Archive for the ‘ススメ’ Category

カリキュラム外の時間をどう過ごすか

水曜日, 2月 6th, 2013

今日は会議&雑務で終了。と1ツイートレベルの記事で終わるぐらいなら記事書くなよという気がするので別の話題を。

2012年度の新入生(今の1年次)が入学してきた時の最初の日、学科別懇談会にて私が喋った言葉は、

一般的な科目は90分x15回の授業で2単位設定。勿論課題や自主学習等を含めるとそれ以上の時間を過ごすことにはなるけど、たった数十時間頑張った所で何かしらプロになれるだろうか? プロを目指すならカリキュラム以外の時間をどう過ごすかが大切。

みたいな話だったはず(多分)。何度か書いてる時間を有効に使おうという話ですね。

入学したての数日間は多数の人がいろんな視点で伝えたいことを喋ってるのを聞いてるだけという時間が結構多いので、なるべく端的に1つのことだけを喋るように考えて喋っているつもりですが、それでも全体として総時間が長いので何かしら覚えているかどうかは怪しいかもね。

ということで、そろそろ入学して1年が過ぎる頃です。勿論2年、3年、4年、卒業できなくて5年以上過ごしている過年度生などいろんなケースがあるわけですが、何かしら目標に向かって歩み続けていますか? 人によって歩み方もペースも違いますが、この一年振り返ってどうですか? あなたの目指している目標と共に、現在の歩み方が適切なのかどうか、たまには見直してみよう。

目標が見つからない、歩み方が分からない、今どうしたら良いのか想像できない人は、友人/親/先生などなど、いろんな人と話をしてみよう。自分自身の活動の幅を広げるためにも自分から行動し、体験してみよう。

相談・懇談したいことがあればいつでもどうぞ。(一応「何でも相談員その1」でもあるし)

他人のレポートを参照して学ぶのはとても良いこと

火曜日, 1月 29th, 2013

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ただの一般論ですが、何も考えずにレポートをコピーしてる問題について。

[ 前提: こんなことに労力割きたい訳ではない ]

他人のレポートを参考にするために参照するという行為は、基本的には「他人の視点が得られる」という点で「他の文献を読む」のと大差がないです。そういう意味(参考にするために参照するという意味)で、私自身が担当している実験では「先輩のレポートを参考にするのは良い。ただしその場合には参考文献として示せ。そうでないレポートは盗作なので大幅減点となる」と宣言しています。

「他人のレポートを参考にする」をもう少し掘り下げて書くと、「参考にするために他人レポートを参照する」パターンには、

  1. 他人レポートと自分自身の目的が100%合致している。
  2. 他人レポートと自分自身の目的が過半数合致している。
  3. 他人レポートと自分自身の目的が部分的に合致している。

ぐらいのケースが考えられるかと思います。

学生への課題というケースでは、100%合致しているケースもそこそこあることでしょう。この場合には、レポート全体をコピーすることでも「レポートの目的」は達成することが可能です。ただし、参照したレポートが100%正しい場合の話。冒頭で挙げた問題は参照先の一部が間違っていたケースですね。コピペも一つの技能ですのでそれを磨くことは推奨していますが、参照先が誤っているかどうかも見抜けない程度の理解度(参照度)だと何も磨いていません。結果として、コピーしている学生も、それを採点しようとする教員も、リソースを無駄に使っています。互いにそんなことをしたい訳じゃないよね?

参照するからには、言い換えるとコピーするからにはそれなりに参考文献(ここでは他人のレポート)を読み込み、理解する必要があります。何らかの形で理解度を深めることは無意味じゃないですし、一度理解しようと歩み始めると「レポートの穴」に気づいたり、何でこう考えたのだろうという疑問が湧き出たり、他のアプローチを思いつくなど、「貴方自身のこれまでの体験を加味した何某か」を考え始めます。これが参照(と同時に出典明示)を推奨している理由でもあります。そこには何かしらの歩みがあり、その歩みを事実として第三者が理解できる文書(=レポート)としてまとめるためにも技術(レポート(報告書)や論文の書き方)が必要ですが、それはまた別の話。少なくとも「こういう意味での歩み」をして欲しいから課題を課していて、レポートを出させています。言い換えると、「歩まない(≒理解しようとしない)」ならそれは「レポートの目的の達成」にはなっていても「レポートを課した目的の達成」にはなっていない、ということです。

やや蛇足ですが、目的が部分的に合致している文献(やオリジナル)を参照する際には別の注意が必要です。少なくとも「参考文献が述べていないことを述べたことにしたり、誤解を生む形で引用する」ようなことは避けましょう。どこからどこまでが参照したもので、自分の意見はここだ、ということが分かるように参照するようにしましょう。そうしないとオリジナルに失礼(場合によっては詐欺)です。

関連記事:

レポート(報告書)や論文の書き方

金曜日, 1月 25th, 2013

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ゼミ後のお茶会ではサンエーの焼き芋を準備したんですが、これが想像以上に美味しくて暫くハマりそうです。と言いつつ同じのばっかり食べてるとすぐ飽きる人なので寒い時期に後1,2回食べたら良い方かなとは思います。

2年次のレポートに対する指摘ではここに書いたような項目「グラフ劣化させるな、無意味な改行するな(段落意識しろ)、結果&考察だけ示すな(過程も報告しろ)」への指摘が多いです。「まずは」という段階での指摘ですね。

卒論/修論とかでの論文という形式になると「他論文との関係性」を明確にしないまま書き連ねるのはNG。どんなに斬新な切り口だろうと何かしら過去の研究と照らし合わせる作業は必要です。その辺りの理由は「参考文献に頼ろう」に書いた通りで、その論文がどういう立ち位置なのかを示すために避けて通れません。自分の修論(PDF)だと50件強列挙してたりしますが、実際問題として学部生+修士2年間の3年間同じテーマに取り組んでたら数十件ぐらいは普通に論文を読まざるを得ないはずです。具体的な件数はともかく、自身の論文の立ち位置を示すためにも必要最小限は示そう。

というような話の流れでタイトルにある「レポートや論文の書き方関連書籍もいくつか買ってはあるけど、そこらへんの「土台」な知識については良書があちこちあるんだから「これ読め」で済むのが互いにハッピーだと思うのだけど、現実はなかなそううまくいかないな。」とツイートした所、学生からタイトル教えて欲しいとリクエストが届きました。私が勧めるなら以下の3,4件。

ということで一度は目を通しておいた方が良いんじゃないかな。>学生の皆さん

休日はゼミ日和り。中間自己評価へのコメント返しを通した書籍紹介

金曜日, 11月 23rd, 2012

金曜日はデフォルトのゼミ日ですが、今週は休日。平日で調整付かないだけということもありますが、大抵は「午前中にゼミを終わらせてしまって、どこかお昼食べに行こう!」としていることが多いです。ということで、終わってからトルティーヤファクトリーに出撃。私含めて全員初めてだったんですが、想像してた以上に美味しく大満足。量的には「朝ご飯食べそびれた学生でも途中からキツくなる」ぐらいのボリュームです。普段食べない香菜も入ってて嬉しいのですが、次行く時には「ご飯半分!」と言うのを忘れないようにしないと。

ちなみにあの付近(「普天間でいご通り」と言うのか)は何故かメキシカンな食堂があちこちにあるんだけど、そういう人たちが多いのかな? もしくは周囲の基地関連で集客力あるのが残ったらこうなったという話だったりするのかしら?

あるお題を与えられた状態で、特定範囲のTimeLineから関連しているかどうかを判定しもらうアンケートは、微調整しただけで本番試してみることに。ブログ公開した状態だったこともあって、気づいた人は既に回答してくれてたりするんですが、改めて正式にお願いしたい人へ回答依頼することに。宜しくお願いします。近いうちに食事行きましょう。

あれこれ終わった後で、昨日の進化計算班で振り返ってもらった&改善案を提示してもらった中間自己評価について、個別にコメント返し。具体的な中身は個々人の受け止め方次第ですが、何かしら前に進むためのヒントや切っ掛けになれば。コメントを通してあれこれ書籍やWebサイトを紹介しましたが、多くの学生にも関連するかと思うので一覧をリスト化しておこう。

リストの中でも、なぜ、あなたはJavaでオブジェクト指向開発ができないのか Javaの壁を克服する実践トレーニングを「プログラミング自体にアレルギーがあるような学生向けの処方箋」として一読をお勧めします。また、オブジェクト指向でなぜつくるのか 第2版 知っておきたいOOP、設計、関数型言語の基礎知識は「1〜3年次の学生向け副読本」として一読をお勧めします。特に後者は、構造化プログラミングからオブジェクト指向プログラミングになることで得られるメリットと必要最小限の知識としてのメモリ管理、設計方法としてのUML、共通パターンとしてのデザインパターン、テストといった「プログラミング〜システム設計関連科目の間を補ってる」良書なので、全員にお勧め。


[ プログラミング関連 ]

[ 「オブジェクト指向プログラミング」の考え方 ]

[ その他:学習方法、プレゼンテーション方法、チームハックス、論理的思考法、論文の書き方など ]

進化計算班7回目終了。そろそろ中間地点なので一度振り返す時期?

木曜日, 11月 15th, 2012

個人的に曇り具合や萌え具合が素晴らしかったので珍しく曇り空をアップしてみたり。

中間発表のWeb質疑応答に回答が届き始めているので、気になる回答には突っ込み返し。意図が良く分からない場合には直接話を聞くのも一つの手です。口頭発表時でも意図自体が分からないまま回答するのはできるだけ避けよう。勿論「誤解しているか否か」自体を判断できないこともあるけど、回答前に一度「**についてということで宜しいでしょうか?」とか自分の言葉で相手の質問を解釈し直して確認するとか、工夫の仕方はいろいろ考えられます。

進化計算班は7回目が終了。今週からは具体的な「クライアントからの要求に基づいた開発」に入るので、メインタスクは進捗確認を兼ねたコードレビューになります。今回は全グループJavaらしい。2006年からやってるけど初めての展開。今期から始まってるモデリングと設計の影響もあるのかしら。astah使ってモデリングしてるグループもいるし。今度使いやすいのか聞いてみよう。

オプションのプログラミング演習では、いくつかのサンプルソースを使いながらGDBを使ったデバッグ演習&ポインタ周りの確認(PDF)したぐらい。実装の時間もできるだけ確保してあげたいので、これからはTips的な紹介ぐらいで終わるんじゃないかなと。

実験の議事録を書いてた時点では来週はxUnitかDoxygenあたりをしようかなーと考えてたんですが、そろそろ中間的な頃合いでもあるので振り返りか自己評価的なものをやって、残りの後半でそこの改善を目指せるように可視化でもするかしら。グローバル変数的な実装だと何が問題になるかという話でも良いかなー。受講する側も「自分で」シラバス見直して講義の達成目標を確認して、自分の行動を振り返ってみよう。

こんな感じで、オプションで何やるかどうかは当日の気分次第だったり。

(卒業研究中間発表) web質疑や口頭発表を通して得た事を次に活かすために記録を残す

土曜日, 11月 10th, 2012

(私は参加してないけど)お疲れ様でした>口頭発表参加者各位

卒研の中間発表は、予稿提出&(希望者による)口頭発表が終わって残す所は質疑応答のみ。参加を通して感じたこと、考えたことは記録として残そう。箇条書きでも日記でも図でも何でも良いので、その時々のできごとを残す(=見える化)ようにすると、後で振り返りやすくなります。言語化の練習にもなります。特に一人での出来事じゃないものは再現するコストが高いことが多いので、こういうイベントものはなるべく残す癖をつけよう。

一方で残すためにはコストがかかることも事実。コストに見合った効果が見込めないなら残す必要ないんだけど、何をどのようにどのぐらいのコストかけて残すかの判断を自分でできるようになるためにも、まずは残すという作業をすることが大事。プログラミングにしろ数学にしろ論文書きにしろ、なんでも「まずはつかる」のがお作法。これは学習パターンの例ですが、どんなものでも結局はそれなりの時間を割り当てないと質は高まりません(量は質を生む)。自分の人生は有限なので、何に時間を割くのかを意識して行動してみよう。人生の目標を見つけよう。自分のバイブルを見つけよう。

記録を残すことで振り返りやすくなる(=ハックしやすくなる)というのは前にも書きましたが、そこで紹介したプレゼンテーション・パターンはその名の通り「プレゼンテーション」にまつわる様々な視点や方法がまとめられています。今回の発表を改善する際の参考になると思いますので、一度は眺めてみる事をお勧めします。複雑研では全体ゼミこんな風に使ってみたけど、やらなかった場合とでどのぐらい差があるかは良く分からず。少なくとも、発表資料/発表/質疑応答などについていろんな視点から良し悪しを取り上げて互いに評価することができたので、やる勝ちはあったと思っています。ただ、もう少しやり方工夫しないと批判自体が目的化されそうなので、来年度は少しやり方を変更する予定。これも記録が残っているからこそ振り返られるわけで。

P.S.
質疑応答最終日にまとめて回答しようとしている学生が多いっぽいですが、通常質疑応答は1回のやり取りで終わるとは限らないので、なるべく早め早めに回答した方が良いですよ〜。

ゼミ後のお茶会が無かった一日、仮説駆動のススメ

金曜日, 11月 9th, 2012

担当学生が忘れてたために(しくしく)、今日はお茶会無しです(しくしく)。代わりにどこか食事に行こうと思ったものの一部の学生が時間や別件で都合合わないという事でお流れに。ということでマックシェイクのバニラを堪能。悪くないんだけど、多分ミキサーに氷とバナナ突っ込んでスムージー作った方が美味しいよなぁという。

中間予稿コメントは、遠藤研4人、長山研3人、長田研2人、高良研3人を終えて合計18研究室52人(+コメント飛ばした當間研2人)を終了。これで全員にコメントしたはず。もしコメントが届いてない人がいたら単純にチェック漏れなので、連絡ください。

明日は口頭発表があるようですが、私の中ではweb上での予稿提出&質疑応答がメインなので、参加しません。Web質疑応答自体は来週末閉め切りらしい。

発表なり聴講なりで参加する人たちは、折角の機会を有意義に使って次に繋がるように心がけて行動してみよう。何喋ってるか分からない?どうして良いか分からない?そんな人は失敗しても良いからまずは行動しよう。行動してみないと分からない事が多いし、失敗を多めに見られるのも今のうち。

ただ、無目的に行動するのは頂けない。何かやるからには「その結果どうなりそうか」を想定して行動してみよう。言い換えると「仮説」を立ててから行動してみよう(仮説駆動しよう)。行動の結果、想定と違うなら「何故違ったのだろう」と考える切っ掛けになります。「仮説」と呼ぶと取っ付きにくいかもしれませんが、研究だけに限った話じゃなく普段からどこででも起き得る話です。

中間発表の例でいえば、「何故この人はこういうことをやっているのだろう?→ひょっとしてここに意義を見出しているのかな?」みたいに、単に why? と思うだけじゃなく、その答えを想像してから質問を通して確認するというのが一例になります。まずは自分で考えてみよう。考えられないなら素直にそこを質問するのも良いですね。

なるとませんしょ2012

土曜日, 7月 28th, 2012

アナタの為?後輩の為?
「一つ前の学年の時に読みたかった本」や、「1つ下の学年に向けて勉強にオススメの本」があれば教えて下さい!

ということなので、研究室配属時の自己紹介の一部として紹介している書籍をベースに、少し追加・整理し直してみました。抜けてる本も多々あるんだろうけど、取りあえず思い出せたものを書いてます。

基本的には入門書/新書ぐらいのレベル(学部1年生でも読めるレベル)が多いです。難しい本は補足するなりしてます。

取りあえず全員読めや!と強気で押したくなるのは処世術・ライフハック的な視点やいろんな考え方/世界観が面白かった本で紹介してる(1)の「大学生のためのリサーチリテラシー入門 研究のための8つの力」。プロジェクト・デザイン1,2あたりの教科書/副読本としてお勧め。

以下、當間主観でカテゴリ分類して紹介しています。
カテゴリ内の順番は、なるべく番号が若い方が読みやすいようにソートしたつもりです。


目次


人工知能(研究)よりの読み物で面白かった本

(1) 心はプログラムできるか 人工生命で探る人類最後の謎 (2007)
研究室内外で紹介していますが、読み物としても面白く、学生からのウケも良いです。
人工生命の立場から仮説→検証を繰り返して一つ一つ知見を重ねて行く科学的方法論について、多数の事例で紹介しています。
一般の人向けに書かれてるので詳細を知りたい場合には不向きですが、幅広く関連テーマ・課題を眺めてみたい場合に良書。
関連のある読み物としては「ロボットの心―7つの哲学物語 (講談社現代新書) 柴田 正良 (新書 – 2001/12)」もお勧め。こちらは文字通り「読み物」レベルの新書です。
(2) 複雑系入門―知のフロンティアへの冒険 (1998)
私が学生の頃に出会った入門書で流石に古くなってきてますが、複雑系科学/工学に関して幅広く鳥瞰できる書籍としては現時点でも良書。複雑研の全体ゼミでも2010年までは全員に読ませていました。(最近は方針を変更したから輪読させてないというだけの話です)
(3) ロボットにつけるクスリ – 誤解だらけのコンピュータサイエンス (2000)
これも古い本なのだけど、人工知能の現状や取り組んでいる課題を一般教養レベルで講義(大学の教養科目として実施)をしていた内容をベースに、その内容を教師学生らの対談型で読み物として書いた本なので、ストーリーを追いやすいです。
(4) 脳をつくる―ロボット作りから生命を考える (1995)
(問1)Aさんの脳を切除し,Bさんの脳を移植する.目覚めた人はAさんかBさんか?
(問2)鳥の脳を切除し,人間の脳を移植する.目覚めた鳥(の世界感)は人間か鳥か?

このような問題に対し、ロボット工学な研究者ならではの解釈を当てはめて答えています。

似たような話題が「免疫」の世界でもあります。
例えば上記に近い例で言うとAさんの心臓をBさんに移植すると、Bさんの「免疫系」は異物が混入したと考え拒絶反応を示し始めてしまい単純にはうまくいかないということになります。ここで、人間に取っての自分とは「自分と考える何か(例えば脳)」だと仮定すると、その「自分」にとって「心臓」が無いと生きていけないので取り込んで利用した方が良いに決まっていますが、「免疫系」は異物として排除する方向に動きます。「自分」の意思とは無関係に、「免疫系」が行動してしまいます。ここでの「人間/自分/脳」と「免疫系」は、どちらに主体性があるのでしょう?
こういう話に興味がある人は、多田先生の「免疫の意味論」を読んでみよう。私のバイブル(学生時代の研究の原点)です!皆も自分のバイブル本見つけよう!

参考:「脳をつくる」の書評免疫系のメモ

(5) 動きが生命をつくる – 生命と意識への構成論的アプローチ (2007)
途中までしか読んでないんですが、生命らしさ/意識らしさについて「ダイナミクス」で捉えるというお話。学部1,2年生ぐらいでいきなりこの本を読むのはちょっと難しいかも。

情報検索(研究)よりの読み物で面白かった本

(1) サーチアーキテクチャ 「さがす」の情報科学 (2007)
検索エンジンや様々なWebサイトでの検索といった「電子的に探すという行為」に限定せず、そもそも探すとはどういうことかという視点で多角的に事例を交えて紹介している本。変わった観点から数値データを基に話を進めてて、パラパラ読むぐらいでも楽しいです。
(2) 検索エンジンはなぜ見つけるのか―知っておきたいウェブ情報検索の基礎知識 (2011)
日経BPの同書シリーズ(10年後も通用する基本を身につけよう)はどれも入門書として良書だと思います。
その中の一冊である「検索エンジンのなぜ」では、
 ・どうやって集めているのか
 ・どうやって整理しているのか
 ・どうやって検索しているのか
を中心として具体例を交えながら技術的な工夫を「概観」できるように書かれています。より具体的な手法について調べたい人向けにリファレンス(参考文献)も用意されてるので、興味があるならその先にどんどん進めます。なお、日英問わずでより専門的な書籍としては「Information Retrieval in Practice」をどうぞ。プロファイリング(ユーザの嗜好推定やどういうコミュニティに属しているか、何について話しているのかといった分析)みたいな話に興味があるなら「入門 ソーシャルデータ ―データマイニング、分析、可視化のテクニック」とか。Twitter/Facebookとかいろんな事例が出てきます。
(3) 集合知イン・アクション (2009)
検索エンジン、推薦エンジンを自然言語処理ベースで作り上げる際の一アプローチを基礎から応用レベルまで幅広く取り上げた本。具体的なソースも付いてるぐらい実装寄りの書籍です。手法についての説明は簡易的にしか述べられていない部分もあるため、これを起点に興味のあるものは掘り下げていくための出版点としての書籍。
2009年度にはこれの輪読もやりました。

自然言語(研究)よりの読み物で面白かった本

(1) 自然言語処理ことはじめ―言葉を覚え会話のできるコンピュータ (2004)
自然言語処理への入門書としてのお勧め。形態素解析から始めて意味解析に至るまでを入門的に読める本。読みやすいけど具体的な実現(実装)は、これだけでは無理でしょう。
実装寄りの入門書としては「入門 自然言語処理」がお勧め。
(2) Rによるテキストマイニング入門 (2008)
実装というか演習寄りの入門書。Rを使った環境構築から始まり、口コミ情報の分析/アンケート自由記述文の分析/沖縄観光のアンケート分析といった事例を紹介しつつ学べます。
(3) テキストマイニングハンドブック (2010)
自然言語処理をベースとした分析手法について鳥瞰できる書籍。これだけでは理解困難なテーマも多々あるので、出発点として使おう。

人工知能における「常識」(研究)寄りの読み物で面白かった本

(1) IBM 奇跡の“ワトソン”プロジェクト: 人工知能はクイズ王の夢をみる (2011)
言わずとしれた(よね?)「WATSON」先生を実現するためのプロジェクトとして中の人が書いた書籍。
一般向けに書かれてるので学部1年生でも読めますが、プロジェクトXみたいなノリが嫌いな人には冗長すぎるかもしれない。
(2) ミンスキー博士の脳の探検 ―常識・感情・自己とは― (2009)
上記の本より古い(原書はもっと古い)ですが、人間が普段何気なく実現している機能や側面について事例を上げながら独自の提案を構築していくお話。かなり噛み砕かれた文章なので低学年でも十分読めますし、リファレンスもたっぷり提示されているので必要に応じて関連文献についての詳細についても調べて行くことができます。
(3) 「ロボットは東大に入れるか」キックオフシンポジウムの紹介+α(PDF資料のpp.40-)
ロボットに東大合格させよう(センター&2次試験共に合格させよう)というのを目標に掲げたプロジェクト(通称「人工頭脳プロジェクト」)が発足しています。このキックオフシンポジウムに参加してきた(記録1, 記録2)のですが、「常識」という良く分からないものへ科学/工学的に迫ろうという取り組み自体が面白く、学生向けへの紹介資料を作成したのが上記のリンク先にあるPDFになります。PDF内の40ページ移行に関連書籍を當間主観で整理してますので、興味がある人は覗いてみると良いかも。

広い意味でのマイニング(データ解析)として面白かった本

(1) データを未来に活かす (2011)
数理統計を中心とした話題が多いですが、多方面に渡る「データとの向き合い方」について高校生レベルで理解できるように噛み砕いて紹介されています。統計数理研究所に所属している研究者らへのインタビューを通して「これを実現したい!(データをこう活かしたい!)」という強い動機から、それを実現するためのアプローチとしてどういうことを考え、やってみてどうだったかといった事が書かれています。研究テーマかもしれないし人生の目標かもしれないしそれ以外かもしれないけど、こういう生き方をしているんだという事例という意味でも早い段階で読んでおくことをお勧めします。
(2) パターン認識と機械学習 理論と現実の妥協点探し -最適化問題と機械学習- (2012/slideshare)
書籍「パターン認識と機械学習」へのイントロダクションとして公開されてるスライドです。多次元の特徴空間に対してどう取り組むかという視点で描かれていますが、そもそもの素朴な疑問から出発して理論と現実(イメージしやすい例)を行ったり来たりしながら話を進めてくれるので、データ解析にどう取り組むべきかという一つのアプローチを想像しながら読むことができます。勿論、これで物足りなければ書籍の方に手を出してみると良いでしょう。(書籍自体の難易度は高いです)
(3) Rによるデータサイエンス-データ解析の基礎から最新手法まで (2007)
こちらは具体的に手を動かしながらデータ解析をしてみるという入門書。幅広く浅く多数の手法が出てくるので、手法毎の詳細については知りたい場合には別途調べる必要があります。
続きは英語で良ければ「Data Mining: Practical Machine Learning Tools and Techniques, Third Edition」とか。

震災関連

(1) IT時代の震災と核被害 (2011)
震災直後や復興支援段階で「IT」関係者がどう行動したかという一種のドキュメンタリーとしても読める書籍。目次を眺めると分かりますが、グーグル/ヤフー/ツイッター/アマゾン/MITメディアラボ/動画サイト/Ustream/ニコニコ動画/CNN/デマなどなど、ジャンルを問わずいろんな業種の人たちが自発的に行動していった側面に触れることができるだけでなく、今の復興段階だからこそ改めてどうあるべきかを問いかける内容になっています。なお、先ほどのリンク先からグーグルの事例についてはPDFで公開されてたりしますので、まずは読んでみよう。
(2) 人を助けるすんごい仕組み――ボランティア経験のない僕が、日本最大級の支援組織をどうつくったのか (2012)
ふんばろう東日本支援プロジェクト」の発起人自身が当時どう考え行動していったかを書き綴った書籍。ITが役立つ部分とITだけではどうにもならない部分をうまく噛み合わせながらコミュニティを効果的に運営していったが、その根底にあるのは研究テーマに根ざしている部分があるから自然に行動することができた。という話です。
(3) 不自然言語処理 -枠に収まらない「リアルな」言語処理-:7.ANPI_NLP-NLP技術を応用した震災時安否情報確認支援- (2012)
これは書籍じゃなくて論文です。
ANPI_NLP(ANPI=安否、NLP=自然言語処理)というプロジェクトが震災後に立ち上がりました。このプロジェクトでは、以下のようなことを目的として主に自然言語処理や情報抽出/データマイニング等に関わる研究者・技術者が集ってボランティアで行った活動の一例です。

ANPI_NLPの活動目的、タスクより抜粋)
現在、東北関東大震災に関して様々なところで種々の情報が飛び交っています。その中でも、特に被災された方々の安否情報は最も重要な情報であり、できるだけ正確な情報を大量に整理する必要があります。しかしながら実際は情報は大量でかつ様々なところに分散して存在しているために探しにくいだけでなく、情報を提供する側と情報を必要とする側で適切に必要な情報を共有できていないと考えられます(例えば、どちらかが人の名前を1文字間違える、平仮名と漢字との違い、ある人の安全が確認されるとその情報は電子的に残されにくい、など)。

大きなタスクとしては、楽天技研ではGoogle社のPerson Finderの情報を使わせて頂いており、この情報とTwitterなどから得られる安否確認情報を照合、更新することでPerson Finderの情報を充実させること、が挙げられます。このタスクはできるだけ早く、かつ正確な情報の抽出が社会的に渇望されていると考えられます。(2011/03/16 @kmura)


設計/技術寄りの読み物で面白かった本

(1) アーキテクチャの生態系 – 情報環境はいかに設計されてきたか (2008)
2ch/hatena/nicovideo/mixi/Facebook/Twitterといった様々なオンライン上での交流を支援しているWebサービスを中心に、「アーキテクチャ/設計」という観点から俯瞰的に考察されています。学術的側面とWebサービス的側面、利用客としての側面などが面白く考察されてて、こういったものに興味がある人は必読書。
(2) ボナンザVS勝負脳―最強将棋ソフトは人間を超えるか (2007)
ゲームプログラミング的な人工知能(例えばNPCの行動戦略を学習させたいとか)に興味がある人は必読。人間(ここでは将棋のプロとか)の知識を人手で体系化→実装するアプローチに対し、コンピュータ的なアプローチ(多数の事例を集めて機械学習→全探索)が勝ったという話。読みやすいですが、新書レベルの内容なので具体的なアルゴリズム等の詳細については実際に関連論文を探して読む必要があります。

参考:書評

(3) ウェブ国産力 – 日の丸ITが世界を制す (2008)
2008年時点での話になりますが、ここ最近の www 周りの技術を踏まえた上で、大学/企業らでどのような動きが出始めているか、どのようなモノが求められているかを示している本。
(4) 600万人の女性に支持されるクックパッドというビジネス (2009)
Webサービスを提供するにあたり、ほげほげ考えて行動したらこうなった、という cookpad.com の成り立ちを垣間みれる本。IT系の新書ですが、何のためにITを使うの?という点で読むことを勧めるという意味でここで紹介しています。

参考:書評

(5) Googleを支える技術 – 巨大システムの内側の世界 (2008)
途中まで読んで他の人に貸している状態だったりしますが、検索エンジンとしての精度向上の話と、実用システムとしての性能向上のバランスを取りながら Google がどのように工夫し続けているかを「それらしく推測」した話。

こっち方面(大規模サーバ)に興味があるなら、最近だと「Mobageを支える技術 ~ソーシャルゲームの舞台裏~ (2012)」も良さそうです。


生体情報寄りの読み物で面白かった本

(1) 単純な脳、複雑な「私」 (2009)
脳科学に関する基本的知識から最新の話題までを、高校生向けに授業した際の内容を書き起こした本。これだけじゃなく、池谷先生の本は「続きが気になって読み続けてしまう」タイプのものばかり!

こういう方面に興味がある人なら「Mind Hacks ―実験で知る脳と心のシステム」もお勧め。
どちらも解説&簡易実験で確認するという形で読みやすいです。

(2) 赤ちゃんは世界をどう見ているのか (2006)
人間の持つ不思議な能力に関し、先天的に持つものなのか学習によりはぐくまれるものなのかといった視点や、心理学の立場から得られた知見について一般向けに書かれた書籍。何がどこまで実験的に分かっているのか、分かりつつあるのかといったことがちりばめられています。人工知能/知能ロボットあたりでの一つの目標「赤ちゃんロボットを作りたい」という人なら読んでおくべき。
(3) ミラーニューロンの発見―「物まね細胞」が明かす驚きの脳科学 (2009)
赤ちゃんは世界をどう見ているのかの続きとして読むと、楽しめる一品。
複雑系的思考がブレイクスルーを生んだ事例としても、割と最近の脳神経細胞周りでどういうことが明らかになりつつあるのか、どういった仮説があるのかといった事を読める本。

処世術・ライフハック的な Tips やいろんな考え方/世界観が面白かった本

(1) 大学生のためのリサーチリテラシー入門 研究のための8つの力 (2011)
目次を眺めると分かりますが、タイトルになってる8つの力は「聞く力/課題発見力/情報収集力/情報整理力/読解力/執筆力/データ分析力/プレゼンテーション力」が挙げられていて、具体例を交えながら指南されています。今どういう本使ってるか分からないですが、講義「プロジェクト・デザイン1, 2」の教科書にすると良いんじゃないかなと思える本です。
この本の中でも紹介されていますが、一応この本よりも優しく書かれた本としては「大学基礎講座 改増版」。逆により抽象的な立場で書かれた本としては「大学生の学び・入門」があって、その中間を意識して書かれた書籍らしい。また、物事を複眼的に捉える「知的複眼思考法」も強く意識していると紹介されていますが、そういう多面的/複眼的に考えるということについて触れてみたい人はこちらも手に取ってみると良いでしょう。
イレギュラーな本として、「サはサイエンスのサ」もニュースが伝えている一側面とそれらの裏側や深い調査に基づいた解釈や独自の考えなどを書かれていて、調査の仕方や疑問へのぶつかり方、論拠の提示から考察への繋がり等を面白く読める本です。

ちなみに、勉強の仕方という点では「学習パターン (Learning Patterns)」も参考になるかと。同じパターン・ランゲージの例としては「プレゼンテーション・パターン (Presentation Patterns)」もあります。

(2) 「社会を変える」を仕事にする 社会起業家という生き方 (2007)
聞きたい話 (y11)」という話が出て、河野先生の話を聞く会があったようです。
広い意味でいろんな先輩の話を聞いてみたいということだと理解しているのですが、そういう点でこの書籍も一例になるかと。

そんな中、彼の胸のなかの疑問は、どんどん大きくなっていく。
「自分は本当は何をしたかったんだろう」と。

こう思ってる人は、一つの例として読んでみよう。

ちなみに「二十歳のころ―立花ゼミ『調べて書く』共同製作」(いろんな人の「二十歳のころ」どうだったかが分野問わず紹介されてます)なんていう本もあるらしい。

(3) 理系大学院留学 – アメリカで実現する研究者への道 (2010)
斜め読みしかしてませんが、海外大学院への入学等を検討してる人は一側面として知ってると良さそうな話がちらほらありました。いろんな進路があるんだよ、という参考に。私自身1年間米国留学した口だし。
研究繋がりで、言語処理学会の一イベントとして「自然言語処理における企業と大学と学生の関係」について3者の立場からの主張&討論がありました。その様子をブログにまとめています。また、情報工学科新入生歓迎LT祭りで話したこともその流れで紹介したものです。
(4) ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (2007)
既に5年前の本という意味で古い気もしますが、「ロールモデルを見つけよう/Vantage point に立とう」とか今でも同じことが言えるTipsが紹介されています。

参考:書評


その他読み物でお勧め。小説関連(順不同)

  • スノウ・クラッシュ(近未来アメリカが舞台ですが、冒頭数十ページはずっとピザの話ですw 仮想世界で出てくる書司さん(プログラム)みたいなの作りたいなー。)
  • アイの物語(純粋にSFとして面白い!)
  • 時砂の王(同上!)
  • パプリカ(同上!)
  • BRAIN VALLEY(比較的たんたんと話が進むので人によっては好みが分かれるかも)

プログラミング関連、その他

Presentation Patternsに学ぶプレゼン・ハックのススメ

金曜日, 2月 17th, 2012

妙なタイトルですが、「プレゼンテーションそのものの講義無いの?」とかいう話がたまに出るので、参考になる資料の紹介と、この資料を使った具体的な改善方法についての記事です。資料読んで自分で直せる人には必要ないですね!

<目次>


参考リンク一覧

プレゼンテーション・パターン:創造的プレゼンテーションのパターン・ランゲージ
プレゼンテーション・パターンの公式サイト。

『Presentation Patterns イラスト制作の軌跡』(Ver.α)
プレゼンテーション・パターンに描かれているイラストがどのように出来上がっていったのかを、(恐らく当時の)コメント付きで眺めることができる「制作日記」みたいなもの。趣旨をどのように伝えるかについて、ブレストチックにネタ出しから始まり、様々なアイデアが一つに収束し、質を高めていく流れ(創造プロセスの記録)が見えて、楽しいです。

プレパタ作成物語(連載まとめ)
タイトルのままですが、イラストだけではなく、プレゼンテーション・パターン全体を作成していく過程を紹介した記事一覧。


少人数で始めるプレゼン・ハック

想定環境・事前準備編

人数を調整する
2〜5名程度。全員分の「発表+質疑応答+発表振り返り」の総合計時間が1,2時間で収まる程度がベター。長すぎるとだれるし。

プレゼンテーション・パターンを1つ以上選択する
参加者は、発表者として強く意識したパターン(以下、「発表者パターン」)、聴講者としてチェックしたいパターン(同「聴講者パターン」)を各々1つずつ選ぼう。パターンが被っても異なっても良いですが、慣れるまでは1つずつに絞るのが吉。なお、聴講者パターンは参加者間で被らないように調整した方が良いかもしれませんが、mustではありません。

発表者パターンについて意識したことを文章化する
パターン自体にいろんな補足説明が最初から書かれていますが、発表者として「そのパターンに気をつけることでプレゼンをどうデザインしたか」について自分の言葉で書こう。

聴講者メモを取りやすい環境を用意する
ノートPC等でPDF閲覧しながらでも良いですが、画面小さくてメモる際に隠れてしまうようなら聴講者パターンを印刷するなど工夫しましょう。常にチラミできるように置けるとベター。また、ieの皆さんのように「息をするようにツイートする」人種なら、コメントを「#prepat01とかハッシュタグ付けてツイートする」とか、可能な限り思ったことは書き出せるように環境づくりをしましょう。(蛇足ですが、ハッシュタグ付けると「いろんな人の指摘・改善策」みたいなものが集約できて面白いかも)
大した事ないと思っても、それは貴方がそう思ってるだけで他の人から見ると心に響く言葉かもしれません。玉石混淆で構いませんので、書こう。

どのような場で発表するかを共有する
事前に「どのような人向けに、どのぐらいの時間で話すか」についてメンバ間で共有しよう。ターゲットや持ち時間の想定ズレを防ぐだけでも有益なコメントを得られやすくなります。

必ず質問する
質問の練習を兼ねてますが、実は説明しようとすると詰まるぐらいの理解度で留まってる背景知識とかいろいろあるので、必ず質問し合おう。

必ず文章化する
指摘/コメントだけではなく、2週目以降では改善した点についても文書化(文章だけでも、イラスト等加味しても化)しよう。これだけでも「振り返り(=ハック)」しやすくなるぐらい、とても重要。


実践編

初めての発表では、発表者毎にStep1、Step2、Step3、Step5を繰り返します。
一度でも発表に対するコメントを貰った人は、上記にStep4を加えてやりましょう。

Step1: 実際の発表スタイルと同様に発表
発表者は、指定された発表時間&スタイルで通しましょう。
聴講者は、各自の選択した聴講者パターンを意識し、気づいた点をメモりましょう。選択した聴講者パターン以外について気になることが出てきたら、それも取りあえず書き出しましょう。発表中は書き出すだけで、後で該当パターンがあるかチェックして補足するとベター。

Step2: 実際の質疑応答スタイルと同様に質疑応答
既に何度も質疑応答やってるとか、質疑応答以前の問題で発表資料の改善に注力したいなどの特別な理由があれば省略して良いですが、可能な限り質疑応答までやろう。

Step3: 聴講者による通常の指摘・コメント(未質問者全員)
Step2で質問することができなかった人に、必ず質問をさせよう。互いに自分の言葉で喋る練習になります。全員が質問し終えたらStep3へ。

Step4: 前回貰ったコメントがあれば、それに対する回答を示す(1,2分程度)
修正点が多数ある場合には、主観で構わないのでその中でも特に重要だと感じた修正点1つ程度について、コメントと共に修正前後のスライドを提示し、端的に説明しよう。ハック例を共有するのが目的なので、長くても数分程度。資料は、プレパタ作成物語のような「編集の奇跡」を残すつもりでちゃんと文書化しよう。(口頭説明だけで終えるようにしないようにしよう)
全ての修正点についてやろうとすると必要以上に労力がかかってしまうので、原則として1回の発表練習毎に1つ。発表練習を繰り返すことで奇跡として残すことを積み重ねると消化して血肉になりやすくなる(無意識で気をつけるレベルに昇華しやすくなる)し、後々振り返るための資料にもなるので1つは作って残すようにしよう。

Step5: 聴講者パターンに根ざした指摘・コメント(発表者全員1回ずつ)
指摘項目は多数あるかもしれませんが、共有した時間を効率良く使うために一人1件に絞って指摘・コメント(≒ハック)しましょう。一度にハックしまくっても消化不良になるので、1人1件に絞ろう。話せなかった分は、後で書き出した一覧を発表者に渡せば良いです。

全員の発表練習が終わったら、その時間内に指摘できなかったことを個別に話合うなりメモを渡すなりして発表者がハックしやすくなるように工夫してみよう。ハック例を研究室内外で蓄積してクックブックorレシピ化するだけでも質を高めやすくなるかも。

未踏ユース/スーパークリエータにまつわる座談会

水曜日, 2月 8th, 2012

 大学サイトの「アクティブ学生」として記事が掲載された通り、与儀さんがIPA主催の未踏ユースにてスーパークリエータに認定されました(参考リンク1)! また、琉球新報さんにも記事にして頂けました(参考リンク10)!

【授賞式の様子】

 未踏プロジェクト(正式には「未踏IT人材発掘・育成事業」)は、年と共に少しずつ変化して行っていますので、詳細はオフィシャルサイトで確認してもらうとして、与儀さんは「動的にフォントを生成/編集するためのフレームワークの開発」というテーマで2010年度・未踏ユースに採択され、首藤一幸PMによる指導のもとでソフトウェア開発を行いました(参考リンク2)。

 以下、2011年度採択に挑戦したものの落選してしまった山内一騎くん(工学部情報工学科4年次)を聞き手に、与儀さんとの対談形式で事業を通したプロジェクトの様子等について紹介します。

<目次>


何したの?

聞き手・山内(以下、山内):まずはスーパークリエータ認定おめでとうございます!
話し手・与儀(以下、与儀):ありがとうございます!

山内:いきなりですが、未踏ユースでは国からお金をもらいながらソフトウェア開発できるそうで、最高180万ぐらいの費用を頂けるそうですね。ぶっちゃけいくら貰えたんですか?
与儀:途中で進展できない時期もあったのですが、合計で(検閲)ぐらいです。あれ、何か勝手に書き換えられてしまいますね。察してくださいw

山内:気になる人は個別に突撃してもらうということでw

山内:では気を取り直して、今回、未踏ユースに採択された期間内における活動が認められスーパークリエータ認定を受けたということですが、この「動的にフォントを生成/編集するためのフレームワークの開発」というプロジェクトはどのようなものなんでしょうか?
与儀:「動的に」とか言うと難しく聞こえるかもしれませんが、自分好みのフォントを誰でも簡単に作れるようにするためのソフトを開発するというのが目的です。そもそもの出発点というか切っ掛けになったものは、このIPAの事業に関する説明会(参考リンク3)に参加した際に紹介してもらったOBの岩崎さんの提案である「チャットシステムが味気ない。もっと書き手の気持ちを伝えたい」というものでした。岩崎さんの例では文字チャットにおいて「筆圧」等を加味して文字サイズを大小変化させるというものだったのですが、私は「その時々の感情に応じてフォント自体を作りたい」と考えました。例えば悲しい時は薄くかすれたフォント、楽しい時はポップ調のような形で自分好みのフォントを作ることができれば、書き手の気持ちを伝える手段が増える、つまり表現の幅が広がります。

山内:書き手の気持ちを文字内容だけではなくフォントの形でも伝えることができる、ということでしょうか。
与儀:そうです。例えば、ニコニコ動画では視聴者のコメントが埋め込まれた形で動画が再生されますが、基本的にはコメントの色を程度の変化しかありません。これがコメント内容に応じてフォントまでが変わると、例えばこういう感じに見えると、どうでしょう。

ニコニコ動画でのイメージ図

【ニコニコ動画でのイメージ図】

山内:こ、これはw
与儀:良いリアクションありがとうございますw
与儀:まだここまでは辿り着いていないのですが、こういうゴールを目指す第一歩として「好みのフォント」を作りやすくするためのソフトウェアの開発に着手した、というのが今回のプロジェクトです。

山内:なるほど、さらに先を見据えての開発なんですね。今後の発展も楽しみです!


育成事業らしいけど、何かレクチャー受けるの?

山内:次に、プロジェクトに関連して違う視点、「育成事業」という点についてお聞きしたいのですが、一般的な応募を募るケースでは「提案者が開発するだけ」のように思います。それに対して、今回の未踏ユースでは「プロジェクトマネージャのもとで発掘育成する」ということですが、具体的にプロジェクトはどのように進んだのでしょうか?
与儀:実はプロジェクトが採択される前からいろいろと指導頂く形になりました。応募したのが9月末で、書類審査を通過したのが10月中旬です。その後にプレゼンを含んだインタビュー形式での審査が10月下旬にあり、採択内定を頂いたのが12月中旬頃だったと思います。この内定を頂いてから実際の契約に至るまでの1ヶ月ぐらいの間に「プロジェクト期間中における具体的なゴールをどう設定するのか」「ソフトウェアとして実現するためのアイデアは練っているのか」「どのようなスケジュールで開発するのか」といった様々な視点からのアドバイスを頂き、少しずつプロジェクトを具体化するという作業を進めていました。

山内:事務方さんというか進捗確認的なもので済ませるだけじゃなく、かなり開発寄りの具体的な項目について話合うことまでされているですね。言ってみれば上司として部下の成功を導くというような形での共同作業といった所でしょうか。
与儀:そう考えてもらった方が分かりやすいと思います。
与儀:正式な契約を交わしたのが1月で、それからは討論だけではなく、開発を進める上でのサポートをいろいろとして頂けました。例えば、フォントをどう作るかということが焦点の一つですが、これに対して具体的なアイデアを考えていく際の討論だけではなく、フォントを販売している株式会社モリサワさんの中の人と話す場をセッティングして頂けました。

山内:それは羨ましいですね!
与儀:他にも、首藤PMが関わっているプロジェクトメンバやOBOG等未踏関係者の集まる場での討論や、合宿などを用意して頂け、いろんな分野、いろんな視点からの意見を交換し合える場を提供して頂け、交流の幅が広がったのがとても嬉しかったです。これが切っ掛けかもしれませんが、県内でもブロッコ・デリ・アーキテクツ有限会社さんとデザインについて話を聞くよう行動する等、これまで以上に「プロジェクトを成功させるために行動する」ことを心がけて行動することの大切さを体感することができました。

山内ソフトウェア開発といった技術面だけでなく、視野や交流の幅を広げるといった間接的なサポートを通して得られるものがあったのですね。僕は与儀さんの講演会(参考リンク4)に参加してやる気になり、今回初応募して落ちてしまったのですが、とても悔しいです(笑) 
与儀:「未踏」では自分の夢を持って具体的に行動している人が大勢いるのですが、大勢居ることで「専門分野」という垣根を越えた話題やアグレッシブな様子が身近に溢れていて、それが交じり合って行くのがとても面白いです! 山内くんも、その一員になれるよう何度でもチャレンジしてください(笑)

山内:はい、頑張ります!


応募の時に考えて欲しいこと?

与儀:ちなみに、これは首藤PMから言われたことでもあるのですが、一人のプロジェクトとして頑張る必要はないです。公募要領にも書かれてますが、複数人でのグループによるプロジェクトとしての提案で構いませんし、実際そのようなケースが少なくないようです。一人だとどうしても進展が見え難い時期等で精神的にキツいですが、それを和らげる意味でも共同作業するような形が望ましいという意見を頂きました。特に私の場合だと、修士論文とは関係ないテーマで提案したこともあって、どちらともやりたいテーマなんですが時間が有限なので、両立にとても苦労しています。目下修士論文作成マシーンと化しています(遠い目)。

山内:僕も卒業論文書いてる最中なので、そこはお互い頑張りましょうw
山内:話を元に戻してプロジェクトの流れについてですが、1月に契約が済んでから討論だけでなくいろんな交流イベントを通しながらの開発となったようですが、これはいつ頃まで続いたのでしょうか?
与儀:契約期間という意味では8月中旬頃で最終報告までを終えました。ただし、その後も9月上旬頃までは書類の書き直し等を含めたやり取りが続いていましたので、実質的な期間で言うと約10ヶ月間がプロジェクト期間と考えて良いと思います。

山内:10ヶ月間というと、フルに活動するとして40週間ですか。単純計算で1日8時間x週5日x40週=1600時間。安いバイトで換算すると、、というのは辞めておきましょうw
与儀:(^-^)

山内:最終的な成果物というのでしょうか、プロジェクトを終了する際に求められるものはどういうものなんでしょうか?
与儀:基本的には日々の作業日誌と、成果としてなるべく目に見える形でのデモを用意すること、デモを踏まえたプレゼンテーションや概要書を作成すること、といった所です。

山内:開発したソフトウェアそのものというかプログラムは提出しないのですか?
与儀:基本的に開発物はクリエータのものです。OBOGを見ていると多くのケースではWeb上で公開しているようですが、公開することも含めてクリエータが自分で決めることができます。

山内:では、商用として売り出すこともできるんですか?
与儀:自由です!

山内:うおおおおお!それは妄想が膨らみますね!!ww
与儀:落ち着けwww
山内:すいませんw

山内:そろそろ最後の質問、今回のスーパークリエータ認定を受けての気持ちや、この記事を読んでくれているであろう後輩に向けての言葉を頂けますか?
与儀:まさか自分のプロジェクトが選ばれるとは思ってなかったので驚きました。でも8ヶ月間の労苦と絶望感が報われたようで大変嬉しいです!こんな自分でもなんとかやっていけたので、つまりは誰でもやっていけると思います(笑) やりたい気持ちとアイデアがあれば技術はあとから身につくし、そのための最大限のサポートもしてもらえます。それに未踏は刺激に溢れているので、モチベーションは上がりまくりです。たくさんの面白い人とも出会えるし、面白い話も聞けるし、とにかく未踏の一番のウリはそんな出会いだと思います。何かやってみたい事があるなら、まず挑戦してみてはどうでしょう。

山内:ありがとうございます!
山内:長丁場になりましたが、今回は修論過渡期という多忙な時期にお時間頂き誠にありがとうございました!
与儀:ありがとうございました!


最後に

 以上、當間による捏造対談でお送りしました。(本人達に承諾は得ていますよ!)
未踏プロジェクトに限った話ではなく学業/研究/趣味何でも良いですが、学生さんが学外にも目を向けて活動する切っ掛けになれば良いなとの思いで、記録を兼ねた対談形式の記事として作成してみました。

 なお、この記事によると、未踏の公募(受付期間:2/7〜4/10)が始まっているようです。

 ちなみに、与儀さんは「21世紀グローバルプログラム(参考リンク5)」で入学してきた学生の一人です。今回採択されたプロジェクトは卒業論文や修士論文とは無関係の個人的なプロジェクトとして応募し、採択され、努力した結果が評価されました。21世紀グローバルプログラムが廃止(参考リンク6)になったのはとても残念ですが、「学力、意欲、豊かな個性を兼ね備えた優れた学生」として入学し、学術研究活動だけでなく学外プロジェクトにもチャレンジし、その活動が高く評価されたことはとても喜ばしいことです!


参考リンク一覧

参考リンク1:
 「未踏IT人材発掘・育成事業」スーパークリエータの認定について~採択、支援した34件の中からスーパークリエータ 15名を認定~
 http://www.ipa.go.jp/about/press/20111215.html

参考リンク2:
 2011年度 未踏IT人材発掘・育成事業 公募結果
 http://www.ipa.go.jp/jinzai/mitou/koubokekka_index.html

参考リンク3:
 未踏IT人材発掘・育成事業説明会(9/4 13:30-15:30)
 https://ie.u-ryukyu.ac.jp/blog/2010/08/26/未踏it人材発掘・育成事業説明会94-1330-1530/

参考リンク4:
 未踏にチャレンジしてみた琉大院生による紹介と中間報告 講演会のお知らせ
 https://ie.u-ryukyu.ac.jp/blog/2011/01/29/「未踏にチャレンジしてみた琉大院生による紹介/

参考リンク5:
 琉球大学21世紀グローバルプログラム
 http://www.u-ryukyu.ac.jp/admission/nyushi/guide2007/p08.html

参考リンク6:
 琉球大学 学内ニュース 2010年7月号(21世紀グローバルプログラムの廃止)
 http://www.u-ryukyu.ac.jp/univ_info/inter_news/2010_jul.html

参考リンク7:
 情報処理推進機構:未踏:未踏IT人材発掘・育成事業
 http://www.ipa.go.jp/jinzai/mitou/

参考リンク8:
 「2012年度未踏IT人材発掘・育成事業クリエータ委託契約」に係る企画競争
 http://www.ipa.go.jp/about/kobo/20120207/index.html

参考リンク9:
 リンク:「2012年度未踏IT人材発掘・育成事業クリエータ委託契約」に係る企画競争
 http://d.hatena.ne.jp/next49/20120207/p3

参考リンク10:
 リンク:与儀さん(琉大大学院)県内初認定 スーパークリエータ(琉球新報)
 http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-187430-storytopic-7.html