時代へとなってきました。

 活動の一例として、Googleのパーソンファインダー(消息情報)。
(*1)Google Person Finder (消息情報): 2011 東日本大震災
 http://japan.person-finder.appspot.com/

 パーソンファインダーは、インターネットを介した人海戦術によるアプローチ。これ以外にも、専門知識を有する人らがプロジェクトとして協力し合う活動も現れました。

(*2)ANPI NLP (東日本大震災のためのデータマイニング・自然言語処理に関する情報のページ)
 http://trans-aid.jp/ANPI_NLP/
(*3)sinsai.info (東北沖地震 震災情報サイト)
 http://www.sinsai.info/
(*4)Twitter 上の大震災関連「救命・救助要請情報(#j_j_helpme・#311sppt 関連)」要約 & 通報支援サイト
 http://www.selab.cs.tut.ac.jp/~aida/
(*5)東北関東大震災 安否情報 横断サーチ
 http://trans-aid.jp/ANPI_IR/ja/

 (*2)のANPI NLPでは、楽天技術研究所(以下、楽天技研)の萩原さんの声かけにより主に自然言語処理やデータマイニングと呼ばれる分野で活躍している専門家が集い、「Twitterなどから得られる安否確認情報を照合、更新することでPerson Finderの情報を充実させること」を大きなタスクとして取り組まれています。

 そもそもの始まりは、楽天技研の萩原さんによるツイート「こういう緊急時にも自然言語処理が役に立てることはたくさんある。(中略)特に今必要性が高いのは名寄せ技術だと思う。被災者・安否不明者の表記揺れに困っている自治体とか多そう。」のようです(*6)。

(*6)言語処理屋さんが連携していく様子
 http://togetter.com/li/111529

 このツイートを切っ掛けに、
 ・Google日本語入力Mozcを開発されている工藤さんがデータ提供。
 ・地震を含むツイートを収集していた大阪大学の松村先生からデータ提供。
 ・京都大学のGraham Neubigさんから人名・地名モデルの提供。
といったアクションが高々数時間のうちに行われました。このスピード感で進む様子を受けての判断だったのだろうと想像しますが、翌日になる3月15日にハッシュタグ #anpi_nlpとしてTwitter上の情報集約が開始され、加えて情報通信研究機構の内山さんからの提供によりMedia Wiki上での整理が始まりました。切っ掛けとなる最初のツイートから僅か1日後のことでした。

 こうしてANPI NLPが始まり、前述の目的を達成するためのタスクが用意されました。ここで用意された当面のタスクとは、地震関連のツイートデータ約6万件が既にあり、これらのツイートが「安否情報を含んだツイートなのか(もしそうなら人名や地域名がどこに記述されているか)」「救助要請を含んだツイートなのか」「関係のないツイートなのか」といったことを人手で判断し、目印を付与するというものでした。この目印を付与するという作業は、直接的にはコンピュータで処理しやすくなる(パーソンファインダーの情報と照合しやすくなる)というのが利用目的になりますが、それだけではなく間接的な効果にも期待しての人海戦術でした。

 この間接的な効果の例として、分類器の構築があります。分類器とは、入力されたツイートを「安否情報を含んでいるツイートか/そうではないのか」といったYES/NO形式で分類したり、「生存を確認したツイートなのか/死亡を確認したツイートなのか/安否確認の情報を求めているツイートなのか/それ以外なのか」といった複数選択肢のどれに該当するかを自動で分類してくれるシステムのことです。もし、現時点でのツイートデータ6万件についてのみ処理したら全てが終了するというのであれば、全てを人手で処理することも考えられますが、実際には関連ツイートは日々収集され続けます。それら全てを人海戦術で判断するのは事実上不可能のため、少しでもその手間を和らげるために自動化しよう。その自動化をするための技術として、人手で付与した正解データ(分類結果)から「どのように分類するのが最も妥当か」を自動で学習する技術である分類器を使おう。こういった効果を狙っての試みでした。

 3月24日現在では、当初の目的であるパーソンファインダーへの寄与に関しては楽天技研を中心として続けられ、それ以外の災害支援タスク(安否情報ツイートと避難所を関連づけるタスクや、外国語に機械翻訳するといったタスク等)についても提案され、少しずつその結果が出始めているようです。日々更新されている状況ですので、詳細はANPI NLPのサイト上にてご確認頂ければと思います。

 以上、ソーシャル・メディアを通した活動例を紹介すると共に、自然言語処理屋の皆さんが構築されている成果物を利用している一人としてANPI NLPに賛同し、関わった活動内容の一部を紹介してみました。この活動が震災支援の一助となれば幸いです。

NLP2011, 併設ワークショップ「自然言語処理における企業と大学と学生の関係」に参加しての感想

日曜日, 3月 13th, 2011

細かいメモもありますが、togetterによるツイートまとめ(午前午後)に譲るとして、ここではパネリストによる意見の中をグルーピングしつつ、感じた感想を述べたいと思います。グルーピング次第でどうにでも取れる文面もあるので、実際にどういう流れで討論されていたかは前述のtogetter見る方が良いでしょう。

まず前提その一として、今回の討論は「何かを決めよう」ということは目的にされていません。互いに意見を主張し合い討論することで多くの視点や意見をアウトプットすること自体が目的のようです。
その二として、タイトルに「自然言語処理における」とあり、確かにそういう側面の話も含まれていたのですが、結果としては分野に囚われない一般的な話が多かったように思います。
その三として、そこが削れたためか、就職活動に関連した話題が多かったです。
その四として、往々に起こる状況と思いますが、「声の小さい学生」の話題が少なかったです。
これらのことを踏まえて、企業・大学・学生の三者がどのように考えているか、という議論についての感想になります。

目次


超約

  • 自分で考えて行動しよう。行動しないことには何も得られない。
  • 行動した結果失敗したとしても、大した事なく済むことが殆ど。失敗してそこから学び、次ぎに活かそう。
  • 強い動機を持って行動する人には手を差し伸べようとする人が多い。公開し続けていれば仲間が増える。
  • 具体的に行動する(e.g.,対面する)のを躊躇してしまうのだとしても、メールやツイッターみたいなカジュアルなツールならそうでもないのでは? 手段は豊富にあるのだから自分にあった方法で行動しよう。

読誦論

  • 基礎か、応用か、悩んでいる暇があったら基礎を身につけよう。
  • 読誦すべき。何をやったとしても局所解に陥らないことを保証することはできない。読誦し、いろんな視点を得よう。
  • 読書は大切だが、優秀過ぎて「簡単に読めてしまう」のは少し問題。時間をかけて向き合うことで読み解けるものもある。相手の求める速度に合わせて読もう。
  • 本を捨てて街に出る(行動す)べき。勉強/努力することは大事だが、全て万全に整うまで挑戦/行動しないというのでは時機を逸することが大半。行動し、失敗しながら学ぼう。若いことはそれだけで勝っている。失敗しても大したことが無いことが大いし、若いうちの方がやり直す時間が多い。
  • 面白いことを見つけよう。学生なら教科書、論文、書籍、ネット、友人、先生、両親あたりが多いだろう。企業では、例えば、リアルデータ、異分野異業種、多様な現場といった「知らない所」からも見つけている。
  • 違和感を感じるためにも外(専門外の専門や、学外)に出よう。初めての体験をすることで感じる違和感は想像の種になる。

大学論

  • 目的次第になるが、中途半端に企業に歩み寄っても、企業/大学/学生三者にとって不幸になることがあり得るのでは。大学はどうあるべきかといった理念・目標を見据え、行動すべきだろう。
  • 大学でないとやれないことは何か、と突き詰めるのも一つの道。
  • 古い技術を工夫して具体的な応用に結びつける所も大切なこと。ただし、大抵の「やってみた」レベルのことは企業でもやっている。大人の事情で見えないだけ。努力しよう。高度に知的な作業が努力である。
  • 企業/大学の双方にとって有益な紳士協定なりの協力の仕方もあるだろう。例えば、大学ではコア部分(差別化)を作成し、企業ではリスク部分(大きなエラーはぜ絶対に起こさない)を構築するなど。対価として金銭的なやり取りだけじゃなく、データやノウハウでの交換等柔軟なやり方が考えられると思う。

企業論

  • データを出して欲しいとか言われるが、具体的にどう役立てたいからどういう切り口で取得したデータが欲しいのか、明示して欲しい。持ってるもの全てと言われても、基本的に持ってるデータはこちらの意図で収集したもので、それがマッチしているとは限らない。
  • データと向き合うことで真実を探るというスタンスも良いと思うが、データを蓄積するというのはコストがかかるということ。タイムライン的に見返りが得られる等の説明ができないと、データを出すよう説得するのも困難。
  • そもそも「本当に解決したいこと」があるならデータが出てくるのを待つのではなく、企業に来てやるという選択肢もある。何故そうならない?
  • 企業にもいろいろあり、自社ではデータを持たず、大学より大学らしく活動している所もある。

学生論

  • 地方の学生は東京と比べて勉強会自体の機会が少なく、選択肢以前の問題。
  • 逆説的だが、お膳立てされてる環境では学べないことも多くある。主催することで学べることも少なくない。それが何かに役立つとは限らないが、身に付くものはある。
  • 言われたことをやるだけの人材は要らない。例えば「一見完成しているように見えるサービス」から課題を抽出し、それにどう取り組むかを考える力が必要。それらは一つ一つの課題に丁寧に取り組むことで身に付く力なはず。一つの専門分野で解決できることも年々減っているので、いろんなことに興味を持って取り組もう。
  • アメリカにインターンに行った経験からすると、TG(学生なら誰でもFreeDrinkFreeFood)など企業の方と接するカジュアルな場がちょくちょくある。日本でももっと用意して欲しい。
  • (プチ)ロールモデルになる目標になる人を探し、そうなるよう努力しよう。全てが困難なら一部でも良い。
  • やってることを分かりやすく公開しよう。公開手段は豊富にある世の中になった。
  • 就職するときというのは、自分が何をやりたいかというのがまだ見つかっていない状況かもしれない。しかしだからこそ、興味ない会社でも良いと思うから、会って話をすることが大事。まとめて話せるようになることによって自分が見えて、自信が生まれてくるのだと思う。
  • 学生の頃、入社した時点では良くも悪くもぱっとしなくとも、入社後に光り輝く人材も少なくない。それまで見えていないだけだったかもしれないが、具体的な問題に対面することでモチベーションを持って取り組んでいるからかもしれない。こういう人材をどうやったら探せるのだろうか。
  • 友情(一人でできることなんてたかがしれている。一緒にやる人を探し互いに助け合う。信頼関係)、努力(努力せずにやれることはどこかで既にやられている)、勝利(小さくていいから目標を決めて、達成する。それを徐々に上げていき繰り返す)!
  • 今は、効率とかそういうのが求められていて、車輪の再発明は怒られることが多い。ただ個人的には良いと思っていて、学生には再発明で良いからどんどん人の真似をして欲しい。やってみて初めて見えてくるものがある。

リスク・テイカー論

  • リスク・テイカーになろう。そのための教育というのはあるのだろうか。
  • そもそも「何もしない」という大きなリスクを選択していることに気づこう。
  • 「リスク=自分の何かを犠牲にすること」ではない。好きなことに没頭してやっていることが、他人から見ると結果的にリスクを選択していたということが少なくない。好き勝手にやろう。
  • 外に出ない学生は危機感が欠落し過ぎ。中国も教育レベルは向上しており、国際全体が競争相手の世の中に突入するのは目前ということに気づいていない。例えばスタンフォード大で大挙して留学に訪れ「俺ここで学ぶんだぜ!!」と熱意を持ってる学生の割合は年々増加している。日本人もいないわけではないが、少ない。一度は留学なりで外に出よう。
  • 日本に留学に来ている身としても実感しているが、留学するリスクは比較的得られるものが多く、積極的に取るべき候補だと思う。
  • 優秀な学生とか何とかよりも「やったか」「やらなかったか」。失敗してもそこから学べば身になる。

就職活動論

  • 学生は何故ここまで凝り固まった考え方/アプローチの仕方を選ぶのだろうか? 就職活動時期を柔軟にして欲しいとの声もあったがどちらかと言うと紳士協定があるから「新卒採用枠」を一定の時期に設けているだけで、そこに拘っているわけではない。むしろ今なら中途採用の方が見てもらえることの方が多い。中途採用以外にもいろいろルートはあるが、一般的なルートでないところを強行突破するにはそれなりの「何か」は必須。強者論の話。
  • 今回のワークショップに学部生も結構参加してくれていることは素直に喜べる。だけど、懇親会で企業の人から名刺貰った人はどれぐらいいる?勉強会でも何でも良いから、切っ掛けがモノにする努力をするべき。自分から声をかけ難いなら先生に取り次いでもらうのも良いだろう。
  • 一方で、いろいろお膳立てしてもらわないと動けないという学生は、就職後に本当に役立つのだろうかという不安を感じている側面もある。本当にやりたいことがあるなら、学会でも良いし、ブログなりツイッターなりカジュアルな方式でも良いからどんどん学外/企業/世間に向けてPRするべき。情報発信する努力をしない人は、そもそも企業からは「見えない学生」。
  • 就職すると縛られてやりたいことがやれないとか考える人もいるかもしれないが、就職してみた立場としては案外そうでも無いなという印象。見えないから分からない、だから何となく不安というのであれば、会社見学でも勉強会でも今回のようなワークショップでもイベントをセッティングして呼んでください。企業は忙しいからイベントをセッティングするまでやるのは大変だが、呼ばれれば喜んで行く所が多い。

インターン論

  • 企業を知る一つの方法。
  • インターンは数ヶ月以上長期のものがベターだとは思うが、それ以上に大切なのは「インターンで何かを持ち帰る」という強い意識。目的が不明確なまま来ても身に付かない。
  • 留学兼ねて海外インターンもある。最低限の英会話は必要だが、それ以上にモチベーションが重要。世界各国からインターンに来る学生らとどう絡むか。積極的に交流する努力も大切。
  • インターンに行ったことは無いが、学生と企業の関係にもいろいろあるのでは。

関連リンク

(FYI) 大人が本気で関わるキャリア教育プログラム「人財Qubic」

水曜日, 9月 9th, 2009

今朝の琉球新報の記事で知りましたが、NPO 法人沖縄人財クラスタ研究会による「人財Qubic」という取り組みが紹介されていました。

今後説明会を開催する予定になっていたかと思いますので、興味のある高校生・大学生は参加しましょう!
概要を読む限りでは、次年度以降に就職・進学する高校生・大学生にとっては、自分の将来について考える切っ掛けや就職活動の勉強としても役立つのではないかと想像します。

(出典: 「人財Qubic」受講生募集/沖縄型次世代リーダー発掘・育成プログラムより抜粋)


【Vision・理念】
「住んでよし 訪れてよしの島 おきなわ」を実現し、世界に誇れる沖縄を創造する。
【Mission・使命】
次世代の「まちづくり ひとづくり ものづくり」を担う沖縄の人材を発掘・育成する。

1 ― より多くの刺激を提供することで「気づき」を促進します。
2 ― 海外・県外を広く知ることで「気後れ」を無くしていきます。
3 ― 沖縄を正しく知ることで「根っこ」を深く・広くしていきます。
4 - 自己を確立してくことで「多様性」も同時に身につけていきます。
5 ― ホンモノと良いものを知ることで「価値観」も同時に広げていきます。
6 - 響感・共有・協働をしていくことで「人間力」も同時に高めていきます。


※日程およびプログラムは変更になる場合があります。
<1st Quarter>
予定日時:2009年11月14日(土)15日(日)29日(日)
<2nd Quarter>
予定日時:2009年12月13日(日)20日(日)
2010年01月10日(日)
<3rd Quarter>
予定日時:2010年01月17日(日)31日(日)
2010年02月14日(日)
<4th Quarter>
予定日時:2010年03月07日(日)27日(土)28日(日)
【募集定員】
20名程度。
【募集期間】
2009年09月01日(火)~10月14日(水)
<説明会>
-09月16日(水)19:00~(開催予定場所/沖縄産業支援センター3階)
-09月26日(土)10:00~(開催予定場所/那覇市ぶんかテンブス館3階)
-10月04日(日)10:00~(開催予定場所/那覇市内を予定)

※説明会へご参加ご希望の方は、
 メールにて下記内容を記載の上、送信ください。

宛先:human_okinawa@yahoo.co.jp
件名:人財Qubic 説明会参加申し込み
本文:希望日時・場所/氏名/年齢
   /連絡先(自宅もしくは携帯)/メールアドレス

(Ref/提言) 魔法の 10000 時間

月曜日, 8月 10th, 2009

(出典: あなたも「天才」になれる? 10000 時間積み上げの法則

自分も考えてみるに、「どんなデータでも解析できる」「研究に必要な基礎技術は全部身に付いた」と自信が持てるまでには、修士から数えて約8年かかりました。この集中した時間の投入があったからこそ、なんとか一人前になれたわけで、これ以外には方法はなかったように思います。

しかし「なんだ、それではやはりダメじゃないか」「自分には時間がないから無理だよ」と決めつけるのは早いと思います。10000 時間の積み上げは、なにも 10000 時間経たないと変化がないと言っている訳ではなく、常に上昇しながらの 10000 時間だからです。

もし、あなたが一生を費やしても実現したい、大成させたいと願っているスキルがあるのなら、次の 10-12 年、毎日何らかの形でそのスキルを磨く「仕組み」を取り入れるのは有効かもしれません。

似たような事例は他にもいろいろと出ていますので,それぐらい普遍的なことなのでしょう.

そして,上記引用先でも触れられていますが,仮に1万時間を10年かけてやろうとすると1日3時間弱で達成できますが,仕事をしながら毎日3時間別のことのために確保し続けるのは容易ではありません.だからこそ【学生時代の積み上げがいかに大切かということを表しているといっていいと思います。(同出典)】なのです.

あなたは人生をかけてやり遂げたいものがありますか?
もしあるのなら,今からどのぐらい時間を割くべきか考えて行動に移すべきです.
もしないのなら,まずは夏休みをそれを探すための時間に使ってはどうですか?

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夏休みの(継続して実行する)目標設定のススメ: プログラミング編

金曜日, 8月 7th, 2009

学生の皆さんはそろそろ夏期休暇に入りますね.
だいたい40日ぐらいになるようですが,この機会に何か一つで構わないので続けて頑張る目標を見つけ,継続して実行しましょう!

どんな苦手な物であっても,文字通り毎日少しで構わないので続ける事で得られる物があります.
何でもやらないまま放置しているとあっという間に失ってしまいますが,継続することで定着率が大きく変わります.

以下,1〜3年次向けの「夏休みの課題」設定例です.


(Opinion) プログラミングが何やってるのかサッパリ分からない!

ターミナル上で動かすことを前提としたゲームで構わないので,ミニゲームを作ってみましょう.

  1. まずはポーカーのようなトランプゲームや,数当てゲーム,バックギャモンのようなボードゲーム等,何かしらゲームを一つ選びます.
  2. そのゲームをどのように実行したいか,ユーザとしての立場から使い方を設計します.
  3. ユーザを希望通りに遊ばせるために,システム側がどのような入力を受け取り,どのように処理し,どのように出力すべきかを検討します.
  4. ゲームの開始から終了までの動作フローを整理し,疑似言語やフローチャートでプログラミングします.
  5. 疑似言語やフローチャートとしてシステム全体を描く事ができれば,その設計図を元に一つずつ機能を実装&テストを繰り返していきます.
  6. 全ての機能を実装し終えたら,システム全体を通した動作確認を行い,何も問題が出なければそれで終了!

このように,「プログラミング」はシステム開発全体における一部分でしかありません.何か作りたい物を最初に決め,その詳細を検討してから実現に向けて取り組む事で,少しでもプログラミングの意味が見えてくるのではないでしょうか?